浅草通りと言問通りを南北に結んで全長約1Kmに、飲食用具のことならなんでもおまかせの専門店がひしめく道具街。
調理器具や厨房設備、食器、看板など、本来プロ向けなのだろうが、個人売りもしている。海外でも評判の食品サンプルを扱う店には、外国人観光客の姿が。
私は’ところ天突き’を探してここにやって来た。
細長い木製の囲いの先に、3ミリ四方ぐらいの網目が張られ、中に寒天を入れて付属の棒で押し突くと、寒天がスルスルとところ天になって出てくる用具である。
昔からあるものだが、今はスーパーやデパートに行っても、そんなレトロなものは販売していない。
テレビや雑誌でブレイクした寒天健康法にはまった友人が、寒天に黒蜜をかけて食べていたのを横から味見したら、おいしかった。
海藻が原料の寒天は低カロリーで植物繊維が豊富でと、成人病予防や改善だけでなくダイエットにも効果があるという。
私は痩せているのでダイエットとは無縁なのだが、そのときいただいた黒蜜の自然な甘さと、さっぱり味の寒天との調和が後味を引いて、これで健康にもいいならいうことないと、作るようになった。
黒蜜は「沖縄・波照間産の無添加黒砂糖から作るのがベスト」と言う友人に従って、去年那覇の国際公設市場で買い込んだ。
寒天を切って食べているうちに、ところ天のような形状にした方が、口あたりがよくてもっとおいしく感じるのではないかと思いだした。
かっぱ橋道具街入口を入って、最初の調理器具店で聞いてみる。
「ああ、天突きね。ありますよ」と、店員は店の奥にどんどん入っていく。
食器や鍋やらがこざっぱりと陳列されている店の入口と違って、奥に進むほどプロしか使わないのではと思えるような調理器具の倉庫状態。
その中に埋もれて、ところ天付きは、あった。
さすが道具街、1件目で発見だ。
ところ天状態にした方が、と思いつくまで忘れていたのだが、
大阪ではところ天は酢じょう油でなく黒蜜で食べる。
酢じょう油をかけると、料理の一品のようで、
東京に住むようになったとき、甘味処で酢じょう油のところ天があるのが不思議だった。
酢じょう油で摂取する方が健康にはよいかもしれないが、
今のところ健康より味覚優先で、寒天に黒蜜たっぷりで食べている。
果たして体にいいのか、わるいのか。
それでもところ天なら黒蜜だけでいただける。
これが寒天を四角く切って黒蜜を流し込むと、さらにハーゲンダッツのアイスクリームと小豆あんを入れたくなるので、それよりはいい。
でもキナコの味は後が引かなくて。黒蜜すごくおいしいよ。