頭のなかで延々と「贈る言葉」が繰り返されている状況でも、モグモグ隊の胃袋は休むことを知らない。胃酸過多で、放って置くと胃壁に穴が開いてしまいそうだった。
「次はこれで」
僕がリーダーをきな氏に差し出したのは、名古屋銘菓「ういろう」だった。
一瞬で包み紙を開け、口に放り込もうとするをきな氏を止める僕。
「ま、まってください。これは、見舞いの品なんです!」
そう、我々は今回やむなく不参加だったやはぎ氏の見舞いに行くことにしていた。バイクで転倒し足にチタン製の金属プレートを埋め込まれていたやはぎ氏。その除去手術を行なったばかりで、まだ病院から一歩も出られず、無駄にデカい図体が、ベッドの上で悶々としているに違いない。
見舞いがてら、ういろうを持って病室に乗り込み、喰い散らかして帰ってこようという、やさしい先輩&同期の企みなのだった。
地下鉄で数駅。やはぎ氏の入院している病棟に着いた。
とりあえず「看護師さんはいつ見てもいいですねえ。ゲヘゲヘ」と僕。
「いや、俺は事務員とかのコスプレが萌えるな」とをきな氏。
マニアックだった…。
やはぎ氏は病院のベッドで「ゴルゴ13」を読んでいた。ベッド横の机には、飲み干した炭酸飲料のペットボトルと、チップスターの空き箱が転がっていた。
「むう…。寝ているだけなのに、こんなに高カロリーを摂っているなんて…」
口に出しはしなかったが、やはぎ氏は、闇雲にカロリーを追い求めるモグモグ隊としての正しい入院ライフを送っているようだった。僕は安心した。
手術は無事終了したようで、得意げにチタンプレートを見せ付けるやはぎ氏。ホッチキスで肉とつなぎ合わせただけの傷口はグチャグチャで赤黒く、マグロの刺身を常温で数日放置しているような感じの状態だった。
「もう歩けるんじゃよ」
退院は明日だと言うやはぎ氏。ういろうをほおばり、手と口をネチャネチャさせながら、明日途中からの参戦を熱烈希望した。
「だいじょうぶなのか?」
をきな氏がリーダーとして心配するも、
「大丈夫ッス」と親指を突き出すやはぎ氏。
さすがモグモグ特攻隊長だ。足の肉が見えていても、胃袋を満たすためなら駆けつける。真のモグラー(造語)魂を見たような気がした。
明日再開の約束をして、僕とをきな氏は病院をあとにした。中途半端にういろうを食べたため、よけい空腹になってしまった。
「お腹すいたよ~」
をきな氏の機嫌がどんどん悪くなっていく。ヤバイ! 僕はとりあえずつなぎとして
「名古屋と言ったら『寿がきや』ですよね」と話題を振った。
「ああ、大阪にもあったからな。俺もよくお世話になった」
『寿がきや』とは、和風とんこつだしが効いたラーメンが1杯280円というリーズナブルな価格で人気の名古屋発のラーメンチェーン店(でも元々は甘味処)だ。名古屋人で食べたことのない人はまずいないだろう(断言してもいい!)。
「でもね、をきなさん。『スーパー寿がきや』ってのは行ったことないでしょ?」
「ブヒッ?」
「安いうまい早いで有名な寿がきやですが、高級なラーメンを出す店もあるんですよ」
「行こ、そこ、行こっ!」
ということで、一気に機嫌が直ったをきな氏と僕は、名古屋駅そばの寿がきやにいた。一般の寿がきやとは違い、木目調で高級感を出す外観。しかし中は吉野家のようなコ型カウンターだった。
ラーメンは「赤らーめん」「白らーめん」があり、どちらも500円以上する。一般の店の倍近い値段設定に我々は驚いた。しかし目の前に食べ物がある以上、我々は食べねばならない。それがモグモグの星の元に生まれた宿命。ユリアァァァァ!
僕は「白」を、をきな氏は「赤」をオーダー。
数分後に湯気ホクホクでやってきたその味は、限りなく普通のラーメンっぽかった。いいや、本当は違うかもしれない。僕の味覚が狂っているのかもしれない。モグモグ隊として失格の烙印を下されるかもしれないという恐怖感のまま、リーダーに「食べてみて」と差し出した。一口すすって、をきな氏、「フツーやね、これ」。
結論 寿がきやの白らーめんは、フツーのラーメンと同じ味(モグモグ隊調べ)
(つづく)
「次はこれで」
僕がリーダーをきな氏に差し出したのは、名古屋銘菓「ういろう」だった。
一瞬で包み紙を開け、口に放り込もうとするをきな氏を止める僕。
「ま、まってください。これは、見舞いの品なんです!」
そう、我々は今回やむなく不参加だったやはぎ氏の見舞いに行くことにしていた。バイクで転倒し足にチタン製の金属プレートを埋め込まれていたやはぎ氏。その除去手術を行なったばかりで、まだ病院から一歩も出られず、無駄にデカい図体が、ベッドの上で悶々としているに違いない。
見舞いがてら、ういろうを持って病室に乗り込み、喰い散らかして帰ってこようという、やさしい先輩&同期の企みなのだった。
地下鉄で数駅。やはぎ氏の入院している病棟に着いた。
とりあえず「看護師さんはいつ見てもいいですねえ。ゲヘゲヘ」と僕。
「いや、俺は事務員とかのコスプレが萌えるな」とをきな氏。
マニアックだった…。
やはぎ氏は病院のベッドで「ゴルゴ13」を読んでいた。ベッド横の机には、飲み干した炭酸飲料のペットボトルと、チップスターの空き箱が転がっていた。
「むう…。寝ているだけなのに、こんなに高カロリーを摂っているなんて…」
口に出しはしなかったが、やはぎ氏は、闇雲にカロリーを追い求めるモグモグ隊としての正しい入院ライフを送っているようだった。僕は安心した。
手術は無事終了したようで、得意げにチタンプレートを見せ付けるやはぎ氏。ホッチキスで肉とつなぎ合わせただけの傷口はグチャグチャで赤黒く、マグロの刺身を常温で数日放置しているような感じの状態だった。
「もう歩けるんじゃよ」
退院は明日だと言うやはぎ氏。ういろうをほおばり、手と口をネチャネチャさせながら、明日途中からの参戦を熱烈希望した。
「だいじょうぶなのか?」
をきな氏がリーダーとして心配するも、
「大丈夫ッス」と親指を突き出すやはぎ氏。
さすがモグモグ特攻隊長だ。足の肉が見えていても、胃袋を満たすためなら駆けつける。真のモグラー(造語)魂を見たような気がした。
明日再開の約束をして、僕とをきな氏は病院をあとにした。中途半端にういろうを食べたため、よけい空腹になってしまった。
「お腹すいたよ~」
をきな氏の機嫌がどんどん悪くなっていく。ヤバイ! 僕はとりあえずつなぎとして
「名古屋と言ったら『寿がきや』ですよね」と話題を振った。
「ああ、大阪にもあったからな。俺もよくお世話になった」
『寿がきや』とは、和風とんこつだしが効いたラーメンが1杯280円というリーズナブルな価格で人気の名古屋発のラーメンチェーン店(でも元々は甘味処)だ。名古屋人で食べたことのない人はまずいないだろう(断言してもいい!)。
「でもね、をきなさん。『スーパー寿がきや』ってのは行ったことないでしょ?」
「ブヒッ?」
「安いうまい早いで有名な寿がきやですが、高級なラーメンを出す店もあるんですよ」
「行こ、そこ、行こっ!」
ということで、一気に機嫌が直ったをきな氏と僕は、名古屋駅そばの寿がきやにいた。一般の寿がきやとは違い、木目調で高級感を出す外観。しかし中は吉野家のようなコ型カウンターだった。
ラーメンは「赤らーめん」「白らーめん」があり、どちらも500円以上する。一般の店の倍近い値段設定に我々は驚いた。しかし目の前に食べ物がある以上、我々は食べねばならない。それがモグモグの星の元に生まれた宿命。ユリアァァァァ!
僕は「白」を、をきな氏は「赤」をオーダー。
数分後に湯気ホクホクでやってきたその味は、限りなく普通のラーメンっぽかった。いいや、本当は違うかもしれない。僕の味覚が狂っているのかもしれない。モグモグ隊として失格の烙印を下されるかもしれないという恐怖感のまま、リーダーに「食べてみて」と差し出した。一口すすって、をきな氏、「フツーやね、これ」。
結論 寿がきやの白らーめんは、フツーのラーメンと同じ味(モグモグ隊調べ)
(つづく)
にいや氏の描かれている私の状態はおおむね間違っちゃいませんが、なんだかスゲーやな感じッス。
でもまあいーや。
名古屋遠征のすべてが完成したので、アップしました。
とくとご覧あれ。