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香港独言独語

長らく続く香港通い。自分と香港とのあれやこれやを思いつくままに語ってみる。

それでいーのだ

2009-08-21 14:25:02 | Weblog
この前いちびって大阪弁で書いてみた。というのも、香港の友人たちとの会話を訳すたびに、どうもしっくりこない感じがあったからだ。つまり大阪弁を無理矢理東京弁にしているみたいな感じと言ったらいいだろうか。ちょっとすっきり過ぎるというか、広東語独特の臭いや味が出てこない。

それで、ふと、ひとつ広東語は大阪弁にしてみたらどうだろうか、という考えがぽっと浮かんだ。あのしゃべりまくりの迫力は実際大阪弁こそ似つかわしい。それに広東語は上海語と並び中国の強力な方言だ。

実は辛亥革命の後「国語」を何にしようかという議論があり、最後は表決となって、わずか1票の差で北京語に破れたという説もあるくらいだ。第一、孫文だって広東省出身者なのだ。まかり間違えば、今の中国語の標準語は広東語だったかもしれないのである。

そこで、いちど練習してみようかとやってみた次第だ。ちょっとお遊びが過ぎた感がなきにしもあらずだが。

ブログを休んで、多分約1年。まぁ、マンネリというか、新ネタなどもそうそうないわけで、ちょっと休んでみたらあっという間にこんなに時間がたってしまった。第一、最初はあんなに長く続けるつもりはなかったし。

で、また閑に任せて書いてみようと思うが、今後は気楽に気の向くまま、香港と関係ないことも書いてみたい。だから、多分香港好きの人には「羊頭をかかげて狗肉を売る」じゃないが、看板と違うじゃん、とそっぽを向かれることになりそうだ。

しかし面倒くさがりだから、これからまた新しいブログを立ち上げるほどのフットワークはない。この看板のまま続けさせてもらいます。

でもねえ、無料なんですから文句言うんじゃないの、と言う権利もこっちにもあるんじゃないですか。

それにしても元々極少数の人しか訪れないブログなのに、ずっと途切れなくその極少数の訪問者がこのお休み中の1年間続いていたのはなぜなんだろうか。たまにチェックしてみても訪問者0というのはほんとにまれにしかなかった。

それともあれですか、自動的にブログの更新をチェックする機能のソフトか何かあって、それでそのソフトが勝手にやってきて足跡を残し、それがカウントされているのであって、実際は読まれたわけではない、と。それなら合点がいくなぁ。

けど、それじゃ毎日同じカウント数でないとおかしくないか。いや、よくわからんが、まぁどうでもいい話ではあるな。書きたければ書き、書きたくなければ書かない。読みたくない人は読まなければいい。それだけのことである。

それでいいじゃありませんか。赤塚不二夫風に言えば、

「それでいーのだ」


ジョゼと虎と魚たち(4)

2009-08-13 16:26:52 | Weblog
旅行から帰って数ヶ月して二人は別れよる。「最後は案外あっさりしたものだった」とは恒夫の言葉や。そやけど、がらんとなった家の上がり框で靴を履いとる恒夫の背後で、餞別やゆうてエロ本を渡した後、視線を落として黙って坐っとるジョゼの姿は寂しさの塊やったな。「案外あっさりしたもの」なんちゅうんは恒夫のエゴから出た言葉にすぎんやろ。

これまた家を出てからの恒夫の独白やが、「別れの理由は、まあいろいろ、てことになってる。でも本当はひとつだ。僕が逃げた」

そうやね、ようわかっとるやん、と言いたいところやが、で、一体お前は何から逃げたんや、ほんまにわかっとんのか。そう言うことで、僕正直でしょ、偉いでしょ、ゆう自己満足ゆうか自分を正当化したかっただけ違うんか。

空は快晴、恒夫が歩いてくると、橋の上で香苗が待っとる。

お互い恋人同士の雰囲気で二人は肩を並べて歩いていくんやが、しばらくして恒夫が突然立ち止まって泣き始めよる。とうとうしゃがみこんでガードレールにつかまって泣きじゃくり続ける。香苗はどうしてええかわからんとただ後ろに立ちすくむだけや。

1回目見た時、正直ゆうて、おっちゃんもぐっときました、この場面。けど、レンタルDVDやから、池脇の演技見たさにあちこち何回も見てたら、これおかしいんちゃうん、となってきよった。

そやろ?ジョゼと別れるその日にぬけぬけと香苗を待たせて会う段取りつけとるような厚かましい男が泣くかあ?泣けへん泣けへん。別れる前にちゃっかり乗り換えて次の準備しとくようなやつやぞ、こいつは。それにジョゼがしばかれても怒りもせんほど情の薄いやつやぞ、こいつは。泣くわけあらへん。

監督及び脚本家の先生方は、ここはつかみどころや思て、妻夫木君泣かせたら、きっと観客の涙しぼれますよお、ちゅう計算でやったんが見え見えやで。ま、おっちゃんも一発目は引っかかったけどな。面目ない。そやけど、半世紀以上生きとったら、多少人を見る目も肥えますがな。こうゆうええ加減な男は泣きませんって。

まぁ、それもこれもジョゼと恒夫の関係の描写不足が原因やと言わざるをえんなぁ。この映画で見る限り恒夫はそうゆう男にしか見えへんねんから。

それに香苗と恒夫、この二人も長いこと続かんわな、絶対。

次のシーンはジョゼが電動車椅子に乗って歩道をぶんぶん走ってる場面や。自転車にどんどん抜かれるけど、それでもどう見ても時速10キロは出とるんちゃうか。

日本の規則やったら電動車椅子は最高速度6キロまでしか出んようなってるはずや。DVDの裏音声で聞いたらあれはアメリカ製で30キロまで出るらしい。ま、アメリカ広いから時速6キロやったらまどろっこしいて、家に帰るまでに日が暮れるわな。

けど、この速さについては突っ込みを入れる気はないな。あれでええ思うよ。これは一種のロードムービーや思う。ジョゼはもう誰の手を借りんでも動けるようになったわけや。このシーンはジョゼの成長のひとつの象徴や。それならスピード違反は映画制作上の反則にはならん思うわ。

ラストはジョゼが一人で台所で魚のサワラを焼いてる静かなシーンや。焼き終えて、皿に盛って、例のごとくどすんっと飛び降りてジョゼの姿が画面から消える。手だけが伸びて皿取って、ずるずるといざって行くところで終わるが、その姿は見えへん。ただ、流しのステンレスの細い枠に微かにその影が映るだけや。

けどなぁ、おっちゃんこの終わり方は気に入らんなぁ。これやったら、ジョゼがラブホで言うてたみたいに迷子の貝殻になって海の底をころがってるみたいに見えるがな。映画通はこの方が好みやろうけど、一般大衆としては、何か救いがないような気にさせられるちゅうか、寂しすぎるわ。

おっちゃんならこの2シーンを入れ替えるな。

まず、魚を焼いたジョゼがいざってちゃぶ台へ持って行き、ひとりぼっちで食べ始める。ふと箸を止めた時、壁際に4、5冊積まれた本が目に入る。

「あ、そや、図書館に本返しに行かなあかんわ」

何しろジョゼにはもう電動車椅子ちゅう強力な武器があるんや、どこなと行けるがな。公立図書館はバリアフリーやし、新本どころか「絶版」になった本かてある。もちろんサガンのもほとんどあるはずや。もう誰にも本を拾うて来てもらう必要はない。自分で手に入れられるようになったんやからな。

ラストは本を入れた手提げの布バッグを膝の上に乗せ、バッグの取っ手を首にかけて電動車椅子を走らせるジョゼのシーンで、できたらジョゼが日の光に目を細めて、微かに笑みを浮かべてる表情にしたいなぁ。ほんまにわかるかわからへん程度の微かな笑み。池脇千鶴ならできるやろ。

そんなラストは甘っちょろすぎる、と通は言うかもしれん。けど、甘っちょろい、ゆうたらあの恒夫が泣き崩れるシーンはどうやねん。あのおセンチなシーンは甘っちょろ過ぎへんのか。あんなお涙ちょうだい的なシーン入れたくせに、こっちのラストが甘っちょろいちゅうのは通らんで。

それに、あの最後に部屋の中をいざっとるジョゼの場面ゆうたら、監督は凝ったつもりかも知れんが、日本映画としてはありきたりゆうか旧式やわ。ああまたこれか、ゆう感じや。小津安二郎風の世界かいな、あまり新鮮味ないわ。ここは正面からどーんとハッピーエンド風にかましたってもええやんか。

そうでないと、冒頭の恒夫がジョゼとの海への旅行の写真を「すっげえ懐かしいな」言いながら説明しとる場面と割が合わん感じがする。

説明しとる恒夫の声にはほんまに屈託がない。「これってもう何年前だっけ」ちゅう言葉から感じられるんは、ジョゼとのことは単なる過ぎ去った青春の1ページになってしもたちゅうことや。

それはかまわん。そやけど、お互いにとって別れたことがえかったにしても悪かったにしても、それからお互いが今は幸せか不幸せかはわからんにせよ、それは二人が別々の人生をそれぞれ自分で歩いとるゆうこっちゃ。

恒夫にとってジョゼとのことが単なる思い出に過ぎんのやったら、ジョゼかて恒夫抜きで自分の人生を自分の「脚」で歩いとるんや、と表現すべきちゃうか。違うのは、ジョゼは恒夫との思い出を一生大事に抱えて生きていくんやろうな、ちゅうことや。そう思たから、ラストが気に入らんかったわけや。

と、まぁ色々突っ込んだわけやけど、それでもええ映画やと思うよ。突っ込みどころのない映画なんかあらへんもんな。特にこれは池脇千鶴にとって代表作のひとつになるんやないやろか。日頃テレビドラマ見いへんし、ずっと邦画は見てなかったから池脇があそこまで演技できるとは知らんかった。あの演技見るだけでも値打ちがあるで。

蒼井優がどこぞで言うとった、自分は主役を張れるような美人じゃない、だからバイプレーヤーとして欠かせない役者をめざそうと思った、てな。池脇もそうやろ。童顔で可愛いけど、顔で主役を張れる美形やない。けど二人は主役や準主役であちこち出とる。両者とも演技力でそれを勝ち取ったわけや。

「音符と昆布」の監督が、これもDVDの中で、池脇さんはこちらが1要求すると、これもあります、あれもありますって、10出してきますから、いや、100持ってますからねえ、とか言うとったで。

役者はやっぱり演技力やなぁ。おっちゃんつくづくそう思いました。あ、それから4人の女の物語の「ストロベリーショートケイクス」の池脇もええよ。冒頭の場面で男にふられて、パジャマ姿で泣きながら男の脚にしがみついて商店街の路上を引きずられるシーン。見ものや。この映画のタイトルでも池脇の名前が最初に出てた。確固たる地位を築いたんやねえ。

ただなぁ、他のレビューでも不評やったがセリフの音声が低うてな。ボリューム最大にせなならんのと、それから池脇のやないけど、R15で少々ハードなエッチシーンがちょこっと出てきますんで、そんなん嫌いゆう潔癖症な人にはむきまへんが。もっとも今日びそんな純情な人も珍しい思うけど、老婆心ながら言うときます。


あ~、長かったねえ。最後まで読んだ人、お疲れさんでした。あんたらも物好きやなあ。その忍耐力を仕事か勉強の方に向けた方が有意義ちゃうかと余計な心配してまうけどな、と憎まれ口をたたいたところで、おしまい。


ジョゼと虎と魚たち(3)

2009-08-12 19:17:58 | Weblog
それから二人はヤンキーの暴走族仕様のメタルブルーの車で恒夫の実家へ向けて走るんやが、恒夫と弟の方言からみると実家は九州ちゅう設定やろな。距離が進むにつれて段々恒夫の機嫌が悪うなってくる。こいつ根性なしやから、実家に行くのを止めるとも自分からはよう言わんし、かゆうてほんまに実家に行くのも恐い。生煮えな坊ややで。

とうとう、トイレ休憩でジョゼが障害者用のトイレに入っとる隙に、先に実家に帰っとる弟に電話して、仕事のせいで帰られんようなったゆう連絡を入れよった。弟は結構ええやつで、わかった、親にはそう伝えとく言うてから、最後にずばり言いよる。「兄ちゃん、ひるんどると?」

弟も兄貴の性格を見抜いとるね。恒夫はあ然として電話を切りよった。図星やったからな。

弟のアルバイト先をたずねた時、弟は言いよったがな、「障害者の彼女なんて感動的やん、うちの親ぜったいそうゆうの好きと思うよ」それに、「俺も応援するけん」とも言うたな。

もちろん、実際に下半身不随の彼女を連れて帰ったら、大抵の親は引くやろ。結婚反対する可能性も大やわな。けど、少なくともや、この会話から見る限り、親も頭から大反対にきまっとるわ、何考えとんねんとか、弟が、俺は障害者の親戚なんかまっぴらや言うとか、それほどまではハードルは高うはない。とりあえずの前提条件としてはハードルは低い方やろ。

要するに問題は恒夫ちゅう人間にあるな。恒夫にとってジョゼは何やったんや。香苗はしばきに来た時にジョゼにこう言うた。ジョゼは俺が傍にいてやらんとあかんねん、とかゆうてたけど、あの人そんなご立派な人ちゃうよ。香苗ですらそう言うたぐらいや。

恒夫にとってジョゼはペットみたいなもんやったんやないか。「百万円と苦虫女」に蒼井優扮する鈴子が、雨の道端でミャーミャー鳴いとる子猫を拾うてやる場面があったんやが、あれと同じで可愛ゆうて可哀相やから成り行きで拾うた。

そいでもって一年もしたらもう厭てきた。ジョゼの身体にも、ジョゼのがさつな言葉遣いにも、身障者とのじゃまくさい生活にも、俺っていい人みたいちゅうような自己満足も、最初は新鮮やったもんが現実生活の中で時間につれてその内消えてまう。そこへ未練たらたらの香苗が現れよった。グッドタイミング、途端に目移りしてしもた。そうゆうことやろ。

妻夫木君そんな人ちゃう、やて?いやまぁ恒夫の話やがな。(ほんまのところ妻夫木も結構そんなんちゃうんか?知らんけど)ほんまに好きやったら、ジョゼと続くはずや。ジョゼは料理もできる。家の中やったらほとんど自分の力で移動もできる。ましてや、日本はアジアやったらトップレベルの福祉国家や、ジョゼなら一級障害でいろんな面で援助もあるやろうから、経済面でも生活面でも、その気があったら、どないとでもなるで。

現に障害者と結婚する人、ここ最近は別に珍しゅうも何ともなくなっとるわ。そら、各方面からの反対はありはするやろうけど。それでもそれを乗り越えて結婚しとるがな。

知り合いの息子さんが、大学生時代全身が麻痺しとる女の子をボランティアで世話しとるうちに恋愛関係になって結婚した、ゆうて老姑婆かて言うとったで。

親は無論反対や。ところが、その息子さんの親父さんは学校の校長で、日頃から差別反対やの弱者に優しくやの建前言うとる立場上あからさまには反対でけへん。けど、家の中では色々あったやろ、それでも初志貫徹、めでたくゴールインしたそうや。

それに較べて、恒夫はなーんも障害にぶつかったり、ジョゼのせいで辛い目におうたり、闘うたりはしとらへん。要するに恒夫君には本当の愛情はありませんでした、ちゅうことやね。可愛ゆうて可哀相な野良猫をペットにして最初は可愛かったが、そろそろ煩わしゅうなった。そうゆうところやろ。

おっちゃんがそう思うんは、恒夫がなんで香苗をふってまでジョゼと同棲したんか、ジョゼのどこにそこまで恒夫を魅きつけるもんがあったんかが十分伝わってこんからや。ジョゼはどうも単に庇護される対象としか描かれてないようにしか見えん。実際のジョゼはそんなもろい人間やないのに。

最初ジョゼの家に行き始めたのも、なんや興味本位やったみたいにしか思われへん。自分と違う世界をのぞいてみたいちゅう感じちゅうかな。恒夫はジョゼのことは理解でけへんかったし、しようともせなんだ、と思う。恒夫が見たのはジョゼの表層だけや。しゃーけど、ジョゼは何もかもわかっとった。

トイレから出て車に乗った時、カーナビが「目的地まで140キロです」言うた途端、ジョゼはカーナビのスイッチを切った。それから言いよった、「海へ行け。うちは海が見となった」

もうええやん。無理しいなや、お芝居はこのくらいにしとこ。これまでにもう十分ええ目見させてもろたから、この辺で勘弁したるわ。まぁ、セリフにはないけどそんな心境やったんやろ。

そやからやろ、海辺のシーンの後、夜になって、ジョゼは「海の館」ゆうラブホに泊まりたい言い出し、ごほうびに世界で一番エッチなことさせたげるわ、言うた。

さて、その後や、ことを終えて、二人が貝殻型のベッドに横になって、恒夫が照明をいじくると、部屋が青い光に包まれて、それをバックに色んな魚の形をした照明の模様が部屋中をぐるぐる回り始める。それは海の底にいるみたいや。

半身を起こして、それに見とれながらジョゼは言うんやな。うちは風も雨も音も光もない、時間だけがゆっくり過ぎていくしーんとした深い海の底から、あんたとこの世で一番エッチなことするために泳いで来たんや。うちはもう二度とあの場所には戻られへんねやろ。

恒夫は、あまり気ぃ入れて聞いてへんゆうか、ジョゼの心を理解してやろうゆう気配がない。どころか途中ですこーんと寝込んでしもた。そこに二人の埋め難い落差が見えてジョゼの孤独さが浮かび上がる。

それでも自分に言い聞かせるみたいにジョゼは続けるんや。いつかあんたがおらんようになったら、迷子の貝殻みたいにひとりぼっちで海の底をころころころころ転がり続けることになるんやろ。

それから寝入っとる恒夫にジョゼは添い寝して目をつぶって言う。「まあ、それもまた良し、や」

そうやな、すべて覚悟しとったことや。恒夫のおかげで、好きな男ができたら一緒に見に行きたい思てた動物園のすごい恐い虎も見れたし、海にも行けた。残念ながら水族館は休館日やったけど。それなりにええ夢見させてもろた。なーんも恨む必要はない。

ジョゼ、強いなぁ。おっちゃんなんかこの年になっても、まだふんぎりの悪さで迷うことばっかりやがな。

ジョゼと虎と魚たち(2)

2009-08-11 15:00:30 | Weblog
その後香苗と付き合いつつも、恒夫がジョゼが気になって沈んだ的表情をする、みたいなシーンもちょこっとはあるが、恒夫はおばあに拒絶宣告を受けた以後はジョゼの家に行ってなかった。それが就職活動中にバリアフリー工事の会社の社員からおばあが死んだゆう話聞いて、慌ててジョゼの家へ行った。

で、中に入ってからやけど、ここでおっちゃんががつんと池脇千鶴に参ったせりふが出てくるんやね。

ジョゼがお茶を入れるシーン。恒夫が「ご飯とかちゃんと食べてるの」と聞くと、ジョゼがちょっと鼻でせせら笑うみたいに低い声で言うんや。

「・・・食べてるわな、そら」

うはっ、ほんまにほんまもんの大阪弁やがな。またその言い方がうまい。なんちゅうあほなこと聞くねん、ほかに心配することないんかい、みたいな語感が低周波でじわわ~っと滲み出とる。池脇すごいわ。自分はこのセリフで池脇千鶴に撃墜されたであります。

まあほとんどの人にはどっちゅうことないセリフで、そのまんま聞き流されるんやろうけど、あのトーン出すには相当な演技力要るで。ただ単に大阪人やからゆうてできるもんやない。

妻夫木なんか、単にイケメンだけで、ここまでの芸はないわな。道はるか遠しや、と俺は思うが、あいつは演技派なんか、それともアイドルか。どう見ても演技がテレビレベルにしか見えん。ありそうな演技しかしてへんもん。これでなんか主演男優賞もろたらしいが、審査員もええかげんな仕事しよんなぁ。

この後のシーンがこの映画のクライマックスやけど、そこはもうとばしとく。結論はその場で二人ができてまう、ちゅうことです。そいでもってジョゼが香苗を駆逐する結果になり、二人は同棲を始めるわけやが、ここがこの男の問題や。

香苗ともやりいの、ジョゼともやりいの、その前はセフレともやりいので、お前は盛りのついた犬か猫か。(まぁ、この年代が発情中なんは自然なことやが)

特にジョゼみたいな特殊な状況の女の子とやるには最低限の覚悟っちゅうもんが要るやろ。ジョゼは真剣やったが、どうもこの男は成り行きでなだれこんだゆうのがほんまのとこやないか、と思えてならん。

ジョゼとしては自分に対して「壊れもん」なんちゅうひどい言い方するけど、長年そばにおって守ってくれたおばあが死んだ孤独感に打ちのめされとるわ。そこへ好きやった男が来てくれたら、こらもう落ちるしかないわな。このあたりのジョゼの切なさと辛さを、池脇もうエンジン全開でやっとります。妻夫木君それに乗っかっとるだけにしか見えへんよ。

で、場面は一気に一年後に移動。恒夫は就職して営業中に路上でタバコのキャンギャルやっとる香苗にばったり会うんやが、その後で即喫茶店行きとなる。どないやちゅうねん、お前は。すぐいそいそ誘いよってからに。

そいで、香苗が以前ジョゼをしばいた(標準語で言うと「ひっぱたいた」か)ことを話すんやが、ジョゼはそれを恒夫には言うとらん。ジョゼは恒夫にいいつけるようなやわい人間やないちゅうことや。

乳母車を近所の女の子に押させながら散歩しとるとこへ香苗が出現して、「正直あんたのその武器(つまり脚が不自由なことや)がうらやましいわ」と福祉を勉強しとる学生とは思えんえげつないことを言いよるんやが、ジョゼも負けるような女やない。

悠然と、「ほなら、あんたも脚切ってもろたらええやん」。それで頭きよってジョゼのほっぺたをはたきよった。ジョゼがゆっくり手を挙げると、香苗はなんやねんと顔を近づけよる。そこをジョゼもばちんっとしばき返した。もう一回香苗がしばくと、ジョゼは今度も平然ちゅうか無表情に手を上げる。そしたら香苗は後ずさりしながら去っていきよった。ジョゼ一発損してもたがな。

香苗は「障害者のくせして私の彼氏奪うなんて許されへんかってんもん」、それどころか、殺したりたい思たわ、とまで言いよる。障害者に負けてプライドがずたずたにされたんが悔しかったわけや。

しかしや、この香苗の告白を恒夫は黙って聞いとるわけや。ここがおかしいっちゅうねん。普通怒るか最低でも説教ぐらいするやろ。足腰立たん障害者で、しかも自分の女にそんなことする根性悪の女やぞこいつは。この男にはほんまの情ちゅうもんがないな。

そしたら今度は香苗ちゃん落涙作戦開始や。そんなことあったから何もかもどうでもようなって、就職もせんとバイト暮らしで、「こんな格好、いちばん見られとうない人に見られてしもたわ。恒夫君なんであんなとこ通るん」上野樹里もその後の片鱗を表しとるね、ここの台詞回しでは。この時まだ17やったんやと。

すると恒夫はさも嬉しそうに、いや結構可愛かった、だから吸わないのにもらっちゃった、ゆうてにやけながらタバコを見せて、二人で楽しげに笑い声を上げよる。この時恒夫の頭からはジョゼのことは消えとるわな。恒夫君も乗換準備良しの態勢に入ったのは明らかや。場面には出んけど、もう次に会う約束なんかもしとるはずやで。ほんまええ気なもんやで。

それに較べて、子供の頃ジョゼと一緒に施設を脱走したヤンキーのコウジの方がよっぽど性根は純やろう。恒夫がジョゼをつれて実家の法事に帰ることになっとって、ヤンキーから暴走族仕様の車を借りることになり、その鍵を持ってくるんやが、このヤンキーは実はジョゼにホの字や。そやから、悪態ばっかりつく凶暴なやつのくせしてジョゼには結局は頭が上がらん。

どうせ毎日やりまくっとんやろ、今さら結婚なんかせんでもええやんけ、ちゅうてわめきよる。あれは一種必死の説得やね。結婚されたらもう手のとどかんとこへ行ってまうんやないか、それだけは勘弁して欲しいちゅうとこやな。

ジョゼは恒夫が持って帰ったタバコをくわえて、「結婚?」ゆうてちょっとだけ間をおく、それからだるそうな口調で答えるわけや、「あほか、そんなもんあるわけないがな」

毎日やりまくって、そんで親のとこ行くゆうたら結婚やろ、とまあヤンキーはしつこい。ジョゼはたばこを煙突みたいに真上に向けてくわえたまま、ヤンキーに背を向けるんや。「ガキの話はあほらしゅうて聞いとられへん」

ここらの池脇の演技にも唸らされますで。しゃーあけど、東大阪あたりの柄の悪さが存分に出とるところはかつての市民として忸怩たるもんもあったりするけどな。

それでもや、この凶暴なヤンキーも、自分の愛車に八つ当たりして、蹴り入れまくるぐらいで、香苗がやったみたいにジョゼを取った恒夫をぼこぼこにいてこましたりなんかせえへん。それが筋違いなことぐらいわきまえとる。香苗や恒夫みたいな半端な奴らと違うて、よっぽどまともやな。ジョゼが他の男と毎日やりまくっとっても、それでもジョゼの頼みを聞いたるぐらいやから、考えてみたらこいつの懐も相当深いわ。

それに、ジョゼももう全部わかっててんな、二人の生活がいつまでも続くわけがないことが。恒夫がどうゆう人間かも一緒に暮らしとったら、そらわかってくるやろ。そやから、結婚なんかあるわけない、この男はいつか自分のとこから逃げていく、ちゅうのは承知の上や。ただ、それでもええ、それまでは、精一杯夢見とこう、思っとったんちゃうかな。


ジョゼと虎と魚たち(1)

2009-08-10 11:14:49 | Weblog
去年の夏以後香港へ行っていない。クリスマスに行く予定だったが、事情があってそれも取りやめになった。で、ちょっと香港ネタが思いつかない。仕方ないから、最近見たDVDの映画について、いちびって大阪弁で書いてみることにした。まぁお遊びであるからして、香港ネタにしか興味ない人には読むのをお薦めしない。

その映画の題名は「ジョゼと虎と魚たち」で、原作は田辺聖子だ。しかし、もちろんと言うべきか、原作とは大幅に違う。再度言っておきますが、大阪弁で書いているので読みにくい可能性大である。できたら読むのを止めておいた方が無難な気がするので、読む人は覚悟の上でどうぞ。ということで始まり始まり。


「ジョゼと虎と魚たち」

見とるうちに、池脇千鶴の演技力に腰が砕けてもたわ。あんまり大阪弁が達者やからプロフィール見たら、1981年大阪府東大阪市生まれ、府立玉川高校中退。うあっ、おっちゃんも東大阪に住んでたことあるし、どっかですれ違うたかもしれんやん。
 
ストーリーは池脇千鶴演じる両脚が不自由なジョゼとひょんなことから知り合うた妻夫木聡演じる大学生の恒夫との出会いと別れちゅうことやね、簡単に言うと。簡単すぎるか。

おばあが障害者の孫がいることで、世間をはばかって、乳母車で早朝だけジョゼを外出させてるんやが、そこでちょっとした事件をきっかけに恒夫はジョゼの家に通うようになる、と。

そいで、この妻夫木、もとい恒夫が女に弱いちゅうか、好きちゅうか、男と別れて次彼物色中の上野樹里演じる香苗と急接近しつつも、セフレとも寝たりちゅう半端な奴やねん。ま、男としては理解できんでもありません。おっちゃんは二股無理やけどね。いや、潔癖やのうて視野が狭いもんやから、一回に一人しか視界に入らへんだけ。はい、私の血液型はB型です。

ジョゼは料理はうまいが口はがさつや。将来典型的な大阪のおばちゃん候補ナンバーワンタイプ。いや、もうすでに口は立派に大阪のおばちゃんやな。それでおばあが拾うてきてくれた山と積まれた本を繰り返し巻き返し読んで、一日中家の中で暮らしとる。エロ雑誌から学校の教科書から、英語で書かれた旅行ガイドブックみたいのまで、まぁ全方位読書。

せやけど、中にフランソワーズ・サガンの小説があって、自分をジョゼと名付けたんはその中の登場人物の名前をとったわけで、お気に入りの小説なんやね、これが。

そこへ恒夫がおばあに役所にバリアフリーを申請するようもちかけるんやが、その際福祉関係の勉強をしとる同じ大学の香苗にも相談にのってもろうて、こいつがまた次彼獲得作戦中の香苗にもせまるわけや。

香苗としては、恒夫君もうじきうちのもん、となるわな、そら。だから今日はキスまでよ。う~ん、なかなかの戦略家やね、と言いたいが、まぁ女がよう使う手やしね、じらし戦法。

そいでや、工事の日香苗も勉強のためと称して、呼びもせんのに押しかけて来よる。ジョゼの定位置は押入れの中で、そこで寝て本を読んでるわけやが、香苗が挨拶すると、じろっとにらんで押入れを閉めてまう。これは、うちは見世物ちゃうで、ばかりやのうて、恒夫に好意を持ってるもんで、頭にがちんがちん来とる状態からくる完璧な敵意表明やな。

中で本を広げとるが、ふすま越しに二人の話し声が聞こえてくる。ジョゼは脚が動かへんから、椅子から降りる時どんっと尻から飛び降りる。そんな自分の障害を肴に話をしとる。しかも自分の好きな人と。

「ああ、あちこちからダイブしはるねんてね、私もいっぺん見てみたいな」ちゅうような無神経な香苗の言葉が、耳に入ってくるし、本を読むどころやない。外の声に耳をすませながら怒りを含めた表情でジョゼはじっと前をにらんだまま硬直状態を維持。

この男もいかんよなぁ。その日香苗が来る前に、ジョゼとちょっと手が振れた時、ジョゼがびくっと引っ込めたのに、自分からまた手を伸ばして握ってまうんやで。握られたジョゼがここではっきりと男性としての恒夫を意識するシーンや。けど問題は、恒夫の真剣さ加減や。どうも手をもてあそんどる感じが拭えん。

せやけどジョゼは真剣になってもた。罪作りちゅうか、いかんねぇ、軽い男は。その軽さがリアルなとこやねん、というご意見もあったが。ほんまにそやろか。今の若い男はみなこないに下半身方面がゆるいちゅうか、女の子に気軽にてれてれするんが普通なんかいや。おっちゃんにはよーわからん。まぁ、できちゃった婚が当たり前の世の中やからなぁ。そうなんやろなぁ。

そいでもって、数日後、雨の日に恒夫はたこ焼き買うてジョゼの家を訪れるんやが、窓の外から声をかけたら、ジョゼが窓へ本をぼんぼん投げつけてきよる。怒りの拒絶行動。そやからおばあからももう二度と来んといてくれ、と最後通牒を突きつけられるんやが、このお婆さん役がまたええ味出してんねん。

新屋英子さん。70を超えてるそうで、しかも関東の人らしいけど、大阪に来て大阪のばあさん相手に練習したゆう話やが、すごい役者やなぁ。もう、まんま大阪のばばあやったわ。

さて、香苗の方はめでたく作戦大成功。今度はベッドシーンでも香苗から積極攻撃。恒夫撃沈。