多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

文科省:国際教育

2005年12月05日 | Weblog
文部科学省が2004年8月に設置した「初等中等教育における国際教育推進検討会」が2005年8月に報告書「国際社会を生きる人材を育成するために」を提出している。

検討会設置の趣旨は以下のように示されている。「これまで海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育、国際理解教育といった、初等中等教育における国際教育は各分野毎に推進されてきており、各分野で養成された人材、蓄積されたアプローチなどは必ずしも有効活用されていなかった。また海外子女の現地校指向の高まりなど国際教育をめぐる情勢も変化してきている。このため、このような新たな情勢変化に対応した施策の充実を図るとともに、これら教育分野の有機的連携を図るなど、初等中等教育における国際教育の推進の在り方について総合的な観点から検討し、今後とるべき具体的な方策を打ち出す。」

私がこの報告書の中で特に評価したいのは、以下の三点である。

まず、これまで、国際理解教育と外国人児童生徒教育がまったく別個な教育活動として取り組まれることが多かったが、多文化共生の観点に立てば、両者を関連づけることが重要である。この報告書では両者を包摂して総合的に国際教育を推進しようといている点が重要である。

次に、文科省が新しい学習指導要領で推進してきた「国際理解教育」に対する批判的観点が含まれている点である。「英語活動を実施することがすなわち国際理解であるという考え方が広がっていたり、国際理解に関する活動が単なる体験や交流に終わってしまうなど、以前に比べ内容的に薄まっている、矮小化されている」といった指摘がなされている。

さらに、「国際関係や異文化を単に理解するだけでなく、国際社会の一員としての責任を自覚し、・・・個人が相互理解に基づく多文化共生という視点をもち、国家の枠組みを超えた国際社会の一員として自己を確立し、発信を行い、主体的に行動できる人材」が求められていると強調し、多文化共生の観点を明示している点である。

以上のような既存の「国際理解教育」への批判的観点に立っているためか、報告書全体で、これまでならば「国際理解教育」と言っていたところを「国際教育」と呼んで、「国際理解教育」は本文中、一度も使用されていない。

私は以前(「国際理解教育を超えて」2005年7月)にも述べたように、「国際理解教育」の使用する代わりに、多文化共生教育と地球市民教育を用いることを提案したい。