引き続き種子の散布についてのお話です。
今回は、動物を利用して種子を散布する「動物散布」について。
動物散布を簡単に分類すると、
①哺乳類による種子散布
例:ネズミがドングリを冬の食料として貯蔵するため、巣穴に運ぶ。
②鳥による種子散布
例:鳥が果実を食べて、中にある種子を糞とともに散布する。
と、なります。
今回は、鳥による種子散布に絞って話したいと思います。
鳥は果肉質が多い木の実を好みます。
鳥が好む木の実のほとんどが「液果(えきか)」で、液果とは果皮が多肉で水分が多い果実を指します。
ちなみに、果皮が乾いていて、多肉でない果実を「乾果(かんか)」と言います。
果実のほとんどがこの液果に分類されます。
(オオウラジロノキ)
さて、木の実を食べた鳥は、中にある種子を糞とともに排出し、その場所で種子は発芽するわけですが、鳥は糞をするときに、必ず、木の枝など何かに止まらないと糞をすることはできません。
(ヒヨドリ)
シカのように、食べながら、歩きながら、ポロポロと糞をすることはできません。
なので、鳥散布の種子は、必然的に木の下に種子を散布されるということです。
タブノキなどの陰樹の場合は、木の下に種子を運びたいので、鳥散布が最適だと考えられます。
では、日当たりの良い場所を好む陽樹の場合は、鳥散布に向いていないのかというと、そうではありません。
例えば、陽樹であるミズキやクマノミズキも、種子を鳥に散布させます(ツキノワグマが食べる木の実でもあります。)
ミズキやクマノミズキの種子は、発芽せずに土中で眠る「休眠能力」を備えています。
木の下に散布された種子は、上層木が鬱蒼としていて、地面に光が当たらない環境では発芽せず、休眠します。
そして、上層木が倒れる・伐採されるなど地上に光が当たるという発芽に適した環境に変わった時、土中で休眠していた種子が発芽します。
陽樹は、高い休眠能力を備えることで、日当たりの良い環境になるまで待つという戦略で、日陰という悪環境に対応していると思います。
このように発芽できる環境になるまで土中で休眠する種子を埋土種子といい、天然下種更新を行う重要な1つの要素でもあります。
ちなみに、ミズキやクマノミズキは、日当たりを好むといっても、アカマツのような乾燥した場所ではなく、日当たりの良い谷筋を好みます。
このように液果の樹木をはじめ、鳥散布種子の樹木は、「木の下で種子が散布される」傾向があると考えられますので、上層木がない環境では、自然にミズキやヤマザクラなどの樹木が生えてくる可能性が低くなるとも言えます。
なので、多様な樹木を自然に生やすためには、鳥が排泄するための上層木もある程度、残すことが重要であると考えられます。
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