おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

文科相がスケート発言を謝罪

2006-03-06 23:57:33 | 迷言・妄言
 栄光の絶頂にある人を突き落とす効果的な言葉はなんだろう。お前の金メダルなんて誰でも取れる、というのは単に悔し紛れとしか思われないので打撃にならない。我らが文部大臣(正式名称で呼ぶほどの値打ちはない)がそのヒントを与えてくれた。「お前の優勝はライバルがしくじったからに過ぎない」と本人の目の前で言ったのである。

 <小坂文科相は、2月28日夜に荒川選手が同省大臣室を訪れた際の懇談で、競技の最後に演技をしたスルツカヤ選手が転倒して荒川選手の金メダルが決まった時の感想を「人の不幸を喜んじゃいけないけれど、こけた時は喜びましたね。『これでやったー』と、ものすごい喜んだ」と述べていた。>(共同3月6日)という報道にはたまげた。世間の常識ではここは栄誉を称える場面でしょ。「あんたの金メダルはスルツカヤが失敗していなかったら無理だった」と言ってるも同然。どう考えてもこれ以上の侮辱はない。

 しかも文科相というのは、学校教育の頂点、そのお方が公式に「他人の不幸は蜜の味」と教えるというのでは子供に示しがつかない。フェアプレーの精神などクソ食らえ、オリンピック憲章などゴミ箱に捨てろと言うのが日本の教育の総元締めだと世界に教えるのだから、とんだ”愛国教育”だ。

 このやり取りは一部の民報で放映されたため、さすがに「文科省に電子メールでの抗議が数十件あった」から、お役人が「大臣、いくらスケートとは言え、あのご発言はあまりにもお滑りになりすぎでは」と諫言したのだろう。6日になって、同省のWebに大臣名でおわびの一文が掲載された。「懇談で、荒川選手の金メダル獲得が大変うれしいとはいえ、一部配慮に欠けた発言をしたことについては、深く反省しており、荒川選手及びスルツカヤ選手に対してお詫びを申し上げます。」 腰を折って頭を前に下げる小坂”選手”の「逆イナバウアー」である。

 一週間で自らの非を認めたのは、民主党の二週間に比べるとましとは言え、まだこの事件の本質がどこにあるかよく分かっておられないようだ。オリンピック派遣のいわば最高責任者が文科相であるから、終盤になってもあの大選手団(+それを上回る派遣「役員」)にもかかわらずメダルゼロという暗黒の結果に焦りがあった。「不正でもテロでも何でもいいからメダルを取れ」と言う気持ちが、「人の不幸を喜ぶ」ことを公言するという大臣にあるまじき行為につながったのだ。
 (まあ自民党そのものが長期政権を維持して、今は"栄華"を極めているのも、自らの精進でなく、昔は社会党今は民主党という野党第一党の無能と大ポカのおかげなので、常に他人の失敗を当てにする癖がついているのは分かるのですが・・・・)

 そう、「反省」すべきは、自らの大臣の器だけでなく、今回冬季五輪メダル獲得率世界最低(メダル獲得国中、ちなみに最高は韓国で4人に1人はメダリスト)という日本の五輪実績である。
 抜本的な対策を施さないと、次回の五輪では大臣が、他の国の選手は皆失敗しろと「丑の刻参り」をしたという記事を見て驚くことになるだろう。