令和3年10月9日(土)、日司連の「不動産取引の意思能力に関する裁判例」というテーマの研修会にZOOMで参加しました。
不動産登記手続きにおいて、本人の意思能力が微妙なケースに遭遇することは時々あるでしょう。司法書士の頭を悩ます事案の一つだと思います。
そのようなケースにおいて、裁判例を踏まえながら、不動産取引においての本人の意思能力をどのように確認すればリスクを軽減できるかなど、今後の実務においてとても参考になる内容でした。
登記の意思能力の有無の判断基準を簡単にまとめておこうと思います。
①その登記手続きの内容が、本人にとって必要性や合理性があるのかどうかを検討する。
本人にとって必要性や合理性が高い登記事務であればさほど高い能力を要するものではないが、贈与契約のような無償契約の場合、必要性や合理性がないにもかかわらず、なぜ登記するのかという説明が可能な能力を要すると思われる。
講師の弁護士の先生は、「本人が、はい(YES)だけで答えられる質問のみでは意思確認としては不十分」との見解でした。なぜ贈与や売買をするのか理由を尋ね、その中で何か少し否定をするような質問をしてみて、否定(NO)したら、意思確認があったと判断していいのではないかということでした。なるほど、参考になりますね。
②本人にとっての理解の容易性・複雑性を検討する。
登記の内容が所有権を取得である場合、本人にとって高い能力を要するものではない。しかし、本人が所有権を喪失したり、本人に高い負担が課せられるような内容では、非常に高い能力を要すると考えられる。
③本人の意思能力に関するテスト結果
長谷川式簡易スケールの点数がある場合、単純な登記であればおおよそ10点以上であることが意思能力ありとする目安となるが、複雑な登記であれば20点以上であることが意思能力ありとする目安となるのではないかと思われる。長谷川式簡易スケールは認知症の場合に使用するものなので、精神障害や知的障害のケースでは使えない。
裁判例の資料もたくさんあったので、またの機会に読んでおこうと思います。