司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

民法の相続関係規定の見直し

2021-11-30 14:24:20 | 研修会

先日(令和3年11月27日(土))、関東ブロック司法書士協議会主催の令和3年度会員WEB研修会を受講しました。コロナ以前は遠方の現地まで行って受講する必要があったと思いますが、今はその必要がなくZOOM研修が可能になりました。これはコロナによる良い影響なのではないでしょうか。

さてテーマは「民法の相続関係規定の見直し」でした。

改正相続法は平成31年1月13日から令和2年7月10日にかけて順次施行されてきましたが、司法書士実務を行う上で押さえておきたいポイントや知識の復習も兼ねて、とてもわかりやすく充実した内容でした。その時は覚えていても時間が経つと忘れてしまいそうなので、忘れてしまいそうなところを備忘録として簡単にこちらにもまとめておこうと思います。

☆配偶者居住権  存続期間は必要的登記事項(不登法81-2-1)

☆相続人以外の寄与分(特別の寄与分) 2012年の東日本大震災の際に、例えば父、長男が津波で死亡し、長男の妻が法律上遺産を取得できなくなってしまうケースがたくさんあったことなどから、それらを教訓に特別の寄与の条文が作られたようです。

☆特定財産承継遺言 これは今までの「相続させる旨の遺言で、その内容が遺産分割の方法の指定と解される」ものをこのように法律上命名されました。以前は「Aが甲土地をBに相続させる旨の遺言をしていた場合において、Bは、甲土地の取得を登記しないで第三者に対抗することができる(最判平成14年6月10日家庭裁判月報55巻1号77頁)」という判例がありましたが、これは民法899条の2が出来たことにより意義を失ってしまいました。つまり、相続登記をしないうちに差押えの登記が入ってしまった場合には差押えの登記が優先してしまうわけです。

☆相続が開始し準共有された預貯金について、民法909条の2により150万円を限度として金融機関に対し払戻の手続きをすることが出来る。ところで150万円限度として払い戻した部分の預金債権について仮差押えが出来るかということですが、これははっきりとした答えはなく、学説ではできないと考えられているようです。それは遺産分割協議がなくても150万円を限度として払い戻しができるとした趣旨が、葬儀費用や当面の生活費のために一時的に使用するもので、固有の財産ではないからと考えられているからだそうです。

☆新しい遺留分の制度として、遺留分侵害請求は全て金銭債権請求とされました。また従前の「遺留分減殺」という言葉はなくなりました。そのため「推定相続人でない者への遺贈が全体として遺留分を侵害する場合において、遺留分を侵害される相続人は、遺贈を原因とする所有権移転の抹消登記を請求することは相当ではなく、自分への所有権移転の登記を申請すべきである(民事局長回答昭和30年5月23日民甲973号・先例集追Ⅰ352頁)」という先例がありましたが、改正により意義を失いました。なお、合意により遺留分侵害額の代物弁済として所有権移転するケースはあるかもしれませんが、その場合の登記原因は「代物弁済」で「遺留分減殺」とはなりません。「遺留分減殺」という言葉がなくなってしまったので、登記原因が「遺留分減殺」になることはないわけです。

 


離婚クーリングオフ

2021-11-15 15:35:53 | 雑記

クーリングオフといったら、特定商取引法などに定められた一定の取引において、所定の期間内であれば何ら理由を必要とせず、かつ無条件に申し込みを撤回し、または契約を解除できる制度のことですね。

今回は日本ではなく中国のお話です。

私は中国語の勉強をしていますが、その中で「離婚クーリングオフ」という制度が取り上げられていました。

中国では「民法典」が2021年1月1日から施行されました(今までは相続、婚姻、権利、抵当、契約などが個別の法律で運用されていた)。その中で「離婚クーリングオフ(离婚冷静期)」という制度ができたため離婚のハードルが上がったようです。

協議離婚の場合は、30日間の保留期間が設けられ、保留期間であればどちらか一方が同意しなければ離婚申請はすぐに撤回さてしまいます。30日が過ぎたら、双方が一緒に婚姻登記機関に離婚証を申請しなければなりません。離婚証の申請がなければ離婚の意思は撤回したとみなされるのです。

この制度を制定するにあたり、「簡単な離婚が多くなっているのだから、双方に冷静に考える時間を持たせるのはいいのではないか」という肯定意見や「離婚の自由が制限される」といった反対意見もあり物議をかもしたこともあったようです。

さて施行から間もなく1年が経とうとしていますが、運用の効果はどんなものか気になるところです。

ちなみに中国だけではなく、カナダ、アメリカ、韓国、イギリスなどにも「離婚クーリングオフ」の制度があるようです。