司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

遺産分割前の株式の議決権の行使

2022-11-10 10:59:53 | 商業法人登記

とある会社の株主である甲が死亡した場合、その株式は相続の対象となります。

遺産分割協議でその株式を取得する人が決まれば問題ありませんが、まだ決まっていない場合、株主総会での議決権の行使はどうなるのでしょうか。

まず相続が発生した時点で、その株式は相続人全員で共有する形になります。法定相続分にしたがって当然に分割されるわけではありません。

会社法第106条には「株式2人以上の共有に属するときは、共有者は当該株式についての権利を行使する者を1人定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することはできない。但し株式会社が当該権利を行使することに同意した場合はこの限りではない。」と規定されています。

したがって遺産分割協議により共有状態が解消されない状態では、相続人のうち1人を権利行使者と定め、会社に通知することで議決権行使が可能となるわけです。

その権利行使者の定め方は、民法の共有に関する規定を適用します。株主総会の議決権の行使は、共有物の管理行為に該当するとされています。共有物の管理に関する事項は、「共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」とありますので、少なくとも過半数の同意が必要だということになります。

ちなみに会社法106条の但し書きの規定について「株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではない。」とあり、この部分だけ見ると共有者の持分価格の過半数によって代表者を定めなくても、会社側がそれに同意した場合には、過半数で決めなくてもいいように解釈できなくもないですが、これについては最近の最高裁の判例(最高裁判所第一小法廷平成27年2月19日判決)で否定されていますので注意が必要です。

なお会社法106条による通知は、登記手続きの際の添付書面にはなっていませんが、それに基づいて代表者を定めなければ、株主総会決議の取消自由にもなる可能性があるので司法書士としても注意を払う必要があると思います。なお法務局に提出する株主リストについては、106条の規定によって代表者を定めたとしても相続人全員を記載する必要があります。

 

 


商業・法人登記の添付書面の援用

2022-11-09 10:58:37 | 商業法人登記

不動産登記は連件申請が可能ですが、商業法人登記においては規定がある場合を除いて連件申請は出来ません。

例えばA社、B社という2つの会社があり、その両社の取締役に就任していた甲が死亡した場合、死亡による退任登記が必要となります。一括で申請する場合、死亡を証する書面(戸籍謄本等)は、連件申請が出来ない以上、原本をそれぞれ添付しなければならないのでしょうか。

その際はどちらか一方に原本を添付し、一方は写しを添付すれば大丈夫です。但し「原本は〇〇に添付した」旨、付箋か何かでわかるようにしておけば処理してもらえます。


添付書面等の押印について

2022-11-08 14:55:39 | 商業法人登記

「ハンコ不要」の流れは、商業・法人登記手続きにおいても適用される場面がありますので記載しておきます。

押印を必要としない主な添付書類として

①株主リスト

②資本金の額の計上に関する証明書

③金銭の払込みがあったことを証する書面

④取締役、監査役等の就任承諾書(実印を押印しない場合)

⑤辞任を証する書面(実印を押印しない場合)

⑥添付書面の還付を請求する際に作成する謄本

⑦本人確認書類として添付するための運転免許証等の謄本

あたりでしょうか。

但し⑥、⑦において押印は不要ですが、「原本と相違がない」旨の記載及び記名は引き続き必要となりますのでご注意下さい。私は失念してしまい、登記官に手間をとらせてしまいました。。