司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

相続登記の登録免許税の免税措置(租税特別措置法第84条の2の3第2項)

2021-02-18 15:33:59 | 不動産登記

うっかりミス防止のための備忘録です。

2018年11月15日から2021年3月31日までの間、個人が土地について相続(相続人に対する遺贈を含む)により所有権移転登記を受ける場合、①市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるものとして、法務大臣が指定する土地で、②不動産の価額が10万円以下の土地については、登録免許税を課されないとされています。

10万円以下ということだけ頭にあって、①の要件をすっかり忘れていて、非課税で相続登記を申請してしまった案件が先日ありました。当然、補正の指摘を受け登録免許税を追納しましたが、凡ミスでした。

ちなみに法務大臣が指定する土地は、各法務局のHPに記載されています。

※追記:令和4年4月1日より、対象となる土地は全国の土地に拡充され、不動産の価額も100万円以下の土地が対象となりました。


相続による免責的債務引受契約(民法改正)

2021-02-05 09:44:59 | 不動産登記

先日、確定根抵当権の債務者に相続が発生し、免責的債務引受契約による債務者変更登記手続きがありましたので、備忘録として残しておきます。

2020年4月の民法改正により、免責的債務引受契約について、今まで実務的に行われてきたことが明文化されたわけですが、他のルールが規定されたので注意が必要です。

今回は、債権者と債務引受人との間で免責的債務引受契約を行ったという改正民法第472条第2項によるものでした。改正前までは、債務引受人以外の債務者の意思に反しない限り有効だと解釈されておりました。しかし、改正民法では、債務引受人以外の債務者の意思に反しないことが要件とならない代わりに、債務引受人以外の債務者に対して、債権者と債務引受人で契約を行ったことを債権者が通知する必要があります。したがって、今回は債務引受人以外の債務者に対しては、債権者側から債権者と債務引受人で免責的債務引受契約を行った旨の内容証明郵便を送付していただきました。

ちなみに債務引受人が所有している以外の物件に担保が設定されている場合には、物上保証人の承諾が必要になることにも注意が必要です(改正民法第474条の4)。

最近立て続けに改正民法に関する手続きがありましたが、改正民法の内容は多く、うっかり今までのやり方で手続きを行ってしまわないようにしたいです。


錯誤による所有権抹消登記(民法改正)

2021-02-02 11:50:13 | 不動産登記

先日、相続登記のやり直しをしたいという登記手続きの依頼があり登記が完了した件について、備忘録として記録しておきたいと思います。

相続登記のやり直しは、錯誤または合意解除で所有権抹消し、改めて遺産分割協議をして相続登記による所有権移転する手続きになると思います。

相続登記のやり直しが、税務上は贈与とみなされ贈与税が課税される可能性があるという問題は置いておきます。

今回は、諸事情により「錯誤」を登記原因として手続きをしたいということでした。

そこで問題となるのが、民法改正です。

旧法は錯誤の効果を「無効」としていたのに対し、改正法は「取消し」に改められました。したがって、新民法第95条第1項に基づき意思表示が取り消されたことにより登記の抹消の申請をするときは、その登記原因を「取消」とすることとされました。またその登記原因の日付は、取消しの意思表示が相手方に到達した日になりると思われます(登記研究872号より)。

そのため今まで錯誤で所有権抹消登記が出来ていたのもが、取消という扱いになるので注意が必要です。

なお、「新民法第95条第1項により意思表示が取り消されることになるのは、施行日以後にされた意思表示に限られる(改正法附則第6項第1項)。」とあるので、施行日以前の2020年4月1日以前の意思表示であれば、錯誤を使って所有権抹消登記が可能なので、今回はこの方法で処理しました。

民法改正により登記実務に影響があるところが色々あるので、注意が必要だと思いました。