司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

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自己株式がある場合の株主総会議事録の記載方法及び株主リストの作成方法

2022-05-13 09:14:12 | 商業法人登記

自己株式を保有している株式会社の株主総会議事録や株主リストはどのように記載すればいいのでしょうか。

発行済株式数600株、そのうち40株を自己株式として保有している株式会社を例にしてみます。

☆株主総会議事録への記載方法(例)

(1)株主の総数 9名←※自己株式を保有する自社も含める

(2)発行済株式の総数 600株(自己株式40株)

(3)議決権を行使することができる株主の数 8名←※自己株式を保有する自社は除く

(4)議決権を行使することができる株主の議決権数 560個←※自己株式は除く

☆株主リストの作成方法(例 ※上位3分の2に達する株主までしか記載しておりません)

株主A 株式数150株 議決権数150個 議決権数の割合 26%

株主B 株式数137株 議決権数137個 議決権数の割合 24%

株主C 株式数123株 議決権数123個 議決権数の割合 21%

              合計410個

           総議決権数560個

注意すべき点は、①議決権を有しない株主である自己株式を持っている自社はリストに入れないこと ②総議決権数も自己株式の数を除くこと ③議決権割合の分母も、自己株式の分を除くことです。要するに株主リストを作成する際は、全てにおいて自己株式を除外するということです。ただし、株主全員の同意が必要な場合には、自己株式を保有する自社も含めた全ての株主を記載する必要があります。

 

 

 

 


特例有限会社の特別決議要件

2022-05-12 15:55:58 | 商業法人登記

登記とは直接関係ないのですが、とある特例有限会社が自己株式の取得を検討しているがそれが可能かどうかという相談がありました。基本的に会社法の規定が適用されるのだから、可能ではないかと思いました。

そこまではよかったのですが、問題は「特例有限会社の決議要件」でした。

整備法14条3項によると「特定の株主との合意による自己株式の有償取得の決議には特別決議が必要」とあります。

特例有限会社の特別決議の決議要件は「総株主の半数以上」かつ「総株主の議決権の4分の3以上」であり、とても厳しいものになっております。これは株式会社と大きく異なる点で、定款で軽減することもできません。

今回の事例に当てはめてみようと思います。

☆株主数 7名

☆株式数 2万株

内訳 株主A 9550株

   株主B 7600株

   株主C  250株

   株主D 1300株

   株主E  500株

   株主F  300株

   株主G  500株

株主Aの全部または一部の自己株式取得ということですが、頭数要件の「総株主の半数以上」は、4名以上が必要で、かつ「総株主の議決権の4分の3以上」は、15000株以上が必要になります。

株主Aは議決権を行使できませんので(会社法160条4項)、A以外の賛成があっても10450株しか見込めません。したがって15000株には届きません。

というわけで、今回のケースのような自己株式取得は出来ません。

このようなケースは株式会社への移行をすれば解決できるようですが、株式会社へ移行するつもりはないようです。

それでは他に全く解決方法がないのでしょうか。「会社法319条1項の書面決議(株主総会の決議の省略)」で出来るのではないかと顧問弁護士からアドバイスを受けたとのことだったので、再度検討してみたところ、書面決議について、特別決議事項、特殊決議事項または種類株主総会の決議事項についても可能だとされているようです。通常の株主総会決議の方法ではできないが、書面決議なら可能かもしれません。みなさんはどう思われますか。

結局私の役割は相談のみで終わったので、その後はどうしたのかまではわかりません。ただ会社法319条1項の書面決議は、議決権を行使できる株主全員の同意さえ貰えれば色々活用できそうだと思いました。今回色々勉強させていただきました。

特例有限会社は基本的に会社法の規定が適用されますが、そうではないところもあるので要注意だと思いました。特に決議要件は見落としがちだと思いますので気を付けなければなりません。

なお今回のケースを調べるにあたり、神崎満一郎先生の「特例有限会社の登記Q&A(増補・改訂版)」はとても参考になりました。回し者ではありませんが、オススメです。