司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

地番変更を伴わない行政区画の変更があった場合の名変の登録免許税

2022-08-26 14:46:02 | 登録免許税

12年程前に先例が出ましたが、すっかり忘れていたので備忘録として記載しておこうと思います。

「登記名義人が登記簿上の住所から他の住所に移転した後、その移転した住所について区政施行などの地番変更を伴わない行政区画の変更が行われた場合の登記名義人の住所の変更の登記を一括で申請する場合の登記原因は「〇年〇月〇日住所移転 〇年〇月〇日区制施行」とし、「〇年〇月〇日住所移転」のみでは足りない」という登記先例が出ました(平成22年11月1日民二2759号)。

地番変更を伴わない行政区画の変更とは、例えば〇〇市〇〇100番地が、〇〇市〇〇区〇〇100番地となるような場合です。行政区画の変更に係る市区町村長等の証明書の提供があれば、登録免許税法5条5号により非課税となります。

 


住所で土地が特定された自筆証書遺言

2022-08-22 15:45:36 | 不動産登記

遺言書に不動産の表示を記載する際には、登記簿のとおり記載しないと登記手続きが出来ないおそれがあります。

ではその記載された土地につき、登記簿の地番ではなく住所で記載されていた場合、登記手続きは出来ないのでしょうか。

今回依頼いただいた自筆証書遺言には「土地 ○○市○○一丁目○○番○○号 地目宅地 ○○㎡」と書かれており、建物は登記簿の記載通り書かれていました。おそらく登記簿を見ながら記載されたと思われるのですが、何故か土地の所在は地番ではなく住所で特定されていました(地目、地積は登記簿と一致)。

自筆証書遺言で土地を地番ではなく住所で特定してしまうのは、よくあるケースのようです。一般の方には、地番と住居表示の違いはわかりにくいことかもしれません。

今回は名寄帳の写しを補足資料として添付しただけで登記手続きは出来ました。住居表示実施の証明書もあれば添付してほしいとのことでしたが、遺言者は住居表示実施後に居住したので、結果的にこれはなしで済みました。今回は1筆だけだったので特に問題なかったと思いますが、複数筆にまたがる底地のケースもありますからその場合はまた結論が違っていた可能性もあります。

「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合そのうちの特定の条項を解釈するにあったっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきである」(最高裁昭和58年3月18日(判例タイムス496号80頁))

「遺言書に単に「不動産」と記載されているだけであっても、遺言者が長年居住していた自宅の住所であって、土地建物双方の共有持分を有していたことなどの事実関係の下においては、本件遺言書の記載は、遺言者の住所にある本件土地建物を一体として、その各共有持分を遺贈する旨の意思を表示したものと解するのが相当である」(最高裁平成13年3月13日判決(判例時報1745号88頁))

上記2つの判例がとても役立つと思います。

以前から遺言書を作成したい方には公正証書遺言の作成を勧めていましたが、今回のことがあってその思いはさらに強くなりました。


清算結了の日付

2022-08-12 09:28:30 | 商業法人登記

4月30日に解散した会社について「2か月経過しているから、6月30日に清算結了したい」と問い合わせがありました。いや2か月経過していないんじゃないかと思い、確認してみました。

「株式会社の清算人が、その就職の日から2か月以内にする清算結了の登記申請は受理できない」という登記先例がありますので、解散し清算人が就任してから2か月経過していないと清算結了の登記は出来ませんが、その起算日等について確認したいと思います。

4月30日付で解散し清算人が就任していますので、翌日の5月1日から起算し、2か月の応当日は7月1日となります。応当日の前日である6月30日の24時をもって2か月の期間が満了となるため、最短で7月1日付の清算結了登記申請が可能となるわけです(民法140条から143条の期間計算の条文参照)。

しかしここで落とし穴がありました。

今年(令和4年)の4月30日は土曜日だったのです。清算期間の起算日に関する次の先例があります。

「商法(旧商法)421条第1項ただし書に規定する期間の起算日は、第1回の公告の日の翌日から起算するのが相当である」

つまり債権者に対する官報公告のことですが、となると公告日の翌日が起算日となります。

官報公告はお役所と同じく、土日、祝日年末年始はお休みです。

4月30日(土)はお休みで翌日の5月1日(日)もお休み。5月2日(月)が最短の公告日ですので、その翌日5月3日が起算日となり、2か月の期間の応当日は7月3日。応当日の前日7月2日(土)が期間満了日となりますので、最短で7月3日付清算結了の登記申請が可能となります。ちなみに民法142条により、応当日前日の期間満了日が、日曜または祝日にあたる時は、満了日が翌日になるので注意が必要です。

結果的に7月31日付で清算結了の登記をすることになったので、日付の問題は全くなくなったのですが、以前同じように清算結了の期間計算を間違い、補正をした苦い経験があります。税理士が入っていたわけではなく、日付を訂正しても特に問題にならなかったので良かったものの、細かいところですが、注意しなくてはいけないところです。