われ史をひもといて国は興きてまた亡び、民は盛えてまた衰うるを読む。ただ見る一物の時代の廃壊の中にあって毅然として天に向かって聳ゆるあるを、これキリストの十字架なり。
世は移り人は変わるとも、十字架はその光輝（ひかり）を放って止まず。万物ことごとく零砕（れいさい）に帰する時に、これのみはひとり残りて世を照さん。
十字架は歴史の中枢なり。人生のよって立つ磐石なり。これによるにあらざれば強固（きょうこ）あるなし。永世あるなし。
余はみなことごとく蜉蝣（ふゆう）なり。これのみが窮（きわま）りなく存（たも）つ者なり。 (内村鑑三)
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