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謙遜は美徳なり。されどもみずから努めてなすの謙遜なるべからず。これ演劇的謙遜なり。外面を飾るための謙遜なり。
あるいは謙遜といい、あるいは謙退という。自己の卑しきを自覚してへりくだるにあらず。あるいは自己の欠点をおおわんがため、あるいはその謙遜を誇らんがための謙遜なり。
謙遜なる、必ずしも尊きにあらず。神にありて空虚なること、これ尊むべき慕うべき謙遜なり。いわゆる Sublime unconsciousness なるもの、すなわちおのれは知らずしておのずから高貴なること、これ真個の謙遜なり。
しかして、これキリストにありて自己をむなしゅうする者のみ有し得るの謙遜なり。 (内村鑑三)