我が愛する『片腕マシンガール』の井口監督、最新作!
あいかわらず脳内妄想をそのまま映像化していったような心底くだらない展開で、最後まで観る者を飽きさせないレッドゾーン振り切りすぎの脚本と演出に感動。
こういうスプラッター映画って嫌いな方も多いかもしれないが、ここまで「どうみても作りもの」な作品だと、血みどろシーンったって爆笑するだけで残酷とは感じない。むしろシリアスに観客を感情移入させるリアリズムな映画の中に時折り出てくる等身大の暴力の方が、痛みを自分のものとして感じてしまったりして「残酷」な印象を受けたりする。皆さんはどうでしょうかね。
以下、今回もグッときたポイントを箇条書きメモ。
(例によってネタバレなので、観る予定の方は読まないで下さい)
・国家転覆を企む企業「影野製鉄」の会長が志垣太郎って配役がシブい!平幹二朗ばりに眉間にリキ入ってます。ラウンドカラーの趣味悪いシャツに葉巻をくゆらせるファッションも、絵に書いたような"世界征服を企むボス"で素敵。会長の部屋の本棚に並ぶ本の背表紙が『鉄は固い』とかいうくだらないタイトルなのも個人的にツボ。
・その影野製鉄が抱える芸者ルックの暗殺集団が「裏芸者」。身体を改造して暗殺ロボット化した女たちだ。宴席で要人に近づき、色香で油断させて殺すのだ!アジトでは隊列を組んで声を合わせ、「シャチョサン、イヤヨ!」(バスッ!とパンチ)「オヒトツ、ドウゾ!」(ドドムッ!とキック)…と反復練習に余念がない。
・ヒロインはその「裏芸者」に無理やり入れられ、地獄の特訓を受ける。これがまた、沸騰した土鍋に手をつっこんでシャブシャブ肉を拾う!といった実にくだらないもの。成功すると周りの先輩ゲイシャたちが暖かく拍手して盛り上がるのも馬鹿馬鹿しい。
・相変わらず秘密兵器もヒドい。胸からピューッと飛んで相手の顔を焼く『地獄の母乳』とか。コギャルに扮した裏芸者が使う『殺人ルーズソックス』とか。尻から手裏剣が飛び出す装置とか、脇の下から飛び出す刀とか、胸がガトリング式のマシンガンになってるとか。
・クライマックス、尻から突き出した秘密兵器の刀で、ヒロインと2人の女天狗たちが戦うシーン。3人とも「こんな格好、恥ずかしい…」「恥ずかしい…」とかボヤきながら、ドンケツゲームのように後ろ向きで斬り合う。
・政治家暗殺のシーン。芸者がパカッと縦に2つに割れて中から別人が出てくる…ってパターンは、シュワルツェネッガーの『トータル・リコール』でおなじみのアレです。しかし狙われた政治家の部下たちもあわてず、すかさず刀を抜いて裏芸者に立ち向かってくる。日頃から持ち歩いているのか?刀!
・ゲイシャ、テンプラ、ハラキリ、ジョシコーセー…と本作も"勘違いジャパン"的な、海外向けのサービス・アイコン満載。影野製鉄の社屋が無意味に"日本のお城"建築なのもその1つかと思ってたら、いきなりトランスフォームして社屋が"城ロボット"になり、富士山を登り始める…という後半の展開にのけぞった。『シンケンジャー』かよ!
・しかし、対するヒロインも、芸者から戦車へ(シャレか?)カシャンカシャンカシャーン!とトランスフォーム。『マトリックス・リローデッド』みたいに、超高速でハイウェイを疾走するのである!
・ヒロインの決め台詞。
「ただれた悪をマシンで倒す"からくり舞子"その名も"ロボゲイシャ"さ!」「地獄へおいでやす!」
一方、敵方は
「弱者は権力の肥やしとなれ!」「地獄の謝罪、受けてみよ!」
こういったキメ台詞とか"見え"を切るカット自体、『片腕…』に比べるとちょっと少なかった印象。
・そんなヒロインを援護するのは、拉致されて「裏芸者」にされた家族を助けようとする「救出の会」。ごくフツーの老人たちなのに、実は銃で武装していて、後半は影野の社屋に突入して銃撃戦になる。まるで「スーパー遺族」だ。しかし家族を助けに突入したはずなのに、攻めてくる裏芸者たち(=家族)をも見境いなくガンガン射ち殺しまくってしまう。いいのか?
・その「救出の会」が劇中歌い出す「救出の歌」がまた実にヒドいしろもので(笑・こればかりは観て判断していただきたい)
・音楽と言えば、格闘シーンの音楽(変拍子のファンク・ロック)は、明らかに『007死ぬのは奴らだ』(ポール・マッカートニー&ウィングス)のパスティーシュですね。
まあキリがないんで、あとは映画館でご確認ください。デートでこの映画に誘ったら、ちょっと人間性疑われるかもしれません。
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