わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

尊骨士(とどけびと)

2017-06-02 07:29:59 | 司法書士
司法書士は仕事柄、官報を見るときがあります。

会社関係だと、合併をするときに公告をしたり、解散時にも公告をします。
会社は、株主や従業員、社長だけのものではなく、社会的に活動をしていますから、会社に大きな変化があるときは
会社の外部・第三者に人に対してもお知らせをしなければならないことになっています。

合併であれば、こんな会社と合併しますよとか、解散の時は、解散しますので請求漏れがないようにねといった感じです。
とはいえ、家族経営的な会社であれば形式的な儀式みたいなものだとは思います。
(関係者に何も知らせずに合併も解散もしないと思います。。)

ちなみにCMを意味する「広告」ではなく、「公告」であってます。

っで、その官報にはそのほかいろいろことが載っているのですが、その一つに「行旅死亡人」という公告があります。

行旅死亡人については「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という明治時代にできた古い法律で定められています。

「行旅死亡人」といってイメージがしやすいのは、行き倒れの人などです。
ただ、必ずしも旅行先、出かけた先で亡くならなくてもよく、住所や氏名がわからず引き取り手がない方も行旅死亡人とされます。
したがって、おひとり様でひっそりと亡くなられて身元がわからないような場合も該当しそうです。

そして、行旅死亡人の対応は市町村が行うことになっています。
○○のような方が亡くなっていましたよ、ということを行旅死亡人として官報(又は新聞)に公告することになります。
さきの公告がそれです。

ところで、その公告を読んでいるとだいたい「火葬に付して保管しています。お申し出ください」みたいな感じで書いてあります。

いったいどんな感じで保管しているのかな?簡易なお墓みたいなものなのかな?って以前より勝手に想像していたのですが
どうやらそうでもないようなんですね。

先日、ある勉強会でお知り合いになった方から「尊骨士(そんこつし)」という取り組みについてお話を伺うことができました。

今の社会では、社会的なつながりが希薄になり、遺骨を取り巻く環境も厳しいのは素人的にも感じることがあります。
無縁墓などもその一つの現れなのかもしれません。
もともとはお墓に入れることができた遺骨でさえそのような状況ですから、身元もわからずに亡くなってしまった「行旅死亡人」の方の
環境も推して知るべしだと思います。
そして実際、私が想像していたのとは違い、火葬に付された行旅死亡人の遺骨は、何もないお部屋にただ保管されているだけのことを多いのだそうです。

無縁墓の遺骨も、行旅死亡人の方の遺骨も、確かに今は引き取り手のない遺骨になってしまったかもしれません。
ただ、その人にもそれぞれの人生があり、少なからず社会に貢献し生きてこられた方たちなんだと思います。
少なくとも、最後は縁あって日本の地で遺骨になっているわけです。
亡くなった後まで誰にも弔われずに無縁になってしまうのはなんだかさみしい気がします。

そのような状況に対して取り組まれているのが「尊骨士」の方なんだそうです。
誰にも弔われていない行旅死亡人などの無縁の遺骨を、宗教施設に送り届けるようなお仕事をされているとのこと。
なので「とどけびと」とも呼ばれているのだそうです。

亡くなった方は自ら動くことはできません。
だからと言って弔いもせず、放置していいものでもないと思います。

「尊骨士」のような方の取り組みがごく普通に行われるような社会になればいいなと、お話を伺っていて思いました。

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