わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

電子書籍を発売しました

2023-07-18 11:16:49 | 司法書士
この度、電子書籍を発売しましたのでお知らせします。

「相続登記の準備をはじめる前に読む本」
著者:司法書士 景山悟

2024年(令和6年)の相続登記の義務化に対応しています。



以下、本書「はじめに」と「目次」の抜粋です。

はじめに

この度は、相続に関する書籍の中から、本書を手に取っていただきありがとうございます。
本書は、相続登記の手続を解説する前の段階のお話であったり、相続登記を自分で進めることができるか否かの判断のポイントをお伝えするものです。
ですから、相続登記の手続を解説したものでも、手続マニュアルでもありません。

なーんだと思われた方もいるかもしれません。
しかし、相続登記に関して情報を集めている方にとっては、とても重要な内容になっていますので、
相続登記で失敗しないためにも、ぜひ、この「まえがき」だけでも読んでみてください。

わたしは、日ごろ、司法書士として相続登記の相談を受けることが多いのですが、
ちょっとだけ準備をしておけば見通しも大きく違っていたのではないかと思うようなこともあります。

例えば

「先生、父親が亡くなったんで、自宅の相続登記をお願いしたんだけど」
「わかりました。相続人の方とのお話合いは出来ていますか?」
「はい。相続人は、母と長男である私と弟なんですけど、私が相続することになりました。弟は海外在住なので、
印鑑証明書の代わりの書類が必要だってインターネットで調べましたので、駐在している国の大使館で取ってきてもらいましたよ」

「わかりました。いろいろお調べいただいているんですね。そこまでお調べになったのであればご自身で相続登記の手続はしないのですか」
「それも考えたんですけど、手間を考えたら専門の人に頼んじゃおうと思って」
「そうなんですね。それは人それぞれだと思います。ちなみに、登記所のホームページでは相続登記の小冊子もダウンロードできますけれど、挑戦してみますか」
「いえ、今回は先生におまかせします」
「わかりました。それでは、ご準備の内容に沿った書類を用意しましょう。まずは、ご自宅の登記簿謄本を確認しますね。どれどれ、えーっと……、あれ?」

「先生、どうかしましたか?古いボロ家だから価値もあまりないでしょう」
「いえ、そうではありません。登記簿謄本には値段は書いてないですからね。それより、登記簿謄本の所有者はお父様のお名前ではないようですよ」

「え?あー、これおじいちゃんの名前だ。この地所は祖父の代から使っているんですよ。
とはいえ、固定資産税とかもずっと父親が払ってましたし、父親の兄弟であるおじ、おばも他に住んでますから大丈夫ですよ」
「そうなんですね。ただ、相続登記では、大丈夫じゃないんですよ。固定資産税の通知などがお父様名義で届いていたとしても、
登記簿謄本の所有者とは関係がないんです。だから、おじいさまの相続登記が必要です」

「じゃ、それもお願いします」
「おじい様の相続登記ということは、お父様の相続人だけでは手続が出来ないんです。
おじい様の相続人である、おじさん、おばさんのご協力も必要です。場合によってはおばあ様の相続人の協力も必要です」

「そうなんですかあ。おじいちゃんの兄弟は5、6人いたんじゃないかな。それに亡くなっている人もいるなあ」
「亡くなっている場合は、その子どもたちが相続人になります」
「いやー、それは困ったな。あまり付き合いのない親戚もあるので。市役所から来ている固定資産税の宛名が父親でもダメなんですね」

「はい、残念ながら」
「ちなみに……」
「まだ、何かありますか」
「はい、おじい様の時のようなのですが、個人の方からお借入をしています。それ自体は問題ないのですが、
その時の抵当権の登記がそのままになっています。今もご返済などをしてますか?」

「いえ、そのようなことはないですし、何か通知とか手紙とかも来てないですね」
「お借入額が登記されているのですが、その金額からしてすでに完済されていてもおかしくないと思います。
おそらく、抵当権の登記だけ残ってしまっているのではないかと思います」

「じゃ、気持ち悪いんで、それもどうにかしてください」
「はい、わかりました。ただ、抵当権を消す登記は、抵当権者の協力が必要です。抵当権者は個人の方ですが、ご存知ですか?」

「知りません。知らないとどうなりますか」
「お調べする必要があります。もし、亡くなっていたら、その相続人の方全員と連絡を取る必要がありますし、
わからなければ供託手続や裁判手続なども検討する必要があります」

「裁判、ですか?なんだか、すごい話になってきましたね。自宅の登記なのに」
「登記簿の書き換えというのは、一足飛びには出来ないんです。おじい様の名義であれば、まずはおじい様の相続登記が必要になります。
また、抵当権の登記を消す手続も抵当権者と協力して行わなければならいルールなんです」

「忙しいなか、弟に大使館へ行ってもらったりしたけど、その前に登記簿謄本を見ておけばよかったな。
固定資産税も払っていたから、まさか、こんなことになっているとは思いませんでした」

詳しくは次章以降の本文に譲りますが、この例のように相談者が思っていた見通しと違っていたということもあります。

みなさんの中には相続登記の義務化という話を聞かれている方もあるかと思います。
義務と言われれば少しマイナスのイメージを感じつつもインターネットや書籍を参考に相続登記の準備を始めているかもしれません。

ただ、もしかしたら、先の事例のように登記簿謄本の記載が想定外の内容になっているかもしれません。
本書では、相続登記の準備を始める前の確認事項をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

また、そもそも、相続登記は自分ですることができるのかと思っている方もいるかもしれません。
本書では、自分でできるか、司法書士などの専門家に相談・依頼するかの見極め方をご紹介しています。

まずは、目次を確認いただき、興味を持たれた部分から読んでみてください。
そして、必要に応じてそのほかの部分も読んでいただければと思います。

最後に、本書を手に取っていただいた方には、相続登記を自分でできるかチェックシートと相続登記・専門用語集をご用意させていただきました。
ぜひ、特典ホームページよりダウンロードの上、ご活用ください。

目次
はじめに

第一章 相続登記の義務化
一.相続登記の申請が義務化された経緯
二.相続とは・相続のルール
三.相続登記の義務化の時期
四.相続登記の義務化の内容

第二章 相続登記とは
一.不動産登記とは
二.不動産登記のルール
三.相続登記とは

第三章 最初に取り組むべきこと
一.登記簿の確認の重要性
二.登記簿の確認方法
三.登記所の窓口で登記簿謄本を取得するときに気を付けること
四.取得後に確認すること
五.郵送やインターネット登記情報提供サービスでの取得時や取得後に気を付けること

第四章 遺言書の確認
一.遺言書の確認の重要性
二.遺言書の種類
三.遺言書の検索の方法
四.遺言書が見つかったら

第五章 相続登記は自分でできるのか・総論編
一.相続登記の手続き概要と負担感
二.自分で手続きを進めるならまずは無料情報を取得
三.法務局の相談窓口の注意点

第六章 相続登記は自分でできるのか・事例編
一.四大困難事例
二.戸籍の取得+相続人の確定作業
三.登記簿の所有者名義が被相続人ではない
四.相続人の中に遺産分割協議ができない人がいる
五.自筆証書遺言の記載内容が不適切
六.登記簿の記載による事情

第七章 相続登記に関連する手続き
一.相続放棄
二.成年後見制度
三.家族信託(民事信託)

第八章 相続手続の専門家
一.弁護士
二.司法書士
三.税理士
四.行政書士
五.不動産鑑定士
六.社会保険労務士
七.その他

おわりに まとめ・不動産の終活は登記簿謄本の確認から

この記事についてブログを書く
« 対談を収録しました。 | トップ | アマゾン・不動産カテゴリー... »

司法書士」カテゴリの最新記事