わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

成年後見制度が敬遠される理由

2022-02-11 00:00:00 | 司法書士
成年後見制度とは、高齢者の方が認知症などにより判断能力が不十分となった際に
家庭裁判所によって成年後見人などを選任するものです。
成年後見人によって高齢者を法的な面で支援し、保護しています。
これによって、認知症の方を悪質商法などの消費者被害から守ることができます。

このように、成年後見制度は認知症の高齢者などを守るためための制度として
とてもいいものだと思えるのですが、一方で、敬遠される場合があることもあるようです。

その理由はいくつか考えられますが、まず、財産の活用がほぼ認められないことがあるかと思います。

成年後見制度の利用を検討している方の中には、資産を多く持っている方もいます。
不動産や預貯金などですが、後見制度が開始されると、それらの財産は本人のためにのみ使用することになります。
本人のためといっても、リスクがあるような利用はできません。
例えば、株やその他の投資などの資産運用はできません。
また、将来の相続税の対策などとして、不動産を売却するなどの資産の組み換えなども難しくなります。
つまり、本人の生活の維持と直接関係のない行為については、認められにくくなります。
すこし細かな例ですが、これまで、お孫さんなどに毎年お年玉をあげていたような方であっても、
それすらもこれまで通りごく当然に行うことは難しいと考えられます。
これらを行うためには、事前に家庭裁判所に確認を取ることが多いとおもいます。
このように、本人の保護、本人財産の保護の理由から、財産の利用が硬直的になる場面が多い点が敬遠の理由にあるかもしれません。

また、後見制度は、基本的に本人が亡くなるまでやめることができません。
仮に、申立ての動機が自宅の売却であっても、売却後も後見制度は続きます。
すると、仮に後見人が親族以外の専門家であった場合は、毎年一定の報酬が必要となります。
報酬は月額2~6万円程度とされ、年に一回家庭裁判所が決定します。
仮に月額2万円であってとしても年間24万円程度のコストになります。

そのほか、後見人は財産管理を行いますので、通帳や印鑑などはその後見人が預かることになります。
後見人が親族以外の専門家であった場合は、その専門家に渡す必要があります。
また、後見制度は家庭裁判所が監督しています。
そのため少なくとも年に1回、財産状況を報告する必要があります。
資産家の方などは、特に悪事をしていなくても、すべての財産をさらけ出すため、心理的な抵抗感が生じることもあり得ます。

このように、高齢者の保護というメリットの半面、制度上の制約からくるデメリットともいえるものもあります。

成年後見制度の利用を開始したあとに、このデメリットを回避していくのは難しいとおもいます。
一方で、利用前(高齢者の判断能力が十分にある段階≒認知症になっていない段階)の段階では、その他の制度を利用して
デメリットを回避することも可能です。

その代表が民事信託(いわゆる家族信託)の制度です。

民事信託の詳細はここでは省略しますが、高齢者の方が元気なうちにその財産を信頼がおける親族等(例えば長男)に預ける=信託することによって
今後は、長男が高齢者に代わってその財産を活用していくことになります。
活用方法は信託の際に締結する信託契約の中でさだめられることになり、その範囲内で活用することになります。
例えば、不動産を売却するという内容であれば、高齢者が認知症になった後も、後見制度を利用することなく長男が売却をすることができます。
当然、家庭裁判所の監督はありませんから、財産状況を報告するといったこともありません。

この記事についてブログを書く
« 成年後見制度はどのような時... | トップ | 意外!?遺言の必要性の高い... »

司法書士」カテゴリの最新記事