わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

不動産の終活の始め方

2022-01-31 00:00:00 | 司法書士
終活という言葉がずいぶん浸透してきたように思います。
エンディングノートもそうですね。

とはいえ、終活は何から始めればいいのかよくわからないという人も
依然として多いのではないでしょうか。

そこで、今回はかなりピンポイントですが、不動産の終活の始め方をご紹介します。

不動産の終活と言ったら何から始めようと思いますか?
庭掃除?
不用品のかたずけ?
売却先探し??

終活を自分が亡くなった後に相続人へスムーズに引き継ぐという意味で考えれば
どれも正解なんだと思います。
ただし、それが、本当に「自分の不動産なのであれば」・・

賃貸住宅の方は別ですが、今お住まいの住宅は本当に自分の不動産ですか?
そして、その問いに自信をもってYESと答えることができますか?

新築住宅を買った方であれば、おそらく大丈夫だろうとは思います。
一方で、親や祖父母の代から引き続きお住まいの方などは、要注意です。
もしかして名義が親や祖父母のままになっていませんか?

不動産の名義は、表札を変えただけでは変わりません。
固定資産税の納税者が変わっているから大丈夫というわけでもありません。

不動産の名義は、不動産登記の内容で決まります。
不動産登記の内容は登記簿や全部事項証明書で確認をする必要があり、
登記簿は登記所(法務局)で取得することができます。
また、インターネットで確認することもできます。(インターネット登記情報サービス)

いくら親の代から引き継いでいたとしても、不動産の名義が親や祖父母のままだと
自分が亡くなった際に子供たちにスムーズに引き継ぐことができません。

つまり、不動産の終活はまず登記簿を確認するところから始めるのがおすすめです。

じゃ、うちは新築住宅を買ったら大丈夫という方。
新築住宅を建てたり、買ったりしたときに、住宅ローンを組んでませんか?
それはすでに完済されているという方は、ちゃんと抵当権を抹消していますか?

住宅ローンを組んだ時、必ず抵当権の登記もされています。

その抵当権の登記は、住宅ローンを完済しても自動的に消えることはありません。
自分で抹消登記をしなければずーっと残ってしまします。

抵当権の登記が残りっぱなしだと、所有名義が変わっても不動産を売却することができないなど
やはりスムーズな承継の障害となります。

そのため、不動産の名義には心配はなくても、抵当権の登記が残っていないかなどを確認するために
不動産登記簿を確認してみるというのは、不動産の終活の第一歩としては大切なことかと思います。

不動産の終活は登記簿の取得からはじめてみてください。

成年後見制度の利用を検討する際の留意点3つ

2022-01-30 00:00:00 | 司法書士
成年後見制度とは、認知症などにより意思表示ができなくなった方(例えば高齢者)のために、
その高齢者の代理人として、入所施設などの契約や預貯金などの財産の管理を行う成年後見人を選ぶものです。

その成年後見制度の利用を検討する際の留意点を3つご紹介します。

①家庭裁判所に申し立てた後に取り下げはできない。

②後見が開始した後に制度利用をやめることはできない。

③予定していた後見人候補者が後見人に選任されるとは限らない。

少し詳しく見ていきます。

①家庭裁判所に申し立てた後に取り下げることはできない。
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立書を提出します。
この申立書を提出した後に、親族の都合などでその申し立てを取り下げることはできません。
成年後見制度は、あくまで、認知症などになった高齢者のため、高齢者を保護するためのものなので
親族の都合によって後見制度の利用の可否を判断することはできないためです。

むしろ、後見制度を利用しなければならない可能性があったにもかかわらず、親族の都合で取り下げる
ということは、親族の意向に反してでも高齢者を守るために後見制度を利用したほうが良いのではないか、
と考えることもできます。
後見制度の申し立ての判断は慎重に行ってください。

②後見が開始した後に制度利用をやめることはできない
これは後見が開始した後の話です。
後見は、ある目的のために申し立てられることが多いです。
例えば、遺産分割協議のためだったり、不動産の売却、高齢者施設への入所等です。
後見制度はその目的のためというよりは、高齢者のため、高齢者を守ってより良い生活を送ってもらうためのものです。
そのため、申し立ての目的を達した後も、後見制度をやめることはできません。
基本的には、亡くなるまで後見制度は続くことになります。

この点に関して付随する課題は、コストです。
親族が後見人であれば報酬は発生しませんが、司法書士等の専門家が後見人となった場合、一定の報酬が発生します。
この報酬は年に1回、裁判所が決定します。
報酬額は、業務内容や財産額等によって異なるようですが、目安としては月額あたり2~3万円、年額だと
20~40万円のことが多いようです。
このコストが亡くなるまで生じることになります。

③予定していた後見人候補者が後見人に選任されるとは限らない。
後見制度を申し立てる際に、申立書に後見人候補者を記載することができます。
ただし、後見人を決定するのは家庭裁判所です。
必ずしも候補者が選任されるとは限りません。
財産額が大きかったり、親族が対立しているなどの事情がある場合は、
候補者に親族の後見人を記載していても、専門家後見人が選任されることがあります。

なお、専門家が選任された場合、やはり報酬というコストは発生します。
上記②と同じような金額が必要になります。
また、専門家が選ばれたとしても後見をやめることはできません。
なぜなら、高齢者のためには専門家を後見人として選任したほうがよいと家庭裁判所が判断したからです。

後見制度の趣旨は、高齢者のため、高齢者の保護です。
決して、高齢者が認知症などになったために親族が困ってしまっている課題を解決するための制度ではありません。
その点をしっかりと認識して制度利用を検討されることをお勧めします。

相続登記が義務化されます(令和6年4月1日スタート)

2022-01-29 00:00:00 | 司法書士
令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったとき(=相続が生じたとき)、
その不動産の名義を相続人などに変更する登記手続きのことです。

その相続登記は、これまで義務ではありませんでした。
そのため、明らかに相続が生じているであろう古い名義のままの不動産であっても
相続人が登記申請をしない限り、そのままになっていました。

ところが、東日本大震災の際に相続登記が行われていなかったために、
現在の所有者がわからずに対応に困ったという事例が散見されたようなのです。

そこで、相続が生じた際は、必ず不動産の名義の変更を行うように
法改正が行われ、令和6年4月1日に開始されます。

ここで少し注意が必要なのは、義務化されるのは令和6年4月1日ですが、
対象となるのは、相続登記がされていないすべての不動産であるという点です。

つまり、令和6年4月1日以降に相続が生じた不動産だけではなく
義務化前に相続が生じていた不動産についても義務化の対象になっています。

例えば、すでに相続が生じている不動産があった場合、これまでは
「そのままでもいいかー」ということで放置しているものもあるかもしれませんが
義務化以降はそのような不動産も義務化の対象になります。

雑な言い方をすれば、これまで相続登記を行っていなかった不動産は、
早かれ遅かれ相続登記は行わなければならないということになります。

なお、義務化したにも関わらず放置をした場合、10万円以下のペナルティー(過料)の
対象になるとされています。

成年後見は誰のため?

2022-01-28 12:40:35 | 司法書士
成年後見制度をご存知でしょうか。

高齢者の方が認知症などにより、自分の意思表示ができなくなってしまったような場合に、
家庭裁判所での手続きにより行われる制度です。

具体的には、認知症などにより意思表示ができなくなった方(成年被後見人といいます)に成年後見人を選任します。
成年被後見人だと分かりにくいので、ここではおじいちゃんとしましょう。
成年後見人は、おじいちゃんの代理人です。

代理人のイメージとしては、親・子の関係に似ています。

親は子が成人に達するまでは子の代理人です。
親は子のために、買い物をしたり、塾や習い事の契約などをします。
お小遣いの管理などもしていますよね。

成年後見人も、おじいちゃんのために、施設入所や入院時の契約などをします。
預貯金などの財産の管理もします。
預貯金の管理とは、銀行口座を成年後見人名義に変更して、成年後見人しか利用できないようにしています。

このような成年後見制度なのですが、いま、さらっと「おじいちゃんのために」と書きましたが、実は、これがとても大切なのです。

成年後見人は、おじいちゃんのためにいろいろな仕事をします。
預貯金の管理ももちろんおじいちゃんのために行っています。

成年後見人しか預貯金の引き出しができないからと言って、決して成年後見人のための財産ではありません。

当たり前といえば、当たり前です。

しかし、ちゃんと「おじいちゃんのため」ということを常に意識をしていないと、いつの間にか
誰の預貯金なのか分からなくなってきてしまします。

そうなると、成年後見人による使い込みなどが生じてしまいます。

決して使い込みなどはあってはならないのですが、それを防ぐためにも、成年後見人は
年に1回、家庭裁判所にお仕事や財産状況を報告することになっています。