うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

白杖の青年

2013年07月08日 13時30分36秒 | わたしの日常です。
 先日の夕刻、仕事先には定時出勤、定時退社になっているわたしは、いつものように地元のマイナーな気動車に乗った。駆動音がうるさい、軽油で動くのか。私鉄である地方鉄道。たったの二両編成のワンマン車両の前部である。乗車は無人駅であり、なんとなく辺境のうらぶれた雰囲気である。
 ホームで見かけたのは高校生らしく下校後、着替えをしてきてからの外出姿のような、ひとりの女性であった。よそおいはフリルのついた半袖で、白っぽい地に花かマスコットをあしらったフレアっぽいワンピース姿。靴は赤いハイヒール。明るくて軽くて爽やかだ。わたしは世の偏見のせいでずっと注視するわけにもいかずにいる、しかしなんだか彼女はウキウキしている。

 わたしが乗り込むと、真向かいの席には隣の仮眠中の小柄な中年男性に少し寄りかかり目の不自由な30過ぎの青年が座っている。中肉中背で目は金壷眼だ。彼は小首をかしげ遠くで考え込むごとくに膝元の点字機器で何かを指先でなぞっている。デニムに似て厚い生地のスラックス、草木色のTシャツ、その上に長袖のこげ茶色のサマーセーターを身につけている。この季節には暑苦しくて地味な服装だ。足元にはナップザック、その裏には折りたたんだ白杖を置く。わたしの頭のなかで、一瞬、この子を育ててきた見知らぬ親のことがよぎる。臆面もなく、凝視しているわたし。同時に隣に座った高校生のかすかな挙動を感じた。
 すぐにJR駅に着き、わたしは、さあどうするかと見るともなく見ている。着いた起点のホームは、地下の倉庫じみていて壁はアースカラー、モルタル仕上げむき出しであり無機質感に満ち、掲示物や商業スペースもなくて殺風景である。非装飾的だ。うす暗い中には踊り場があり広い階段を上っていくとJRへの乗り換え口が階上にある。下車すると、彼は、やおら、ある若い男性の肩に手を置き乗り換えの状況を聞いている。そのままの姿勢で階段を上りきると、その男性と別れて、あの高校生に声をかけて案内を聞いている。だが、彼女は一生懸命答えようとしているが困惑気味のようだ。

 そしてわたしが乗るべき電車内に居たら、出発したばかりの車両の窓越しに、ホームに口惜しそうな顔をした青年がいた。その間、10数分のことだ。
 わたしにはどうしても、せわしない乗り換えなどの通勤事情があり、うんうんと、声をかけて誘導しなかった自分自身に恥じ入ることになった。
          
      

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