潜師

僕の唯一のアウトドア系の趣味といえばダイビングだけ。
１９歳でライセンスを取得し、一時は潜水作業技師を
目指したが挫折したｗ　潜水記録のログブックは
かれこれ、１５冊目になる。が、ここ２年、潜れていない。
僕の師は二人いる。一人は奄美大島に。もう一人は一時、
モルディブにいたが、今は消息不明。でも、きっと、どこかの
海を潜っているだろう。この師匠たちと前勤務先の会長に
連れられ世界中の殆どのダイビングスポットを潜った。
今思えば貴重な体験をさせて頂いた。
そんな奄美の師から、採用通知という題名の
暑中見舞いが来た。

「人不足、雇ってやるから来い！月１４万でどうだ！」

完全に”昭和”で時が止まっていらっしゃる。
平成も２０年を数えるのに、１４万で今を捨てて来い！
と言う師は、昔から滅茶苦茶だった。今思えば初対面の
ライセンス取得講習から、常軌を逸していた。
フィン（足ひれ）だけで海面を３Ｋｍも泳がされたり、全装備を
海中に落とされ、装着して３分以内に浮上して来いとか…。
僕は初めての事だったので、みんな、この苦痛に耐えて
ライセンス取得したんだと思い込んでいた。
ところが、次の日、楽しそうにやってる別のグループを見て、
自分の受けた講習との格差に噛み付いたら、

「いずれ、俺に感謝する日が来る。海、なめんな。」

と言われた。
でも、実際、この講習のお陰で何度も命拾いをした。
どの様な状況下でも冷静な判断と、無理をしないで
踏み止まる勇気を僕に叩き込んでくれた。ボートに置き去り
にされて、海面を４時間も漂う遭難もしたが、無事に
生還できた。

コードは必ず内側、マスクは額でなく首に、フィンを脱ぐのは
一番最後、ロールは最小限度、耳を澄まし海流を聞け、
太陽の位置を叩き込んでおけ、格好つけてヘッドファースト
などしなくてよい。そして、何度も言われた「落ち着け」
今でも、仕事で焦りかけたりすると「落ち着け」と師の声を
思い出している。
でも、師匠、僕、３７歳になります。いくら、島の暮らしに
お金がかからないと言えど、１４万って…評価低すぎです。

もう一人の師、ミゲールの話はまた、いつか書きます。