歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

アルは鎧、だから

2004年11月07日 | ◆真面目な考察・・・?
鋼の錬金術師
尊敬する兄弟ファンサイトの、9月12日の日記で。
「アルフォンスが鎧であるとき徹底してヒトガタの表情をつけない」ことを指摘されていて。
あっそうだ!そうだよねえ。

漫画の手法として、ロボットや戦闘機に乗ったキャラの表情をオーバーラップして描いて、その感情を示すってのがある。
でも、アルにはそれをしない。
アルはロボットでなく、人間。しかも2番目の主要人物だ。
それなのに、どんな感情も鎧だけで描く。そうだよ、これってすごい挑戦じゃん?

ねえ想像してみてよ。力強く頷くアル、深く悩み沈むアル。そのコマに、生身の少年のアルの、力強く目を開きちょっと額に汗の顔とか、伏目がちで眉をよせて唇をゆがめる顔とかを、オーバーラップして描いてあったら。
すっごい分かりやすいよね?
でも、しない。
アップ、背景、仰角、伏角、握る拳、隣りのエドの表情、陰のつけ方、台詞。そういうのだけで、描いてる。
作者はインタビューで書きやすいキャラとしてエド・アル・リザ・アームストロングを挙げることが多いけど、絶対アルが描きやすいことは無いとおもう。作画的には。

編集者が作者をストイックな人、と表現していたけど、そうだなと思う。安易に流されず挑戦する姿勢。
アルの生身の姿が出るのは、キャラ紹介話としての1,2話、ロックベル家の写真、回想シーン、真理の記憶がよみがえるシーン、だけ。
いっぱいケンカしたよな、オレ達。のシーンとかでも、いくらでも子供時代のアルを出せるけど、そうしない。


アルの生身の姿を出さない、特に10歳以降は決して出さない。
それは、物語りの主題が「身体を取り戻す」だから。
一貫したテーマ。賢者の石もホムンクルスも軍部も枝葉にすぎない。(とっても魅力的な枝葉だけどね!)

そうか、アルってほんとに、重要なキャラだったんだ!
鎧のアル。彼はこの物語りの象徴。今、これ書いてて改めて気付いたよ!

そして生身のアルを描かないのは、アルが身体を取り戻した時の感動を最大にするためだ、とも思ってた。
数年越しの、作者の、策略。


そう思っていたから。
小説4巻の巻末オマケのラフスケッチには、いやーびっくらこいた!
ほんとに驚いたよ!本屋で見た瞬間、周りの景色が消えたよ!


だけど、あの絵は、嬉しかった。
やっぱり絶対、アルは元に戻れるのだと、少年漫画らしくハッピーエンドで終わるのだと、そう確信してわくわくどきどき連載を楽しんでいいんだと、そういう作者のメッセージのように思えたから。(あくまでも、私個人的な思い込みですが!)


アルは鎧。だからタイトルロールである鋼の錬金術師のエドが生まれ、そうして物語りが始まる。



追記
冒頭にあげたファンサイトは「ケイカボク」です。
こちらの管理人様の日記にはいつもインスピレーションをいただいています。
このブログの9月16日イズミとシグにラブコメは必須、10月9日人間とかも、こちらの日記に触発された記事です。
知っている風景なのに視点を変えると新しい世界が見える。いつもありがとう。

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2 コメント

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Unknown (れたす)
2005-02-13 15:19:28
名無しでコメントしてたものです。失礼しました、思いつかなかったもので。れたすにしてみました。やさいです。

アルについて私なんかより深く考えて書かれていてすごいですね。小説版はみかけたことがなかったので、書店に並んでたら見てみようかな。

ハガレンは構想7年半らしいのでまだ半分。こんな楽しい物語を読んで行けるなんて、なんて贅沢!、と思いますね。
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れたす様こんにちは! (管理人)
2005-02-14 05:44:39
かわいいHNですね!どうぞよろしくお願いします。

私もアルファンのファンサイトで目からうろこがぼろぼろでした。アルは外見がああな分、読み込むほど広がりがあって、それで物語りそのものを見る視野まで広げられた気がします。

そうそう!連載に同時進行してハラハラドキドキできるって、幸せですよね!
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