柳広司は頭がいいんだろうなあと思いながら読んでいる。
秀才タイプ。その分、わずかにあっさりしすぎかという気もするが、話としては好きだ。
1年ちょっと前に初めて作品を読んで、今まで6、7冊読んだか。
本作は久々にがっつり書き込んだ作品かなと思う。
何の話かというと、……何の話だっけ?2日前に読んだら内容を忘れてしまった。
まあ戦後の話ですよね。戦犯を収容している巣鴨プリズンを舞台に、殺人事件、
記憶喪失の謎の男、男の婚約者とその兄、友人を探すニュージーランド人の私立探偵。
それらと歴史上の出来事を組み合わせてけっこう込み入った話を作っている。
面白かったですよ。
ミステリとしても面白かったが、
その他に「戦争」についての作者の考え方がほの見えるのが面白い。
太平洋戦争≒日本にとっての第二次世界大戦、は従来軍部の暴走と言われているが、
実は誰が主導したわけでもない、立場が違うさまざまな人々――それは天皇だったり、
首相だったり、軍人だったり、一般国民だったり――が、他者の「気分」「雰囲気」に
引きずられていった結果だとする。
これはわかるなあ。
軍部が自分たちの権限強化のために戦争をしたがったという側面も全くないとは思わないけど、
軍部は天皇の意思を忖度したかもしれないし、国民は「勝てる戦争だ」と思わされて
安易に考えていた部分もあるだろうし、そのなんとなくの国民(というより大衆)の
「気分」が政治家側への圧力となった部分はあるだろう。
誰の意志でもない。そしてそれは誰の意志でもありうる。
だがみんな自分ではない「誰か」のせいだと思っていて、責任をとることはない。
戦争にそんな安易に「気分」で突入してしまうことがありうると思うとぞっとするよね。
もし、たとえば今北朝鮮のミサイルが、故意にしても過失にしても日本のどこかに
落ちたら、実際的にも戦争を始めずにはいられないだろう。
そしてその時、わたしは自分が反戦の声を上げるとは思えない。
日本人の99%は(数字に議論はあるだろうが)問いかければ「戦争はしてはいけない」と
答えるだろう。でも実際に攻められた場合、そういう理念で動けるとは思えない。
どこかの誰かが、政治家が、うまく対応してくれるだろう。――そう考えて、
(コロナ禍の時に、政治家の能力は思ったよりさらに低いと認識したにも関わらず)
もし彼らが選ぶ方法が戦争であっても、文句は言わないだろう。
というか、文句をいうだけしかしないだろう。他人ごとでしかない。
だって怖いし。いつ落ちてくるかわからないミサイルで死ぬのはごめんだ。
理念ではあくまでも戦争は悪だが、実際に自分の命が危ないとなると。
ミサイルが落ちてくることはないだろう、なんて言えない。
わたしはまさかニューヨークの摩天楼に飛行機が突っ込むなんて想像もしてなかった。
でもあの映像は映画じゃなかった。映画だと思ったのに。映画であってほしかったのに。
そしてその報復として、アメリカが軍を動かすなんて思わなかった。
世界の主要国はもう、戦争をしない選択が出来るくらいの賢さは得ていると思っていたのに。
※※※※※※※※※
――まあ本作はそういうことも考えさせるけれども、基本はエンタメなので、
とめどなく落ち込むということはない。
だがしかーし、実は謎解き部分は不満がある。
ネタバレあります。
あの人の告白文が納得できないのよねー。
告白文自体で説明するのも若干安易だと思ったけど、何よりその内容がさー。
そこまで来てるのに、いよいよ実行するのをためらうっておかしくない?
いやもう、人生をかけてわざわざここまで来てるんだよ?
ま、いうて人を殺すことだからためらうのはあり得ないことではないだろうけど、
その間に不慮の事故が起こって2人が死ぬって……安易だと思う。
面白く読んでいたが、ここで一気に醒めたこともたしかなのよね。
そこがもう少しきっちりまとまっていたらずっと面白かったと思うが。
その後も一どんでんあるし、まあ致命的とまでは言わんが、2割くらいは面白さ減。
全体的には面白かったので、読むかどうか迷っている人がいたら読むのをおすすめするが、
ただ終盤ちょっと冷める部分があることは予告しておきたい。
秀才タイプ。その分、わずかにあっさりしすぎかという気もするが、話としては好きだ。
1年ちょっと前に初めて作品を読んで、今まで6、7冊読んだか。
本作は久々にがっつり書き込んだ作品かなと思う。
何の話かというと、……何の話だっけ?2日前に読んだら内容を忘れてしまった。
まあ戦後の話ですよね。戦犯を収容している巣鴨プリズンを舞台に、殺人事件、
記憶喪失の謎の男、男の婚約者とその兄、友人を探すニュージーランド人の私立探偵。
それらと歴史上の出来事を組み合わせてけっこう込み入った話を作っている。
面白かったですよ。
ミステリとしても面白かったが、
その他に「戦争」についての作者の考え方がほの見えるのが面白い。
太平洋戦争≒日本にとっての第二次世界大戦、は従来軍部の暴走と言われているが、
実は誰が主導したわけでもない、立場が違うさまざまな人々――それは天皇だったり、
首相だったり、軍人だったり、一般国民だったり――が、他者の「気分」「雰囲気」に
引きずられていった結果だとする。
これはわかるなあ。
軍部が自分たちの権限強化のために戦争をしたがったという側面も全くないとは思わないけど、
軍部は天皇の意思を忖度したかもしれないし、国民は「勝てる戦争だ」と思わされて
安易に考えていた部分もあるだろうし、そのなんとなくの国民(というより大衆)の
「気分」が政治家側への圧力となった部分はあるだろう。
誰の意志でもない。そしてそれは誰の意志でもありうる。
だがみんな自分ではない「誰か」のせいだと思っていて、責任をとることはない。
戦争にそんな安易に「気分」で突入してしまうことがありうると思うとぞっとするよね。
もし、たとえば今北朝鮮のミサイルが、故意にしても過失にしても日本のどこかに
落ちたら、実際的にも戦争を始めずにはいられないだろう。
そしてその時、わたしは自分が反戦の声を上げるとは思えない。
日本人の99%は(数字に議論はあるだろうが)問いかければ「戦争はしてはいけない」と
答えるだろう。でも実際に攻められた場合、そういう理念で動けるとは思えない。
どこかの誰かが、政治家が、うまく対応してくれるだろう。――そう考えて、
(コロナ禍の時に、政治家の能力は思ったよりさらに低いと認識したにも関わらず)
もし彼らが選ぶ方法が戦争であっても、文句は言わないだろう。
というか、文句をいうだけしかしないだろう。他人ごとでしかない。
だって怖いし。いつ落ちてくるかわからないミサイルで死ぬのはごめんだ。
理念ではあくまでも戦争は悪だが、実際に自分の命が危ないとなると。
ミサイルが落ちてくることはないだろう、なんて言えない。
わたしはまさかニューヨークの摩天楼に飛行機が突っ込むなんて想像もしてなかった。
でもあの映像は映画じゃなかった。映画だと思ったのに。映画であってほしかったのに。
そしてその報復として、アメリカが軍を動かすなんて思わなかった。
世界の主要国はもう、戦争をしない選択が出来るくらいの賢さは得ていると思っていたのに。
※※※※※※※※※
――まあ本作はそういうことも考えさせるけれども、基本はエンタメなので、
とめどなく落ち込むということはない。
だがしかーし、実は謎解き部分は不満がある。
ネタバレあります。
あの人の告白文が納得できないのよねー。
告白文自体で説明するのも若干安易だと思ったけど、何よりその内容がさー。
そこまで来てるのに、いよいよ実行するのをためらうっておかしくない?
いやもう、人生をかけてわざわざここまで来てるんだよ?
ま、いうて人を殺すことだからためらうのはあり得ないことではないだろうけど、
その間に不慮の事故が起こって2人が死ぬって……安易だと思う。
面白く読んでいたが、ここで一気に醒めたこともたしかなのよね。
そこがもう少しきっちりまとまっていたらずっと面白かったと思うが。
その後も一どんでんあるし、まあ致命的とまでは言わんが、2割くらいは面白さ減。
全体的には面白かったので、読むかどうか迷っている人がいたら読むのをおすすめするが、
ただ終盤ちょっと冷める部分があることは予告しておきたい。
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