プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展

2020年08月23日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館で開催中。9月6日まで。

ここ10年くらいで日本画も好きになってきましたが、
やっぱり時々どっぷり西洋美術に触れたくなります。なんかほっとする。
ほっとするというのとは違うか。でも一歩入った時に漂う油絵の匂い(?)が
なつかしい。

今回入口ののところに飾ってあるポスターというか、垂れ幕が印象的でした。
お花の絵。あっ!誰の作品か控えてくるの忘れた!
展示品目録を見ても、タイトルでそれらしいものが見当たらない!しまった!

……しかし今回は大丈夫。珍しく図版を買って来たんです。
図版というのは、許されるものならば気に入ったエキシビのものは全部欲しいけど、
ちょっと高いしかさばるし……もう本棚に空いてるところがなくて、
文庫本さえ思ったようには買えない。いわんや図版においておや。

でも今回は買っちゃいました!
約2000円でこの本の体裁ならお値打ちだと思うくらいきれいな本だったんです!
版型は変型で20.5センチ四方の多分ほぼ正方形。
表紙はフェルディナンド・ゲオルク・ヴァルトミュラー「磁器の花瓶の花、燭台、銀器」。
背景が黒でとてもきれい。

もうこの図版を買っただけで行って良かった!
このまま飾っておきたい。部屋に置くと日焼けするんだけど、どこに置こうかなあ。


※※※※※※※※※※※※


作品としてはみんな水準以上。みんないい。
みんないいが、絵画史上スーパースター級の有名画家の作品はあんまりない。
ルーカス・クラナッハとルーベンスが何枚か来ているくらい。

室内装飾画としての一級品ですね。やっぱりリヒテンシュタイン公爵家は
ヨーロッパの名家、そこが持っている絵がダメなわけがない。
高度な美的センスにより選び抜かれた逸品。

逸品ぞろいだが、個々の作品についてそれほど語るべきことはない。
見ててとても楽しいけれども。言葉を引きだすかというと。
まあわたしの感受性の問題なんですけれども。


でも一族の肖像画はみなものすごく良かった!
アイドルっぽい人がいたり、少女マンガに出てくるような貴族の少年がいたり。
こういうのをセンスのいい邸宅の壁に飾っていたんだろうなあ。

「レオポルディーネ・アーデルグンデ」(侯爵侯女)が可愛かったなー。
顔も可愛いし、理知的だし、真珠の光沢もレースの袖口も美しかった。
レースの袖口部分だけを切り取って画面構成が出来そうなほど。

「リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像」
これが少女マンガの貴族。美形のみならず、8才にしてこの憂いを秘めた表情。
現代のアニメキャラにしたらファンがつくこと間違いなし。

全体はだいたいバロックか古典主義だったんだけど、少しルネサンスも混じってる。

マルコ・バザイーティ「聖母子」
セバスティアーノ・マイナルディ「洗礼者聖ヨハネと天使二人といる聖母子」
が、とりわけ初期ルネサンスっぽい雰囲気だった。
マイナルディはボッティチェリの「ザクロの聖母」を思い出させる。
天使が頭を寄せ合う様子とか。

ルーカス・クラナッハ(父)「聖バルバラ」
宝石のような一枚。かなり小さめの板画だけど、赤がきれいでルビーのよう。
この赤のつややかさは印刷物では出ない。衣装の模様も細かくて。
どんな筆で描いているのかと思うほど。


陶器もかなりあった。景徳鎮、有田……。しかし西洋は磁器をとにかく金で
ゴテゴテと飾るのね。あれは普通の壺を切り離したりして加工して作るんだろうけど、
こっちにしてみれば異様に映る。

美意識が違うというのは当然のことだけれど、異国の美術をむりやり加工して
合わせてしまうのは乱暴な話。異国は異国として楽しむという姿勢はなかったのか。
まあでも日本だって擬洋風建築のような異様なキメラを生んでるわけだしね。
人のことはいえないか。

コーヒーカップ。ティーセット。美術館を彩るにふさわしい手を尽くされた名品。


花の絵も良かったなー。
最初に触れた花の絵は、
ヨーゼフ・ニッグ「白ブドウのある花の静物」「黒ブドウのある花の静物」でした。
なんとこれが……陶板画!
すっかり見逃していたわー。わたしの目は相変わらずフシアナか。

花の絵が表紙になった図版を横に置いて眺めて、幸せ。



だいたい1時間半ほどかけてみて来た。展示品の数はそこそこたっぷり。
一つ一つのサイズはそこまで大きなものではないけど、物足りなさはなかった。
邸宅コレクションは総合的に見せてくれるから面白いですよね。
リヒテンシュタン家の明るく、知性的な方向性が素敵。




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