The Little Yellow Leaf
秋になりました。大きな樫の木に、黄色くなった小さな葉っぱが必死でしがみついています。風が吹くたびに赤や黄色の葉っぱが樫の木のまわりをくるくると舞って飛んでいきます。でも小さな黄色い葉っぱは「まだ、だめ・・・まだ・・・(I'm not ready..., not yet)」と呟いては、樫の木にしがみついています。
小さな黄色い葉っぱの周りで、秋がどんどん深まります。やがてリンゴが実り、パンプキンが収穫され…冷気があたりを満たします。でも小さな黄色い葉っぱはまだ飛び出す決心がつかずに、じっと樫の木にしがみついていました。
そんなある日、別の、やっぱり凍えそうに冷たい枝に残っていた赤い葉っぱが、小さな黄色い葉っぱに聞きました、「ねぇ、行く?(Will you?)」小さな黄色い葉っぱはすかさず「うん、行く!(I will)」と答え、そして2枚の葉っぱは一緒に枝を離れ、風に乗って高く舞い上がって、くるくると踊りながら飛んでいきました。
シンプルで美しい響きのテキストは、すっきりした秋の透明な陽ざしに満ちたような明るい印象の色づかいの、でもどこか古典的な雰囲気のイラストとよくマッチして、ノスタルジックで、小さな黄色い葉っぱの震えるような想いと、精一杯の勇気を振り絞る様子がよく伝わってきます。
こう描写すると、なんだか辛いのですが、でも幼稚園の先生に聞いてみたら、小さな子はこのお話が好きなのだそうです。「まだ、だめ…」not yet…のところでは、みんな真剣な表情で聞いているそうです。そして最後に「小さな黄色い葉っぱがくるくると飛んでいくところでは、子どもたちも、晴れやかな、満足そうな顔をするのよ」と教えてくれました。きっと友達と一緒なら勇気凛凛、と共感するのでしょう。
カリン・バーガー(Carin Berger)の"The Little Yellow Leaf"です。
子どもには言えませんが、何故かページを繰りながら、私には、幼い息子を残して若くして亡くなった親友が思われてなりませんでした。
人一倍健康で病気一つしなかった彼女の大学時代の悩みは、「友達がみんな自分より先に死んで、一人になっちゃったら、寂しくていられない。どうしよう…。それに、友達を看取るのも辛くていやだなぁ…」というもので、私たちは皆そんな彼女の心配症を笑ったものでした。寮のルームメートだった私は、彼女がそう言いだすたびに「わかった、わかった。じゃあ私が死ぬ時は、一緒に連れて行ってあげるから」と冗談を言って慰めていました。当時、私は虚弱で病気ばかりしていて、やれ膠原病だ、リューマチだ、多発性筋炎だと疑われてばかりいましたから、あながち冗談にも聞こえなかったかもしれません。
でも、運命は皮肉です。あんなに丈夫だった彼女が、クラスメートの誰よりも先にあっけなく逝ってしまい、ひ弱だった私が残されてしまいました。彼女の言うとおりでした。残されるのはほんとうに寂しい…。