ジャック(Jack Andraka)は15歳、メリーランド州に住む高校生です。ニキビあとの目立つ、まだ幼さを残した彼の研究が、今年(2012年度)、インテル社が主催する「国際学生科学技術コンテスト:ISEF(International Science and Engineering Fair)」で世界一に選ばれました。
ジュニアノーベル賞というニックネームでも呼ばれる「国際学生科学技術コンテスト」はアメリカで半世紀以上続いてきた科学フェアに、1997年からインテル社がスポンサーとなったもので、世界中の優秀な高校生が集まることで知られていますが、入賞者に高額の賞金が出る学生コンテストとしても知られています。ファイナルで1位になったジャックに授与された賞金は7万5千ドルです。
ジャックの研究/発明は、膵臓がんを早期発見するための革新的な検査技術です。発見がむずかしいとされてきた膵臓ガンの早期発見をめざして研究を続け、「膵臓ガン検出のマーカーとなる抗ヒトメソテリン抗体と単層カーボンナノチューブとを混合して紙片(フィルター紙)にコーティング(塗布)した検査用試験紙」の作成に成功しました。
ジャックの発明は、文字通りのブレイクスルーです。検出の精度は90%以上ですが、検査にかかる時間はわずか5分程度で、従来の検査に比べ168倍も速いのです。一方、検査用紙1枚はわずか約3円と、従来の検査コストの 1/26,000 、まさにイノベーションです。
ジャックの研究の動機は、おじさんを膵臓がんで亡くしたことです。幼なかった彼には、当時、ガンの何たるかも、ドクターや周囲のおとなが語る「もっと早くにわかっていれば・・・」の意味も、何もわかりませんでした。しかし、「ガン」「早期発見」等の言葉は、おじさんを亡くした悲しみとともに、ジャックの脳裏にしみこんで消えませんでした。成長するにつれ「どこかに、まだ早期発見の技術を必要としている人がいるはず」と考えるようになり、それなら自分がそれを見つけよう!と考えました。
関連の論文を読みまくり、考え続けた彼がひらめきを得たのは化学の授業中にこっそり読んでいた雑誌の記事(カーボンナノチューブについて)と、そのときの授業内容(抗体について)の融合からだったそうです。その後は自宅で研究を続けましたが、ついに自宅ではできない実証実験段階にいたり、実証実験のできる大学や研究施設のある病院に研究プロポーザルを送りつづけます。200通送って、199通は断られましたが、最後の1通を受け取ったジョンズホプキンス大学の研究室に受入れられて研究を完成させました。
受賞の瞬間のジャックの喜びようをYouTubeでご覧下さい。
子ども時代の夢を忘れずに・・・とはよく言いますが、子どもというのは、このスケールで夢を実現してしまうものなのですね。ジャックは1997年生まれ。奇しくも、1997年はインテルが「国際学生科学技術コンテスト」のスポンサーになった年です。
明日のジュニアノーベル賞は誰の手に? ホリデーシーズンのプレゼントに科学の本はいかがですか?
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