お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

アメリカの受験

2009-04-20 | from Silicon Valley


4月。日本は進級・進学の季節ですね。アメリカも、9月からの進学の合否が発表される季節です。この時期、アメリカでも、受験生を持つ家族は大変に神経質になります。残念ながら、毎年かならず若い自殺者が出るのもこの季節です。

日本の受験の大変さは、一日だけの入学試験の成績で合否が決まってしまうこと。受験の日に熱でも出たら、すべての努力が水の泡ですよね。また、行きたい学校が二つあっても、受験日が重なれば一校だけしか受けられません。

これに比べるとアメリカの受験は気楽に見えます。入学審査はほとんど書類選考だけで、入学試験はなく、受験生はいくつの学校に併願してもかまわないので、行きたい学校を受けないであきらめるなんてこともありません。出願には標準学力テスト(いわゆるSAT;Standard Achievement Test)の成績を要求されるので、試験は受けなければなりませんが、でも、年に数回実施されるSATから都合のよい日を選んで受験でき、成績が思わしくなかったら受けなおすことともできます。

でも、実は、アメリカの受験には一発勝負でないからこその大変さがあります。

アメリカの入試で受験生が提出を求められるのは、次のようなものです。
● 学校の成績:いわゆるGPA(Grade Point Average)スコア
● 標準学力テストの成績(上述のSATの点数)
● 学業以外の活動実績(音楽、美術、スポーツなど)
● コミュニティサービスの実績(いわゆるボランティア活動)
● リーダーシップを発揮した経験の有無とその活動実績
● 課題作文および自由作文(テーマはたいていの学校に共通で「この学校を選んだ理由/出願理由」と「自分自身について」を問うものです)
● 推薦書(担任の先生やコーチなどの指導者からの)最低2通
● 出願校の卒業生などによる面接

興味深いのは、これら、受験に求められるドキュメントは、中学校受験から大学さらには大学院まで(ロースクールやビジネススクールあるいはメディカルスクールも含めて)、ありとあらゆる入試に共通だということです。実際、うちの娘が中学を受験していた同じ年に、私のアシスタントが医学部を受けていたのですが、出さなければならないドキュメントは両者ほとんど同じでした。むしろ中学受験の娘の方が作文や推薦書のリクエスト数が多く、おそらくは学業成績の比重の重かった医学部受験生よりも分厚い願書を出しました。

アメリカの受験は知識の詰め込みでは対応できません。学校の成績や試験のスコアが優れていることは必要条件ですが、それだけでは必要十分ではありません。問われのは、中学受験なら12歳までの、高校受験なら15歳までの、大学受験なら17歳までの、要するに受験の時点までの受験生の人生の総体だと言っても過言ではないくらいです。

そして、中学校であると大学あるいは大学院であるとを問わず、アメリカでは学校が生徒に問い、生徒に求めることには明確な一貫性があります。よき学徒たれ。よき市民たれ。よきリーダーたれ。これらすべての役割をバランスよく果たせ。アメリカの学校が受験で問い、それによって受験生に投げかけるメッセージは、つまりはアメリカ社会が明日の市民として期待する人間像なのです。

自分がそうした期待に応えられる人間であると、少なくとも将来そのようになれると証明するためには、いわゆる「受験勉強」だけでは間に合わないのです。アメリカの受験の大変さは、ここにあります。


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