山王 44
湘北 31
ハーフタイムを迎えている。
記者席。
「予想以上の得点差ですね・・・。湘北、大丈夫かな・・・。」
「福原君の活躍が素晴らしいわね。今大会、一番の動きを見せている。
何が何でも勝ちにいく気持ちと、何か違うもう一つの信念みたいなものを感じるわ。」
「決勝の舞台で、実力以上のものを見せれるなんて、大物ですね。」
観客席の陵南。
弥生らと同じ話をしていた。
「快のやつ。めちゃくちゃ巧くなっている。」
「ずっと同じチームで、同じような実力でやっていたのにな。
手の届かない存在になっちまったみたいで、なんか悔しいな。」
「それは違うで、空斗!わいらは、夏に優勝したんや!
きっと、福原君も今の空斗と同じような気持ちになって、一生懸命努力したからあの場所におるんや!
わいらももっと努力したら、きっとまた1番になれるで!!!」
「彦一さん・・・。」
「お前が言えた言葉じゃない。お前がもっと頑張れ。」
「なっ。フクさん・・・。せっかく、ええ言葉ゆうたのに・・・。」
そこへ。
「ふーーーー。ようやく辿り着いた・・・。」
「かっ監督!」
「お疲れ様です。」
「遅かったですね。」
「遅かったですねじゃない、バカもの!!ったく。
誰のせいで、こうなったと思っておるのだ!ぶつぶつ・・・。」
田岡の髪は乱れ、明らかに疲れた表情を浮かべていた。
「で、どうだ?試合のほうは?得点を見る限り、山王が随分押しているようだが。」
「その通りです。山王はチーム力で攻め、湘北は個人技中心。
これでは、なかなか差は縮まりません。」
と黒川が答えた。
「個でも同等以上の相手に、チームで攻めないでどうなる?安西先生は?」
「まだ、動いていませんが、どうやら選手を変えるようですよ。」
湘北ベンチ。
「みなさん、どうやら山王戦ということで少し飲まれてしまっているようですね。」
「そんなことはないぞ!キツネは知らんが!」
「うるせー。ド素人。」
「攻守ともに、眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。
そのため、無謀で強引なシュートばかりを打つはめに。
幸運にもシュートは決まっているようですが、これでは良いリズムは生まれません。」
(福原ばかりに気をとられている俺のことか。)
(柳葉さんの抑えるということに拘りすぎて、オフェンスも萎縮してしまっていたということか。)
(ちっ、また自分ばかりで一杯一杯になってしまい、みんなをフォローすることができなかった。)
(沢北・・・。)
「どうやら、庶民どもは心当たりがあるようだな。俺はないぞ!ハッハッハ!!」
「桜木君も同じです。ゴール下を守るといったにもかかわらず、河田君や福原君にシュートを許している。
カバーを怠っているのでないでしょうか。」
「ぬっ。」
「ここは少しリズムを変えます。柳君、緑川君と交代です。」
「はい・・・。」
「緑川君を投入する目的は一つ。山王のディフェンスを広げること。
緑川君は、チャンスと思ったら、打ってください。リバウンドは桜木君が獲ります。」
「もちろんだ!オヤジ!!俺のリバウンドをよく見てろよ!!」
「先生にえらそうな口を叩くな!」
「柳君。君のおかげで、柳葉君は後半失速するかもしれません。」
「えっ。」
「得点は奪われてはいましたが、君のスピードとディフェンスは、効いています。ボディブローのようにね。」
「はっはい。」
(そうは思えなかったけど・・・。)
「宮城君。私の指示があるまで、ゲームメイクは任せましたよ。」
「はい。」
「白田君。」
「はい。」
「自分より低い相手だからといって、ゴール下で勝負しなくてもいいんですよ。
君は、ゴール下だけの選手じゃない。」
「はっはい!」
(・・・・・・。そっそうか。福原に固執するあまり、攻めが単調になっていたかもしれない・・・。
眼の前の相手ばかりってそういうことか・・・。)
「流川君。」
「んっ。」
湘北の作戦会議は続いた。
対して、山王ベンチ。
「上出来だ!!」
『パンパン!!』
手を叩きながら、選手を迎え入れる堂本。
「いい動きだ。福原。」
堂本は福原の肩を叩きながら、声をかけた。
「ありがとうございます。」
選手たちが、堂本の周りに集まる。
「前半で13点差。普段の相手なら安全圏に近いリードだといえる。だが、リードなど忘れよう。
相手は湘北、20点差をひっくり返したチームだからな。」
「はい!!」
「沢北、流川はどうだ?」
「パスを覚えたおかげで、オフェンスの幅が広がった。ディフェンスするのも一苦労ですよ。
ただ、1on1は以前ほど、怖くなくなった。
どうやら、やつの優先順位は、パスが1番になっちまったようです。らしくないですね。」
「例え、1on1だけでも、お前には敵わないだろう。」
「ありがとうございます。」
沢北は、流川を睨む。
(流川、もっと攻めて来いよ!!全力でよ!!!)
「敏君、大丈夫?いつもより、疲れているように見えるけど。」
『プルプル。』
首を横に振る柳葉。
「なら、いいけど。後半も頑張ろうね。」
『コク。』
普段と変わらぬ得点を奪っていた柳葉。
そのため、周りのものは気付いていなかった。
柳葉のわずかなリズムの乱れを。
元来、超がつくほどの人見知り。
普段から、前半は相手の様子を伺いながら、オフェンス。
それでも、高いオフェンス力を誇っていた柳葉は、次々に得点を量産していた。
後半は、抑えていた体力で爆発的な得点を奪う。
そんなプレースタイルを持っていたのが、柳葉であった。
しかし、今日の湘北戦。
スタートから、柳の激しいディフェンス。
スピードで振り切ろうともなかなか振り切れないず、
この第2Qまでに後半に使う体力までも消耗していた。
そのことに感づいていたのは、親友の河田、湘北の安西、そして、堂本であった。
(柳葉は、少しオーバーペースかもしれないな・・・。)
「烏山、いつでもいけるように準備しとけ!」
「へっ。待ちくたびれましたよ!!」
再び、湘北ベンチ。
安西は、流川に向かって話をしている。
「流川君のパスは、山王に脅威を与えていますが、沢北君には逆効果かもしれません。」
「むっ。」
(どういうことだ??)
「オフェンスの基本は、最初にゴールを見ることです。味方を探すことじゃありません。
特に君は、チームのエースとして点を獲る使命がある。
1on1、パス、使い分けは難しいですけどね。ほっほっほ。」
「使い分け・・・。」
流川は一人考えるのであった。
「オヤジ!俺は!!」
「桜木君は・・・。」
両校の監督、選手の思惑が交錯する中、第3Qが開始された。
山王 44
湘北 31
続く。
湘北 31
ハーフタイムを迎えている。
記者席。
「予想以上の得点差ですね・・・。湘北、大丈夫かな・・・。」
「福原君の活躍が素晴らしいわね。今大会、一番の動きを見せている。
何が何でも勝ちにいく気持ちと、何か違うもう一つの信念みたいなものを感じるわ。」
「決勝の舞台で、実力以上のものを見せれるなんて、大物ですね。」
観客席の陵南。
弥生らと同じ話をしていた。
「快のやつ。めちゃくちゃ巧くなっている。」
「ずっと同じチームで、同じような実力でやっていたのにな。
手の届かない存在になっちまったみたいで、なんか悔しいな。」
「それは違うで、空斗!わいらは、夏に優勝したんや!
きっと、福原君も今の空斗と同じような気持ちになって、一生懸命努力したからあの場所におるんや!
わいらももっと努力したら、きっとまた1番になれるで!!!」
「彦一さん・・・。」
「お前が言えた言葉じゃない。お前がもっと頑張れ。」
「なっ。フクさん・・・。せっかく、ええ言葉ゆうたのに・・・。」
そこへ。
「ふーーーー。ようやく辿り着いた・・・。」
「かっ監督!」
「お疲れ様です。」
「遅かったですね。」
「遅かったですねじゃない、バカもの!!ったく。
誰のせいで、こうなったと思っておるのだ!ぶつぶつ・・・。」
田岡の髪は乱れ、明らかに疲れた表情を浮かべていた。
「で、どうだ?試合のほうは?得点を見る限り、山王が随分押しているようだが。」
「その通りです。山王はチーム力で攻め、湘北は個人技中心。
これでは、なかなか差は縮まりません。」
と黒川が答えた。
「個でも同等以上の相手に、チームで攻めないでどうなる?安西先生は?」
「まだ、動いていませんが、どうやら選手を変えるようですよ。」
湘北ベンチ。
「みなさん、どうやら山王戦ということで少し飲まれてしまっているようですね。」
「そんなことはないぞ!キツネは知らんが!」
「うるせー。ド素人。」
「攻守ともに、眼の前の相手ばかりを見て、周りの状況を把握できない。
そのため、無謀で強引なシュートばかりを打つはめに。
幸運にもシュートは決まっているようですが、これでは良いリズムは生まれません。」
(福原ばかりに気をとられている俺のことか。)
(柳葉さんの抑えるということに拘りすぎて、オフェンスも萎縮してしまっていたということか。)
(ちっ、また自分ばかりで一杯一杯になってしまい、みんなをフォローすることができなかった。)
(沢北・・・。)
「どうやら、庶民どもは心当たりがあるようだな。俺はないぞ!ハッハッハ!!」
「桜木君も同じです。ゴール下を守るといったにもかかわらず、河田君や福原君にシュートを許している。
カバーを怠っているのでないでしょうか。」
「ぬっ。」
「ここは少しリズムを変えます。柳君、緑川君と交代です。」
「はい・・・。」
「緑川君を投入する目的は一つ。山王のディフェンスを広げること。
緑川君は、チャンスと思ったら、打ってください。リバウンドは桜木君が獲ります。」
「もちろんだ!オヤジ!!俺のリバウンドをよく見てろよ!!」
「先生にえらそうな口を叩くな!」
「柳君。君のおかげで、柳葉君は後半失速するかもしれません。」
「えっ。」
「得点は奪われてはいましたが、君のスピードとディフェンスは、効いています。ボディブローのようにね。」
「はっはい。」
(そうは思えなかったけど・・・。)
「宮城君。私の指示があるまで、ゲームメイクは任せましたよ。」
「はい。」
「白田君。」
「はい。」
「自分より低い相手だからといって、ゴール下で勝負しなくてもいいんですよ。
君は、ゴール下だけの選手じゃない。」
「はっはい!」
(・・・・・・。そっそうか。福原に固執するあまり、攻めが単調になっていたかもしれない・・・。
眼の前の相手ばかりってそういうことか・・・。)
「流川君。」
「んっ。」
湘北の作戦会議は続いた。
対して、山王ベンチ。
「上出来だ!!」
『パンパン!!』
手を叩きながら、選手を迎え入れる堂本。
「いい動きだ。福原。」
堂本は福原の肩を叩きながら、声をかけた。
「ありがとうございます。」
選手たちが、堂本の周りに集まる。
「前半で13点差。普段の相手なら安全圏に近いリードだといえる。だが、リードなど忘れよう。
相手は湘北、20点差をひっくり返したチームだからな。」
「はい!!」
「沢北、流川はどうだ?」
「パスを覚えたおかげで、オフェンスの幅が広がった。ディフェンスするのも一苦労ですよ。
ただ、1on1は以前ほど、怖くなくなった。
どうやら、やつの優先順位は、パスが1番になっちまったようです。らしくないですね。」
「例え、1on1だけでも、お前には敵わないだろう。」
「ありがとうございます。」
沢北は、流川を睨む。
(流川、もっと攻めて来いよ!!全力でよ!!!)
「敏君、大丈夫?いつもより、疲れているように見えるけど。」
『プルプル。』
首を横に振る柳葉。
「なら、いいけど。後半も頑張ろうね。」
『コク。』
普段と変わらぬ得点を奪っていた柳葉。
そのため、周りのものは気付いていなかった。
柳葉のわずかなリズムの乱れを。
元来、超がつくほどの人見知り。
普段から、前半は相手の様子を伺いながら、オフェンス。
それでも、高いオフェンス力を誇っていた柳葉は、次々に得点を量産していた。
後半は、抑えていた体力で爆発的な得点を奪う。
そんなプレースタイルを持っていたのが、柳葉であった。
しかし、今日の湘北戦。
スタートから、柳の激しいディフェンス。
スピードで振り切ろうともなかなか振り切れないず、
この第2Qまでに後半に使う体力までも消耗していた。
そのことに感づいていたのは、親友の河田、湘北の安西、そして、堂本であった。
(柳葉は、少しオーバーペースかもしれないな・・・。)
「烏山、いつでもいけるように準備しとけ!」
「へっ。待ちくたびれましたよ!!」
再び、湘北ベンチ。
安西は、流川に向かって話をしている。
「流川君のパスは、山王に脅威を与えていますが、沢北君には逆効果かもしれません。」
「むっ。」
(どういうことだ??)
「オフェンスの基本は、最初にゴールを見ることです。味方を探すことじゃありません。
特に君は、チームのエースとして点を獲る使命がある。
1on1、パス、使い分けは難しいですけどね。ほっほっほ。」
「使い分け・・・。」
流川は一人考えるのであった。
「オヤジ!俺は!!」
「桜木君は・・・。」
両校の監督、選手の思惑が交錯する中、第3Qが開始された。
山王 44
湘北 31
続く。