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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#239 【流川の困惑】

2009-12-08 | #09 湘北 県予選編
残り74秒。


陵南 96
湘北 93




会場は、緊張感が漂い、選手の動きに視線を注ぐ。




「あと、1分・・・。」

「どっちだ!?」

「陵南が逃げ切るか!?」

「湘北が逆転するか!?」

「眼が離せない!!」




湘北のオフェンス。


宮城が冷静に戦況を確かめる。


(まず1本。この1本が決まらねぇと何も始まらねぇ・・・。やはり、ここは・・・。)




「流川だろうな。」

と腕組の田岡。

(止めろ!仙道!!)




「流川君対仙道君・・・。全国でもトップクラスの2人の勝負がいよいよ決する・・・。」

『ゴクっ。』

弥生は、固唾を呑んだ。




「流川だ!!」

「ここは、絶対流川で来る!!」

「仙道、守れ!!」

観客も空気を悟っている。




次第に溢れる2つの言葉。




「流川!流川!流川!流川!」


「仙道!仙道!仙道!仙道!」


「ルカワ!ルカワ!ルカワ!ルカワ!」


「センドー!センドー!センドー!センドー!」





「なぬっ!なんだこの気持ち悪い声援は!!」

と桜木。

「空気が読めていないのは、お前だけだ。」

と福田。



「どうやら、お前がやらなきゃならないみたいだな。」

「・・・。」


(ド素人にわかって、俺にはわからねぇ、こいつの秘密はなんだ・・・。)


「??」



宮城が指示を出す。

「カク!柳!!」

(頼んだぞ!流川!!)

2人が大きくインサイドを空ける。


宮城は、ドライブをすると見せかけて、流川へのパスを投げる。



『バス!』




「流川だーー!!」

「やっぱり流川で来るぞ!!」

「攻めろ!!流川ーー!!」

会場の声援とは、裏腹に流川は、沈黙していた。




「・・・。」


(わからねぇ・・・。)


(何を考えているんだ?)


仙道が手を出す。


『パス。』


流川の手からボールがこぼれた。


「!!!」




「仙道のスティール!!」

「流川がやられた!!」




「流川!!」

「流川さん!!」

「キツネ!何やってやがる!!」

ルーズボールを拾う流川。




「何やってんだ、流川のやつ!」

と大楠。

「いまひとつ、集中してない感じだな。」

と水戸。

「らしくねーな。」

三井がいった。




「どうした?流川、攻める気あるのか?」

「・・・。」

(わからねぇ・・・。こいつの秘密・・・。)


「来いよ!」


「・・・。」

(わからねぇ・・・。)



『シュ!』



「!!!」


「!!!」



流川は宮城にボールを戻した。




「流川が攻められない!!」

「どうした!!流川ーー!!」




「流川先輩!」

「流川君!」




「この大事な局面で、流川君が試合に集中できていない!!」

「どういうことなんだ!!流川君!!」

「やはり、流川君には仙道君を抜くだけの体力がもう残っていないのかしら。」

記者席の弥生と中村も流川の異変に気付く。




刻一刻と残り時間が過ぎていく。




「流川は、仙道の動きが全く読めていない。
それに対し、花道は仙道の動きに対応している。それが頭から離れないってところだな。」

と水戸。

「動きの予測ができないために、攻められないか。」

と新庄。

「ったく。余計なこと考えやがって。流川なら、身体能力でいくらだってカバーできるだろ。
頭じゃなく、心でいきやがれ!」

と三井が荒げていう。




(時間がない!ここは早く!!)

「宮城さん!」

柳はボールを呼んだ。



『バス!』


宮城から素早く柳へ。

そして、桜木へと渡る。




「桜木だ!!」

「湘北はインサイド勝負を選んだ!!」




「来い!桜木!!」


「いくぞ!!フク助!!」



だが。

桜木は、45°から0°へ下りてきた柳へ戻した。

桜木の言葉に不意をつかれた福田と柳のマークマン上杉。

柳は、フリーでのジャンプシュートを放った。



(流川さんがダメなら、俺が決める!)



冷静に放ったシュートは、湘北に歓喜をもたらす。



『シュパ!!』




「柳ーー!!」

「最高だーーーー!!」

「うぉぉぉーーー!!」

「柳があっさり決めたーー!!」

「桜木が、最高のアシストだ!!」




「サル風!!お前にしては上出来だ!」

「桜木さんこそ、なかなかのパスでしたよ!!」


『パン!』


桜木と柳の手のひらが交錯する。



『ドガドガ!』



「おい!流川!!試合に集中できないなら、さっさと交代しろ!!」


「!!」


「流川さん!はっきりいって、格好悪いっすよ!!」


「!!!」


「ふん!!」


ここに来て、息の合う桜木と柳が力瘤をみせる。

再び、桜と柳の融合。


「いわれてるぞ。」

「どあほうども・・・。」

「お前は頭で考えすぎだ。自分のことしか考えないのは、悪いくせだ。」

と仙道。


(自分のこと・・・。)


流川は桜木の言葉をふいに思い出した。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>


「やっぱり、キツネだったか?」


「てめー、なんで俺が走りこんでいるとわかった?」


「キツネは耳障りなんだ。」

-----------------------------------------------------------------------



(耳障り・・・・。

 耳・・・・・・。

 ・・・・・・・。

 ・・・・・・音?)



残り52秒

陵南 96
湘北 95






続く。

#238 【第七感】

2009-12-07 | #09 湘北 県予選編
残り86秒。


陵南 94
湘北 93




「あかんわ!もう心臓が飛び出てきそうや!」

「うるさい!しっかり応援しろ!!」

越野が彦一を叱る。


「仙道、頼んだぞ。」

田岡は、仙道に抜群の信頼を置いている。

それは、田岡だけではない。


(仙道・・・。)

(仙道先輩・・・。)

(仙道さん・・・。)


陵南選手全てが、仙道に絶対の信頼を寄せている。




再び、湘北のオールコートマンツー。

流川のディナイディフェンスをかいくぐり、仙道がパスを受け取る。


「息が上がってるぞ!」

「うるせー!」


仙道は一気に駆け上がった。

冷静沈着とは真逆。

猪突猛進の勢い。




「仙道が、湘北のオールコートを切り崩す!!」

「はえーー!!流川が抜かれる!!」




(にゃろー!!)


流川は鬼の形相で、仙道と並走する。


「仙道さん、こっち!!」


山岡が呼んだ。


仙道の眼線が動く。

流川が山岡を視界に捉える。

その瞬間、仙道の重心が低くなった。

目線のみのフェイク。



『キュ!』



流川の脇をえぐるような、低いドリブル。



『ダム!!』



「!!」




「流川を振り切った!!」

「仙道が切れ込む!!」




再び、流川を抜いた。



前線にいる黒川が桜木を抑える。

福田は、大きく広がる。

仙道の前に、障害はない。



「いけ!仙道!!」

福田が叫ぶ。


「仙道さん!頼みます!!」

黒川が桜木を抑える。



「黒坊主!どけ!!」


「ん!速い!!」


そういうと、桜木は、小刻みなフェイントで、黒川のスクリーンを外した。



『キュン!』


一瞬にして、仙道のラインに立ちはだかる桜木。

後ろからは流川、前からは桜木が仙道を挟み込む。



(にゃろー。どっちだ?てめーか?パスか?)



迷う流川が取った行動は、パスカット狙い。

後方から、仙道の頭とボールの動きに集中する。



かたや、桜木。


(間違いねぇ!ぜってー突っ込んでくる!!)


桜木は確信を持って、シュートブロックの準備を整える。


湘北ゴールを襲う仙道。

首が右に振れる。


(右!)


流川が右に飛び込んだ。

仙道から上杉へのパスカットを狙った。



だが。



仙道は突っ込んだ。


(・・・。)


流川の選択は、また外れていた。


(くそ。)


焦りの表情を見せる流川。

対する桜木は、堂々としていた。



「きやがったな!センドーー!!」


「ふっ。」


仙道は小さく笑うと、ボールを掴み、左右に振る。


「わかってるぜ!右だろ!!」


桜木は、仙道の右手を確認する。


仙道は右手にボールを持っていた。



「あたりだ!!くらえ!センドーー!!」


桜木の大きな手のひらが、ボールを襲う。


(いい勘してるな。)


仙道は、そういうと桜木のタイミングをずらしたループシュートを放った。



『スカ!!』



空を切る桜木のブロック。



「へっへなちょこシュート!!」



だが。



『ガン。』


ボールは、リングに当たった。


桜木の動きに、さすがの仙道も後手に回り、計算高く得点を決めることは出来なかった。



「どうだ!センドー!!」


ボールの行方を確認するため、振り向いた桜木の眼に映った紺色の影。



『ドガァ!!!』



「いつまでも、やられてばかりいるわけにはいかない!!」


リバウンドダンクを決めたのは、黒川であった。


「大蔵!!」

上杉と柳の声が揃う。


「ナイッシュ!黒川ちゃん!」

と山岡。


「ロールプレーヤーに徹する大蔵が、ぶちかますとは。」

(これで俄然厳しくなった・・・。)

と柳。




「黒川・・・。」

ベンチから白田が険しく黒川を見つめる。




「桜木さん。さっきのリベンジです。」

「ぬっ。黒坊主め、フク助と同じくらい偉そうだな!」



遠くから聞いている福田。

(俺は桜木より先輩。当たり前だ。)



「ぐっ。俺が黒川のマークを外したばかりに、すっすまない。」

「カク。今のは俺が悪い。センドーのシュートを叩き落せなかった俺のミスだ。さぁ、いくぞ!!」

「桜木・・・。」

「この試合、負ける気はねぇぞ!」

「おう。」



「おい。てめー。なぜ、センドーの動きがわかった?」

「庶民がだいぶ困っているようだな。」

「うるせー。早く教えろ!」

「フッ!天才の第七感だ!ハッハッハ!」

「てめーに聞いたのが、間違いだった・・・。」



『スタスタスタ・・・。』



(くそう!なぜ、あいつにはわかる!)


流川の表情は晴れなかった。



試合残り時間74秒。


陵南 96
湘北 93







続く。

#237 【とらえた】

2009-12-04 | #09 湘北 県予選編
試合残り時間は、3分をきっていた。



「リョーナン!リョーナン!リョーナン!リョーナン!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!ショーホク!」

声を枯らす両ベンチ。

そして、固唾を呑んで見守る観客。



陵南は、アウトサイド陣のミスマッチを利用し、宮城の上から山岡がジャンプシュートを決めた。

お返しとばかりに、桜木のパスアウトから、宮城が気合でジャンプシュートをねじ込む。

桜木の鬼気迫るディフェンスが、福田のシュートミスを誘い、柳のドライブが成功した。

お互いに、集中したディフェンスを展開し、スコアボードが動かぬまま、
3分間が経過したあとの陵南のオフェンス。



仙道がいった。



『ドガァァ!!』



本日3本目のダンクは、流川、桜木を抜き去る最高のダンクであった。




「センドーーさーーん!!!」

「仙道ぉぉぉーー!!」




「イカすわ!センドー君!!」




「仙道!仙道!仙道!仙道!」

「リョーナン!リョーナン!リョーナン!リョーナン!」

陵南ベンチが、弥生が、観客が、本日一番の盛り上がりを見せる。




だが、この男が黙っちゃいない。



『シュパ!』



仙道とは対照的に、静かにネットを揺らした。




「流川の3P!!」

「勝負強い!!」


「ルカワ!ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!ショーホク!」




「流川君もやるわね!」

「仙道君のダンクを帳消しにした!」




息をつかせぬ試合展開に、会場は徐々に緊張感を漂わせていた。



陵南 94
湘北 91




試合残り2分、陵南のオフェンスが開始される。


仙道の眼光が鋭い。




「残り時間から考えて、この1本が勝敗を決するといっていも過言ではないわ。」

(どう攻める?仙道君。)

と弥生。




「流川。ここが正念場だぜ。」

と三井。




(流川君・・・。)

晴子は祈る。


(流川君。君は、仙道君を超えられるはずだ・・・。)

安西も流川に期待を寄せる。




「センドー!センドー!センドー!センドー!」

「いけーーー!!!仙道ーーー!!」

「守れーー!!流川ーーー!!」

「アキラ!アキラ!アキラ!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

会場は、真っ二つに分かれた。




「さぁ、いくぜ。」


「とめてやる。」



『キュン!!』


弾け跳ぶ2人の汗。

凄まじい攻防に、観客が酔いしれる。



(やべっ。)


流川の体勢が崩れる。


(よし!)



そのとき。



「流川ーー!!気合入れやがれーー!!」


ゴール下から、桜木が叫んだ。



(ド素人!)


流川は、再び仙道の前に立ちはだかった。


(そうこなくっちゃな。)


だが、流川の体力、脚力は限界に近かった。



宮城は、山岡の3Pを警戒している。

柳は、上杉のドライブに備える。

角田は黒川を、桜木はゴール下を守る。



仙道の選択は・・・。




「いったーーー!!」

「仙道が自ら切れ込んだーーー!!」




突然トップスピードにギアをいれた。


(センドー!)


ぐらつく流川が、再び抜かれる。


突っ込む仙道。



「センドーは、俺が倒す!!」


桜木がカバーに向かう。



『ダッダン!』


力強いフロントチェンジから、サイドステップで左に跳んだ。

桜木もあわせて跳ぶ。

手足を伸ばし、仙道のシュートコースを塞いだ。



「叩き落してやる!!」


「ふっ。できるもんならな。」



そういうと、仙道は、ボールを肩越しに真後ろへと投げた。




「出た!!!仙道のノールックパス!!」

「また、真後ろに投げやがった!!!」

「見えているのか!!」




そこに走りこんできたのは、フリーの福田。




「陵南のホットラインや!!」

「いけーー!!福田ぁーー!!」




『バス!』



「!!!」


「えっ!」




「なっなんやて!!」




ボールは、飛び込んだ流川の腕に当たっていた。




「流川がスティール!!」

「読んでた!!」




「デカしたぞ!キツネ!!」


「うるせー。ド素人!」



だが、ルーズボールを奪ったのは、黒川。


多彩なステップから、角田を抜き去る。



「ハクタスの仇!!」


桜木が黒川のシュートブロックに向かう。



『スッ!』



ゴール下の冷静なシュートフェイク。

桜木の上体が伸びる。

そして、黒川のシュート。



だが。



「まさに天才の第七感!!」


桜木は跳んではいなかった。



「くらえーー!!ゴリ直伝ハエタタキ!!ウホッホッホ!!」



『バチィーーン!!』



「あっ!!」



黒川のシュートは、桜木によって、豪快に叩き落された。

ルーズボールを拾う宮城。




「戻れ!!」

ベンチの越野が叫ぶ。




「桜木のブロック!!」

「強い!!高い!!凄い!!」

「ナイスブロックーー!!」

「いいぞ!桜木!!」




桜木のブロックが、湘北を勝利の可能性を導き出した。




「よし!いいぞ!花道!!」

「まるで、ゴリのようだったな。」

「本当、あの2人はよく似てるぜ。」

と野間らが笑いながら話す。


その傍らで、新庄と三井。

「まずは、ピンチを回避できた。だが、まだ湘北の不利は変わらない。」

「ここ1本決めて、あと半歩ってところだ。」

(宮城、ここは焦らず、必ず1本だ。)

三井が、コートに向ける。




だが。



『シュパ!』


宮城と柳のコンビプレー。

2人の電光石火が、陵南を切り裂いた。

(とめねーぞ!ここは一気に追いつくんだ!!)




「なっ、宮城のやろー、あっさり決めやがった。」




「速い!!まさに、最速コンビだーー!!」

「1点差ーーー!!!」

「とうとう1本で逆転だーーー!!!」




残り90秒を過ぎ、ついに1点差までとらえた湘北。

観客も湘北の追い上げにざわつきが大きくなった。



(一筋縄ではいかないところは、毎回同じだな。)

仙道は嬉しそうに笑った。



陵南 94
湘北 93






続く。

#236 【縮まぬ得点差】

2009-12-03 | #09 湘北 県予選編
陵南 86
湘北 82



試合残り時間7分。



『キュ!』


黒川から仙道にボールが渡る。


「すかした顔してんじゃねぇ。」

「ふっ。まだまだ余裕だ。」

(にゃろー!!)



『キュッキュ!』


『ダムダム!!』


弾ける2人の体が交錯する。


一歩も譲らない2人の想い。


(いいディフェンスだ!だが、まだまだ。)


『ダム!』




「あっあれは!!!」

「牧君のキラークロスオーバー!!」

弥生と中村。




(くっ!)


流川を抜き去る仙道。




「さすが、仙道!!!」

「流川を抜いたーー!!」




柳がカバーに向かう。


『ダン!』


(なっ!)


柳の裏をかく上杉へのパス。


(ちぃ!)


柳が上杉のほうへステップを踏むとボールは仙道に戻った。

鮮やかに柳を抜く。




「空斗のやつ、仙道さんと息がバッチリや!!」




3Pライン手前。

仙道の前に、角田と桜木。

コースを塞ぐ角田。


『クル!』


高速バックロールで、一瞬にして、抜かれる。




「福田か!黒川か!!」

「自分でいくか!!」




後ろから、流川が、黒川へのパスカットに向かう。

それを見て、桜木が福田のほうへ寄った。




「誘った!」

「桜木、いい動きだ!」

新庄と三井。




『キュ!!!』


明らかに黒川がフリーでいたが、仙道はスリースローライン上で急ストップ。

ブレのない安定したジャンプシュートを放った。


『スト。』




「決めたーーー!!!」

「仙道が一人で決めやがったーー!!」

「アキラ!アキラ!」




陵南 88
湘北 82




(なぜ、パスしねぇ。動きが・・・わかるのか・・・。)



「ふっ。」

流川を見て、軽く笑った仙道が陵南陣内へと戻る。


(あんにゃろー。なぜわかる・・・。)




「先生。仙道は、今流川が後ろから黒川へのパスカットに向かっているのが、
わかっていたような動きでしたね?」

と彩子。

「私もそう思いました。仙道さんは、流川君の動きを見ていなかったような気がしたんですけど・・・。
やはり、経験から、黒川君へのパスは狙われていると思って、自らシュートを打ちにいったんでしょうか?」

と晴子。


「白田君はどう思いますか?」

安西が尋ねる。

「仙道さんは、流川先輩の動きがわかっていた。これは間違いありません。
あの場面なら、フリーの黒川にパスを出して、当然です。
黒川なら絶対決めただろうし、仙道さんもそう思っているはずです。」

「ということは、やはり仙道は、後ろにいた流川の動きがわかっていた・・・。」

「さっきの桜木君も、後ろ向いたまま流川君にパスを出した。偶然かもしれないけど・・・。」

「どうなってんだ。仙道さんと桜木先輩は・・・。流川先輩の動きがわかっているのか?」

「答えはきっと見つかりますよ。さぁ、応援しましょう。」




湘北のオフェンス。


桜木が精力的に動く。


『ガシ!』


「サル風!」


桜木が上杉にスクリーン。

それを利用して、柳がフリーになる。


宮城から柳へ。

柳は、福田がカバーに来ると、鮮やかなパスを出す。

その先には、上杉を抑え、開く桜木。


柳と桜の融合が、ピック&ロールを成功させる。



『バス!』



受け取る桜木に襲い掛かる黒坊主。



『スッ。』



予測していたかのように、桜木はサイドへ流した。



『バン!』



「カク!フリーだぞ!!」


綺麗なステップから、ジャンプシュートを放つ角田。

リングに触れることなく、ネットを揺らした。



陵南 88
湘北 84




(よし!俺にも出来る!出来るぞ!)


角田は自信に溢れていた。




「カクーーー!!!」

「ナイッシューー!!」

自分のことのように、嬉しがる安田と潮崎。


「桜木君!ナイスパス!!」

「ハイ!!ハルコさん!!」




「湘北はここに来て、桜木君の動きが目立ってきていますね。」

「だけど、得点を決めているだけでは追いつけない。
やはり、湘北は、ディフェンスを頑張らないと。」




だが。




「福田が決めた!!」

「陵南のホットライン!!」

「再び、6点差!!」




「いいぞ!いいぞ!フクダ!フクダ!」

「大蔵!ナイススクリーン!!」


「うむ。いいぞ。仙道はもちろん、ほかの4人もみんな冷静だ。」

と田岡。




黒川が桜木にスクリーン。

福田対角田の1on1に、仙道から山岡を経由してのパスが通る。

福田は、力技で、ゴールにねじ込んだ。

陵南の流れるような、プレーで、逃げ切りを図る。


「よし!いいぞ。冷静に陵南のバスケをするまでだ。」

「おう!」

「はい!」



「さぁ、もう1本、いこーか。」



陵南 90
湘北 84






続く。

#235 【通じ合う2人】

2009-12-01 | #09 湘北 県予選編
陵南 86
湘北 78




湘北のオフェンス。

陵南は、ハーフで守る。




「湘北は速攻の巧いチームだ。しっかり、ハーフで守るのが定石。」

と田岡。

「監督。やはり、ここは流川君ですかね?」

「あぁ。そうだ。
精神的支柱の赤木、クラッチシューターの三井がいない湘北では、流川が絶対的なエースだ。」




(花道のやつ。あんなこと言っていたが、どうする気だ。)

宮城が9人の動きを見ている。



『キュ!』


山岡がスティールに向かう。


(あぶねっ!)


「へへっ。考え事していると獲っちゃいますよ!」


(こいつ!ますます良い動きになりやがった。)



柳には上杉の激しいコンタクト。

「さっきの借りは返す!!」

「ちぇっ。ドリブルカットしただけだろ。」



(安定感のありそうなさっきのジャンプシュート、この人は打たせたらまずい人だ。)

(初めて警戒されている。)

黒川は角田に張り付く。



(流川は?)

と宮城。



仙道を振り切ろうともがくが、振り切れない。


『キュ!』



そのとき。


「リョーちん!!」

桜木が、ハイポでポジションを取った。




「桜木さんのハイポや!」

「福田!ディフェンスでも、桜木に勝っているところを見せてやれ!!」

田岡が檄を飛ばす。




(花道・・・。さっきの言葉、信じるぜ!)



『キュ!』



『ダム!』



ゆっくりとしたドリブルから、一気にトップギアにいれる。



(おっ!)


山岡の腰が沈んだ瞬間、左サイドに生じたスペースにボールを叩きつけた。



「花道!!」



宮城からのパスが桜木に通った。




「桜木対福田!!」

「さっきのリベンジだ!!」




『バシ!』


桜木は、福田とリングを背にボールを受け取った。


「来い!桜木ぃーー!!」




「おぉぉーー!!」

「福田さんが吼えたーー!!」

「ディ!ディ!ディーフェンス!!」

福田を鼓舞する陵南ベンチ。




だが。



桜木は、リングに背を向けたまま微動だにしない。




「さっ桜木君!!」

晴子の声にも反応しない。




「桜木!なにやってんだーー!!」

「オーバータイムになるぞーー!!」




観客席からの声にも反応しない。



そのとき。



桜木は、リングに背に向けたまま、福田の足元を通過するバウンドパスを放った。




「パスミスだーーーー!!!」

「桜木がやらかしたーー!!」




「花道!どこ投げてんだ!!」

驚く宮城。


「!!」

思いがけないパスに、福田は反応できない。



ボールは、リング下に一直線に向かう。



そこに走りこむ2つの影。




「なっなんやて!!」

と彦一。




『グッ!』


安西は拳を握る。




『バス!』


ボールを受け取った白いユニホーム背番号7。


(なぜ、わかりやがった!)


流川は、勢いをそのままに、ゴール下で舞った。

遅れて、仙道が跳ぶ。


(まさか、ここにパスが来るとは!!)


仙道の手が伸びる。

流川は、右でボールを掴み、スナップシュートを放つ。



『ザシュ!!』



ネットを激しく揺らした。




「キターーー!!流川だーーー!!」

「桜木のノールックパスだーー!!」

「すげーーパス!!」

「まぐれだろ!!」




「やっぱり、キツネだったか?」

「てめー、なんで俺が走りこんでいるとわかった?」

「耳障りなんだ。」

「・・・。」




「やっ弥生さん・・・。」

「いいたいことはわかるわ・・・。だけど、私には答えらない・・・。」

(コンビプレー?いや、見えていた?そんなはずはないわ。だとしたら、桜木君はどうしてあんなパスを投げれた・・・。)




「安西先生、どういうことですか?2人がコンビプレーを練習しているとは思えませんし。」

と彩子が尋ねる。


「断じてありえない!!」

2,3年生が答える。


「桜木君は、仙道君と同じくらいの感覚を持っているということですね。
そして、桜木君と流川君は、どこか通じ合っているのかもしれませんね。」


「仙道と同じ感覚・・・?」

「通じ合っている・・・?」

「まさかね・・・。」

苦笑いの彩子と晴子。



陵南 86
湘北 80




(花道!お前のまぐれパスのおかげで、流川が点を獲った。
ここでもう1本いければ、流れが変わるかもしれねぇ。)

「よっしゃー!お前ら、もう1本いくぞ!!」

「おうよ!!」



黒川から山岡へ。


山岡から仙道へ、流れるようなパスで繋ぐ。


そして、桜木のお返しとばかりに、仙道のノールックパスが、上杉に。



『ダン!』


柳が踏み込む。

上杉は、素早いジャンプシュートを放つが、柳の動きを警戒しすぎて・・・。


外した。




「プレッシャーか。あの#11、いい動きをしているが、今はまだ柳ってやつのほうが上だ。」

と三井。




『バチィン!』


リバウンドは、桜木。

(誰にも負けねぇーー!!)

流れを引き寄せ始めている。



「走れ!サル風!!」

「言われなくっても!!」


柳は、上杉を置いて、陵南ゴールに駆け上がっていた。

そこに、桜木からの一直線のパス。



『バチン!!!』


(重いっつうの!)




「湘北の逆速攻だーー!!」




『ダム!!』



『キュ!』



柳の前には障害はない。

レイアップシュートを決めた。




「一気に4点差だーー!!」

「わからなくなってきたぞーー!!」

「もう1本だ!!」




「あたれーーー!!」

(いける!!)

宮城が叫ぶ。



だが。



「みんな!!落ち着こう!!」

仙道がメンバーに声をかける。

「焦る必要はない。」


「仙道・・・。」

「仙道さん・・・。」

「先輩。」




「そうだ!まだうちが勝っている!!じっくり1本だ!!」

田岡もベンチから叫んだ。




(ちぃ。仙道のやつ、余計な一言を。奪いかけていたペースをとめやがった。)

と悔しがる表情を見せる宮城。


「湘北のペースにあわせる必要はない。落ち着いていこう。」

「はい!」

「おう!」

そして、仙道は左手の人差し指をあげる。


「さぁ、いこーか。」




「さすが、仙道君。彼の一声が、湘北の得意なハイペースの展開を封じた。」

「仙道君・・・。やっぱり、イカすわ。」

弥生の眼はハートになっていた。


湘北の追い上げムードをたった一言で、断ち切った仙道。


陵南、湘北の最終決戦は、まだまだ続く。




陵南 86
湘北 82






続く。

#234 【桜木の秘策】

2009-11-30 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 78




角田がジャンプシュートを決めた。

盛り上がる湘北ベンチ。


観客も湘北の逆転への期待が高まっていた。




「あの#8も意外とやるじゃん!!」

「まだまだ試合はわからないぞーー!!」

「いけーー!!湘北!!!」




「大蔵!」

「はい。わかってます!」

(俺が守る!!)

ベンチの越野の言葉に力強く答える。




陵南のオフェンス。


黒川がエンドラインに立つ。


「あたれーーーー!!!」 

宮城が叫んだ。


それにより、湘北の4人が動き出す。



『キュッキュッキュ!』


『キュ!!』



バッシュとコートが激しくすれる音が聞こえる。




「湘北が勝負に出たーーー!!!」

「オールコートマンツー!!」




「当然だな。」

「ただ、この時間帯で走れるか?」

「俺の後輩たちは、諦めが悪いんでな。」

観客席の三井と新庄が話す。




「さぁ、湘北にとっても、陵南にとっても、ここが勝負どころよ!!」

「あぁーー、ドキドキしてきました!!」




「体力は持つのか?」

「うるせー。」

仙道には一切ボールを触らせない激しいディフェンスを披露する流川。


角田と宮城が山岡を、柳が上杉を徹底マーク。




「陵南が入れられない!!」

「時間がない!!!」




『クル!』


回転する上杉。

柳との間に、一瞬の間を作る。


「大蔵!こっち!!」


ワンハンドからの剛速球が、上杉めがけて、放たれた。


(やっべ!)



『バチィン!!』


受け取る上杉。


すぐさま、ドリブルで湘北ゴールを目指す。



『ダムダム!』


駆け上がる上杉。

柳が猛追する。



(まだ遅い!)



『パチ。』


柳が後ろからボールに触れた。



「!!!」



ボールが前方に転がる。


ルーズボールを奪ったのは。



福田。




「さすが、フクさんや!ボール際は粘り強いでーー!!」

「キープだ!福田!!焦るな!!」




「来い!フク助!天才と庶民の差を見せてやる!!」




「止めろ!花道!!」

と水戸。


「ここが勝負どころだぞ!」

「だが、福田も巧い。経験上・・・。」

と三井ら。




福田は、制止を指示する田岡を無視するかのように、左右に振るドリブルを開始。

そして、ゴール下で桜木を押し込んだ。


『クル。』


振り向きざまのジャンプシュート。



「天才の必殺技を使うとは、まだ甘いわーーー!!!」


ブロックに跳ぶ桜木。


福田は、力強くボールを放る。



『ザシュ!』




「決まったーーーー!!!」

「オールコートを突破されて得点を奪われた!!」

「しかも8点差!!!」




「フッフクさーーん!!」

「フクダ!フクダ!」




「勝つのは俺だ。」


「おっおのれーー!フク助の分際で!」




「桜木には、あの#6はとめられないか。」

と新庄。

「そうでもないぜ。」

と三井。

「湘北のバスケ部は、みんな諦めが悪いっすから。」

と水戸がいった。




陵南 86
湘北 78




第4Qも開始90秒が過ぎ、8点差。

開始2分で10点差。


陵南の思惑まであと1本。



(まじでやべーぞ。どうする・・・よ。)


「リョーちん!」

「ん!?」

「俺がなんとかする。」

「なんとかするって、花道じゃ・・・。なんか名案でもあんのかよ?」

「ない!!」

「ないじゃねーよ!」


「俺は・・・。俺は、ゴリから湘北のゴール下を任された男だ。もう誰にもやられん。」

といつになく真剣な眼差し。


「花道・・・。そうか、わかったぜ。」


「リョーちんは彩子さんを。」


「花道は晴子ちゃんを。」


「全国へ連れて行く!」


2人の声が揃った。


桜木、反撃開始になるか。




陵南 86
湘北 78







続く。

#233 【角田の想い】

2009-11-28 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 75




白田の左手1本によるフリースロー。



『ガン!!』



ボールはリングに当たり、小さく跳ねる。



『ガン。』



『スト。』



小さく音を鳴らした。




陵南 84
湘北 76




「左手1本で決めやがったーー!!」

「やるぜ!白田!!!」




「よくやった!それでこそ、わが弟子だ!!」

(だから、弟子じゃないって・・・。)


「お前は、ベンチに戻って手当てしろ。あとは俺たちに任せろ。」

と宮城。

「・・・・・・。」

「全国大会で、お前を欠くわけにはいかねぇんだ。」

「キャプテン・・・。」


白田は、宮城の言葉を信じ、静かにベンチに下がった。


「・・・。」

流川は、白田とすれ違いざまに、視線が合う。

「流川先輩・・・。あとはお願いします。」

『コク。』




「あいつ、いい根性してやがるな。」

と観客席の三井。

「三井サンだって、ゴリだって、そうでしたよ。
バスケ部はみんなあんなのばっかりの集まりなんだから。」

と水戸が笑っていった。




「白田君は、交代ですね。せっかく、湘北の追い上げムードだったのに・・・。」

「これで湘北は絶体絶命のピンチね。白田君を引き換えに、奪った得点は1点のみ。はっきりいって、マイナスだわ。
結果的に、黒川君のファウルは、ファインプレーとなったわけよ。」

「バスケって無情ですね。でも、残り9分8点差なら、まだわかりません!!」

「そうね。最後まで何があるかわからないのが、スポーツだから。」

(特に、湘北というチームは・・・。)




一方、陵南ベンチの田岡。

(勝った!!白田の穴は、角田では埋められん!!)

勝利を確信し、にやついていた。




「白田、ユニホーム脱いで。すぐに冷やすから!晴子ちゃん、氷もらってきてくれない!!」

「はい!!」


安西に頭を下げる白田。

「・・・・・・。先生、申し訳ありませんでした。」

「君が謝る必要はありません。あとは、先輩たちに任せましょう。」




「ハクタス!!そこで、ゆっくり休んでやがれ!!
そして、この天才のプレーを全国大会のために、よーーーく眼に焼き付けておきなさい!ハッハッハ!!」

「桜木先輩・・・。」

(ありがとうございます。)

試合に出場したくても出場できない、負傷退場した白田への桜木の気配りであった。



-----------------------------------------------

PF…#14 白田 豊 194cm/1年

PF…#8 角田 悟 185cm/3年

-----------------------------------------------



「カク!練習の成果を見せてやれ!!」

「おっおう。」

角田は、若干緊張している。


「先輩。」

「ん!?」

「どんどん打ってください。練習どおりやれば、入るっす。」

「流川・・・。」

(まさか、流川から話しかけてくるとは・・・。ここで足を引っ張るわけにはいかないな。)



湘北のスローイン。

「いくぜ!お前ら!!」

「おう!!」


(白田がいなくなったことで、インサイドは断然不利・・・。
流川は仙道に・・・。やはり、ここは俺たちのスピードが、逆転への突破口!)


「柳!いけ!!」

宮城から柳にパスが渡る。



『バス!』


「空斗、悪いな。宮城さんから指示が出た。俺が点を獲りに行く。」

「そうやすやすと獲らせるわけにはいかない。」


『ダム!』


柳の踏み込んだ、フロントチェンジ。

上杉が機敏に反応する。



『ダム!』



『キュ!』



バックロールから、インサイドにステップを踏む。


前には、黒川が立ちはだかる。




「囲まれたーーー!!」

「あれでは打てない!!」




黒川と上杉がシュートチェックに跳んだ。



『シュ!』



2人の足がコートから離れるのを確認し、柳は軽く笑う。

そして、ボールを頭の上から腰の後ろに回した。




「バックビハインド!!」

「誰にパスだーー!!」




ボールの先に構えるのは、角田。




「カク!いけーー!!」

「角田さん!!」




「カク!打てーーー!外してもリバウンドは獲ってやる!!」

「フリー。」



『バス!』



(みんな・・・。)



左0°の位置。

角田は、フリーでボールを受け取った。




「カクーーー!練習を思い出してーーー!!」

ベンチから安田が叫んだ。


角田は、思い出していた。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>


「角田君、君はジャンプシュートを強化しなさい。練習終了後、毎日200本、打つこと。いいですね?」

「はい。」

「PFの研究も忘れないように。」

「あっ、はい・・・。」

(PF転向か・・・。)


湘北の春、白田が加入したことにより、PFへとコンバートされた角田。

一時は、悩むこともあったが、角田は、安田や潮崎ら3年生とともに、新しいスタートを切った。

1日200本のジャンプシュートのほか、朝50本、昼50本を加え、半年間ジャンプシュートの精度を上げていた。


「少し、ジャンプが低くなってきている。」

「俺がパスするよ。」

「ヤス、シオ。ありがとう。」

時には、優しい同級生たちが一緒になって、練習に付き合ってくれた。


「優秀な1年が加入したことは凄く嬉しい。だけど、それだけじゃいけないんだ。僕たちが、頑張らなければ!
だって、僕らは、全国を経験した先輩だからね。経験は、何事にも変えることのできない財産なんだ!」

角田は安田の言葉に何度も励まされた。


「もう一度、いきたいな。全国。」

「あぁ。いこう!」

「俺たちが1年を連れて行ってやるくらいの気持ちでな。」

「そうだな。」

「あはははは!」

「はははっ!」


-----------------------------------------------------------------------



『スト!!』



ボールがネットを通過する音が、角田の耳に聞こえた。



「はっ入った・・・。」




「よし!いいぞ!!カク!!!」

「角田先輩!!ナイッシューー!!」




「カク。いい感じだ。」

「リョータ!」

「先輩、どんどん。」

「流川・・・。」



『バシ!』



「やればできるじゃねぇか!さすが、天才の1番弟子!!ハッハッハ!」

「1番弟子!?まぁ、いいか。」

角田の表情に明るさが戻る。


「へっ。俺は、2番弟子なのか・・・。」

(さっきは、俺のこと1番弟子っていっていたのに・・・。)

ベンチで肩を冷やしている白田は少し複雑な表情をしていた。




「角田、その調子だ。」

と三井。

「お前の後輩たちは、みんな気持ちのいいやつらだな。」

と新庄。

「へへっ。」

「まーな。」

三井と一緒に、水戸らも嬉しそうに答えた。




陵南 84
湘北 78






続く。

#232 【負傷退場】

2009-11-27 | #09 湘北 県予選編
陵南 84
湘北 75




「あと1点だ!!」

と越野。

「ディフェンス!1本!」

植草も珍しく大きな声をあげる。




湘北のオフェンス。


(もう、IHのようなミスはしねぇ!!)

宮城のドリブルにも力が入る。


「白田!」

「はい!!」


ハイポの位置。

黒川の前面を取った。



『バス!』


白田と黒川の1on1。


(ぜってー!決めてやる!!)

(そんなに焦ってどうする。動きが手に取るようにわかるぜ!)


白田のシュートフェイク。

黒川は一切ひっかからない。


(くそ!)

(動きが単調だ!!)


そのとき。


「焦るな!!キープ!!」

宮城が叫んだ。


「!!」


(宮城先輩!)


『クル。』

白田はリングを背後に回転した。


その瞬間。


宮城と柳が、白田目指して、走りこむ。




「シザースだ!!」




宮城の、柳のスピードが、山岡と上杉を振り切った。


「こっちだ!」

「白田!」


宮城と柳がほぼ同時に白田の横を通過する。

白田が小刻みに動く。


(どっちだ!?)


黒川に混乱が生じた。



『キュッ!』



「!!!」



『ダム!!』



「ちぃ!白田か!!」


パスをせず、黒川の横をドリブルで抜ける白田。



「いけーー!白田!!」

「決めろ!!」


宮城と柳が叫んだ。



(宮城先輩と柳が作ってくれたこのチャンス!必ず決める!!)


「うぉぉぉーー!!」

「打たせない!!」


白田がボースダンクの構え。

(俺が流れを引き寄せる!!!)


黒川が白田の後ろから、ブロックを狙う。

(白田を止めれば、勝負は決まる!!!)



(ぬ!高い!)



『バチィーーーン!!!』



(しまった!!!)



黒川は、目測を誤り、白田の両腕を激しく叩いてしまった。



「ぐわぁ!!」



『ドンッ!!!』



その衝撃から、白田は、空中で大きく回転し、肩からコートに叩き落ちた。


白田の手からは、ボールが転がる。



「ハクタス!!!」

「白田!!!」

「黒坊主!!てめー!!」

「やめろ!花道!」

湘北メンバーが大きな声を出す。



「だっ大丈夫です。」

白田は静かに立ち上がる。



『ピィーーー!!』



「アンスポーツマンライク・ファウル!!青!!#12!!」



審判が、黒川に手を上げさせる。




「アンスポだーーー!!」

「ツースロープラス湘北ボール!!」

「一気に得点差を縮めるチャンスだーー!!」

「だが、白田は大丈夫か!?」

「肩からもろに落ちたぞ!!!」

「厳しすぎねぇか!!」

「いや、やりすぎ感は否めない!!」




「白田・・・。」

苦痛に顔をゆがめる白田に話しかける黒川。


「俺なら、大丈夫だ。せっかくの俺の見せ場が、なくなっちまったのは残念だったけどな。」


「すっすまん。」

深く頭を下げる黒川。


(焦っていたのは、俺のほうだったのか・・・。)


「白田君。黒川が申し訳ない。」

仙道も頭を下げた。

「仙道さん・・・。問題ないですから。」


「すまん。春風。」

「白田はそんなに柔じゃないから、心配するな。大蔵。」

「あぁ。ありがとう。」

柳は、黒川の腰を軽く叩いた。



「大丈夫か!?フリースローは打てそうか?」

と心配そうに宮城が話しかける。

「右肩に少し痛みが走っていますが、なんとか打てると思います・・・。」

白田は、額に汗を流しながら、言った。



「ツースロー!」

審判からボールが渡される。



『ダムダム。』


2回ほど、ボールをつく。


(ドリブルは平気だ。)


シュートの構え。


『ピキーン!』


(ぐっ!)

右肩に激痛が走る。



『シュ!!』


ボールは緩やかに回転しているが、明らかに弾道が低い。



『ダン!』


『ダンダンダン・・・。』


ボールはリングに触れることなく、コートに落下した。




「ハクタス!!」




「やっぱり、打てない!!」

「これは重症だ!!」




「ここで、白田君が抜けると湘北は一気に崩れる可能性があるわね。」

と記者席の弥生。




「つうぅ!」

あまりの痛さに、右肩を押さえる白田。

苦痛で顔を歪める。


「ハクタス!!」

「白田、大丈夫か!?」

「だっ大丈夫です。なっなんともありません。」

白田は、気丈に振舞った。


湘北ベンチでは、角田がアップしている。


(ここで、白田が抜けるのは痛いが、この状態じゃ仕方ねぇ。9点差・・・。くそっ!)

宮城も焦りを感じていた。


「交代しますか?」

審判が白田に一声かけたが、大きく首を振った。


「このシュートが終わったら、交代だ。」

宮城がそっと白田の腰に触れた。


「・・・。」



『ダム!』


一回ドリブルをし、呼吸を整える。


(まともにシュートが打てない・・・。)


白田がシュート体勢。




「あっ!!!」

「まじかよ!!」




白田は、左手1本で構えた。




「左手で打つ気か!!」

「届くのか!!」




(入れる自信はないけど、可能性はある!)



『シュ!』


白田は、膝をうまく使い、左手1本のシュートを放った。



陵南 84
湘北 75






続く。

#231 【あと1点】

2009-11-25 | #09 湘北 県予選編
陵南 82
湘北 75




『ビィーーー!!』


第4Qの開始を告げるブザーがなった。

いよいよ、全国への椅子をかけて、雌雄が決する。


「最後まであきらめるな!!俺たちが絶対に勝つ!!」

「おう!!」

「おうよ!!」

試合に集中している湘北メンバー。

この試合、5人で戦い抜いているが、彼らの表情に疲労は感じられない。


『クイクイ。』


「宮城君、ちょっと。」

「はっはい。」

「・・・・・・・・・。」

安西は耳打ちをする。


「やれますか?」

「はい。諦めないのが湘北ですよ。」にやっ。


「リョータ!!しっかりね!!」

「任せといて!!」




陵南ボールのスローインから始まる。


『キュッキュ!』


『キュ!』


「おっ!」

(こいつら、指示もしてねぇのに。)

と笑う宮城。


陵南の選手がポジションにつくと、湘北の5人は激しいディフェンスを見せた。




「先生。リョータが指示を出す前に、みんなが動きましたね。」

「わざわざ私が指示することもありませんでしたね。あの気持ちがあるなら、彼らは絶対に勝ちます。」

「みんな!!頑張って!!」

晴子が手を握り、声援を送った。




仙道と流川が対峙する。

「最後の10分だな。」

「てめーだけだ。俺には全国がある。その先には、アメリカがある。」

「おっ。アメリカ。」

(流川はアメリカにいく気なのか。)



『ダム!』


静かにドリブルを始める仙道。

流川は、ドライブに備えて、若干のスペースを空けている。

宮城ら4人は、凄まじいディナイディフェンスを見せていた。


「フク助!さっきの借りは、100倍にして返してやらぁ!!」

「無理!」


『キュ!』

『ガシ!!』

(ここは俺がなんとかしなければ!)

(白田のやつ、随分焦ってやがるな。)

と黒川。


(開始早々の失点は精神的にくる。この1本、絶対に奪われるわけにはいかねぇ。)

「お前ら!!死守だ!絶対に死守だ!!」

宮城が気合を入れる。


(空斗の外はない。ならば!)

と柳が動く。



仙道と流川の1on1。


そこに、柳が一瞬にして加わった。




「ダブルチームだ!!」

「勝負をしかけた!!」




上杉には、白田が寄った。

桜木が、福田と黒川を守る。


「フク助と黒坊主は、俺一人で十分だ!」

(黒坊主って俺?)

と黒川。



『キュッキュ!』


仙道の動きを封じる流川と柳。

柳は、身長差を利用し、低い位置からドリブルのスティールを狙う。

流川は、コースを塞ぎ、パスコースを塞ぐ。


(手強いな。)


防戦一方の仙道。




「仙道君が攻めきれない。」

「オフェンスを重視する流川君と柳君の懸命のディフェンス・・・。
湘北の必死さが、痛いくらいに感じるわね。」

(ただ、仙道君を2人がかりで止めなければならないこの状況。
プライドの高い流川君の心境は複雑ね。)




「仙道さん!こっち!」


山岡がボールを呼ぶ。



『キュッキュ!』


「いれさせねぇよ。」


宮城が山岡を抑え込む。



その瞬間。



『ビィ!!!』


凄まじい弾丸のようなパスが、流川の足元擦れ擦れのところを通った。




「凄いパス!!」

「キャーー!さすが仙道君!!」




(!!!)



その先には、福田が3Pライン外で構えていた。



『バチィン!!』


大きな音を立てて、ボールをキャッチする福田。



3Pの構え。



だが。



「打たせない!!」

白田が果敢にチェックに跳んだ。



『サッ!』


(!!!)


『ダムダム!』


シュートフェイクであった。

あっさりと抜かれる白田。


(終盤の焦りは禁物だぜ。白田!)

と黒川。


福田がゴールを襲う。


「きやがれ!」


ゴール下には、桜木が構える。



『ダン!』


福田は、桜木の存在を否定するかのように、跳んだ。


「ゴールは俺が守る!!」

桜木も跳んだ。




「桜木は高すぎるーー!!」

「やられる!!」

「福田ーー!!いけーーー!!」




福田のレイアップ。


桜木が突き上げた腕を振り落とす。


「もらったーー!!」


桜木の大きな手のひらが、ボールを襲った。



『スカッ。』


「!!!」


「なにぃ!」


福田は、空中で桜木のブロックを交わした。


再びシュート体勢。



『シュパ!』


ボールは静かにリングを通過した。




「決まったーーー!!」

「福田がダブルクラッチだーー!!」

「強いぞ!福田!!!」

「フクダ!フクダ!フクダ!」




(もっともっともっと・・・。)ぷるぷる。



「見せたぞ。本物のダブルクラッチを。」

「おっおのれー!フク助の分際で!!」


(福田のやつ、あんな技まで・・・。9点差・・・。まじで厳しくなったぜ。)


宮城は、戦況を冷静に分析していたが、その眼の奥には、決して曇ってはいなかった。


(だが、まだいける。なぁ、おめーら。)



陵南 84
湘北 75






続く。

#230 【全てで感じろ】

2009-11-24 | #09 湘北 県予選編
陵南 79
湘北 75




第3Q残り27秒、ボールは・・・。



上杉が拾い上げていた。




「福田が流川をブロックしたーーー!!!」

「陵南の3連続ブロック!!!」

「すげーーー!!!!」

「フクダ!フクダ!」




(最悪でも1本。)

宮城の、湘北の願いは虚しく、陵南に阻まれる。


柳のレイアップをブロックした黒川。


桜木のジャンプシュートをブロックした仙道。


そして、流川のワンハンドダンクをブロックした福田。



「うぉぉぉぉぉーー!!!」

福田が吼えた。


(にゃろー!!)

と流川。


「フク助!よくやった!!ではなーーい!!」

と桜木。


「空斗!!」

仙道がボールを呼ぶ。

攻守の切り替えが速い。


「戻れーー!!」

宮城が叫ぶ。



流川は、ゴール下にいる。


(ちっ!)



『バス!』


フリーの仙道にボールが渡る。




「陵南のアーリーオフェンス!!」

「仙道が速攻だ!!」




「センドー!!待ちやがれーー!!」

必死に追いかける桜木。


宮城、柳も後を追う。

その後ろを、山岡、上杉の陵南ウィングが駆け上がる。


ハーフライン。


桜木が仙道に追いついた。


「追いついたぜ!!」

仙道はドリブルを緩めない。

桜木は、ただ並走するのみ。


3Pライン。


『キュ!』


仙道が急ストップ。


『キュ!』


桜木も急ストップ。


そして、一瞬にして、仙道の前に回り込んだ。


「打たせん!」


「ふっ。打たねぇよ。」


「なにぃ!!」


仙道は、ボールを優しく、左に放る。

絶妙なタイミングで受け取ったのは、山岡。


「ナイスパスっす!」


「じゃねぇーよ!!」


山岡の前に、今度は宮城が立ちはだかった。


「!!」


前に踏み込む山岡。

宮城も構えた。



『ダム!』



「なっ!!!」


山岡は、ワンドリで一歩後ろへ。

3Pラインの外に出た。



「入れーーー!!!」


「しまったーー!!!」


逆を付かれた宮城は、詰めることが出来ない。



『シュ!』


アーチの高い3Pシュート。


審判が3本の指を上げる。




「いいアーチだな。」

と三井がつぶやく。


「あのフォーム、三井サンに似てるっすね。」

と水戸。




ボールの軌道を確かめ、リバウンドに向かう桜木。


だが。



『シュパ!!』


ボールは、リングの真下に落ちた。




「拓真ーーー!!!」

「入ったーーー!!!!」

「仙道さんはなんであんなパスができるんやーー!!!アンビリーバブルやーー!!」

彦一の興奮は、最高潮に達していた。


「よし!!いいぞ!!山岡ぁ!!!」

と田岡も山岡のビッグプレーに叫ぶ。




「3Pーーー!!」

「第3Q終了間際に、デカイ追加点だーーー!!!」

「7点差!!!」

「陵南が引き離したぞーー!!!」




「しびれるパスっすね。」

と山岡。

「ふっ。」

と軽く笑う仙道。


「センドー!!勝負しやがれ!!!」

「してやるよ。俺たちが勝ったあと、たっぷりな。」

「なにをーー!!」


「バカ!花道!早く出せ!!!」

宮城のドリブルがハーフラインを超えたとき、第3Q終了のブザーが無常にもなった。



陵南 82
湘北 75




2分間のインターバル。


「いいぞ!山岡!!」

「ナイッシュ!!拓真!!」

陵南ベンチが、山岡の3Pを称える。


「仙道。お疲れ。」


『コクッ。』

仙道は、植草から渡されたスポドリを軽く飲んだ。


(7点差か・・・。安全圏とはいえないな・・・。あいつがいるし。)


「さすが、フクさんや!!」

「福田先輩、最高です!!」

(もっと、褒めてくれ・・・。)


「福田!ナイスブロックだ!!第4Qも、その調子でいってこい!!」

「おう!!」

田岡が続ける。

「10点差だ。開始2分で10点差をつけろ!湘北の精神力を折るのだ!!」

「はい!!」




一方、湘北ベンチ。


(センドーのやつ、後ろを見てもないのに、なぜあいつが走っているのがわかった??)

流川は、仙道の視野の広さの秘密をさぐっていた。


『ドガドガ!!』

「おのれ!!センドーのやろー!!」

大きな音を立てて、歩く桜木の声は荒い。


「さすがに3本連続のブロックはいてーな。」

と宮城。


「・・・。」

(大蔵のやつ。)

柳は無言。


(俺が、もっといいポジションにいれば。)

と白田。


(なぜだ?)

流川は必死に考えていた。


重苦しい湘北ベンチ。

安西が口を開く。

「さすが、夏の全国覇者ですね。素晴らしい身体能力、そして、素晴らしいチームワークです。」

無言で聞く湘北メンバー。

「ですが、みんなも負けず劣らぬの能力を持っていると思っています。
それを全て出し切れるかどうかは、あなたたち次第です。
残り10分。全神経を集中させて、挑んでください。わかりましたね?」

「はい!!」


「流川君。」

「・・・うす。」

「全てで感じること。これが一番重要なことです。」

「全てで・・・感じる・・・。」

と流川。


(全てで感じる?天才の第七感というやつか。)

桜木も同様、安西の言葉が、脳裏に焼きついていた。








続く。