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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#61 【あと10分】

2009-02-27 | #03 県決勝 選抜編
海南 70
陵南 59




牧のペネトレイトから、2点を追加する海南。


対する陵南は、仙道の中を起点に、福田がミドルシュートを決める。


続く海南は、越野との1on1から放った清田のジャンプシュートが、リングに嫌われた。


この日二桁目を記録するリバウンドを福田が奪い、仙道の山岡への絶妙なパスから、速攻が決まる。



そして、第3Q終了のブザーがなった。



『ビィーーーーー!!』



陵南は、先制点を決めたが、それ以降一度もリードを奪うことなく、苦しい第4Qを迎えることとなる。




海南 72
陵南 63




2分間のインターバル。


「いいぞ!真田!!」

「お疲れ様です。真田さん!!」

賞賛されている真田は、少し照れている。

「ありがとうございます。」


「壮太、まず座れ。呼吸を整えろ。」

「大丈夫ですよ、牧さん。今日は調子がいいんです。まだまだいけますよ。」

明るく答える真田に、牧はほっとした表情で答える。


「お前の出番は、ここで終了だ。あとは、俺たちに任せろ。」

真田は、海南選手をグルっと見渡し、笑って答える。


「頼もしい限りです。お任せします。」


『パタパタ・・・。』


「第4Qもツーガードでいく。小菅、真田の代わりに入れ。牧、わかってるな?」


「ええ、初めから足動かしていくぞ!」

「おう!!」

「植草が出てきたら、宮益を入れる。外と中から、点を獲れ。リードなどないと思え。いいな?」

「おう!!」




「くそ!」

越野が声をあげる。

陵南のベンチに暗い空気が流れている。


だが。


「まだ大丈夫だ。」

仙道が、みんなに声をかける。


「確かに、中、外とリズムよく攻めてきているが、全てのオフェンスが得点されているわけじゃない。
リバウンドは、うちがとっている。相手のミスを確実に点に結び付けていけば、必ず追いつける。
まだ大丈夫だ。」


(仙道さんがいうなら、大丈夫だ。)

(そうだ!大丈夫だ!)

(きっと勝てる!)


仙道の言葉が、みんなに勇気を与えた。

選手の表情が一気に明るくなる。


「よし!まだ負けたわけじゃない!!ここからが、勝負だ!!海南に走り負けるなよ!!」

越野が、キャプテンらしく、みんなに気合を入れる。

「おう!!」

陵南ベンチに活気が戻った。


(さすが、仙道。あいつのい葉は、不思議と勇気と希望を沸かせる。
そして、越野もまた、チームに活力を与えている。)

田岡が、2人を嬉しそうに見ている。


「まだいける。山岡、今までどおり神につけ、4人は、2-2のゾーンディフェンスだ。
神の外を封じ、牧、清田にドライブをとめる。リバウンドは確実に獲れ。福田、任せたぞ!」

「はい!」

(リバウンドを掴む者は、勝利を掴む・・・。)


「ボックスワンですね。湘北のディフェンスと同じことやろうっちゅうことですね。田岡さん?」


『ゴン!』


「何が、田岡さんだ!湘北の真似はしたくないが、そうもいってられない。
今は、これしかない。残り10分足を止めるな。」

「はい!」


「監督はすぐ叩きはるんだから・・・。冗談っやちゅうねん・・・。」




『ビィーーー!!』



第4Q開始のブザーが会場に響く。



-----------------------------------------------

PF…#7 真田 壮太 184cm/2年

PF…#8 小菅 直人 186cm/2年

-----------------------------------------------



「あっ!やっぱり、真田君は下がりましたね。おっ!代わりは武藤君ではなく、SGの小菅君です。」

「うーーん、海南はあくまでツーガードで押し切るつもりね。」

「陵南は、防ぎきれますかね?」

「今のままじゃ、無理だわ。思い切った賭けが必要よ。どう守る、仙道君?」




「積極的にドライブを仕掛ける牧と清田、冷静に外から決める神、
その中間の立場の真田、巧みな動きから中にスペースを空ける高砂、
海南の4アウトは、最強のオフェンスフォーメーションだな。」

三井が分析。

「あぁ、うちとやったときは、4アウトをしかけてこなかった。
まだまだ未完成なのか、それとも翔陽より陵南が上なのか?」

と花形。

「まだ、未完成だろう。」

きっぱりと赤木が答え、続けた。

「現時点での4アウトは、真田がいて完成する。
真田がベンチにいる間は、武藤を出し、3アウトのほうが、リバウンドもとれ、安定感がある。
真田以外のやつで、4アウトとなると、格段にオフェンス力は落ちる。」


「赤木のいうことも一理ある。だが、海南のベンチ層は厚い。SGの小菅も、他のチームならスタメンだろう。
そして、この4アウトにマッチするプレイヤーが、もう一人、海南のベンチにはいる。
陵南の出方次第で、出場してくるだろうな。」

藤真のあとに、花形が答える。

「宮益か?」

「あぁ、シュート力だけなら、あいつは県内トップクラス。ツインシューターは怖いぜ。」


「・・・。」

(仙道・・・。)

魚住が祈る思いで、仙道を見つめる。


「あと10分で全てが決まる。」

赤木が話すと同時に、歓声が沸いた。




海南 72
陵南 63







続く。

#60 【約束】

2009-02-26 | #03 県決勝 選抜編
海南 70
陵南 59




「山岡の動きが、だいぶよくなってきたな。」

「ここにきて、ようやく緊張感が取れてきた感じだな。遅すぎだけど・・・。」

花形と藤真が話す。


「あの速度からのジャンプシュートは、相当な技術、身体能力がいるぞ。」

「技術はないけど、最高速からピタッと止まれることだけはできる男はいるがな。」

魚住の言葉に、4人があの男を思い出す。


「あいつは、何してんだ?」




そのころ・・・。



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--潮風が吹く灯台の下--


「ハッハッハックション!!!さては、誰かがこの天才の噂をしているな!」


『キョロキョロ・・・。』


「桜木君、ダメじゃない。こんなとこ来て、風邪引くよ。」

耳が大きくなる桜木。


「いかん、いかん。寒さのあまり幻聴が聞こえる。」


「桜木君!!」


「やはり・・・、そっそっその声は、ハッハッハルコさん!!」

振り向くと、そこにはダッフルコートに身を包んだ晴子が立っている。


(ハッハルコさん、コート姿もかわいい・・・。)ポッ。


「なっなっなんで、こんなところに?ハルコさんこそ、風邪を引いてしまいますよ。」

「リハビリセンターの先生に聞いたら、「天気がいい日は、いつも灯台の下で、お友達に会ってるわよ」っていわれたから。
それより、もう11月にもなるっていうのに、ランニング姿で風邪引いちゃうよ。」

「ハッハッハ、大丈夫です!!天才は風邪引かないですから!!」

「桜木君、それをいうなら、おバカは風邪引かないでしょ?」にこ。


「ギクッ!!」

苦笑いの桜木、小声で笑う晴子。


(やっぱり、かわいい・・・。)ポーーーーッ。



桜木の足元にボールが転がっている。



「あっ!!ボールがある!!もしかして、バスケしてたんじゃないよね?」

「ギクッ!!違いますよ。まっまっまくらですよ。昼寝ですよ。ハッハッハ。」

「本当?先生にもまだ、バスケはしちゃダメっていわれているんだからね。
いうこと聞かないと、早く治らないよ。
桜木君は、湘北バスケ部のため、怪我を早く治して、復帰しなくちゃならないんだからね!」

「はい・・・。」

(ハルコさん、そんなにまでこの天才桜木の心配を・・・。
しかも、毎週お見舞いにも来てくれて、なんて優しい女性なんだ・・・。)



「桜木君、今日は仙道さん、来ないよ。」

「何!?今日こそ、この天才ドリブルで、センドーをこらしめてやろうと思っていたのに!!」



「あーーー!!!やっぱり、バスケしてるんだ!!!」



「あっ!!」

冷や汗を流す桜木。



「違うんです。ハルコさん、リハビリの一つとして、ここでセンドーを鍛えてやっているんですよ。」



「ジーーーーー。」

桜木の目を見つめる晴子。


(少し怒ったハルコさんもかわいい・・・。)ポーーーーッ。


「桜木君・・・、無理はしないでね・・・。
仙道さんのことだから、桜木君の体のことをちゃんとわかっていると思うけど、絶対無理はダメだからね!!」

「はい!!天才桜木、ハルコさんとの約束は、絶対破りません!!!」

「よろしい!!」にこ。

晴子が続ける。



「仙道さん、今日は決勝戦なの。海南と全国の切符をかけて、試合しているんだよ。
桜木君がいれば、海南と湘北の決勝戦だったのにね・・・。」

「ハルコさん・・・、すいません、この桜木が怪我なんぞしてしまって・・・。
流川が役立たずなもんだから。」

「うーうん、桜木君や流川君のせいじゃないの。仙道さんはやっぱり凄いよ。
でもね・・・、桜木君には、来年全国に連れて行ってもらうから。約束だよ!」

「はい!!天才桜木、ハルコさんとの約束は、絶対絶対ぜーったい破りません!!!」

「よろしい!!全国楽しみにしてるね。」にこ。



「ハッハッハルコさん、ちゃんと約束守ったら、俺とデッデッデートしてもらっていいですか?」

「うん♪いいよ。」

「この天才桜木、死ぬまで約束は破りませーーん!!!!・・・ハックション!!!」

「桜木君、大丈夫!?」

「天才ですから。ハッハッハ!!」



晴子と固い固い約束を結ぶ桜木であった。



-----------------------------------------------------------------------



「あのバカ、今頃、くしゃみでもしているんじゃないか?」

「自分の噂には、敏感だからな。」

赤木を除く、4人の顔に笑顔がこぼれた。




海南 70
陵南 59







続く。

#59 【オフェンシブPG】

2009-02-24 | #03 県決勝 選抜編
海南 51
陵南 45




ミラクルセブン真田の投入により、ツーガードシステムを用いた海南のオフェンスがはまる。

牧のペネトレイトに、左右から清田、真田があわせ、リングを攻めたてた。

中にディフェンスが密集すると、神が外から射抜く、リズムのいいオフェンスを展開。

着実に点差を広げていく。


だが、陵南も必死に食い下がる。

仙道、福田が確実にディフェンスリバウンドを制し、波状攻撃を防いだ。

第3Q、半分を過ぎたところで、植草に代わり、越野を投入。

仙道をPGに戻し、巧みなパスワークで、福田、山岡を中心に攻めた。

自身も3Pを2本決め、牧と変わらぬ存在感を発揮した。

だが、点差は逆に広がった。



第3Q 残り1分28秒

海南 68
陵南 57




「ソ・ウ・タ!!ソ・ウ・タ!!」

海南応援席から、真田コールが沸いている。




「壮太、大丈夫か?」

牧が心配そうに尋ねる。


残り時間をチラッとみて、答える。

「問題ありません。残り90秒、全力でいきますよ。」

「頼もしいな。」

牧に笑顔がこぼれる。



海南のオフェンス。

45°牧から逆サイド0°の神に大きく展開。



「神さんのスリー!!」

山岡がすかさずチェックに飛ぶ。

「打たせません!!」



だが。



(フェイク!)



同時に、牧が中に切れ込む。



(速い!!)


仙道が食らいつく。



仙道のコースを塞ぐように高砂が立っている。



「スクリーンだ!!」



仙道はファイトオーバーで、高砂を交わす。



(やるな、仙道。)


(簡単に抜かれてたまるか。)



牧は、0°に切れた。

ボールは神からハイポの高砂へ。




「高砂と福田の1on1!!」




「ファウルは、怖くないのか?」

高砂が、福田に問いかける。


「うぅ。」

躊躇した福田のその一瞬の隙をつき、ゴール下にバウンドパス。



「ん!!!」



『バシィ!』


『バス!』



45°から一気にゴール下に駆け込んだ真田は、高砂からバウンドパスを受け、
そのままバックシュートを決めた。




「ナイッシュー!サ・ナ・ダ!!」

「ここに真田!!」

「止まらねぇーー!!」




海南 70
陵南 57




「真田!ナイッシュ!」

武藤が叫ぶ。


『パタパタ・・・。』

「頼もしい限りだな。」

高頭が笑っている。




「高頭め。でかい顔しおって。」

田岡にイライラがつのる。


「真田さん、アンビリーバブルや・・・。」

真田のドライブの鋭さに驚きを隠せない。




(真田壮太か・・・。いいプレイヤーだな。)

仙道も真田を認めている。



陵南のオフェンス。

ドリブルをしながら、仙道がゲームメイクを考える。


『ダムダム・・・。』


(福田、山岡は、さっきよりもだいぶきつくあたられている。ここは・・・。)


「越野。」


ボールは、越野に渡り、すかさず、仙道は中に切れ込み、リターンパスを要求。


『バシ!』




「仙道の中!!」

「牧、止められるか!!」




高砂がヘルプディフェンスに入る。




「ダブルチーム!」

「仙道、苦しいぞ!!」




牧、高砂がタイトにあたる。


(・・・。)


福田には、神がカバー。


(・・・。)



『バン!』



仙道は、スペースの空いたところに苦し紛れにバウンドパスを放つ。




「仙道のパスミスだーー!!」

「誰もいねぇーーー!!」




だが、そのフリースペースに全力で山岡が切れ込んできた。



「仙道さん、ナイスパス!」



慌てて、神がカバー。


『キュ!!!』


「何!?」




「おーーーー!!あの全力疾走から止まったぞーー!!」

「あのスピードでジャンプシュートが打てるのかーー!!」




『シュパ!!』


山岡が、最高速からのジャンプシュートを決める。




「自らがペネトレイトから切れ込むことで、オフェンスの起点となる牧、
天才的な得点感覚でゲームを組み立て、フィニッシュへと導く仙道。
どちらも高い得点能力を誇り、アシストを演出する完璧なまでのオフェンシブなPG。」

赤木が分析した。




海南 70
陵南 59







続く。

#58 【7&4】

2009-02-23 | #03 県決勝 選抜編
海南 47
陵南 45



-----------------------------------------------

PF…#9 武藤 正 184cm/3年

PF…#7 真田 壮太 185cm/2年

-----------------------------------------------



海南は、4つめのファウルをコールされた武藤に代え、2年の真田を投入する。




「真田君を入れてきたわね。」

「あまり見たことがないんですが、彼はどんな選手なんですか?」

「真田君は、清田君が加入する前にSFとして、スタメンに名を連ねていたこともあったわ。」

「え!?そんな凄い選手なんですか?」

「派手さはないが、バスケを知っている堅実派のSFよ。実力は、県内でもトップレベルといってもいいわね。」

「え!!なら、もっと試合に出場してもいいじゃないですか?今回みたいに、
武藤君に代わってPFで出場させるとか、清田君外しちゃうとか、何か問題があるこなんですか?」


「ええ、あるのよね。」

苦笑いをする弥生。


「怪我?暴力とか?」

「彼はね、ミラクルセブンって呼ばれているの。」

「ミラクルセブン??」

「そう。彼は・・・。」

「彼は・・・?」



「7分しか試合に出場しないのよ!だけど、彼が出場した全試合必ず2桁の得点をマークしているわ。」

「え!?何ですか、それ?海南にそんな選手がいるんですか?」



「ええ、いたのよね。体力がなく7分しか走れないとか、心臓病をかかえているとかとかいわれているけど、
その真意はわからない。」

「だから、ミラクルセブンなんて呼ばれているんですね。」

「おそらく、彼はこのQだけの出場ね。スタメン時も、第1Qのみの出場だったわ。」


「宮益君といい、真田君といい、海南には個性的選手がたくさんいるんですね。」

「海南だけじゃないわ。神奈川県には、個性豊かな選手が多く揃っているわ。だから、神奈川は面白いのよ!」




「SFの真田をPFとして投入してきたか。」

「ってことは、スピードでフクさんや菅平さんを揺さぶるってことですかね。」

「そうはさせぬ。越野、アップしとけ。」




「壮太。思う存分、暴れていいぞ!だが、苦しくなったら、すぐいうんだ。」

「はい。牧さん。7分間、楽しませてもらいます。」




真田は、喘息の持病を持っており、医師に10分を超える試合の出場を禁止されていた。




海南応援団からは、真田の応援歌が聞こえる。

「ミラクル!ミラクル!セブーーーン!」




海南のオフェンス。

真田には、菅平がマッチアップした。



牧が仙道を見てにやっと笑う。

「武藤を追い出したこと後悔するぞ。」

「・・・。」

(何をする気だ・・・。)



「アウト!」



牧が指示を出す。


『キュ!』


『キュキュ!』


海南の選手が動き出す。




会場がざわつきだす。

「ん!?」

「あれは、何だーー!!」

「海南のオフェンスが変わった!!」




牧と清田が、45°やや高めにポジションを取る。

神と真田が、0°3Pラインよりやや外で構え、高砂がハイポに位置した。




「ざわざわざわ・・・。」




「ツーガード・・・。」

と腕組みの赤木。

「4アウトともいうな。」

と花形。


藤真が解説。

「センターを除いた4名の選手がアウトサイドに位置取ることにより、
インサイドのスペースが空き、カットインやドライブがしやすくなる。
ペネトレイトの牧やドライブの清田、真田は、リングを狙いやすくなるわけだ。
シングルポストの高砂もプレーのスペースが空き、1on1で勝負ができる。
海南にとってみれば、オフェンスがしやすいフォーメーションだ。
ただ、インサイドには高砂一人だから、リバウンドは極端に弱くなる。
シュートさえ、外さなければ、海南にとって相性のいいフォーメーションだ。」


「陵南に止められるのか?」

「インサイドを固めれば、神が外から射抜き、外を広げれば、牧と清田が突っ込んでくる。
陵南は厳しいところだな。」

三井の問いかけに、花形が答えた。




「・・・。」

(まいったなー。そう来たか・・・。)

仙道の額から汗が流れる。



『クルッ。』


高砂が、ハイポから、牧の逆サイドのゴール下に下りた。




「あっ!中ががら空きだーー!!」




『キュ!』


その高砂の動きにあわせて、牧が動く。




「キターー!!」

「仙道と1on1!!」




『キュ!』


やや強引にリングに向かって、一直線に向かってドリブルで押し込む。



(パワー勝負。)



仙道が一歩引くと同時に、牧もバックステップで引いた。



(シュート!)



仙道がつめる。



そのとき。



『キュキュ!』


逆サイドの真田が、菅平をスピードで置き去りにし、カットインで切れ込んできた。



『バン!』



真田の動きに合わせて、牧がバウンドパスを放つ。



『バシィ!』


『シュポ!』



「ナイシュ!真田!!」

真田のレイアップが綺麗に決まる。




「ちぃ、速えなー。監督!」

越野が選手交代を促す。

「待て、もう少し様子をみよう。」




陵南のオフェンス。


だが。



『パシ!』


「ナイスカット!」


エンドラインから、不用意に放った菅平のパスは、植草に渡る前に、真田に奪われた。


「あっ!」



『バス!』


真田のバンクシュートが決まる。




「真田の連続得点!6点差!」




「試合で見たことないが、あの#7相当いい動きだな。控えにはもったいないぜ。」

三井がいう。


「昔、牧に聞いたんだが、真田は、喘息もちだそうだ。体調がよくても、10分間のみの出場らしい。
実力は海南でもトップレベルなのに、惜しい男だといっていた。」

「県内の試合では、1度も出場したことがないんじゃないか?」

赤木が尋ねると、

「あぁ、だが、全国デビューはしている。今年のIHも出場2試合ほど、出場していたぞ。」

藤真が答えた。


「喘息じゃ、練習もろくにできねぇだろ。それで、あの動きなら、やつはセンスの塊だな。俺のように。」

と三井。


「・・・。」

4人は無視。


「シカトしてんじゃねぇーよ!!」




海南 51
陵南 45







続く。

#57 【ファインプレー】

2009-02-21 | #03 県決勝 選抜編
海南 47
陵南 43




陵南のオフェンス。


『キュッ!』


『キュ!』


『ダムダムダム・・・。』


(派手さはないが、バスケを知っているPGか。)

清田は植草を認め始めている。



「植草さん!」


『バス!』


山岡にボールが渡る。




「お!?ようやく、陵南ルーキーのオフェンスだな。」

三井が小さく笑う。


「お手並み拝見だ。」

花形が答える。




『キュ!』


『ダム・・・。』


山岡は、ボールをもらうやいなや、パスフェイクを交え、カットインで切れ込む。




「速い!!」




だが、コースを読んでいた神が手を出す。



「くそっ!」


『ダム!』


素早くレッグスルーから方向転換、低いドリブルで神を一歩抜く。



「だーー!!」

山岡が叫ぶ。



仙道は、0°で牧と激しいポジション争い。

福田は、3Pラインで構えている。

ゴール下には、菅平と武藤。

その武藤が、カバーリング。



『キュ!!』



「来い!武藤ぉー!!!」


「何!!!」

(ピクッ!)



1年の山岡に挑発された武藤は、冷静さを欠いた。

山岡は、レイアップシュート体勢に入る。


「待て!武藤!!」

牧が叫ぶが、武藤はかまわずブロックに飛ぶ。


「ナメるな!1年!」


(よし!)


山岡はにやっと笑う。



そして、周囲の想像を上回るジャンプ力で、畳み掛ける武藤の腕に自分の腕を当てた。



(高い!!)


『パチ!』


『ピィーーーー!』


『ダムダム・・・。』


山岡の腕からはじき出されたボールは、ラインをわる。



「青!#9、ハッキング!!」




「うおーーーー!!!」

「武藤、4つ目!!」

「山岡がファウルを誘った!」




「山岡、いいぞ!」

「フクさん、ありがとうございます!!」

「拓真、ファインプレー。まさか、1本目でやるとはな。」にこり。

「仙道さんの作戦通りうまくいきましたね。武藤さんには悪いことしましたが、試合だし、しかたないですよね。」



-----------------------------------------------------------------------

≪回想≫

ハーフタイム中


陵南ベンチ。

「よし、わかった!牧がどう動くかがポイントだが、ここは仙道に任せる。」

「ありがとうございます。みんな、ちょっと聞いてくれ。」

「はい。」


「武藤さんをコートから追い出す。」

「ファウルを誘うってことか?」

「あぁ。まずは、俺が牧さんから1本決め、牧さんのディフェンスの注意を俺に引かせる。
あの人がカバーリングに入ると厄介だからな。2本目は、拓真だ。武藤さんに一声かけてみろ。」

「挑発ってことですか?」

「そういうこと。」


「あのリーゼントだ。1年のお前に挑発されたら、キレるかもな。」

越野が笑って答える。


「そのときは、助けてくださいよーー。」

心配そうな顔をする山岡。


「それだけじゃない。海南は、まだ拓真の身体能力を熟知していない。
拓真がレイアップにいけば、必ずブロックに飛んでくる。
そしたら、思いっきりジャンプし、飛んでくる武藤さんの腕に軽く当てればいい。
拓真が思いっきり飛べば、ボールに触れられることはない。」

「俺、責任重大っすね。あはは。」


「だが、山岡に神を抜けるか?」

越野が問いかける。


「抜けるよな、拓真?」

仙道も尋ねる。

「はい。やってやりますよ!」

「失敗しても、武藤さんを追い出すまで、今のオフェンスを繰り返す。
追い出したあと、リバウンドを全て取って、逆転だ。」


「了解だ!その作戦で行こう!」

「監督より、いい作戦やないですか!」

「さすが、仙道さん!」


-----------------------------------------------------------------------



「武藤・・・。」

高砂が悲しそうに武藤を見つめる。


「すまん。あいつの一言につい・・・。」

「清田や桜木の態度に比べれば、あいつはまだましだろう?」

「あぁ、そうだったな。」

武藤が笑う。


(ピク!)

「そりゃ、ないっすよ。牧さん?赤毛猿と一緒にしないで下さいよ。」


「神!あの#12、結構飛ぶから気をつけろ。目測を誤るなよ。」

「はい。」


「俺は、少し休む。できれば、このまま休ませておいてくれ。」にこり。

「あぁ、おまえの次の試合は、全国だ!」にや。

「あの新しいオフェンスの成果を見せてもらうよ。」

「ゆっくり見てろ。」


『トン!』

牧と武藤が拳をあわせる。




「やりやがったな。あの1年。」

「武藤ほどの男が簡単に挑発にのるとはな。」

「山岡は、三井と違って頭がいい。」

「なっ、なにをーー!魚住!!」

「ほら、すぐに頭に血が上ると、簡単にファウルをとられるぞ!」

「ぐっ。」

魚住が笑った。


「ファウルを誘うプレーか・・・。嫌なものを思い出すな。」

「あぁ、長谷川も神や牧に追い出されたからな。
あれから、ディフェンスのリズムを狂わせ、神にやられ・・・、神にやられ・・・、神にやられ・・・。」

(花形は、相当神にこだわっているな・・・。)

藤真は、もう呆れ顔である。


「スピードに任せたドライブとはいえ、神を抜いた山岡のドリブルもなかなかものだった。
ジャンプ力も上の下といったところか。」

「荒削りだが、ハンドリングは悪くない。」

「まだまだ成長の余地がある。」

赤木が山岡のドライブをほめた。




山岡は、フリースローをなんなく決める。


「初得点・・・。うぅ・・・。」


「バカ!泣くやつがあるか!!」

越野が叫ぶ。


(山岡拓真、苦節6ヶ月、ついに初得点・・・。)

山岡は、初得点をかみ締めていた。




海南 47
陵南 45







続く。

#56 【底知れぬ男】

2009-02-20 | #03 県決勝 選抜編
海南 44
陵南 41

第3Q開始




「陵南は、植草をいれ、越野を下げてきたな。」

「仙道が、点を獲りにいくっていうことだ。」

「あぁ。」

花形の問いに、魚住が答え、赤木、藤真、三井の3人がうなずく。




「この第3Qが、勝敗を左右するわね。」

と記者席の弥生。




海南のメンバー変更はない。


「始めます!!」



陵南のスローインから、開始。

ボールは、植草が運ぶ。




「陵南がポジションを変えてきている!!」

「仙道が下だ!!」




「そうきたか。」

牧が不敵な笑みを浮かべる。


「仙道は俺がマッチアップする!神は山岡、清田は植草、武藤は菅平、高砂は福田につけ!」

「はい!」



仙道が叫ぶ。

「福田、外!」


仙道の声をきっかけに陵南がポジションを取る。

植草がトップ、福田、山岡が45°、菅平がゴール下で待機し、仙道が0°で構える。

福田が外に出たため、高砂がつられて、ゴール下から離される。




「仙道が勝負に出たな。」

「あぁ、前半も何度かゴール下を攻めたが、ここまでオフェンシブではなかった。」

「牧との身長差は7cmか。牧なら押えられない身長差ではないが、相手が仙道、
しかもインサイドの守りとなると少し厳しいかもな。」

観客席の三井、魚住、花形の意見とは反対に、藤真、赤木はこういった。

「牧はそんなにやわじゃない。でなきゃ、3年間無敗を誇ることも、全国で2位になることもかなわなかっただろう。」

「あぁ、あいつは、底知れない男だ。」


「仙道も底知れぬ。」

魚住も対抗していう。


「そうだったな。」




そのとき。




「仙道のフック決まったーー!!」

「1点差!!」




「よし!」

陵南のベンチが活気付く。




海南 44
陵南 43




「面白い!!」

牧は今までに感じたことのない興奮を感じていた。

(この感じ、初めて藤真と戦った感じに似ているな・・・。いや、違う。
もっと、心を体を鋭く突かれるような恐怖にも似た刺激だ。)




「どっちが勝つか検討もつかねぇな。」

三井が笑う。

「牧、楽しんでいるな・・・。」

(なぁ牧?仙道は俺より上か??)




「いくぞ!陵南!!」

牧が声をあげる。


陵南は前半同様、ハーフコートマンツー、マッチアップは海南と変わらない。

ドリブルをつきながら、牧が不敵に笑う。


「いくぞ。仙道。」


「・・・。」


一呼吸したところで、牧が動く。



『キュ!』


仙道も素早く反応。

牧のドリブルについていく。



正真正銘の真っ向勝負。



『ダムダム・・・。』


『キュキュ!』




「いったーーー!!」

「牧のペネトレイト!!」




低い姿勢のドリブルで、仙道と植草の間を突っ込む。


『シュッ!』


だが、仙道がコースを塞ぐ。


『キュン!』


牧は、仙道の動きを予測していたかのように、バックロールで交わす。




「うまい!!」




牧の前に立ちはだかるのは、鋭い視線で牧を睨む福田。


『ダムダム!』


『キュ!』


福田に向かって、牧が飛ぶ。




「福田!飛ぶな!」

田岡がベンチから叫ぶ。




「ぬっ。」



そのとき。



仙道の手が、牧のシュートコースを塞いだ。



「!!!」



(仙道!!)



「だが、甘い!」


牧は、半回転をし、パスを放つ。



『バシ!』




「神がフリー!!!」




山岡は、清田にスクリーンされ、身動きが取れない。

スイッチした植草が懸命に神のシュートチェックに飛ぶが、届かない。



『シュ!』



『シュポ!!』




「まさに神!!」

「外さねぇーー!!」




海南 47
陵南 43




「神君、外しませんね?」

「いや、確かに高確率に決めているけど、随所に外しているわ。
ただ、ポイントポイントでは、100%といっていいほど、決めている。
その印象が強くて、外していないようにみえるのよ。ここ一番の勝負強さは、牧君並ね。本当に末恐ろしいこよ。
神君がいる限り、来年の海南も安泰ってところかな。」




「すみません・・・。仙道さん。」

「どんまい。植草、拓真はフェイスガード気味についているから、あまり周りが見えていない。
清田が動いたら、しっかり声をだしてやってくれ。」

「おう。山岡、すまない。」

「いえ、植草さん。これからです!!頑張りましょう!」


「福田は、ディフェンス我慢だ。接触プレーは避けるんだ!」

「おう。」


「第3Qも始まったばかり。さぁ、行こーか。」



仙道の牧をも凌駕するポストプレーで、点差を縮めた陵南であったが、
追い上げムードに水をさされる格好で、神に手痛い3Pを許した。

だが、仙道の力強い言葉、思いやるフォローが、チームに勢いをもたらす。



「仙道さんの気持ちに応えてやる!!」

山岡の内なる闘志にも火がつき始める。




海南 47
陵南 43







続く。

#55 【後半の作戦】

2009-02-18 | #03 県決勝 選抜編
海南 44
陵南 41


ハーフタイム中




陵南ベンチ。

「いいぞ、いいぞ!追い上げているぞ!!」

「監督ー、俺まだ無得点っすよ。とほほ・・・。」

「いいや、神をよく押えているぞ!ナイスディフェンスだ!第2Qの功労者は、お前といっても過言ではない。」

「でも、ディフェンスだけじゃ、成績には残らないんですよね。
中学時代もディフェンスばかりで、残る成績といったら、スティールくらいだし。
俺も三井さんみたいに、試合を決めるシュートを打ちたいっすよ。」

「気にするな。長い目で見てれば、いつか決められる。」

「いつか・・・ですか。いつかっていつだろう。とほほ・・・。」


「福田、菅平もナイスオフェンス!ナイスディフェンス!後半もこの調子でいこう!インサイドでガンガン攻めるぞ!!」


「・・・・・・。」

仙道が、無表情で田岡を見つめている。

「どうした、仙道、浮かない顔だな?」

「福田も菅平も、第2Qではファウルを取られています。
後半もこのままインサイド主体のゲームでは、2人のどちらかが、退場する可能性があります。
この試合、福田と菅平は、必ずコート上にいてもらわないと海南には勝てない。」

「だが、ファウルを取られているのは海南も同じだ。
今は、福田と菅平を信じて、確実性の高い点の取れるインサイドから攻めるのが、最善だと考えるが。」

「海南と同じ状況で、お互いが同じ作戦を考えているなら、なおさら海南を逆転することはできない。
むしろ、選手層の厚さから、海南のほうが断然、有利です。」

仙道は続ける。

「前半は、海南がしかけてきました。今度は、うちがしかけていかないと、
このまま平行線のゲームをしていても海南には勝てない。」

「では、どう考える?」

「俺がインサイドで攻めます。まずは、武藤さんをコートの外へ追い出す。」

「んー、牧にマークされながらできるのか?」

「やってやる!」



(俺がプレーで勝利に導く。)

田岡は、以前仙道がいった言葉を思い返す。



「よし、わかった!牧がどう動くかがポイントだが、ここは仙道に任せる。」

「ありがとうございます。みんな、ちょっと聞いてくれ。」

仙道が、後半の作戦を伝える。



「了解だ!その作戦で行こう!」

「監督より、いい作戦やないですか!」

「さすが、仙道さん!」



田岡がうつむいている。

(俺は、必要ないのか・・・。)ぐすん。




海南ベンチ。


『パタパタ・・・。』


いつもより高頭の扇子を仰ぐ速度が速い。


「追いつかれそうな勢いだな。翔陽の摩天楼軍団を押えてきたお前たちが、何をそんなにてこずるんだ?」

「福田は本物です。ディフェンスはともかく、やつのゴール下のオフェンスは、赤木レベル。
そして、仙道がアシスト、シュートと絶妙のタイミングでゴール下に絡んでくる。
思い切りのいい菅平のジャンプシュートも高確率に決まっている。想像以上に手ごわいですよ。」


「牧、これからどう考える?」

「うちも陵南もインサイドのファウルがかさんでいる。このまま、インサイド中心のオフェンスでは、誰かがコートから消える。
それは、高砂かもしれないし、福田かもしれない。ここは一先ず、素早い展開から、神を使って、外から射抜く。」

牧は続ける。


「神、山岡のディフェンスは振り切れるか?」

「えぇ。信長、ちょっと山岡に絡んでくれないか?」

「OKっす。神さんのシュートチャンスは、俺が作る。」

「任せたよ。」にこ。

「うす!!」


「牧さんはどうですか?」

「仙道のインサイドは強いな。だが、俺の体もだいぶ動くようになってきた。
そろそろ、大暴れといきたいな。」

「えぇ、期待してますよ。」

牧と神に笑がこぼれる。


「監督!」

「なんだ、牧?まだなにかあるか?」

「様子をみて、あれを使っていきましょう。」

「あれは、全国にとっておきたんだが。」

「ここには、全国クラスのやつがいる。試す価値は、十分にあると思います。」

「・・・、そうだな。一度、実戦で試すのもよかろう。真田、小菅、宮益、いつでもいける準備をしておけ。」

「はい。」




「福田のゴール下、強すぎないか?」

「当然だ!コーチは俺だ。どこそこの赤い頭のやつとは違う!」

「何を!!」

「よ!似た者同士!」

三井が笑う。


「でもよ、俺らの試合のときに、あんなゴール下されたら、正直際どい試合にはならなかったかもしれない。
菅平のジャンプシュートもよく決まっている。」

「福田のリバウンドが効いているんだよ。しっかり、スクリーンアウトを教えた。
お前も桜木がいれば、思い切り打てるだろ。」

「俺は外さねぇ。」

「・・・。」

自信満々に答える三井であったが、赤木、魚住は無視。


「次は、神だな。」

藤真がいう。

「山岡にうまく押えられているようだが。」

「神はそんなにやわじゃない。俺なら、次は迷わず神を使い、ディフェンスを外にひきつけ、第4Qは中で攻める。
それに、忘れた頃に、外から入れられると、精神的に来るだろ?」

「あぁ、うちもあいつにやられたからな・・・。」

花形が神を見つめ、寂しそうにいう。


「!?」

(花形、そのい葉、今日3回目だぞ・・・。)

藤真が苦笑いをする。




「陵南は、流れを引き寄せましたね。」

「えぇ、でも犠牲も大きかったと思うわ。」

「犠牲?」

「福田君と菅平君のファウルよ。海南と違い、陵南は、控えの選手層が薄い。
しかも、彼らは、陵南のビッグ3の2人。
彼らが、5ファウルで退場でもしたら、陵南は一気にサイズダウンし、海南の勝利は確実よ。」

「後半、陵南はどういう攻めてきますかね?」

「私が監督なら・・・。」

「監督なら・・・?」

「仙道君に任せる!!」

「それじゃ、何の作戦にもなっていないじゃないですか?」

中村が弥生を馬鹿にした感じでいう。


『バシィ!』


「仙道君に全てを任せる!っていう作戦なのよ!!」

「いた!!またすぐ叩く・・・。んじゃ、具体的な作戦は?」

「仙道君次第よ!」

「・・・。」

中村は、返す言葉がなかった。




そして。



『ビィーーーーー!!』



第3Q開始のブザーがなる。




海南 44
陵南 41







続く。

#54 【ゴール下の攻防】

2009-02-17 | #03 県決勝 選抜編
第1Q終了。

海南 23
陵南 17




『パタパタ・・・。』


「どうだ、陵南は?」

「ええ、手強いやつらですよ。オールコートの対策はしてあるようですね。
次から、しっかりハーフで中を押えて、福田をとめます。なぁ、高砂?」

「おぉ。赤木、花形級の選手だと思って、全力でとめる。」


武藤がいう。

「福田のポストプレーは、真っ向勝負、魚住そのものだな。
力で押すセンターのボールを奪うチャンスは十分にある。
オフェンスは、パスやドリブルには対応するが、シュートチェックには飛ばない。
つもり、横の動きにのみ反応していた。」

「さすが、武藤さん。海南一の観察能力は、頼もしいですね。」

清田のあとに、武藤が続ける。


「冷静さを欠いた清田のドリブルの初歩は、必ず右。」

「なんすか、それ?」

「お前の癖だ。」

「・・・。」

(そうだったのか・・・?)

「だとさ。」

牧が答えると、海南のベンチに笑いが起きる。


「神、#12はどうだ?」

「ディフェンスはいいですね。しなやかで、吸い付かれるようなディフェンスです。
でも、あいつに比べれば、まだまだかな。」

桜木を思い出す。


「よし!第2Qは、福田を押える!中で仕事をさせるな、いいな?」

「おう!」




陵南ベンチ。

「俺、また何もしてないっすよ。とほほ・・・。」

「神を押えてたぞ!よくやった!」

越野が称える。


「フクさん!ミラクルアンビリーバブルですわ!!」

「いいぞ、福田!このまま、中で勝負しろ。押さえられたら、外のミドルを打っていけ!お前が、オフェンスの中心だ!!」

「おう!!」


「仙道、牧はどうだ?」

「そろそろ、ギアをチェンジしてきそうですね。だが、俺も点を獲りに行きます。
この点差のまま、後半を迎えるのきついですよ。」

「任せたぞ。」


「菅平、福田!牧が突っ込んで来たら、チャージングを狙え。決して飛ぶなよ。」

「はい!」


「拓真、今日の調子はどうだ?」

「いいとは思うんですけど、まだリズムが合わないですね・・・。」

「頼りないルーキーといったところだな。」

「仙道さん、申し訳ないっす。」ぐすん。




『ビィーーーー!!』


第2Q開始のブザーがなる。




「よし!」

「行くぞ!!」



清田のスローインから開始。


『ダムダム・・・。』

牧がドリブルで運ぶ。


牧には仙道、神には山岡、清田に越野、武藤に菅平がつき、福田は高砂についた。


(まずは、高砂。)


「清田!」

牧の指示が飛ぶ。


清田がVカットで、ボールをもらうと同時に、高砂が菅平にスクリーン。

武藤には福田がスイッチしている。

そして、武藤はゴール下から、福田を引き連れて大きく外に出る。


『バシ!』


ボールは、清田から高砂へ。

ゴール下の1on1のスペースが空いている。


『バス!』


「ナイッシュ!高砂!」

「OK!」

高砂と武藤の拳がぶつかる。

ウィークポイントと思われるところから、確実に得点を奪う海南。



対する、陵南。

仙道のドリブルから、山岡へ。

その山岡から、福田にパスが入る。

高砂は、手をあげ、密着するような、激しいディフェンスで対抗。

だが、福田も負けていない。



『ドン!!』



「ぐふっ!」


「チャージ!!」

高砂が叫ぶが、主審の笛はならない。



ドリブルで、ゴール下に押し込む。



『キュ!』


武藤がフォロー。




「囲まれた!!」




「フクさん!」

たまらず、外の山岡へパスを放つ。


そして、福田は体をクルっと回転させ、高砂を押さえながら、裏のパスを要求。



「へい!」



『シュ!』


山岡は、福田の要求どおり、逆サイドにリングを超える絶妙なループパスを放つ。



『バシ!』


福田は、空中でキャッチし、そのままダイレクトにシュートを放った。



『バス!』




「うおーーー!入ったーー!!」

「福田すげーーー!!」

「フ・ク・ダ!!フ・ク・ダ!!」




「・・・。」


(エース・・・。)ぷるぷるぷる。



「初アシスト!」

山岡が喜ぶ。




「ナイスパス!ナイスシュ!」

越野が、福田と山岡を称える。


「さぁ、ディフェンス1本だ!」

仙道が声をかける。




福田に強引に押し込まれたことにより、若干血が上った高砂。


「武藤、俺たち少し大人し過ぎたな。」

「あぁ。」



その後、両チームともインサイド主体の攻めとなる。

陵南は、福田を中心に、時には仙道が果敢に牧の上から、時にはフリーになる菅平がジャンプシュートを決めた。

越野は、清田にマッチアップされ、オフェンスには思うように参加できず、
山岡は、神のディフェンスで体力を削られていた。

一方、海南は、神の外角や清田のドライブ、牧のペネトレイトを警戒するあまり、
インサイドのディフェンスフォローのできない陵南ディフェンスの隙を突き、
高砂、武藤が、インサイドのコンビプレーで、着実に得点を重ねていった。

だが、ともにファウルが多数コールされる肉弾戦の攻防となった。




第2Q 残り11秒

リングに嫌われた菅平のジャンプシュートを福田が押し込んだところで、第2Q終了のブザーがなる。




海南 44
陵南 41



高砂 2ファウル
武藤 3ファウル
福田 3ファウル
菅平 3ファウル








続く。

#53 【宣戦布告】

2009-02-16 | #03 県決勝 選抜編
海南 16
陵南 7




陵南のアーリーオフェンス。

リバウンドを取った福田から、植草にボールが渡る。


『ダムダム・・・。』


『キュ!』


清田が立ちふさがる。


「俺を抜けるのは、一流のPGだけだ!」


『キュ!!』


「・・・。」


『バン!』


清田の言葉を無視するかのように、ボールは後ろの仙道に。

自身は、一直線にリングを目指す。


「仙道め。」


清田が仙道に気をとられた瞬間、


『ビュン!』


「あ!?」


『バス!』


清田の頭上を通り、前方を走っている植草に仙道からのジャンプパスが入る。

植草の前方にいるのは、越野、そして、神。




「2対1!」




越野は、ゴール下を通過し、逆サイドへ流れる。

神も植草をケアしつつ、あとを追うが、


『キュッ!』



『シュパッ!』


植草は、フリースローライン手前から、あっさりジャンプシュートを決める。




「ナイッシュ!」

「陵南、追い上げムード!」




「いいぞ!植草!」

田岡から檄が飛ぶ。




海南 16
陵南 9




「神なら止められるかもと思ったが、あっさり決められたな。」

「あぁ、陵南はそんなに弱くない。植草も冷静だ。」

「2対1なら、負けん!」

三井と赤木の会話に、魚住が割ってはいる。




だが。



『スポッ!』




「わーーーー!!」

「また、神のスリーだーーー!!」




「すげーー。さっきの仕返しか。」

苦笑いの三井。


「冷静かつ大胆。」

と赤木。


「早く手を打たねば・・・。」

と魚住が呟く。


「あぁ、うちもあいつにやられたからな・・・。」

花形がいう。


「・・・。」

(花形、さっきと同じこといっていた。相当、準決がショックだったのか・・・。)

藤真が思う。




海南は、オールコートプレスをやめない。




「高頭め、第1Qで勝負を決めるつもり気か?生意気な!!」




『キュ!』



『キュキュッ!』


冷静さを取り戻した植草が、スペースを見つけながら、ボールを運ぶ。



『ダムダムダム・・・。』


そして、仙道にボールが渡る。


「さっきの借りは返すぞ。」

と牧。


「お手柔らかに。」



『キュッ!』


『ガシ!』


越野が、牧にスクリーンをかける。



だが。



「ぐっ。」

牧は、力で交わす。



しかし、その牧の一瞬の隙を見逃さない仙道、高速ドライブで切り込む。


『キュ!』


高砂がカバー。



『シュ!』


バックロールで、高砂を置き去りにし、レイアップ。



『シュポ!』




「仙道、キターー!!」

「牧が抜かれたぞ!!」




仙道は、牧を見つめる。

牧も見つめ返す。


「宣戦布告と受け取っていいのか?」

「ご自由に。」にこり




「越野のスクリーンがあったとはいえ、今のは鋭いドライブだったな。」

「さすが、仙道といったところか。」

「牧も心中穏やかじゃないなだろうな。」




仙道のドライブ後、牧も徐々に調子をあげ、シュート、アシストと得点に絡む。

また、海南はオールコートからハーフコートマンツーに変え、福田には高砂がマッチアップした。

一方、陵南は、福田のポストプレーを中心に、得点を重ね、海南がディフェンスを引くや否や、植草に変え、山岡を投入。

落ち着きを取り戻した山岡は、神に得点を許さず、ディフェンスのレベルの高さを見せた。



だが、序盤のリードは取り戻せず、第1Q終了のブザーがなる。



『ビィーーーーー!!』



海南 23
陵南 17







続く。

#52 【リバウンドを掴む者は、勝利を掴む】

2009-02-14 | #03 県決勝 選抜編
海南 16
陵南 7



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≪回想≫

湘北戦が終了し、次の日。

陵南高校体育館。



『ガラガラ・・・。』


「みんな、昨日はよく頑張った。差し入れだ!運動には甘酸っぱいものがいい。」


「魚住さーーん!」

「どうしたんですか?修行は大丈夫なんですか?」

越野が早速、声をかける。


「こいつに頼まれてな。オヤジに無理いって1週間休みを貰った。」

魚住の隣には、彦一が立っている。

「魚住さんは、これから海南戦までの1週間、フクさんの特別コーチになっていただけることになったんです。」


「えーーー!?」

「どういう意味だ??」

選手の多くが、彦一に尋ねる。


「フクさんに、センターの動きを覚えてもらうんですわ。」

「福田に?」

「はい。海南のディフェンスは、マンツーマンや。
多分、仙道さんには、牧さんがつきはるから、思うように得点を奪えんかもしれへん。
そこで、フクさんや。フクさんには、外の3Pと中のポストプレーで、得点を量産してもらうっちゅう話なんです。」


「でも、1週間で福田がポストプレーをマスターできるのか?」


「大丈夫だ、俺が保証する。」

魚住が続ける。

「福田のあの粘り強いゴール下、がむしゃらにゴールを奪うオフェンス力は、
それだけでもゴール下のディフェンスに脅威を感じさせる。
そこに、ステップ、フェイク、ポストアップが加われば、間違いなく、最高のPFなる。
もちろん、ディフェンスのコツも教えるつもりだ。」


「・・・。」ぷるぷるぷる・・・。


「そういうことなんですわ。」

「みんな、1週間よろしく頼むな。」

「はい。宜しくお願いします。」

「これは、差し入れの魚亭特製のガリだ、遠慮せずに喰え。」

「はい・・・。」

選手一同、苦笑いをした。




「違う!わざとらしいフェイクじゃ、誰も引っかからないぞ!」

「・・・・・・・・・・・・。」


「ゴールに近いほど、冷静に相手を見て、動くんだ!!」

「・・・・・・・・・・・・。」


「手で押えるんじゃない!重心を低く、腰で相手を押えるんだ!!」

「・・・・・・・・・・・・。」




その様子を眺めている仙道と山岡。

「魚住さん。ちょっと。」

「ん!?なんだ、仙道?」

「福田は、褒められて伸びるタイプですよ。このままじゃ、あいつのプライドはボロボロっすよ。」

福田を見る魚住。その福田の背中は、小さく見える。


「そうだ。忘れてた・・・。」

苦笑いをする魚住。




「牧をも引っかかる絶妙なフェイクだぞ!」

「おう!」


「バックシュートも覚えろ。お前がバックシュートを覚えたら、鬼に金棒だ!」

「おう!おう!」


「自信を持て!お前はもうシュートを外さない!自信を持つんだ!!」

「おう!おう!おう!」


「福田!お前が勝利をもぎ取るんだ!!」

「おぉーーーーーーー!!!」



「単純だ。」にこり

仙道が笑う。




そして、決勝戦前日・・・。

「福田、1週間、よく頑張った。元々、オフェンスのセンスがあるといっても、飲み込みも早さには、正直俺は驚いた。
お前のポストプレーは、海南はもちろん、全国に通用するといっていい。自信を持っていけよ。」

「はい!」


「ディフェンスも成長した。だが、ゴール下では飛ぶな。フェイクに引っかかるな。
今のお前では、縦横両方の動きについていくことはできない。縦の動きは捨てろ!横の動きだけに集中するんだ。
そして、スクリーンアウトを忘れるな。腰を低く、ポジションを取ってから、リバウンドにいくんだ!」

「はい!」



「リバウンドを掴む者は、勝利を掴む!!忘れるな!」



「はい!」


(リバウンドを掴む者は、勝利を掴む・・・、かっこいい。)



体育館の隅では、彦一が涙を流しながら、魚住が持ってきたガリを食べている。

(わいが魚住さん連れてきたからというて、なんで、わいだけが食べなぁあかんのや・・・。
毎日毎日、ガリ食うのはきついって・・・。オェッ。)



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『バシィーー!!』


「福田、ナイスリバン!!」


「リバウンドを掴む者は、勝利を掴む!」




「リバウンドを掴む者は、勝利を掴む!」

魚住がゴリ顔をしていう。


「リバウンドを制する者は、試合を制す!」

赤木も対抗してゴリ顔でいう。


「似た者同士が、似たこといってらぁ。」

三井が笑う。


「ふん!」




陵南は、福田のリバウンドで本来の姿を徐々に取り戻す。




海南 16
陵南 7







続く。