● 天下の名勝イグアスの滝へ!
翌日(9月2日)は,いよいよイグアスの滝の見物にあてることになった.あいにくお天気はあまり良くなくて,写した写真のできばえも冴えなかったのが残念であった.イグアスの滝は,ブラジルとアルゼンチン両国にまたがっている.われわれは,パラグアイ側のシウダー・デル・エステ市を拠点にして,見物に行くことになった.その日はちょうど日曜日,昨日の賑わいとはうって変わって,商店も旅行社もみんな閉店,どういうふうに行ったらよいか,全然見当がつかなかったが,「とにかく行ってみよう」ということで,とりあえずブラジル側の町フォス・ド・イグアス行きのバスに乗った.5分もたたずに「友情の橋」を越えて国境,旅券審査をパスすると,ここはもうブラジルだ.同行友人の記録は続く.
==とたんに,雰囲気が一変した.街路は整然,道路は完璧,街全体を支配するこの秩序感.「田舎の国」パラグアイとは雲泥の差だ.「ブラジルが読めた」と,同行女性は叫ぶ.バスの終点でおりると,そこは何もないところ.やむなく長い道を歩いて街へ戻ったが,さてどうしたものか.滝はどうしても見なけりや.そこで,○○氏(筆者)の出番となった.道端にたむろしている観光客目当てのタクシー運転手と交渉,イグアスまで往復60ドルで話をつけた.見物の待ち時間も入るという取り決めだ.==
==深山幽谷、屹立(きつりつ)する断崖,その目もくらむような高みから,はるか何十丈も下の滝壷に向かって,一気に馳せくだる激流.滝は造化の神の創造にかかわる天然の芸術作品だ.日本ならば,まず華厳の滝,那智の滝,袋田の滝などなど,米国ではなんと言ってもナイアガラの瀑布.しかし,世界のどんな滝でも,今この目の前にしているイグアス瀑布に比べれば,物の数ではない.華厳の滝なら3000本,ナイアガラでも10本くらい束ねなければ,この圧倒的迫力にとうてい匹敵できないだろう.==
==イグアスの全幅は5キロ、最大落差100メートル,大小300の滝が,文字通り「押しあいへしあう」かのように互いに結合し交差して,切り立つ岸壁を一斉に落下する.巌に激突する轟音は天を揺るがせ,立ちのぼる飛沫は白煙となって地を閉ざす.「イグアス」とは,インディオの言葉で「壮大な水」ということだ.そのスケールの雄大さもさることながら,太古の昔から,人の目も及ばぬ僻遠の地にこの一大ドラマを現出させてきた自然の神秘に思いいたるとき,人は言葉を失い,畏怖と驚異のうちにただ沈黙せざるを得ない.==
こうしてわれわれは,パラグアイ滞在4日間の行程を無事終了し,今度はいよいよ南米の大国ブラジルへと入国することになる.パラグアイ東端の町シウダー・デル・エステからの便はふたたび長距離バスだ.ブラジルは,とてつもなく大きい国だが,われわれはその東南部に位置し,パラグアイからも比較的近く,また日本人にはおなじみのサン・パウロ市から足を踏み入れることにした.スペイン語圏からポルトガル語圏への移動でもある.はたして「ことば」は大丈夫か.幸いなことに,ブラジルには,あらかじめ連絡をつけておいた関係者との交流予定も多い.実のある出会いを期待することにしよう.
【次は,ふたたび夜行の長距離バスでブラジルのサンパウロに入ります.】
(2006/06/04,回想執筆時,筆者)
(ここで,都合により,このシリーズの連載をしばらくお休みさせていただきます.)