つばさ

平和な日々が楽しい

制服や権威にコロリなびく人の心根

2012年10月10日 | Weblog
春秋
2012/10/10
 ドイツはベルリン郊外、人口3万の某市市庁舎に大尉率いる歩兵十数人が突然やってきたのは1906年10月16日夕である。皇帝の命により、と言って市長を逮捕し、金庫の中身を差し押さえる。警察に指示して市長をベルリンに護送させると大尉はどこかへ消え……。
▼じつは大尉、古着屋で軍服を手に入れただけの真っ赤なにせものだった。市長や警察がだまされただけでない。本物の武装歩兵は軍服と威厳ある挙措を真に受け、たまたま出会った「大尉」の命じるままに犯罪の片棒を担いだ。制服や権威にコロリなびく人の心根をにせ大尉が暴く。その人間臭さに世は大騒ぎしたそうだ。
▼ウイルスを使って他人のパソコンに侵入し、そのパソコンを遠隔操作してあちこちに脅迫文書を送りつける――そんな手口とみられる犯罪があった。パソコンの持ち主は一度逮捕され、のちに釈放されたという。誰もが知らぬ間に誰かによってなりすまされる。1世紀余をへて、なりすまし事件はずいぶん気味悪くなった。
▼くだんの大尉、みな軍服ばかり見て顔は見なかったから、私服姿ならつかまるはずもなかった。が、かつて服役中の房でチラとアイデアを漏らしていたことがきっかけで逮捕される。ネット犯罪やいたずらに手を染める者にも、手口を披露したがる傾向があると聞いた。人の心根には、いつになっても変わらぬ部分がある。
春秋

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