つばさ

平和な日々が楽しい

どこか別の国の知らない部屋に瞬間移動していればいいのに

2013年02月24日 | Weblog
春秋
2013/2/24
 首都の中心にあるマンモス大学が、大地震に襲われたらどうなるだろう。若手芥川賞作家、綿矢りささんの最新作「大地のゲーム」は、未来の日本らしき国を舞台にした小説だ。父親の世代は若いころ大地震と津波を経験したが、大学生らにはすでに昔話となっている。
▼街は暗闇に包まれている。古い図書館の倒壊で友達が命を落とす。残った校舎では家を失った学生たちが共同生活を送る。暴力事件も起きる。たくましく生きる主人公の女子学生だが、ある日、疲れで目をきつく閉じて、こう想像する。次に目を開けたら、どこか別の国の知らない部屋に瞬間移動していればいいのに、と。
▼東日本大震災から、もうすぐ2年がたつ。神戸、新潟、そして東北。私たちが揺れる大地で暮らすことを折に触れ思い起こすために、感受性の豊かな作家や美術家たちの果たす役割は大きい。来月は都内で、被災地での復興支援と作品づくりに取り組むアーティストたちが、展示や講演などの催しを約3週間にわたり開く。
▼会場は元中学校で体育館が残る。ここで避難所生活を体験する企画もある。日本で生きる人にとって震災は終わらないものだと主催者。東京で開くのは「その日」に備えるためもあるという。封印したい記憶、目を背けたい可能性をどう心に留め置くか。悲しみ、不安、希望など見えない思いを形にするプロに期待したい。

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