中日春秋
2012年10月31日
五木寛之さんの作詞で、松坂慶子さんが艶(あで)やかに歌った『愛の水中花』は、三十年前に大ヒットした曲だ。これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛 だって淋(さび)しいものよ 泣けないなんて
▼これもあれも、とにかく「被災地への愛」に満ちているのが政府の復興予算だ。沖縄の国道整備事業や、南極海での調査捕鯨事業、北海道と埼玉県の刑務所で使う小型の油圧ショベル等々
▼どう見ても被災地とは関係なさそうな使い道が、出るわ出るわ。問題の発覚から二カ月近く経(た)っても、切りがない。その気前のいい使いぶりには驚かされてきたが、さすがに、これには泣きたくなった
▼経済産業省が復興予算の五億円を、ベトナムへの原発輸出のための調査に使っていた。「大震災の復旧・復興につながる貿易投資の促進に必要」との理由だ。なるほど被災地は被災地でも、原発事故で世間の風当たりがきつくなった「原子力ムラ」への愛に、あふれている
▼官僚の皆さんはきっと、替え歌を口ずさみつつ、増税などで賄われる巨額の復興予算の使途を算段したのだろう。これも復興 あれも復興 たぶん復興 きっと復興 だって淋しいものよ 省益が減るなんて
▼彼らに歌は歌でも、短歌を贈りたい。被災地の地元紙・河北新報に載っていた福島の一読者の作である。<夕闇の児童公園あかあかと放射線量計のみ灯る>
2012年10月31日
五木寛之さんの作詞で、松坂慶子さんが艶(あで)やかに歌った『愛の水中花』は、三十年前に大ヒットした曲だ。これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛 だって淋(さび)しいものよ 泣けないなんて
▼これもあれも、とにかく「被災地への愛」に満ちているのが政府の復興予算だ。沖縄の国道整備事業や、南極海での調査捕鯨事業、北海道と埼玉県の刑務所で使う小型の油圧ショベル等々
▼どう見ても被災地とは関係なさそうな使い道が、出るわ出るわ。問題の発覚から二カ月近く経(た)っても、切りがない。その気前のいい使いぶりには驚かされてきたが、さすがに、これには泣きたくなった
▼経済産業省が復興予算の五億円を、ベトナムへの原発輸出のための調査に使っていた。「大震災の復旧・復興につながる貿易投資の促進に必要」との理由だ。なるほど被災地は被災地でも、原発事故で世間の風当たりがきつくなった「原子力ムラ」への愛に、あふれている
▼官僚の皆さんはきっと、替え歌を口ずさみつつ、増税などで賄われる巨額の復興予算の使途を算段したのだろう。これも復興 あれも復興 たぶん復興 きっと復興 だって淋しいものよ 省益が減るなんて
▼彼らに歌は歌でも、短歌を贈りたい。被災地の地元紙・河北新報に載っていた福島の一読者の作である。<夕闇の児童公園あかあかと放射線量計のみ灯る>
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