つばさ

平和な日々が楽しい

日本人の美意識の特徴として「暗示または余情」「いびつさ、ないし不規則性」を

2013年09月10日 | Weblog
春秋
9/10付

 外国人が日本について語るとき、わたしたちには意外な面をほめることがある。米国人の旅行客が「包む・並べる」という文化に感心していた。小箱に収まった京都の和菓子。芸術的な百貨店の包装。すしが同じ大きさで揃(そろ)っているのも、言われてみれば確かに美しい。

▼7年後の東京五輪で、日本はどんな素顔を世界に伝えられるだろう。国際的な祭典にありがちな「テクノロジー自慢」も結構だが、時代の最先端が、常に鋭くとがっている必要はない。高度な巨大技術の象徴だった原子力で、日本はしくじった。何かもっと細やかで、丸みを帯びた優しい価値観で、世界の人々を迎えたい。

▼新国立競技場は、イラク出身の女性建築家ザハ・ハディドさんが設計を手がける。巨大な生き物が天から舞い降りたような姿に、思わず息をのむ。「脱構築主義」という新しい建築の流れだそうだ。直線を組み合わせて、力と技で人間の空間を築くのではなく、ひねり、ずらし、曲げて、建物が自然環境に張りついている。

▼その包み込むような容器にも似合う日本の本質を、これからの7年間で見つめ直したい。日本学者のドナルド・キーンさんは、日本人の美意識の特徴として「暗示または余情」「いびつさ、ないし不規則性」を挙げている。いま人類が科学文明の曲がり角にいるとすれば、柔らかい和の精神が輝く好機が2020年に来る。

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