つばさ

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サイバー空間に潜んでいる危うさに鈍感な人はまだまだ多

2012年11月05日 | Weblog
春秋
2012/11/5
 「ブロンズの夜」。後にそう呼ばれることになる騒乱がエストニアの首都タリンで起きたのは、2007年4月のことだ。かつての支配者である旧ソ連の赤軍兵士をかたどったブロンズ像をめぐり、ロシア系の住民と民族主義者の間でくすぶっていた対立が火を噴いた。
▼政府の機敏な対応もあり、2日ほどで暴力的な騒ぎは収まった。むしろ世界の注目を集めたのは、その後の出来事だった。エストニア全土が激しいサイバー攻撃にさらされ、市民生活や国民経済に深刻な影響が出た。人々は銀行から預金をおろせなくなった。先進的とされていた政府の電子サービスも利用できなくなった。
▼攻撃の規模が大きかったこともあり、エストニア国内ではロシアの政府機関の関与を疑う声があがった。もちろんロシア政府は否定し、5年半たった今も真相はよくわからないようだ。ともあれ、サイバー攻撃の恐ろしさを目の当たりにした北大西洋条約機構(NATO)は、エストニアを拠点に対策の研究に乗りだした。
▼幸い、日本ではエストニアが経験したような国全体を揺るがす事態は起きていない。とはいえ、安閑としていられる状況でもなさそうだ。なりすましに誘導されて無実の罪を着せたり、違法アプリをダウンロードして個人情報を流出させたり。捜査当局も含め、サイバー空間に潜んでいる危うさに鈍感な人はまだまだ多い。

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