つばさ

平和な日々が楽しい

時を刻むものを作るだけあって、世の中の流れを鋭く読んだ。

2013年09月16日 | Weblog
春秋
9/16付

 丸穴車、角穴車、二番車、三番車、四番車……。何のことかというと、手巻き式の腕時計に使われている歯車の名だ。ちょうど100年前の大正2年に現在のセイコーホールディングスが発売した国産初の腕時計も、これら数ミリの部品の数々がぎっしり詰まっていた。

▼東京・墨田区のセイコーミュージアムで開かれている記念の展覧会で、分解された微小な歯車を目にすることができる。歯と歯がぴったりかみ合うように、寸分の狂いなく仕上げた職人の技は驚きだ。当時普及していた懐中時計をもとに、部品をぐんと小さくしなければならなかった。日本の時計史に残る技術革新だった。

▼「世間より一歩先に進む」を時計王といわれる創業者の服部金太郎はモットーにしていた。時計といえば柱時計を思い浮かべる時代に懐中時計の製造を始め、「家の時計」から「個人の時計」へ市場を広げた。個人がより身につけやすいようにしたのが腕時計。時を刻むものを作るだけあって、世の中の流れを鋭く読んだ。

▼いま時計産業に新たな波が押し寄せている。韓国サムスン電子は通話やメール表示ができ、時間ももちろんわかる腕時計型の携帯端末を発表した。米アップルも腕時計型の端末を開発中という。時計業界はどう立ち向かうだろう。こちらも製品のイノベーションを重ねてきた歴史がある。押されるままであってはなるまい。

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