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余録:「物はすべて中心を欠いてはいけない。

2012年09月29日 | Weblog
余録:「物はすべて中心を欠いてはいけない。東京駅は…
毎日新聞 2012年09月29日 00時20分

 「物はすべて中心を欠いてはいけない。東京駅はあたかも光線を放散する太陽のようなものだ。ここから四方八方に光を放ってほしい」。1914年の東京駅開業式で大隈重信首相は述べた▲近代化の坂道を駆け上る帝国日本の威勢を示す壮麗な赤レンガ駅舎は、やがてそのつまずきによる戦災で焼かれる。3階建てを2階にし、応急工事の屋根をかぶせた駅舎は、今度は戦後の復興と経済成長の道をひた走る人々が行き交い、出会い、別れゆく場所となった▲その経済成長がバブルに転じた80年代だ。JR東日本や東京駅を赤いバラをもった10人余の女性が訪れた。当時浮上した駅高層化構想に対し、赤レンガ駅の保存を訴えた編集者、森まゆみさんたちである。バラは「おしゃれな運動を」という合言葉のシンボルだった▲後に多くの市民や建築家、文化人に広がった東京駅保存の動きは、とうとう99年のJR東日本による駅復元の決定につながる。昔は「日本の中心」の威信を担った駅舎が、この100年近い歳月のさまざまな記憶を蓄えた歴史遺産として創建時の姿をよみがえらせた▲3階部分が復活し、南北に堂々たるドームを配した東京駅があさって開業する。外観は昔に戻ってもそこは現代、基礎に免震装置が組み込まれ、ハイテク耐震駅舎に生まれ変わった。床面積の半分はホテルとなって、ギャラリーには創建時や戦災の遺構も保存された▲保存復元運動に尽力した建築家の藤森照信さんが皇居側正面から見た姿を横綱の土俵入りに見立てる復元・東京駅だ。次の1世紀、駅の横綱はどんな日本を、どんな人々の出会いと別れを見るのだろう。

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