社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会(通称HRS)
2011年11月1日 ゲンダイネット
お茶を濁したい厚労省は是正勧告でチョン
国家検定「レストランサービス技能検定」を実施する「日本ホテル・レストランサービス技能協会(HRS)」(杉原有次会長)で、試験問題の事前漏洩が判明し、所管の厚労省が是正勧告していたことが発覚したが、このHRS、調べれば調べるほどズサンな団体だ。こんなところが国家検定を仕切ってきたこと自体がオドロキだ。
検定は、職業能力開発促進法に基づき、厚労省がHRSに委託。食品衛生や公衆衛生などの知識を問う学科と、ワインや料理を給仕する実技などがあり、1~3級に分かれている。漏洩があったのは学科試験だ。
「厚労省が、HRSが09年度、10年度に行った試験を調べたところ、事前の講習会で使われた説明スライドの内容と実際の問題が100%近い確率で同じだったのです。講習会で行われていた模擬試験も、8割以上の問題が本試験と同じだった。悪質なのは、昨年7月にこの問題について協会に問いただした厚労省に対し、専務理事が漏洩を隠蔽する報告書類を作り、提出したことです」(厚労省担当記者)
検定を仕切る団体の不正行為は、巨額のカネをため込んだ「日本漢字能力検定協会」(漢検)が知られているが、国家検定の問題漏洩が“常態化”していたとすれば、HRSも漢検と同じくらいメチャクチャだ。
「動機は合格率を上げること。そうすれば、受検者が増え、協会の収入もアップする。難しいと敬遠されると、受検者は集まりませんからね。それに『事前講習会』は協会にとって、受検料とは別に講習費が入る重要な金ヅル。要するにカネを集めたかったのです。協会では幹部が飲食で年間約150万円も使っていたことが問題になったが、この時も誰も責任を取らなかった。協会のズサンな体質が漏洩問題の背景にあるのです」(事情通)
職業能力開発促進法では、試験内容の秘密保持義務が課せられている。違反すれば「6月以下の懲役、又は30万円以下の罰金」だ。厚労省はサッサと協会幹部らを告発するべきなのに、何をモタモタやっているのか。
「告発で騒ぎが大きくなれば、当然、漏洩情報で合格した人たちの扱いをどうするのか――という新たな問題が浮上し、シッチャカメッチャカになる。それで、厚労省としては是正勧告にとどめたいのです。あやふやな対応では、協会の体質は変わらないでしょう」(前出の事情通)
HRSに今後の対応を聞くと「コメントは差し控えたい」(担当者)と木で鼻をくくったような答えだった。問題を漏らさないと受検者が集まらない国家検定なんて、やる意味なし。