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「脱官僚」が泣く鳩山政権の混乱 屋山太郎

2010年05月05日 19時48分43秒 | 日記・政治
屋山太郎
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%8B%E5%B1%B1%E5%A4%AA%E9%83%8E

公務員
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E5%8B%99%E5%93%A1

天下り
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E4%B8%8B%E3%82%8A#.E9.96.A2.E9.80.A3.E9.A0.85.E7.9B.AE

人事院
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E9%99%A2

天下り・公務員制度改革

民主党政権は「脱官僚」、具体的にいえば「官僚内閣制の終焉(しゅうえん)」という与望を担って登場した。その改革の骨格となる
(1)政治主導確立法案
(2)国家公務員法改正案が国会に提出された。
中身を点検するとこれほど羊頭狗肉、換骨奪胎のしろものはない。これで政治主導の政治が展開できると本気で思っているのか。

初動からブレた内閣の方針

(1)の政治主導確立法案の肝は内閣官房に「国家戦略局」を設置することである。鳩山由紀夫内閣は発足早々の臨時国会で、まず国家経営の根本問題を討議し、外交や財政の基本方針を示す「局」設置の法律を制定すべきだった。それをさせないため、藤井裕久前財務相は「室」にして、「大物を据えれば良い」と主張した。この結果、菅直人副総理(現在、財務相兼務)が担当に据えられた。

 しかし、法的根拠のない「室」が国家の基本について発信できるわけがない。この“初動”の失敗が、予算の全面的な組み替えを阻み、鳩山首相の判断の悪さ、ブレを生み、各閣僚間の連携の悪さを引き起こした。所詮(しょせん)、藤井氏は官僚(旧大蔵省)の代弁者で、官僚のワナに落ちたということだ。

 自民党の麻生太郎前内閣で廃案になった法案でさえ「国家戦略スタッフ」との名称で同様目的の構想が盛り込まれていた。これは総理直属のスタッフで定員は政令で定めるが、20人から30人と考えられていた。もちろん全員を国会議員にすることも可能だった。

 ところが今回の民主党の「国家戦略局」案では国会議員は「局長」と「戦略官」の2人だけ。しかも仙谷由人氏が国家戦略担当大臣とされているが、法律上は「担当大臣」は規定されておらず、官房長官の下に位する「国家戦略局長」という位置づけだ。

 官房長官-国家戦略担当(局長)-事務局長を具体的人物名でいうと平野博文-仙谷由人-古川元久(衆院議員)の3氏だ。3人とも全部官僚に取り囲まれ、おまけに古川氏は大蔵省OBだ。これで「政治主導確立法案」とはおこがましい。

人事局への機能移管もなし

同法案にはこのほか「行政刷新会議」と「税制調査会」が盛り込まれ、すでに枝野幸男氏が行政刷新担当相に任命された。刷新会議の専門委員会には国会議員が充てられることになっているが、刷新会議は行政の贅肉(ぜいにく)を削(そ)ぐ役割。国家戦略局は骨格を作る役割で、重要度は格段に違う。

 戦略局長の法的位置づけの強化、スタッフに大幅に国会議員を登用するなどの大幅修正を加えるべきだ。現法案では官僚が政治の大本を握る姿は変らない。


(2)の国家公務員法改正案の肝は「内閣人事局」の設定である。

 内閣人事局長には、官房副長官の1人を充て、約600人の各省幹部の人事評価をする。次官、局長、部長を同一の職制とみなして、局長を部長に降格することもあれば、部長を次官に抜擢(ばってき)することもできる。これまでのように局長で失敗しても、なお、次官に昇任するようなことは防げるかもしれない。

 しかし、現法案では、2300万円もらっていた次官を1800万円の局長や1500万円の部長に降格しても、給料を下げることはできない。いくら能無しでも給料を下げることができないのは給与法に手をつけないからだ。

 麻生内閣で提出されて廃案になった「内閣人事局」構想では、人事院の給与法にかかわる機能、総務省の職員定数にかかわる機能を引き離して内閣人事局に集合させることになっていた。機能移管に抵抗する当時の谷公士(まさひと)人事院総裁と甘利明行革担当相との派手なバトルが話題になった。結局、甘利氏は断固、人事院総裁を押さえて法案をまとめた。

 しかし今回の「内閣人事局」案では人事院、総務省からの機能移管は全く行われていない。

給与法改正にも手を付けず

 給与法がいじれないから部長に降格された元次官が2300万円の高給を定年までもらい続けることになる。天下りをなくし、しかも降格減給がないのでは公務員の給与は上り続ける。総務省の計算だと国家公務員の給与総額は2割増える。そこで原口一博総務相は「早期退職制度を考えざるを得ない」といいだした。

一方で民主党は公務員給与の2割削減を公約している。公約実現のためには給与法を改正するのが必要なのになぜ、放置したのか。内閣人事局は幹部人事だけを司(つかさど)るが、ここで給与の減額を可能にすれば、いずれその権限が平職員まで波及してくる可能性がある。

 その人事権の波及を最も恐れているのが公務員の労働組合を抱える連合である。もともと人事院という組織は、彼らのスト権や労働協約権禁止の代償措置として設けられていた。

 先進国で希有(けう)な制度だが、スト権まで含めて、この特殊制度を解消する必要がある。そうすることで、公務員も使用者に労働評価される一方、途方もない“労働貴族”も解消される。

(ややま たろう=政治評論家)

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