うーちゃん退職日記

むーくん(夫)と二人暮らし 時々2人娘たちとのくらしを
のんびりゆったり、綴ります。

みっくん

2015-07-04 20:50:43 | 日記

みっくんとは彼が6年生のときに出会いました。

家庭訪問のときのお母さんの言葉から

彼が家の中ではみ出しっ子のようになっていることが

うかがえました。

父親は国立大学の教授、母親は専業主婦だったけれど

姉は、県内随一の進学校に通っていました。

みっくんといえば、成績は中の上ぐらい。

ひょろりとした風貌で、運動もさほどすぐれているわけでもない。

みっくんを愛し、一生懸命育てているお母さんが

家族の中で少し毛色の違うみっくんに戸惑っているのがうかがえました。

私が担任としてとても気になったのは、

勉強よりも彼の言動。

いつも、ウケを狙っている・・・そんな軽薄さがみえて

どこかで、しっかり指導したいと思っていました。

ある日の給食の時間

みっくんは足の指にスプーンを挟んでご飯を食べ始めました。

周りは、なんだかんだ言って笑っています。

当時、睡眠薬のせいで、手が短かったりまったく無いまま生まれてきた人たちのことが話題になっていて

大人になって、生き抜く姿がマスコミで取りあげられ映画にもなっていました。

その一場面に、足の指を器用に使って食事をするところがあって、

みっくんはそれをまねていたのでした。

「みっくん!!」

私が一言いったら彼は、すぐにやめました。

昼休みになって、廊下に呼び出しました。

「なぜ、先生が怒ったのだと思う?」

「はい。僕が体の不自由な人のまねをしたからです。」

気を付けの姿勢をしたまま、答えました。

「そうじゃない!そんなことは、言われなくったってあなたは分かっている。

ああいうことで目立とうとする、あなたの考え方に腹が立ったのよ。

あんな目立ち方でいいと思っているの?

みんなは面白がって、笑ったりはやしたりするかもしれない。

でも、あんなことばかりしていると、

最終的にどこかであなたを馬鹿にすると思う。

目立ちたいなら、良いことで目立ちなさい。」

「はい・・・」

素直に返事をしたけれど、自分の話がみっくんにどこまで届いたのか

自信がありませんでした。

でも、みっくんは変わりました。

「これは、良いことだから、僕がやります」こんな言葉を

自分に言い聞かせるように言うようになりました。

そして、テストで百点満点を取るようになりました。

「恥ずかしながら、1年生の時から1度も百点を取ったことがなかったんです。

うれしくて・・・」

みっくんのお母さんは最後の学級懇談会で話しました。

 

何十年たっても、みっくんのことは忘れることができません。

一言でいえば 『教師冥利に尽きる』 ということでしょうか・・・

教師であるからこそ出会える子どものターニングポイント。

その瞬間に立ち会えたのは、幸せでした。