尾崎 慎 の 彫刻ライフ

石彫刻家尾崎慎の作品の紹介や、展覧会情報、これまでに起こってきたエピソードや日記など様々な事を綴って行きます。

スウェーデン滞在記 その4

2009-08-29 10:07:19 | 彫刻家の書く小説(スウェーデン滞在記)
スウェーデン人の方達は皆心が大らかで、とても優い印象を持った。
勿論それには周りにいる日本人の人達のお蔭デでも有ったのだと思うのだが、兎に角親切にして貰った印象しかのこっていない。
北欧というだけで、なんだか暗くて重苦しい印象を抱いていた私だったのだが、スウェーデンの国旗がスカイブルーに黄色の十字が施されているように、彼らも実に陽気で、ちょっぴりシャイだが、以外と日本人の気質に似ているのかもしれないと思った。

夏が来ると彼等はザリガニ祭りたるものを催す。kurafutaと言うのだが、よく日本でもスウェーデン料理専門店でコジャレたお皿にちょっぴり盛り付けた物を目にする事がある。あれはとても高級感が有ってなかなか良いものだが、実際はスウェーデンの郷土料理で、紙の三角帽子を被って、schnappsというスピリッツをクイッと飲乾し、皆で陽気な歌を歌い、夜通し過ごし短い夏を楽しむ。
この日ばかりはザリガニを食べる時チューチュージュルジュルと音をたててもいいらしく、大柄な彼等の姿と豪快なバイキングの姿が重なった。
ザリガニの味は海老とあまり変わらない感じがしたのだが、最初のうち泥臭さがちょっとだけ気になったが、schnappsと陽気な歌声は普段の生活を忘れさせてくれた。


ここに来てから半年以上経つというのに全く自分の作品を作っていない。
この事は当時私にとってとても不安にさせ、ストレスを溜る事となった。このままでは気がおかしくなってしまうのではないかという不安に襲われ、自分を失ってしまうかもしれないとまで思えてしまった。
私はこのストレスを解消するために、毎日寝室で筋トレで解消し、腕立や腹筋をしたりしていたのだが、それでも制作意欲だけは治ることがなかった。
そんな或る日の事、仕事を終わらせた私は破材捨て場に行き適当な大きさの石を拾って来て、自分の作品を作る事にした。
普段帰る時間まで監視されているわけでは無い事がこの日々のに分った。
この半年以上自分の制作が出来なかった私にとって、今迄失い掛けていた自分自身を取り戻せるようで、細胞の一つ一つが活性化するような錯覚さえ覚え、改めて自分が生る在り処を見付けられたようで、時間を忘れて制作できるという歓びを知った。しかし帰る時間も決っているし、長い時間は出来なかった。
一点の作品が出来上がった時、この事を楢葉氏に恐る恐る告げる事にしたのだが、氏は「普段からストレスを溜め込むなら大いに作りなさい。その方が君の為にもいいと思う。」と言って下さった。
それに甘んじて、毎日少しずつ制作を続けて、つい時間を忘れて帰る時間が遅くなると、「君の制作の為にここに置いているのではない!」ときつい口調で叱られた。確かに彼の言う通りだったのだが、この日を境にまた不眠症になり、睡眠剤を常用しなくては寝られなくなってしまった。

                       つづく

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