50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「人よりは嘘いわない・・・

2014-12-29 16:48:00 | 小説
「人よりは嘘いわない、公園で仕事をなさい」
実際には雄吉が、遊ぶことが英次の仕事になった・・・・・・それこそは最高級の人間、つまりホモ・ルーデンスと考えようと思うことに決めた、と加えたいものだったが、
「嘘いう人はだあいきらい。ぼく、噴水が好きなんだ。きらきらきれいだな」
虹が浮き立つ水晶宮にいつまでも住みたがり、虚ろにした身体をベンチに置いている。かといって夢のように、幼児の風景が脳裏に飛び交う外、三十五歳の栄光あるいは日常らしい風景は絶無なのだが、英次は身動きせず飽きなかった。遠い記憶をひたすら操った。ちょうど童話を読む大人のような、英次がいて、水晶宮には男の子しか住まない。世にいうマザコンの英次だからなんだろうか。その男の子は皆、おとなしい幼なじみが手品を好んでした。私塾に通い、宿題に取り組み、音楽を聞く英次がいる。小学五、六年生に始まり、中学生に至る生活を頭の中で再現するのだったが、日により延々二時間に及ぶことがある。先程のような旅行者は仕事の邪魔で、英次のもっとも虫好かなかったものだ。頭の中はいわば英次のオフィスなのであり、部外者の闖入ぞっとするほどの憎しみと共に嫌っていた・・・・・・正気でない男のすることだろう。果たしてそうだろうか。

(つづく)


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