goo blog サービス終了のお知らせ 

月野岬

好きなゲーム等の文章中心の二次創作置き場です。現在三国恋戦記中心。

『大人気ないひと』前編(公瑾×花)公瑾ED後

2013-02-19 22:06:44 | 公瑾×花
<前書き>
実を言えば、これバレンタインの日にUPしようと思ってました。
あははは、流石に遅れすぎだろうと内容変えようと思ったんですがこのままいきます。
遅れてきたバレンタインものをどうぞ。
そしてすいません、前編です。
後編まだ書き終ってないですが、なるべく早めにお届けできるように頑張りますwww
では、遅れても読んでやっていいよと言う寛大な御方はつづきからどうぞ^^



『大人気ないひと』前編(公瑾×花)公瑾ED後

公瑾の瀟洒な私邸で、城に出仕して帰ってきた主を出迎えたのは、つい三月ほど前に自分の妻へ迎えたばかりの娘花だった。
妻としたのに娘と呼ぶにはどうかと思うけれど、まだ彼女は娘と呼ぶよりは少女と呼んだ方がいいような幼げなところがある。
それは妻となった今でも変わらず、時に花と連れ立って町を歩けば、公瑾の方が傍から自分たち二人はどのように見られているのか、気になる程だった。
もちろん公瑾はそんなことは、露程もおもてに出すことはしない。
いつも落ち着き払った公瑾の、そんな葛藤など知らない花は、新妻らしく帰宅した公瑾の世話をあれこれ焼いてくれた。
「侍女にさせればよいのですよ」
「いけなかったですか?」
甲斐甲斐しく外套を脱がせたり、ぱたぱたと忙しげに立ち働く花に公瑾は静かに言えば、花の顔には戸惑いが浮かぶ。
こちらの生まれでもなく、また侍女など人に仕えられたことない花には、周公瑾の奥方の立ち振る舞いの何が正しいのか分からない。
生まれ育った家では、仕事から帰った父のコートを預かったりして、父の世話を焼く母の姿は花にとっては当たり前の光景だった。
だから自然としたことだったけれど、おかしかったろうか?
普段は花だって公瑾と共に仕事に出ているから、こんなにゆっくりと公瑾を出迎えることなんてできなかった。
一緒に帰って来れば花も世話をされる立場だし、一緒に帰れないほど公瑾の仕事が立て込んでいる場合は、公瑾は城の私室に泊まるか、帰宅は花が寝ている時刻となる。
待っていたいとは思っていても、翌日には花も出仕して仕事をしなければいけないために起きていることは出来ない。
そのあたりは家令も侍女も言い含められているのか、女主人に決して無理はさせなかった。
そんな日常だからつい嬉しくてしたことだけれど、こちらでは良家の奥方がする仕事じゃないのかもしれない。
不安そうに公瑾の答えを待つ花に、公瑾はゆっくりと首を振った。
「そう言うわけではありません。ただあなたは本日、珍しく自ら願って子敬殿にお休みをいただいたのでしょう。何かしたいことがあったのではないですか?」
結婚を機に、花は仕事を公瑾の部下と言う立場から子敬の補佐へと移動していた。
一応のけじめと言うことであり、花には言ってないが己の自制にいささか不安を覚えたためだ。
「ああ、準備は終わったんで大丈夫です。おかしくないのなら、公瑾さんのお世話くらいさせてください」
「私はお世話をされるような子供ではありませんが」
「そう言う意味じゃないの、分かってますよね」
花がちらりと睨めば、ふっと公瑾の秀麗な顔に淡く笑みが浮かんだ。
「分かっていますよ」
花は嬉しそうな顔で、公瑾に寛いだ部屋着を着せかける。
そんな少女の様子に、公瑾は訝しげな顔になる。
「なんだかずいぶんと嬉しそうですね」
「だって嬉しいんです」
「何がですか?」
「こうやって奥さんらしいことできるのが」
「これが妻らしいことですか?」
誰よりも聡い一を言えば、十を知る公瑾らしくないピンとこない様子に、花は文化と言うか、生活の違いを感じずにはいられない。
「えーと、前いたところでは奥さんって言うのは大体、掃除からご飯の支度から、色々と身の回りのことは奥さんが一人でするんです。でも公瑾さんほどの立場の方の家になれば、分業制じゃないですけどそれぞれ専門の方がするじゃないですか」
周家ほどとなれば、結構な数の使用人がいるのは当たり前だ。
身分があるから当然だけれど、同時に富める者は雇用の場を提供し、働いた分に見合う賃金を出して他の者を養う義務を持つ。
だから花が公瑾の為に料理をすることも、洗濯をすることも、部屋の掃除すらすることもない。
朝起床すれば、冬ともなれば侍女が温めた洗顔用の盥を持ってくるのが普通なのだ。
花と公瑾が共寝をするようになってからは、さすがに侍女は声がかかるまで寝所に立ち入ることは無い。
けれど侍女が公瑾の衣装箱を持って現れ、彼の着替えを手伝うのを見るのは花には複雑だった。
だから着替えの手伝いさえ、花には奥さんぽくって嬉しい。
「掃除も洗濯も、しなくて済むならばそちらの方が楽でしょう」
「まあそうなんですけど」
「それにあなたに、料理や洗濯など出来るのですか?」
意味有り気に、公瑾はどこか意地悪くうっすらと笑う。
こんな顔さえきれいなのだから、本当に神様は不公平だと一旦見惚れてしまった花は恨めしく公瑾を見上げた。
「どういう意味ですか?」
「だって火の熾し方すら知らないでしょうに」
過去にとばされた折に近しく寝起きを共にしたから、公瑾はその時に花の秘密を知った。
そしていかに花が、何も出来ないかを知っていた。
でも現代っ子だった花には、洗濯機もライターもない生活はキャンプでの自炊よりも過酷なものだった。
「そ、それはそうですけど、公瑾さんの為に何かしたいんです」
「私の為に何かしたいと言うのは嬉しいことです。ならばこの手を美しく保ち、可愛らしい妻でいてください」
公瑾は襟を整えようとしていた花の手を取ると、その正に白魚のと言う言葉が似合いそうな手入れの行き届いた妻の指先をじっと検分する。
花の秘密を知ってから、彼女が決して姫君育ちでないことは知っている。
それでも少女の手は美しく、この世界で言うなれば良家の娘の手だ。
最初から労働を知らない手で、この手を決して荒らさぬことが公瑾の男としての矜持。
「公瑾さん」
それでも花はやっぱりどこか不服そうだし、分かりやすく自分の手を見て眉を寄せる。
「わざわざこの手を荒らす必要はないでしょう」
「そうかもしれませんが……」
「何が気に入らないのです?」
促され、花は逡巡する。
実のところ、花には公瑾に言いたくて、訊きたくて、でも躊躇っていたことがある。
「公瑾さんは、よく私の手を褒めてくださいますね」
「いけませんか?あなたの手は本当に美しい」
そう言って、公瑾は花の華奢な手を自分の手に重ねて、花の桜色をした小さな爪をそっと指の腹で撫ぜた。
何気ないその仕草すら、公瑾がするととても官能的に感じて、花は息を詰めると少しだけ身を強張らせた。
うっすらと頬が染まったことなど少女は気付かないけれど、公瑾はそんな新妻の初心で可愛らしい反応に心の中で艶笑を浮かべた。
一方花は、公瑾のただそこにいるだけでの艶やかさに圧倒される。
美周郎と呼ばれる人は、辛辣で皮肉な物言いもするけれど、対外的な公の顔、それも親しくもない女性に向ける外向けの態度は、概して物柔らかく、さらりと相手を喜ばせる言葉を唇に乗せる。
麗しい顔でそう言う言葉を言われれば、嫌な気持ちになる女性は少ないだろう。
だからこそ気になる褒め言葉なのだ。
今、花を褒めた公瑾の言葉が、いつもの対外的で場を保つだけの方便でなく本心であることは分かっている。
もちろん恋しい人に褒められたら花だって嬉しい。
けれど公瑾のそれは、今は少しばかり花を惑わせていた。
「花」
促す響きで名前を呼ばれ、花は公瑾の大きな手に包まれた自分の手から、公瑾の顔へと視線を移した。
「そのように態度に出して思い悩むならば、言葉になさい。黙っていられる方が落ち着きません」
執務の時の様な厳しさを滲ませた声に、花は言いかけ、口を噤み、やっと言葉にする。
「私って、もしかして他に褒めるところがありませんか?」
「はっ?」
呉の英知であると称される公瑾は、らしくなく思わず間抜けな声を出して訊き返していた。
ここまで言ってしまっては、もう躊躇う理由はないと花は日頃思っていた疑問をぶつける。
「公瑾さん、他の女性は様々なところを褒めるじゃないですか。でも私は手しか褒められたことがありません。だからそこしかいいところがないんですか?」
自分で言っていて何とも情けないが、それが事実に思えて仕方ない。
日頃から心にもないかどうかは知らないけれど、公瑾は女性を実に上手く褒める。
それも花の知る孟徳が手放しに大袈裟に女性を褒めるのと違って、さり気無く、誰もが頷くところを褒めるから、決してお世辞ではないのだろう。
そして誉めそやす言葉は様々で、誰もがため息を零すのだ。
人の美点を捜すのが上手なのかもしれないけれど、記憶をたどっても花はこの言葉を多く持つ公瑾から手以外に褒められた覚えがない。
「また……あなたは思わぬことを」
そんな花に、公瑾は僅かに視線を上向けるとはぁとやるせないようなため息を吐いた。
額にかかった髪をかき上げる時に、公瑾の衣の袖が艶やかに翻り、彼を彩る焚き染められた香が香る。
「そんな呆れたようなため息こぼさなくても……第一、公瑾さんが言わせたんじゃないですか」
少女は可愛らしくむくれて、少しだけきつい視線で公瑾を睨む。
「ため息ぐらい吐きたくもなります。私があなたを手だけしか褒めてないと?本当にそう思っているのですか?」
「だって実際そうじゃないですか」
「まったく呆れますね」
「呆れるって何がですか?」
「あなたの記憶力に呆れているのです。よく孔明殿もあなたを弟子にと望みましたね」
「師匠のことは今は関係ありません!」
確かに花は孔明の弟子と言う触れ込みだが、実体を知っているはずの公瑾にこう言って事あるごとに揶揄されるのは面白くない。
いや、自分のことはいいのだ。
ただやっぱり、師匠と弟子と名乗る程濃い師弟関係があったわけでもないけれど、孔明のことまで馬鹿にされているようで腹が立つのだ。
でも腹が立つと言うことは、花が無意識のうちにでも師匠としてか、あるいは恩人としてか、もしくは偉大な智慧者として彼を尊敬しているということなのだ。
そして公瑾は自身の狭量さに、思わず忌々しいと己を嘲笑する。
何しろ花自身でさえ気付かぬそんな孔明への想いにさえ、つい一言言わずにはいられないのだ。
まして反論されて、余計不機嫌に拍車がかかるのだから始末に負えない。
「関係なくはないでしょう。弟子の出来不出来で、人はその師を見る場合もあるのですよ」
「では公瑾さんもそう見ると言うことですか?直に会ったこともあるのに、私で師匠の器を量るのはあまり良いことだとは思えません」
実に尤もらしい花の反論に、思わず公瑾が静かな口調ながら言い返そうとすれば、とんとんと扉を叩く音がした。
「奥方様、お茶の用意が整いましてございます」
ここで花は、はっと思い出す。
今日はこのお茶の為に、わざわざ一日休みを取ったのだ。
公瑾が帰ってくる時刻が夕刻より早ければ、食事ではなく先ずお茶の準備を頼んでおいたのも花の計画だった。
「今からお茶ですか?」
訝しむ公瑾に、花はせっかくのこの日を危うく台無しにするところだったと安堵の息を吐く。
「今日は私の………もといた国では、特別な日なんです」
「あなたの国の風習ですか?」
「まあ厳密に言えば違うんですけど、もうすっかり馴染んでますね」
花たちどころか、親の世代も若かりし頃はやっていたと教えてくれた。
今では恋人たちの一大イベントだ。
こんな日に、いがみ合うなんてバカみたいだと花は気分を切り替えることにする。
ちらりと公瑾を見れば、どこか険悪になりかけたその場の空気は妙な具合になっていた。
言い表すなら気が削がれたが一番ぴったりするだろうか?
「旦那様、奥方様?」
律儀に扉を開けぬままに、お茶をどうするのかと家令が聞いてきた。
普段お茶を用意するのは侍女だから、ここで家令が声を掛けてきたのは場の空気を察してだろう。
よく弁えた家令の態度に、公瑾は微苦笑を浮かべると花へと背を向けた。
まだ怒っているのだろうかと花はおろおろするが、公瑾は背を向けたままに短く花に声を掛ける。
「花、羽織をお願いいたします」
そう言えば、公瑾の着替えの途中で何とも言えない会話になってしまったことを思い出す。
花は傍らに置かれた衣装箱から、公瑾の羽織を取り出すとそっと背伸びして公瑾の広い背中を眺めながら肩に羽織を着せかける。
僅かに屈んでくれた公瑾は、袖を通すとこちらへと向き直った。
「お茶を振る舞ってくださるのでしょう?」
それは今までの他愛無いと言えばない諍いを水に流すと言う、あまり素直でない公瑾らしい最大級の譲歩の言葉だろう。
「はい」
素直に花は頷いて、前に差し出された公瑾の手に自分の手をあずける。
そうして心得た家令は、ゆっくりと扉を開けて主夫婦を居間の方へ導いた。



<後書き>
そう言えば、これは婚姻後のお話ですね。
珍しいかもしれない。
なくはないですが、白梅とかが恋人設定なので私には数少ない婚姻後の話ですね。
この後の展開はらぶらぶいちゃいちゃ?それとも?
本当は1話の予定だったので、後編短いかもしれません。
まあ私の短いはあてにならないんですが、頑張ります。

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。