<前書き>
ラヴコレに告知してました、無配冊子をこちらでもUPします。
『性的倒錯?性的嗜好?フェティシズムです』(仮)と言う元タイトルがありますwww
実は以前から考えてたフェチをテーマにしたお話の、頭の部分なんですがこれだけでも一応形になってると思います。
この続きは……本にするか、サイト上での掲載になるかはまだ考えてません。
そんななので、今回は都督様の新婚模様としてお楽しみください。
『都督様新婚事情』
《花の戸惑い》
呉の都督である公瑾の執務室では、いつもと同じ日常風景が繰り広げられていた。
玲瓏な美貌の表情を崩すことなく、淡々と執務を取っている。
彼は都督と言う武将を統べ、軍を指揮する立場ではあるが、剣を握っているよりこうやって机に着いてひたすら筆を握っていることも多い。
大きな手が筆を握っている。その筆先から生まれる文字は、流麗と言うか水が流れるが如く柔らかながら凛とした文字だ。
「花。お願いした仕事は終わったのですか?」
顔も上げられないままに掛けられた声に、花ははっとして唇を噛んだ。
「え?あっ……」
言葉に詰まれば、公瑾はようやく手を止めて顔を上げ、僅かに眉を寄せた。
分かり易い不機嫌な表情だが、こう易々と簡単に機嫌を悟らせてくれるのは、公瑾が花に素を見せてくれているからだ。
普段、公瑾の顔には何も感情が浮かんでいないか、もしくは物柔らかな微笑がうっすら常備されている。
それは彼の本心を悟らせないような仮面のような物だ。
ちなみに部下を怒るときは別にして、本心に知られたくない相手であればある程公瑾は心にもない優美さをその麗しい顔に纏うことになる。
だから不機嫌顔は一部には貴重だし、心を許してくれている証なのだけれど、花は拙いと思う。
公瑾は怒った顔も麗しいけれど、やっぱりそれは見惚れてはいけないものだ。付け加えるならば、形良い唇から発せられる言葉は容赦がなく辛辣だ。
「先程から私の手元ばかり見ているようですが、何かこの件に言いたいことがあるのですか?」
花は一応公瑾の補佐であり、微妙ながらいまだに軍師の肩書も持っている。
それは赤壁の立役者としての功績が大きいからだ。
けれど花の軍師としての才が、ないとは言えないが微妙なことを知っている公瑾に、花が都督の仕事のことで余計なことを口にすることは滅多にない。
時に意見を求められれば別だが、今はどう見てもその時ではない。
何より花は、今公瑾が持っている書簡が何かも知らないのだ。
「あ、いえいえ。そんなことはありません」
「では何ですか?」
二人は三月前に晴れて婚儀を挙げて、実のところまだ新婚という甘い時期のはずなのだが、残念ながら妻が夫を見詰めていても甘い雰囲気にはならなかった。
公瑾は粋も甘いも知った大人の男ではあるし、美周郎と綽名される容姿であるから、そう言う雰囲気に持って行くこともできる。
もっと若かりし頃は、仲謀の兄であった伯符と共に浮名を流したこともあるから色事やひとの機微に鈍いわけでもない。
ただ非常に割り切りがいいし、異例の夫婦が共にいる職場なので必要以上に冷淡な対応ではある。
「すいません。ただ字が綺麗だなと思って」
「字に見惚れていたのですか?」
花の言葉は予想外だったのか、公瑾の不機嫌が霧散した。
「はい。私の字と全然違いますね」
「それは当然でしょう。男文字と女文字はやはり根本が違うものですよ。それにそもそもあなたから見たら、誰でも字が綺麗ではないですか」
呆れを含んだ公瑾の言葉に、花はきゅっと唇を引き結んで不満そうな顔になった。
こちらに来てしばらくたち、公瑾の厳しい指導の下に文字の練習は嫌と言う程させられた。
業務が終わってからの宿題や課題は結構なもので、できなければ冷え冷えとした叱責を受けたことはそんなに遠い記憶でもない。
まああの当時は公瑾のあまりのスパルタぶりに、花は心の中で麗しい顔に色々文句を言っていたものだ。
けれど今ではそれなりの文字を何とか書けるようになったと自負している。
それに経緯を考えれば公瑾は花の文字に師匠だし、毎日花の文字も見ているはずだ。
それなのに公瑾の言葉は失礼だと、花の言葉はちょっとだけ険のあるものになる。
「それは私の字はまだまだですけど、字が綺麗か上手くないかぐらいは分かります」
「本当に字の良し悪しが分かるのですか?」
胡乱気な公瑾の視線に、花は慌てて付け足す。
「あ、でも、あくまでもこういった公式文書です。やっぱり崩した文字はよく分かりません」
公瑾のところに執務として回って来る書簡は、花が言うところの楷書のようなきっちりした文字だ。
だから筆の漢字ばかりのこちらの文字の読み書きにいまだ疎い花でも、字の良し悪しはある程度分かる。
ただこれが私的な覚書や、朝議や軍議などの記録となると、崩した文字なので途端に良し悪しどころか、読めなくなってしまう。
正直な花の告白に、公瑾は薄く笑みを浮かべた。
「そんなあなたに字を褒められて、私は素直に礼を言うべきでしょうか?」
意地悪な公瑾の言葉に、花はむっと小さく頬を膨らませた。
「別にお礼なんかいいんです。でも公瑾さんってば賛辞も受け取ってくれないなんて酷いです」
本当に公瑾は難しいと花は思う。思ったままの賛辞や褒め言葉ですら、素直に受け取ってはくれないのだ。
けれど公瑾とて花の瞳に、紛れもない賞賛を見つければ嬉しくないわけはない。
今まで散々に、容姿から家柄、楽の才に、剣の腕前、頭脳と持って生まれたものから後天的な努力よるものまで、人より多くの優れた点を持つ公瑾は賛辞と高い評価を受けてきた。
だが、望んで手に入れた妻の賞賛は、やはり他人とは全然違う。
「申し訳ありません。まあ確かに褒め言葉とは嬉しいものですね。ではあなたも私が褒めるほど、美しい文字を書けるようになってください。今のところ文字に関しては、いくら私は褒めたいと願ってもあまり褒めるべきところがありませんから」
はっきり言う公瑾に、花は苦笑する。
彼の言うことは間違いではないけれど、やっぱりはっきり言い過ぎだと思う。
「公瑾さん、褒めて伸ばすって言葉を知ってますか?」
「それは認めますが、褒めるべき箇所を捜すのが大変なのです」
くすりと笑う公瑾に、花は諦めてぱたりと机に突っ伏した。
「分かりました。精進します」
「期待しております」
そんなことがあってから、三日後ぐらいだろうか、花は比較的城の中心に近い小さな広場でふと足を止めた。
そこは仲謀の執務室に近い場所で、庭園ではなく本当にただの広場だ。
なぜこんな場所に広場があるかと言えば、元々は伯符の机での執務に息詰まった時の息抜き用の鍛錬の場だったと聞いていた。
今ではそれは、仲謀と公瑾と言った中央部に近い場所に執務室を構える高官用の鍛錬場所となっている。
そして花が立ち止まってしまったのは、その場に公瑾がいたからだ。
露天の鍛錬場に、剣を構えてはゆるりと振る動作を何度も繰り返している。
速くないからこそ、それは剣の鍛錬と言うよりは舞のように見えた。
花は竹簡を胸に抱えたままその姿を一心に追う。
武将だけれど筋肉隆々と言う感じではなく、それなりに高い背に程よく筋肉の付いた引き締まった身体。
それでもしなやかなのは身ごなしで分かる。
剣を両手で持ち、次に片手に持ち替える。
隅々まで気が張り巡らされているような動きで、それは足運びから指先まで綺麗だった。
いつまでも見ているわけにはいかない。そう思っていても、花の足はそこからなかなか動かなかった。
剣舞のような動きだけれど、舞でないことは武器など持ったことのない花にも分かる。
優美なのに力強く、巡らされるのは凛とした気。美しいけれどこれはあくまでも武であり、剣の鍛錬なのだ。先にあるのは、人の命を奪うこともある武具。
公瑾はまるで花の視線を感じていないかのようで、ちらりと一瞥さえ与えることはない。
けれどいくら集中していても、常に周囲に気を配ることを怠らない公瑾が、鍛錬の最中とは言え気付いてないことはないはずだ。
鍛錬そのものが元々終わる頃だったのか、公瑾は静かに動作を終えると剣を鞘へと戻した髪から汗が滴るのを鬱陶しそうにかき上げて、ようやく顔を上げると花の方へ近付いてくる。
「凄い汗ですね」
花が袂から手巾を取り出して公瑾の顔の汗を拭おうと手を伸ばせば、公瑾は緩やかに首を振った。
「すぐ横手に井戸がありますから大丈夫です」
公瑾の視線を追えば、確かに広場の端と建物の間に井戸があり大きな枝を張った木と長床几が置かれていた。
中途半端に公瑾へと伸ばした手が、行く場を失って少しだけ花は寂しい気持ちになる。
「あなたの気遣いは嬉しいですよ。ですが、あなたの手巾を汗で台無しにするのは私が嫌なのです」
そのまま水場へ向かう公瑾を花はつい追いかけた。
「だって手巾ですよ。洗えばいいじゃないですか」
花の手巾は柔らかな綿で、周囲に淵飾りがあり一角に小さな小花の刺繍がしてある。
たぶん何でも手で作るこの時代、花の手巾はそれなりに地位ある者、もしくは豊かな者が持つ質も飾りも相当に手の込んだものだ。
けれど公瑾の汗を拭いたぐらいで駄目になるわけではないし、手巾と言うのはまさにこういう時の為にあるはずで、使わないと言うのはおかしい。
公瑾はその典雅な見かけ通り趣味よく、美しい物や風流なものを好むが、ある意味では現実主義でいくら名工に作らせた逸品でも、実用的なものは使ってこそ意味があると日頃から言っていた。
だから手巾がもったいないと言うような、今言った言葉は公瑾らしくない。
けれど公瑾はそんな花の不審に頓着することなく、剣を長床几に置くと上半身の衣を内着までも袖から抜いて、躊躇いなく肌を露わにした。
そのまま前に頭を倒して、顔以外も濡れるのも気にならない様子でばしゃばしゃと水を被る。
「花。申し訳ありませんが、そこの布を取ってくださいますか」
「どうぞ」
用意のいい公瑾は、長床几にすでに手巾より大きめの手拭い程の布を用意していた。
渡せばそのまま意外なほど乱暴な動作で頭をガシガシと拭いている。
「公瑾さん、そんな拭き方してたら髪が傷みますよ」
「いつもこんなものです」
「意外に乱暴ですね」
「男などこのようなものです。いっそもっと短くした方が楽かもしれませんね」
「えっ!それは止めてください」
「どうしてですか?」
公瑾が頭を拭く手と止めて、こちらを見た。布をばさりと剣の方に置くと乱れた前髪が額から目へと無造作にかかっている。
僅かに眇められた瞳は、少しだけ不機嫌に花の視線を捕えていた。
「短い髪が嫌いなのですか?と言っても、私の今の髪もそう長い方ではありませんが」
「いえ、嫌いじゃないです」
「じゃあ、似合わないと?」
少し苛立ちを含んだ声に、花は言葉に詰まる。今まで公瑾の髪が長ければいいとか、短い方がいいとか、そんなことは不思議とまったく考えたことがなかった。
改めて考えれば、たぶんどんな髪型であっても公瑾は似合うだろう。
そもそも公瑾の美貌は七難を隠すどころか、身に付けていれば安いものでも高価な物に見え、下品も上品に変えてしまうようなものだ。髪の長さ一つで公瑾の典雅な美貌を損なうとも思えないし、根本的な雰囲気が変わるとも思えなかった。
「公瑾さんに似合わないなんてことはないと思いますけど、何でしょう」
「訊いているのはこちらです。強い調子で、速攻で否定なさったでしょう」
目にかかる髪が邪魔だったのか、公瑾が無造作に髪をかき上げた。
物憂げな素草で長い指から零れる少し濡れた髪の色が、いつもより濃くて燻した銀色に見える。
その一瞬で、花は目が離せなくなった。どうしようもなく魅せられた。
「花?どうかしましたか?」
ハッと気付けば、公瑾が花の顔を間近で覗き込んでいた。驚くほど近くに白皙の顔があり、花は我に返ってその状況に今度は狼狽える。
影を落とすような長い睫毛、その間から覗く深紫の瞳はいつも静けさを湛えていた。
身体を動かした後のためか唇はいつもより赤く、いまだ袖を落した姿のままなので上半身が露わだった。
男性的な力強い首筋、きれいで実用的な筋肉を纏った武将としての身体。
綺麗に拭きとれてない水が、首筋から滑らかな肌を伝う様子は怖ろしく扇情的だった。
これがまだ何も知らない頃だったら、ただ想い人のそう言う姿に恥ずかしかっただけだ。
けれど今の花には、この美しいひとの妻となっているだけに、余分なあれこれが嫌でも思い出されてしまった。
「今更何て顔をされるのですか」
公瑾の苦笑混じりの声に、花は自分がどんな顔になっているのか分からない。
そのままに、ただ狼狽えて公瑾に視線を返す。
一方、公瑾の方は目の前の妻の姿に、苦く嗤う。
花が何か自分に気を取られたのは分かった。明確ではないけれど心が一瞬とんでいたように見えた。
だからこちらに注意を促せば、今度はまた人に見せるのも憚られるような様子になってしまった。
上気して赤くなった頬、熱っぽく潤んだような瞳、少しだけ開いた唇は色っぽく濡れて見えた。
彼女が何を見てそうなったのか分からないほど公瑾は鈍くはない。
「私の身体など、見るのが初めてでもないでしょうに」
「だ、だって、裸じゃないですか」
見事に狼狽えてどもる花に、公瑾は嫣然と微笑む。
「大袈裟な。裸と言っても上半身だけでしょう。もう私の妻なのに、まるで初心な生娘のような反応ですね」
「そんなの関係ないです!とにかく服を着て下さい」
「そう狼狽えられますと、何やらよからぬことでも思い出したかと勘繰ってしまいますよ」
「えっ!」
決して明確に色んなことを思い出したわけでもなかったけれど、公瑾の妖しいほどの色香に当てられてしまった事は事実だ。
取り繕うこともできずに絶句した花に、公瑾はゆるりと身体を倒して愛しい妻の顔を近付けた。
敏感な耳朶に吐息がかかる程に唇を寄せて甘く囁く。
「私はあなたの項や後れ毛を目の前に見るだけで、不埒なことを思うことはあります。このようにね」
低く艶やかな声と微かな呼気は、夜の褥の中でいまだ恥じらいを捨てきれなくて戸惑う花を優しく翻弄する公瑾を思い出させた。
同時に薄くも形良い唇で柔らかな耳朶を食まれ、花の睫毛が震えて恥ずかし気に目が伏せられる。
意識せずに漏れたのは小さな声だった。
「んっあ……」
自分洩らした声に驚いたのは花で、まるで閨の中で公瑾に抱かれている時に漏らす声のようで、羞恥にこれ以上はないほど身体全体を薄紅に染め上げた。
俯き、顔を掌で覆ってしまった花に、公瑾はふふっと声にならない笑いを漏らす。
「花、あまり煽らないでください」
「煽ってないです。公瑾さんがあんなことするからいけないんです」
「仕方ないでしょう。私たちはいまだ新婚なのですから。ほらこちらを向いてください」
公瑾の指先が滑って、花の頬に触れた。そのまま剣を持つ大きな硬い掌に包まれて、抗い難く顔を上げさせられてしまう。
「真っ赤ですね。それほど恥ずかしかったのですか?」
「当たり前です」
今は燦々と陽の光が降り注ぐ昼間で、あんなことは密やかに行われることだ。
間違ってもこんな誰に見られるか分からない場所で、堂々行われていいわけじゃない。
新婚だって免罪符にはならないだろう。
「そう怒った顔をされても、睦言めいた声を聞かせてくださったのはあなたでしょう。私にとっては可愛らしいばかりです」
そうして震える睫毛に落とされたのは、小さな吐息のような口付け。
同時に花の頬に、ぽたりと冷たい雫がかかって花は勢いよくぱちりと目を開けた。
「公瑾さん。良く拭いてなかったでしょう。いくらこの季節でも身体を冷やすのはよくありませんよ」
怒っていても、優しい花はすぐに怒りを引っ込めて夫である公瑾の身体を心配した。
「では拭いてくださいますか」
髪から拭き取れなかった水分が、たまたま落ちただけだろうが公瑾の頬を水滴が滑り落ちて行く。
「じゃあ、手拭いを貸してください」
花が長床几の方に行こうとすれば、公瑾が花の細い腕を掴んで止める。
「公瑾さん?」
「あなたの手巾で拭いてください」
「だって、さっきは必要ないって言ったじゃないですか」
意味が分からないと花が困惑しながらも、手巾を取り出してそっとこめかみから頬を拭えば、公瑾は一度目を閉じて花の手巾を持った手を掴んだ。
「私はあなたのこの香りが好きなのです。汗にまみれてしまっては勿体ない」
手巾の香りを嗅ぐような仕草に、花はやっと引いた熱が戻って来るような気がした。
公瑾はお洒落な趣味人らしく自分専用の香を持っているが、花自身は作ってくれると言った専用の香を断ってハーブのような自然の草花の香りを楽しんでいた。
自然な香りだから匂いは飛びやすいが、抽斗には手巾と共にいれているので香りは移っている。
やがて手首に触れた唇に、花はふわりと笑った。
こんな些細のことに気付いてくれる公瑾が嬉しくもあり、気恥ずかしくもある。
「さっきの台無し発言の真意はそこですか」
「そうですね」
「公瑾さんは分かり辛いです。言ってくれないとわかりませんよ」
「分からなくていいんですよ。いくらあなたであっても堂々と言うようなことじゃないですからね」
「ええっとそれは察しろと?」
すると公瑾は、是とも否とも取れない微笑を浮かべた。
ふわりと柔らかく吹き始めた初夏の風が、公瑾のいまだ色の濃い少し湿った髪を揺らす。
ああ、そうだ。花は公瑾の思いの他すべらかな髪に触れると、指先にその髪を通して手で梳く。
「花?」
「私、公瑾さんはどんな髪型でも似合うと思いますけど、やっぱりこうやって触れられる長さが嬉しいです」
婚儀を挙げて三月、二人は時に甘く、夫婦となった距離をゆっくりと近付けていた。
<後書き>
公花二人の新婚風景でした。
ふふふ、この先は(と言っても何話か挟みますが)最終的はR18な展開になる予定があったのです。
続きを書くのか、どこに書くのかまだわかりませんが、二人の甘い新婚生活を垣間見てくださいませ。
え?甘くない?
甘いですよね^^
了
ラヴコレに告知してました、無配冊子をこちらでもUPします。
『性的倒錯?性的嗜好?フェティシズムです』(仮)と言う元タイトルがありますwww
実は以前から考えてたフェチをテーマにしたお話の、頭の部分なんですがこれだけでも一応形になってると思います。
この続きは……本にするか、サイト上での掲載になるかはまだ考えてません。
そんななので、今回は都督様の新婚模様としてお楽しみください。
『都督様新婚事情』
《花の戸惑い》
呉の都督である公瑾の執務室では、いつもと同じ日常風景が繰り広げられていた。
玲瓏な美貌の表情を崩すことなく、淡々と執務を取っている。
彼は都督と言う武将を統べ、軍を指揮する立場ではあるが、剣を握っているよりこうやって机に着いてひたすら筆を握っていることも多い。
大きな手が筆を握っている。その筆先から生まれる文字は、流麗と言うか水が流れるが如く柔らかながら凛とした文字だ。
「花。お願いした仕事は終わったのですか?」
顔も上げられないままに掛けられた声に、花ははっとして唇を噛んだ。
「え?あっ……」
言葉に詰まれば、公瑾はようやく手を止めて顔を上げ、僅かに眉を寄せた。
分かり易い不機嫌な表情だが、こう易々と簡単に機嫌を悟らせてくれるのは、公瑾が花に素を見せてくれているからだ。
普段、公瑾の顔には何も感情が浮かんでいないか、もしくは物柔らかな微笑がうっすら常備されている。
それは彼の本心を悟らせないような仮面のような物だ。
ちなみに部下を怒るときは別にして、本心に知られたくない相手であればある程公瑾は心にもない優美さをその麗しい顔に纏うことになる。
だから不機嫌顔は一部には貴重だし、心を許してくれている証なのだけれど、花は拙いと思う。
公瑾は怒った顔も麗しいけれど、やっぱりそれは見惚れてはいけないものだ。付け加えるならば、形良い唇から発せられる言葉は容赦がなく辛辣だ。
「先程から私の手元ばかり見ているようですが、何かこの件に言いたいことがあるのですか?」
花は一応公瑾の補佐であり、微妙ながらいまだに軍師の肩書も持っている。
それは赤壁の立役者としての功績が大きいからだ。
けれど花の軍師としての才が、ないとは言えないが微妙なことを知っている公瑾に、花が都督の仕事のことで余計なことを口にすることは滅多にない。
時に意見を求められれば別だが、今はどう見てもその時ではない。
何より花は、今公瑾が持っている書簡が何かも知らないのだ。
「あ、いえいえ。そんなことはありません」
「では何ですか?」
二人は三月前に晴れて婚儀を挙げて、実のところまだ新婚という甘い時期のはずなのだが、残念ながら妻が夫を見詰めていても甘い雰囲気にはならなかった。
公瑾は粋も甘いも知った大人の男ではあるし、美周郎と綽名される容姿であるから、そう言う雰囲気に持って行くこともできる。
もっと若かりし頃は、仲謀の兄であった伯符と共に浮名を流したこともあるから色事やひとの機微に鈍いわけでもない。
ただ非常に割り切りがいいし、異例の夫婦が共にいる職場なので必要以上に冷淡な対応ではある。
「すいません。ただ字が綺麗だなと思って」
「字に見惚れていたのですか?」
花の言葉は予想外だったのか、公瑾の不機嫌が霧散した。
「はい。私の字と全然違いますね」
「それは当然でしょう。男文字と女文字はやはり根本が違うものですよ。それにそもそもあなたから見たら、誰でも字が綺麗ではないですか」
呆れを含んだ公瑾の言葉に、花はきゅっと唇を引き結んで不満そうな顔になった。
こちらに来てしばらくたち、公瑾の厳しい指導の下に文字の練習は嫌と言う程させられた。
業務が終わってからの宿題や課題は結構なもので、できなければ冷え冷えとした叱責を受けたことはそんなに遠い記憶でもない。
まああの当時は公瑾のあまりのスパルタぶりに、花は心の中で麗しい顔に色々文句を言っていたものだ。
けれど今ではそれなりの文字を何とか書けるようになったと自負している。
それに経緯を考えれば公瑾は花の文字に師匠だし、毎日花の文字も見ているはずだ。
それなのに公瑾の言葉は失礼だと、花の言葉はちょっとだけ険のあるものになる。
「それは私の字はまだまだですけど、字が綺麗か上手くないかぐらいは分かります」
「本当に字の良し悪しが分かるのですか?」
胡乱気な公瑾の視線に、花は慌てて付け足す。
「あ、でも、あくまでもこういった公式文書です。やっぱり崩した文字はよく分かりません」
公瑾のところに執務として回って来る書簡は、花が言うところの楷書のようなきっちりした文字だ。
だから筆の漢字ばかりのこちらの文字の読み書きにいまだ疎い花でも、字の良し悪しはある程度分かる。
ただこれが私的な覚書や、朝議や軍議などの記録となると、崩した文字なので途端に良し悪しどころか、読めなくなってしまう。
正直な花の告白に、公瑾は薄く笑みを浮かべた。
「そんなあなたに字を褒められて、私は素直に礼を言うべきでしょうか?」
意地悪な公瑾の言葉に、花はむっと小さく頬を膨らませた。
「別にお礼なんかいいんです。でも公瑾さんってば賛辞も受け取ってくれないなんて酷いです」
本当に公瑾は難しいと花は思う。思ったままの賛辞や褒め言葉ですら、素直に受け取ってはくれないのだ。
けれど公瑾とて花の瞳に、紛れもない賞賛を見つければ嬉しくないわけはない。
今まで散々に、容姿から家柄、楽の才に、剣の腕前、頭脳と持って生まれたものから後天的な努力よるものまで、人より多くの優れた点を持つ公瑾は賛辞と高い評価を受けてきた。
だが、望んで手に入れた妻の賞賛は、やはり他人とは全然違う。
「申し訳ありません。まあ確かに褒め言葉とは嬉しいものですね。ではあなたも私が褒めるほど、美しい文字を書けるようになってください。今のところ文字に関しては、いくら私は褒めたいと願ってもあまり褒めるべきところがありませんから」
はっきり言う公瑾に、花は苦笑する。
彼の言うことは間違いではないけれど、やっぱりはっきり言い過ぎだと思う。
「公瑾さん、褒めて伸ばすって言葉を知ってますか?」
「それは認めますが、褒めるべき箇所を捜すのが大変なのです」
くすりと笑う公瑾に、花は諦めてぱたりと机に突っ伏した。
「分かりました。精進します」
「期待しております」
そんなことがあってから、三日後ぐらいだろうか、花は比較的城の中心に近い小さな広場でふと足を止めた。
そこは仲謀の執務室に近い場所で、庭園ではなく本当にただの広場だ。
なぜこんな場所に広場があるかと言えば、元々は伯符の机での執務に息詰まった時の息抜き用の鍛錬の場だったと聞いていた。
今ではそれは、仲謀と公瑾と言った中央部に近い場所に執務室を構える高官用の鍛錬場所となっている。
そして花が立ち止まってしまったのは、その場に公瑾がいたからだ。
露天の鍛錬場に、剣を構えてはゆるりと振る動作を何度も繰り返している。
速くないからこそ、それは剣の鍛錬と言うよりは舞のように見えた。
花は竹簡を胸に抱えたままその姿を一心に追う。
武将だけれど筋肉隆々と言う感じではなく、それなりに高い背に程よく筋肉の付いた引き締まった身体。
それでもしなやかなのは身ごなしで分かる。
剣を両手で持ち、次に片手に持ち替える。
隅々まで気が張り巡らされているような動きで、それは足運びから指先まで綺麗だった。
いつまでも見ているわけにはいかない。そう思っていても、花の足はそこからなかなか動かなかった。
剣舞のような動きだけれど、舞でないことは武器など持ったことのない花にも分かる。
優美なのに力強く、巡らされるのは凛とした気。美しいけれどこれはあくまでも武であり、剣の鍛錬なのだ。先にあるのは、人の命を奪うこともある武具。
公瑾はまるで花の視線を感じていないかのようで、ちらりと一瞥さえ与えることはない。
けれどいくら集中していても、常に周囲に気を配ることを怠らない公瑾が、鍛錬の最中とは言え気付いてないことはないはずだ。
鍛錬そのものが元々終わる頃だったのか、公瑾は静かに動作を終えると剣を鞘へと戻した髪から汗が滴るのを鬱陶しそうにかき上げて、ようやく顔を上げると花の方へ近付いてくる。
「凄い汗ですね」
花が袂から手巾を取り出して公瑾の顔の汗を拭おうと手を伸ばせば、公瑾は緩やかに首を振った。
「すぐ横手に井戸がありますから大丈夫です」
公瑾の視線を追えば、確かに広場の端と建物の間に井戸があり大きな枝を張った木と長床几が置かれていた。
中途半端に公瑾へと伸ばした手が、行く場を失って少しだけ花は寂しい気持ちになる。
「あなたの気遣いは嬉しいですよ。ですが、あなたの手巾を汗で台無しにするのは私が嫌なのです」
そのまま水場へ向かう公瑾を花はつい追いかけた。
「だって手巾ですよ。洗えばいいじゃないですか」
花の手巾は柔らかな綿で、周囲に淵飾りがあり一角に小さな小花の刺繍がしてある。
たぶん何でも手で作るこの時代、花の手巾はそれなりに地位ある者、もしくは豊かな者が持つ質も飾りも相当に手の込んだものだ。
けれど公瑾の汗を拭いたぐらいで駄目になるわけではないし、手巾と言うのはまさにこういう時の為にあるはずで、使わないと言うのはおかしい。
公瑾はその典雅な見かけ通り趣味よく、美しい物や風流なものを好むが、ある意味では現実主義でいくら名工に作らせた逸品でも、実用的なものは使ってこそ意味があると日頃から言っていた。
だから手巾がもったいないと言うような、今言った言葉は公瑾らしくない。
けれど公瑾はそんな花の不審に頓着することなく、剣を長床几に置くと上半身の衣を内着までも袖から抜いて、躊躇いなく肌を露わにした。
そのまま前に頭を倒して、顔以外も濡れるのも気にならない様子でばしゃばしゃと水を被る。
「花。申し訳ありませんが、そこの布を取ってくださいますか」
「どうぞ」
用意のいい公瑾は、長床几にすでに手巾より大きめの手拭い程の布を用意していた。
渡せばそのまま意外なほど乱暴な動作で頭をガシガシと拭いている。
「公瑾さん、そんな拭き方してたら髪が傷みますよ」
「いつもこんなものです」
「意外に乱暴ですね」
「男などこのようなものです。いっそもっと短くした方が楽かもしれませんね」
「えっ!それは止めてください」
「どうしてですか?」
公瑾が頭を拭く手と止めて、こちらを見た。布をばさりと剣の方に置くと乱れた前髪が額から目へと無造作にかかっている。
僅かに眇められた瞳は、少しだけ不機嫌に花の視線を捕えていた。
「短い髪が嫌いなのですか?と言っても、私の今の髪もそう長い方ではありませんが」
「いえ、嫌いじゃないです」
「じゃあ、似合わないと?」
少し苛立ちを含んだ声に、花は言葉に詰まる。今まで公瑾の髪が長ければいいとか、短い方がいいとか、そんなことは不思議とまったく考えたことがなかった。
改めて考えれば、たぶんどんな髪型であっても公瑾は似合うだろう。
そもそも公瑾の美貌は七難を隠すどころか、身に付けていれば安いものでも高価な物に見え、下品も上品に変えてしまうようなものだ。髪の長さ一つで公瑾の典雅な美貌を損なうとも思えないし、根本的な雰囲気が変わるとも思えなかった。
「公瑾さんに似合わないなんてことはないと思いますけど、何でしょう」
「訊いているのはこちらです。強い調子で、速攻で否定なさったでしょう」
目にかかる髪が邪魔だったのか、公瑾が無造作に髪をかき上げた。
物憂げな素草で長い指から零れる少し濡れた髪の色が、いつもより濃くて燻した銀色に見える。
その一瞬で、花は目が離せなくなった。どうしようもなく魅せられた。
「花?どうかしましたか?」
ハッと気付けば、公瑾が花の顔を間近で覗き込んでいた。驚くほど近くに白皙の顔があり、花は我に返ってその状況に今度は狼狽える。
影を落とすような長い睫毛、その間から覗く深紫の瞳はいつも静けさを湛えていた。
身体を動かした後のためか唇はいつもより赤く、いまだ袖を落した姿のままなので上半身が露わだった。
男性的な力強い首筋、きれいで実用的な筋肉を纏った武将としての身体。
綺麗に拭きとれてない水が、首筋から滑らかな肌を伝う様子は怖ろしく扇情的だった。
これがまだ何も知らない頃だったら、ただ想い人のそう言う姿に恥ずかしかっただけだ。
けれど今の花には、この美しいひとの妻となっているだけに、余分なあれこれが嫌でも思い出されてしまった。
「今更何て顔をされるのですか」
公瑾の苦笑混じりの声に、花は自分がどんな顔になっているのか分からない。
そのままに、ただ狼狽えて公瑾に視線を返す。
一方、公瑾の方は目の前の妻の姿に、苦く嗤う。
花が何か自分に気を取られたのは分かった。明確ではないけれど心が一瞬とんでいたように見えた。
だからこちらに注意を促せば、今度はまた人に見せるのも憚られるような様子になってしまった。
上気して赤くなった頬、熱っぽく潤んだような瞳、少しだけ開いた唇は色っぽく濡れて見えた。
彼女が何を見てそうなったのか分からないほど公瑾は鈍くはない。
「私の身体など、見るのが初めてでもないでしょうに」
「だ、だって、裸じゃないですか」
見事に狼狽えてどもる花に、公瑾は嫣然と微笑む。
「大袈裟な。裸と言っても上半身だけでしょう。もう私の妻なのに、まるで初心な生娘のような反応ですね」
「そんなの関係ないです!とにかく服を着て下さい」
「そう狼狽えられますと、何やらよからぬことでも思い出したかと勘繰ってしまいますよ」
「えっ!」
決して明確に色んなことを思い出したわけでもなかったけれど、公瑾の妖しいほどの色香に当てられてしまった事は事実だ。
取り繕うこともできずに絶句した花に、公瑾はゆるりと身体を倒して愛しい妻の顔を近付けた。
敏感な耳朶に吐息がかかる程に唇を寄せて甘く囁く。
「私はあなたの項や後れ毛を目の前に見るだけで、不埒なことを思うことはあります。このようにね」
低く艶やかな声と微かな呼気は、夜の褥の中でいまだ恥じらいを捨てきれなくて戸惑う花を優しく翻弄する公瑾を思い出させた。
同時に薄くも形良い唇で柔らかな耳朶を食まれ、花の睫毛が震えて恥ずかし気に目が伏せられる。
意識せずに漏れたのは小さな声だった。
「んっあ……」
自分洩らした声に驚いたのは花で、まるで閨の中で公瑾に抱かれている時に漏らす声のようで、羞恥にこれ以上はないほど身体全体を薄紅に染め上げた。
俯き、顔を掌で覆ってしまった花に、公瑾はふふっと声にならない笑いを漏らす。
「花、あまり煽らないでください」
「煽ってないです。公瑾さんがあんなことするからいけないんです」
「仕方ないでしょう。私たちはいまだ新婚なのですから。ほらこちらを向いてください」
公瑾の指先が滑って、花の頬に触れた。そのまま剣を持つ大きな硬い掌に包まれて、抗い難く顔を上げさせられてしまう。
「真っ赤ですね。それほど恥ずかしかったのですか?」
「当たり前です」
今は燦々と陽の光が降り注ぐ昼間で、あんなことは密やかに行われることだ。
間違ってもこんな誰に見られるか分からない場所で、堂々行われていいわけじゃない。
新婚だって免罪符にはならないだろう。
「そう怒った顔をされても、睦言めいた声を聞かせてくださったのはあなたでしょう。私にとっては可愛らしいばかりです」
そうして震える睫毛に落とされたのは、小さな吐息のような口付け。
同時に花の頬に、ぽたりと冷たい雫がかかって花は勢いよくぱちりと目を開けた。
「公瑾さん。良く拭いてなかったでしょう。いくらこの季節でも身体を冷やすのはよくありませんよ」
怒っていても、優しい花はすぐに怒りを引っ込めて夫である公瑾の身体を心配した。
「では拭いてくださいますか」
髪から拭き取れなかった水分が、たまたま落ちただけだろうが公瑾の頬を水滴が滑り落ちて行く。
「じゃあ、手拭いを貸してください」
花が長床几の方に行こうとすれば、公瑾が花の細い腕を掴んで止める。
「公瑾さん?」
「あなたの手巾で拭いてください」
「だって、さっきは必要ないって言ったじゃないですか」
意味が分からないと花が困惑しながらも、手巾を取り出してそっとこめかみから頬を拭えば、公瑾は一度目を閉じて花の手巾を持った手を掴んだ。
「私はあなたのこの香りが好きなのです。汗にまみれてしまっては勿体ない」
手巾の香りを嗅ぐような仕草に、花はやっと引いた熱が戻って来るような気がした。
公瑾はお洒落な趣味人らしく自分専用の香を持っているが、花自身は作ってくれると言った専用の香を断ってハーブのような自然の草花の香りを楽しんでいた。
自然な香りだから匂いは飛びやすいが、抽斗には手巾と共にいれているので香りは移っている。
やがて手首に触れた唇に、花はふわりと笑った。
こんな些細のことに気付いてくれる公瑾が嬉しくもあり、気恥ずかしくもある。
「さっきの台無し発言の真意はそこですか」
「そうですね」
「公瑾さんは分かり辛いです。言ってくれないとわかりませんよ」
「分からなくていいんですよ。いくらあなたであっても堂々と言うようなことじゃないですからね」
「ええっとそれは察しろと?」
すると公瑾は、是とも否とも取れない微笑を浮かべた。
ふわりと柔らかく吹き始めた初夏の風が、公瑾のいまだ色の濃い少し湿った髪を揺らす。
ああ、そうだ。花は公瑾の思いの他すべらかな髪に触れると、指先にその髪を通して手で梳く。
「花?」
「私、公瑾さんはどんな髪型でも似合うと思いますけど、やっぱりこうやって触れられる長さが嬉しいです」
婚儀を挙げて三月、二人は時に甘く、夫婦となった距離をゆっくりと近付けていた。
<後書き>
公花二人の新婚風景でした。
ふふふ、この先は(と言っても何話か挟みますが)最終的はR18な展開になる予定があったのです。
続きを書くのか、どこに書くのかまだわかりませんが、二人の甘い新婚生活を垣間見てくださいませ。
え?甘くない?
甘いですよね^^
了