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月野岬

好きなゲーム等の文章中心の二次創作置き場です。現在三国恋戦記中心。

『恋花のあとさき』2(孟徳×花→←文若?)(孟徳妾ED後)

2012-05-18 21:30:58 | トライアングル
<前書き>
いや、期間空きすぎたよね。
と思いつつ、リアル6月いっぱいまで怒涛のようですよ。
と言うか、来年の4月くらいまで似たり寄ったりな状況だと思います。
でも7、8月は少し息がつけるかな。
せっかく恋戦記PSP出るのに、時間なくて悔しいです。
忙しいと色々考えなきゃいけないことが多くて、なかなか脳内妄想もできないんです。
そうなるといざ時間があって書けますよとなっても、書けないんですよね~~~(悪循環)
え?これ言い訳です。すいません^^;

さて、今回は珍しく1回書いたきり放置されてた△関係物?(自分で疑問系)
今回は文若さん中心ターンとなってます。
あ~こういう設定嫌いな方は、読まない方は心の平穏は保てます。
自己責任でお願いして、お叱りはご勘弁ください。
では続きからどうぞ。




『恋花のあとさき』2(孟徳×花→←文若?)(孟徳妾ED後)

文若の元に、あの花との再会から五日程して、目立たぬように籠に入れられた旬の果物である瑞々しい杏と珍しい茶が一巻の竹簡と共に届けられた。
思わず微苦笑が漏れる。
文若の元で仕事の見習いのようなことをしていた当時、花は気持ちが素直な少女ではあったが、どこかまだ子供っぽいところがあった。
だから竹簡と共に季節の物を一緒に贈ると言うようなそつのない気遣いが自然にできるようになっていたと知って、成長を見るようで嬉しかった。
「あの娘も随分大人になったものだ」
思わず呟きが漏れていた。
花の後に助手としている官吏は、続き部屋の方にいるので声が届くことはない。
しかしと少し複雑に思う。
あの天真爛漫な笑顔が見られなくなったことは、少し残念だった。
大人びたと言えばそうかもしれないが、やはり以前とはどこか違って憂いを帯びた風情は儚くそこはかとない危うさがあった。
文若が知る限り丞相である孟徳が、邸に花を入れても孟徳の行動は相変わらずだった。
いや、確かに落ち着いた面もあった。
前ほど気紛れに侍女や女官に情けをかける事はなくなったが、それでも花の後に孟徳に貢がれ、受け入れた娘はいたはずだ。
もちろん政治的な思惑もあっただろうが、最終的に孟徳であれば断ることもできる。
それをしないのは、やはり気に入ったということなのだろう。
それがあの娘を変化させたんだろうか?
「全くらしくない」
文若は今度こそはっきりした苦笑を浮かべると、考える表情で竹簡を紐解いた。
文字はその人柄を表すと言うが、以前よりははるかに美しい文字が、それでも伸びやかに変な癖もなく書かれている。
女文字として見ても、それなりに格好がついていた。
それは花がすることもない毎日に、手慰みで一生懸命に練習した結果だった。
幸い孟徳の夫人や妾たちは、一芸どころか多芸に優れた者が多く、文字や詩はもちろんのこと絵を描く者、楽や舞をする者、刺繍や機織をする者と皆多才だった。
だから花は無聊を慰めるために、それらの中で興味ある事を片っ端から習った。
元の世界では特別勉強や習い事など好きではなかったけれど、ここの世界に来てみれば勉強一つにしろ与えられるのは特別な者だけだと知った。
多くの者は、その日暮らしていくだけで精一杯なのだ。
だから花は自分にその機会が与えられているならば、精一杯それを生かすべきだと思った。
でもそんなえらそうな理由ばかりが全てじゃない。
ただ漫然と孟徳を待つだけの日々が、時間が、ひどく退屈でもったいなかったのだ。
あの邸での日々は時間の流れがゆっくりで、ともすれば自分だけが、いやあの邸だけが竜宮城のように時間が違っているんじゃないかと思った。
外にいた頃は、世界は目まぐるしく流れていたのに、あの鮮烈な戦いの炎の記憶ですら曖昧で、ときどき全てから置いていかれているような気がしていた。
孟徳の妻妾たちは、誰も外の世界なんて気にかけていなかった。
ただ時折訪れる彼女たちの縁者や邸に出入りの商人達だけが、あそこに新たな外からの風を少しだけ運んできてくれた。
そんな中で、唯一この世界に知り合いもほとんどいない花が出来た事は、ひたすらに色んな知識や技能を身に付けることだったのだ。
だから各段に字も上手くなったし、刺繍なども少しはできるようになっていた。
そんな事情を知らないながらも、文若には弟子と言うにはいささか面映いものがあるが、花は言うなら弟子と呼ぶに一番近い存在だったろう。
久しぶりに花の手蹟を見ながら、文若は朱で添削を始めた。
それでも前のように、字をあからさまに直すような間違いはなくなっている。
これならばと、頭の片隅には花に相応しい新たな手本となる教材に合うような書簡が幾つか自然に浮かんでいた。
ここにいたのは長い間ではなかったが、努力は惜しまぬ少女だった。
あの筆すらまともに持てなかった娘が、ここまで書くようになった努力を思えば、文若とて感心せざるを得ない。
楽な暮らしを知ればその生活に慣れ、何もしなくなる者が多い中、あの邸にはいっても、あの娘の本質は変わらぬのかと嬉しく思う。
そこへ、声がかかった。
「文若、治水の事で相談があるんだがいいか」
開け放したままだった扉から、元譲が書簡を抱えて現れた。
「元譲殿か」
元譲は基本的に武官で、もちろん治水など兵を使って工事をする全般の指揮に関わることもあるが、これは本来丞相である孟徳に上げた案件だ。
それを元譲が持ってくると言うことが、今現在の孟徳と文若二人の距離を物語っている。
「丞相から言い付かってきたのだな」
ため息を吐かれ、それはこちらとばかりに元譲は渋い顔になった。
「もうちょっとどうにかならんのか?」
「どうにもこうにも、逃げておられるのは丞相の方だ。私にどうしろと言いたいのです?」
元譲だって武官ではあるが、孟徳の特別な腹心だ。
二人が何で揉めており、どういう経緯でこうなっているかは知っている。
そうこうなる以前にも話し合いというか、この件に触れたことはあったが二人の考え方は縮まることはなかった。
「爵位と九錫の件は、いまだ考えを変える気はないんだな」
「当然です。受けてしまえば丞相の公明さ、正道が意味をなさなくなる」
丞相はあくまでも漢王朝の臣下であり、献帝の最も高き臣である孟徳の姿こそが文若のあるべき曹孟徳の姿であり形だ。
互いに頭が切れる者同士が、互いの理念を突き詰めた上でとった最終的な結論が違っていれば、正直それを重ね合わせるのは難しい。
近ければ一部だけでも重なり合う場所から妥協点も見つけようがあるだろうが、根本が違っているのだ。
「孟徳の方も妥協はない。これが近道だと思っている」
「近道など求める必要はないのではないですか?」
「理屈ではそうだが、無為に時間を費やすことに意味はないだろう。お前だって、それで犠牲がどこに出るかは知っているはずだ」
世の平定は民のために必要なことだが、大義あってこそそれが許される。
「根本を間違えては、全ては地に堕ちます」
落ちついてはいるが強く紡がれた言葉は、確固たる意志に基づき小揺るぎもしない。
筋金入りの頑固さに、元譲はもうかけるべき言葉をなくす。
いやとうに失くしてはいた。
それでも若き頃からずっと共に覇者と呼ばれる孟徳の傍らにあったのだ。
出来れば共に股肱の臣として、孟徳を傍らで支え続けて欲しいという元譲の想いは切実だ。
文若の才を、王佐と他の臣から呼ばれ、孟徳が自身の子房と呼んだ類稀な能力を、惜しむ気持ちは本心だった。
「なあ、文若。孟徳は今更自分の名が地に堕ち泥を被ることも、血に塗れることも、恐れてはいない。と言うより、そんなことなど頓着しないだろう」
そう奸雄と呼ばれようと、この先帝位を望んだ簒奪者と罵られようと、孟徳は威風堂々と王者の貫録を纏って、真っ直ぐに顔を上げ向かい風の中を立ち続けるだろう。
あの男は自分の名誉や誇りすら、曹孟徳の名のもとにどうなろうともただ眺めるだけの割り切り方をしてしまっている。
それはもういっそ見事なほどで、その切り捨て方に心が少しだけ軋む。
それが分からぬ文若ではないだろうに、互いに相容れぬ己の信義に元譲はため息をついた。
文若は自分と孟徳の関係を気にする勇猛で孟徳への忠誠の篤い元譲に、黙って否を突きつける。
元譲の心遣いは文若とて、もちろんありがたく思わなくもない。
彼にも無関心ではいられないほど、何と名前を付けるのか難しいが、いくらかの情は介在する。
それでも隔たりは大きすぎ、何があっても譲れぬもののためには文若は妥協するつもりはない。
いや頑固だと言われても、必要だとあれば割り切ることもできる男だ。
ただ唯一の譲れない点が、今回の事態を文若と孟徳の間に生じた。
それは深い亀裂となりつつあり、孟徳は既に議論することにさえ倦んでいる。
文若と話し合わぬことこそが、今の孟徳にとっての唯一の妥協点だった。
これ以上溝を深めれば、もっと厄介な沙汰を文若に向けて口にしなければならないかもしれないからだ。
無言を貫くことで返答とした文若に、元譲はまた深く重いため息をつき大きな執務机に書簡を広げた。
こうなれば、後はもう淡々と仕事をこなすだけだ。
けれど不機嫌な元譲のその鼻先に、何か甘い香りがかすめる。
この殺伐とした無味乾燥とした文若の執務室には、花すらあることは珍しい。
もちろんこの室付の女官はいるが、その花瓶の置き場所さえない有様なのだ。
そして不意に香りが引き出した元譲の思い出は、この室に甘い香りが常にしていた時期があったことだ。
浮かぶのは、今はもうここにはいない少女の姿。
花と愛らしくもいささか安易な名を持った娘がいた当時、この室には常に花が飾られ、時折甘い菓子や茶が供された。
巡らした元譲の視線の先、脇机に杏の果実が盛られた小ぶりの籠が見える。
「珍しいな」
元譲の呟きと視線に気付いた文若は、なぜか困惑する。
やましいことなどないから、単に花に久方ぶりに出会い、たまたまこれを贈られる状況になったと口にすればいいだけだ。
けれど一瞬だけ文若は言い淀む。
が、元譲はそんな文若の困惑に気付くことなく、すぐに興味を失って書簡を差し示した。
この時、偶然に花を思い出した元譲はまさか籠の果実がその件の少女から贈られたものと思いもせず、また文若もその名をついに口にする機会を失う。
その名が再び関わることを知らぬままに、赤い果実は仄かに香り、記憶を揺らした。

「花さま。お届けものでございます」
室にいた花に、家令から言い遣ったのだろう花付きでなく邸全般に関わる使用人の女が、美しい藍色の布が掛けられた盆を捧げ持って現れた。
珍しいなと花は思う。
こちらに親族や後ろ盾、友人と呼べる者もいない花には、普段から届け物などされたことはない。
唯一物を贈ってくれるのは、それこそ夫というか主である孟徳だけだ。
時に縁者のない花を第一夫人も気遣ってはくれるが、そう多いものでもない。
そして思いを巡らせても、孟徳に物を強請った記憶もなければ、贈られる謂れもない。
もちろん孟徳が、妻妾たちに気紛れに突然贈り物をすることはある。
それは万遍なく全員に平等に贈られることもあれば、特別と言う風にただ一人にされることもある。
けれど内心はどうであれ、邸の女たちは示された特別には鷹揚に見て見ぬふりをする。
何しろ孟徳は絶対者であり、大きく騒ぎ立てなければあからさまに差別され寵を失うこともなく、一応捨て置かれるようなことにはならないからだ。
最低限の愛情は保障されている現状に、誰も文句は言わない。
そして、今ここに来た贈り物は孟徳からだろうかと花は少し思案顔になる。
「いえ。孟徳さまではございません」
ここは私邸なので、丞相と言う呼称は使われない。
せめてここでは、孟徳に丞相としてではなく、ただの一人の男として寛いでもらいたいと言う配慮からだ。
花の怪訝な表情を読み取った使用人は、孟徳でないと言いながら小さく首を振った。
「家令からは伺っておりません」
でも家令の陳からと言うことは、花が受け取って問題ないと判断されたのだろう。
疑問に思いつつも、頷けば侍女がそれを代わりに受け取った。
長角卓の上に静かに置けば、侍女は花の顔を窺う。
花は小さく笑うと、自分の手でその掛け布をそっと取った。
「あっ」
「まあ」
花と侍女の声が重なった。
布が敷かれた盆の上には、書簡が三巻と美しい料紙が添えられていた。
巻物のように丸められたそれを紐解けば、上質な淡い萌木色の紙に墨痕も見事な文字が並んでいた。
署名を見るまでもなく、その文字が文若のものであることはすぐに分かった。
この時代は木簡や竹簡が多いけれど、紙もあり、文若ほどの身分になれば使えないものでもないだろう。
久方ぶりに見た文若の文字は、その性格を表してきちんとして男性的で生真面目ながら硬すぎず、端正な美しさだ。
花は中身を読み解く前に、その美しさに見惚れた。
そして改めて料紙に目を通せば、それは花の心遣いに対する返礼であり、また花の文字に対する厳しい注意、また勉強に良いと思われる書簡を共に送ったと書かれてあった。
並べられた一巻は、花の送った物で朱書きで細かく添削がされていた。
懐かしいと花の顔が自然と綻ぶ。
添削の文字は料紙に書かれた文字と違い、崩すこともなくきっちりまるで教本のように書かれている。
どこまでも注意しか書かれてなかったけれど、添削された書簡はあっという間に花を昔の記憶に戻した。
他の二巻は、かつて花が学んでいた時より格段と難しくなった詩と兵法の書だ。
この時代、まだ印刷技術などはないから書は一文字一文字書き写すしかない。
だから書は全て貴重なものだ。
恐らく花のために私物を送ってくれたのだろう文若に、花は申し訳なく思う。
使わぬものだから返す必要はないと書かれていたが、花は貰ってしまうつもりはなかった。
高価なものという意識もあるが、文若の人となりを思い出せば彼がいかにこういうものを大事にしていたか知っているからだ。
高価でも、ほどほどの物でも、文若は本当に自分の気に入ったものを、愛着を持ってとても大事に使っていた。
今手元にある書簡も紐などを見れば真新しくはないと分かるけれど、手垢などなく割れることもなく、少しだけ古いいい色合いになっている。
持ち主の愛情を受け、大切に使われていたそれに花は温かい気持ちになった。
そうして、改めて自分のために選ばれた書簡のその選び方に思わず首を傾げた。
女人の教養として詩を扱ったものを選ぶのは理解できるけれど、兵法は今の花には必要ないものだ。
伏龍諸葛孔明の弟子と言う名前を持っていた花は、もうどこにもいない。
それとも文若が見た今の花に、少しでもあの頃の何かを感じてくれたんだろうか?
書簡をそっと大事そうに胸に抱えた花に、侍女が掛け布の残りを捲って声を掛けた。
「花さま、他にもあるようですよ」
「ほんと?」
返礼の書には、それ以上何も書かれていなかった。
だから小さな木の箱を見て、小さく首を傾げる。
その箱の蓋を開ければ深緑の光沢のある布に包まれたそこそこ重さのある物があり、花はそれを掌の上に乗せるとそっと布を開いた。
「えっ?」
「これは……なんて見事なんでしょう」
布の中には、丁度花の拳くらいの大きさの紅水晶の蓮の花があった。
色が淡い紅と言うか、ピンク色なので余計に本物の蓮の花のように見える。
「これ、置物ですか?」
繊細な彫り物の蓮花の花びらに、花はそっと指先を触れさせる。
「置物でもいいでしょうが。大きさから察しますに、文鎮かもしれません」
「文鎮ですか?」
「ええ。竹簡や木簡ならばあまり必要としませんが、紙や布を使う場合は重しがあった方がよろしいでしょう。たぶんそれにぴったりですわ」
花は自分の掌に咲いたような蓮の花を繁々と見つめた。
なんて繊細で綺麗な作りだろうか。
「きれいですね」
ため息混じりに花が漏らせば、侍女もゆっくりと頷いた。
「大変趣味のよい芸術的な一品だと思います。花さまにはぴったりですね」
侍女は嫌味ではないが、どこか諦めたような微苦笑を浮かべて言った。
普段から花は華美に着飾ることも、化粧をして隙なく装うことも好まなかった。
孟徳の妻妾の中では最も年若いにも関わらず、いやだからだろうか、薄化粧にごく大人しやかな衣装、そして派手に他の女たちと交流もせずに静かに過ごしている。
書を読むことや文字の練習を好む花にとっては、普段贈られる高価な装身具や衣装よりはよほど好まれるものだろう。
「贈り主の方は花さまのことをよく御存じなんですね」
その言葉は、花の心に仄かな一条の清浄な光となって差し込んだ。
まだ私を忘れずにいてくれる人がいる。
ここにいると花は時々自分が花と言う名を持つ一人の人間だと忘れそうになる。
邸にいるのは丞相曹孟徳の妾の一人で、個人の名前がないような気がするのだ。
でもここに、あの何も持たないただの女子高生だった、けれど山田花という名をきちんともった少女の自分を憶えてくれている存在がある。
もしかしたら文若にそんな意味はないかもしれないけれど、文若の贈り物や端正な文字は花を懐かしいだけでない、今を思い起こさせる力になった。
そうして薄桃色の蓮花は水晶の薄い花弁に光を纏い、小さな花の掌の上で、まるで匂い立つように咲き誇った。



<後書き>
そんなこんなで文若さんですが、文若さんですよね?(聞かないでいただきたいwww)
久方ぶりにかいたら、こんな設定も楽しかったです。
そしてこの物のやり取りは、別に秘密裡でもありません。
だから花ちゃんも別に今のところ何の後ろめたさもありません。
次回は丞相出したい予定ですが、当分これはお休みのような気がします。
さて花献帝とするか、白梅か、花軍か、たぶん次の更新はこの三つのどれかだと思います。
ただ地下室に広告出てるので、あちらもどうにかせねばと焦ってます(苦笑)

『恋花のあとさき』(孟徳×花→←文若)(孟徳妾ED後)

2010-10-17 22:32:09 | トライアングル
<前書き>
『白梅』かと思いきや、また別話でした^^;
これは孟徳妾ED後のお話で、文若さんバージョンです。
もう一個、妾ED後の長編もあるんですが、これは短いほう。
ただ、受け入れ難い方はいるかもしれません。
この段階ではまだ全然ですが、三角関係っぽいので・・・・・・あ、続きはあります(おい)
警告ものです
そういう感じが許せる!何でもどんとこいと言う方だけ、読んでみてください。
申し訳ありませんが、読まれた後の苦情はご容赦願います。

では、大丈夫な方だけ続きからどうぞ。(たたみ方わかっててよかった^^)

『恋花のあとさき』(孟徳×花→←文若)(孟徳妾ED後)

また新しい娘が邸に入ってくる。
もう狂うほどの嫉妬も、苦しさも、悲しみも、何も残ってはいない。
何を間違ったんだろう。
侍女に傅かれ、高価な装身具と衣装に身を包み、生活の心配もなく、優雅に遊び暮らす日々。
世間では、孟徳が公も位を賜ると専らの噂だった。
けれどそれさえも遠い話で、邸は普段通りの生活が営まれている。

「ですから、孟徳様はこちらにはおりません」
家令の声に、邸の表庭を歩いていた花はそっと表の出入り口を覗いた。
そして、そこにきちんと乱れなく品のいい黒い装束を身に纏った文若の姿を見つけて、思わず身を隠した。
「本当か?偽りではないのだな?」
「ご高名な令君に偽りなど申しません。主はここしばらく、この邸には戻っておりません」
「わかった。声を荒げて済まなかった」
律儀に家令にまで謝るその潔さは以前と変わらず、文若はさっと身を翻す。
花は馬や馬車が邸の前にいないのを確かめると、そっと横の木戸から外に滑り出た。
左右の道を見渡せば、少し先に道を急ぐ文若の背中が見える。
ためらいは一瞬だった。
懐かしさから花は小走りになり、小さく声をかけた。
「文若さん!」
聞こえなかったのか足が緩む事のない文若に、花は焦ってもう一度、今度は大きな声で呼びかけた。
「文若さん!待ってください」
文若の歩みが止まり、そこに立つ娘の姿に普段は冷静な顔が驚く。
「花か?……いや、花殿と呼ぶべきか。久しいな」
「お久しぶりです。花でいいですよ。たかが愛妾に殿なんていりません」
微苦笑と共に言われた言葉に、文若はわずかばかり驚く。
声こそ明るい調子だったが、以前にはなかった大人びて憂いを秘めた表情だったからだ。
「しかし妙齢の女人が走るのはどうかと思うが、そこの辺りは変わらないのか」
駆け寄ってきた少女に、眉間に皺を寄せて言うと花はくすくす笑った。
「文若さんも相変わらずですね。今日は孟徳さんに会いに来たんですか?」
「そうだ。府内ではなかなか捕まらないので仕方がなく来てみたが、無駄足のようだ」
「そうなんですね。ここの所、孟徳さんは帰ってきてませんよ。でも、明後日には新しい女の人が来るから、邸に顔を出すと思います」
その言葉は、ごく当然のように言われたからこそ、文若の耳には痛々しく届いた。
わずか一年半まで、この少女は文若の部下だったのだ。
読み書きすらまともに出来なかったが、何事にも一生懸命で熱心な姿は好ましく、接するうちに周囲の人の心を和ませ、とらえた。
そして花、異国から来たという娘に、漢王朝随一の臣の位丞相である孟徳が心を奪われ、二人は気持ちを通わせて一緒になった。
だから花は孟徳の元へ引き取られて、もう二度と会うことはないと思っていた。
権力のある男に、妻や妾が複数いるのは普通のことだし、同じ邸内に住まわせるのも珍しい事ではない。
それでも気疲れはするのか、花の顔には昔あった無邪気さが薄れていた。
きれいに乱れなく結い上げられた濃い茶色の髪、虹彩の淡い明るく澄んだ瞳、庶民には手の届かない美しい絹の衣装は、花に鮮やかな色を添えている。
じっとこちらを見る文若の眼差しに、花はいたたまれない気持ちになった。
容赦ない厳しい眼差しは、昔のように何もかも見据えているようで、変わってしまった自分がどう映るのか怖かった。
「文若さん、視線が痛いです」
花の遠慮がちに言われた言葉に、文若ははっと我に返った。
「すまない。不躾だった」
「わたし、かわりましたか?」
昔のように小さく首を傾げ、真っ直ぐに問う視線は以前のままだ。
この視線に見つめられるのが嫌ではなく、少女に日々ものを教える事が、自分でも驚くほど楽しかったことを思い出す。
そう、表には出さなかったけれど、幼子に教えるように花に読み書きを教える事は、日々膨大な仕事に終われる文若のわずかばかりの息抜きだった。
変わったかと問われれば、確かに変わっていた。
「きれいになった」
囁くような小さな声は、かろうじて花の耳にも届いていたが、思わず問い返してしまう。
「えっ?」
それはまさか文若から言われるような言葉じゃなかったから仕方ない。
「二度も言う気はない」
珍しく赤くなった顔を隠すように、文若は袖を優雅に持ち上げた。
「まさか文若さんからお世辞を聞くとは思いませんでした」
花は世にも珍しい文若の赤い顔を見ながら、呆然と呟いてしまう。
「世辞など言わぬ」
再びそう返されて、今度は花の方が赤くなった。
確かに文若はお世辞など言うような器用な男ではなく、不器用なまでに実直で厳しい。
だからこそ彼の言葉は軽くなく、本心からのもので胸に響くのだと思いだした。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「なぜたかがそのような言葉で赤くなる?丞相からは言われ慣れているだろう」
花の夫であり文若の上司である孟徳は、文若とは反対に言葉を過剰に発する。
愛する者には浴びるように賛辞の言葉を送り、例え自分のものにしたからと言って、女に贈る言葉を惜しむような男ではない。
「そうですね」
花は否定はせずに、仄かに笑った。
相変わらず孟徳は優しいし、会えばかわいいとか、好きだとか、女の子なら嬉しくなるようなことをたくさん言ってくれる。
それが嘘でない言葉なのはわかるけれど、次の夜に別の女性のもとに行けば、また同じ言葉を甘く言っているのだ。
それは孟徳が悪いわけじゃない。
誰にでも公平であろうとするのは、たくさんの妻妾を持つ身とすれば誠実だろう。
ただ自分では孟徳の心の隙間を埋めきれなかったと思うと、心が痛くて軋んだ。
そしてその寂しさをやり過ごすために、心に蓋をすることを覚えた。
むき出しだから傷付くのだ。
閉じてしまえば、痛みはだんだん鈍いものへ変わって行った。
同時に孟徳に対する気持ちも、ゆるく色あせて、もうときめきもドキドキも胸が苦しくなるような嬉しさも感じることがなくなった。
「丞相に大事にされているのだろう?」
以前は天真爛漫に笑う少女だったのに、いまの笑顔がどこか儚い風情に思えて、文若は普段では絶対に聞かないような事を口に出していた。
「はい。大切にしてもらってます」
よく手入れされた指先、焚き染められた香、風にもあてぬように邸の奥深くに大切にしまわれていることは文若の目にもよくわかった。
けれどやはり前の花からみれば、どこか虚ろなものを感じ得ずにはいられない。
花は文若に自分のこの状況を知られたくなくて、急いで話題を変えた。
「文若さん、孟徳さんと上手くいってないんですか?」
「なぜそう思う?丞相から何か聞いているのか?」
ぴくりと文若の眉が動き、厳しい顔が更に厳しくなった。
「孟徳さんは政のことなんかは全然話されないけど、わざわざここまで追いかけてくるんだろうから、よほどだと思って。それに少しは街の噂も耳に入ります」
「相変わらず聡いところは健在か。お前が、あのまま官吏として働いていたならば、案外良い官となったかもしれないな」
「文若さんに誉められるのってくすぐったいです。滅多に誉めてもらえなかったから」
「私はそこまで厳しかったか?」
「いえ。ちゃんと出来たときは誉めてもらえましたけど、こんな感覚久しぶりだったから」
良く出来たときは特別なお茶が淹れられたり、ほんの小さな甘いお菓子がついていたり、文若は口でなくさりげない優しさを態度で示す人だった。
「あの文若さん、孟徳さんに用があるならば伝言だけでも伝えましょうか?まあいつ来られるかはっきりしないので、あまりお役に立てないかもしれませんが」
「いや。必要ない。心遣いだけ受け取っておこう」
そのとき、風に乗って壁の向こうの邸内から花を呼ぶ侍女の声が聞こえてきた。
もう少し話していたかったけれど、たぶん誰かに見られれば良くは思われないだろう。
「文若さん、無理はしないで下さいね」
「お前から心配されるような日が来るとは思わなかった」
どこか幼かった花の面影を思い出して、苦笑混じりに文若は言葉を零す。
「まあ常識知らずだったのは認めます。でも、ホントに気を付けてください」
いつになく、たまたま会ったのに必死に言う花に、文若は淡く微笑んだ。
「大丈夫だ。何を心配しているか知らぬが、杞憂だ」
花様とまた呼ぶ声が聞こえ、わずかに大きくなった。
「もう行け。探されているぞ」
「はい」
昔のように素直に返事をし、身を翻しかけた花が不意にまた向きなおった。
「わたし、あの頃より随分字が上手くなったんですよ。今度何か送りますから是非見て下さい」
「まだ私に師の真似事をさせるつもりか?」
「はい。約束ですからね」
言いたい事を言うと、今度こそ花は身を翻して邸内に走り込んで行った。
少しだけ無防備な苦笑を浮かべる文若の目には、色鮮やかな蝶が舞ったように衣の残像が焼きついた。

それから二日後、新しい妾となった娘がやってきた。
正夫人が皆を呼び集めて紹介し、自己紹介が済めば一連の儀式は終わりとなる。
それに伴い今宵は孟徳が邸に訪れるはずだったが、花は装いを整える他の夫人や愛妾たちを見ながらも、自らは何もする気はなかった。
孟徳が来るのは新しい娘のためで、もちろん顔を合わせれば着飾っていれば誉め言葉をくれたりもするだろうけれど、泊まるのは新しい娘のところだ。
だから自室から出なければ、孟徳と顔を会わせることもなく過ごせる。
特別質素な装いでもないのだから、わざわざ着替える必要も感じなかった。
花付きの侍女は明らかに不服そうだったが、主である花に逆らうような事は言わなかった。
夕刻、孟徳がやってくると邸はいっきに騒がしくなるが、花は食事も自室でとり、書簡を紐解いてゆっくりと過ごした。
そして一度寝たはずだったのに、眠りが浅かったのか中途半端に目覚めてしまった。
夜着の上に羽織を着込むと、そっと中庭へ滑り出た。
この邸の警備は日頃から厳重だが、孟徳がいる日は特に厳しい。
だから兵士の多い表庭には行かず、水が巡らされた中庭をそぞろ歩く。
眠れないのは、たぶん孟徳がこの邸の一室で新しい娘といるからだろう。
閉じたとは言っても、やっぱり何も感じなくなったわけじゃない。
花が来てから、この邸に来た娘は二人目だ。
花の次に新たな娘が来たときには、涙が枯れることがないんだと思うくらいに泣いた。
でも今は涙さえ出てこない。
何を間違ったのか、花はもう孟徳との関係を考える事に疲れていた。
小さな池に架かる橋の真ん中に腰掛けると、沓を脱いで素足を水に浸す。
今は水遊びにはまだ早い季節だったけれど、足先が水を蹴って飛沫が月光に映えるのがきれいだ。
ここに来てからは他の女の人と同じようにと振舞ってきたから、こんな風に夢中になって遊ぶのは久しぶりで、だから不意に肩に人の手が触れたときは心臓が止まるかと思った。
危うく出かけた悲鳴は、良く知る声に耳元で囁かれてかろうじて発せられなかった。
「花ちゃん、俺だよ。真夜中だから悲鳴はやめてね」
「孟徳さん……」
見上げれば、屈みこんで花を覗く孟徳の顔と間近に見つめあうことになった。
「こんな時間にどうしたの?」
「散歩です。目が冴えちゃったので」
「きみは相変わらずだね」
孟徳は苦笑すると、花の隣にゆっくりと腰掛けた。
「これから丞相府に帰るんですか?」
孟徳はこの邸の他にも、城下に幾つかの邸を所有している。
妻妾は全てここに集めてあるはずだけれど、もしかしたら秘密の恋人がいても不思議はないと花は思っていた。
「ん?いいや。部屋に戻ろうと思って」
「そうですか」
花はそれだけで、また半月が揺れる水面に視線を移す。
もともと孟徳はこの邸の女性の元で甘い時を過ごしても、ことが終われば自分の部屋に戻る事がほとんどで、そのまま女性の室に泊まることは滅多にない。
だから戻ると言っても、別に不思議なことじゃなかった。
孟徳がその室でそのまま休むのは、余程心を許しているある意味特別な寵愛を受けている証しだが、今それを示されているのは正夫人と花だけだ。
でもその事実さえ、今の花の気持ちを浮き立たせることも、軽くすることもない。
並んだ二人の間にも少しの距離があって、花はまるで自分の今の気持ちみたいだと思う。
本当は、これは孟徳の優しさなのだ。
他の女性を抱いた後に花と出会って、嫌がるだろうと思っているから距離をとっている。
いつもなら過剰に触れてくる孟徳が触れないのも、そのためだ。
気詰まりではないけれど、何だか諦めに似た倦怠した空気が場を支配していて、花はそれを吹き飛ばすように水を勢いよく蹴り上げた。
「ちょっ!花ちゃん、俺にかかったよ」
「たまには童心に帰ることも必要ですよ」
無邪気に笑う花の様子に、孟徳はつい笑ってしまう。
最近すっかり大人びてきたと思っていたけれど、今夜の花の様子は以前のように屈託がなく、どこか明るく幼女のような高い笑い声が響く。
二人は夜中だと言うのに、ひとしきり足で水をかけあって遊んだ。
「あ~あ、すっかり濡れちゃったね」
「風邪をひかないうちに戻りましょう」
花はくすくすと笑いながら、元気に立ち上がった。
「花ちゃん、いくら邸の敷地内とはいえ危ないから送っていくよ」
「必要ないですよ。兵士さんだっていっぱいいるんですから。それに明日も早いんですから、孟徳さんも早く休んだほうがいいです」
「そう邪険にしないでよ。俺はもうちょっと花ちゃんの傍にいたいな」
孟徳に甘く強請られれば、花もこれ以上は強くは否とは言えない。
「仕方ないですね」
花が譲歩すると、ふわりと孟徳は嬉しそうに笑って花に向かって手を差し出して来た。
もちろんためらわずに手を繋ぐけれど、傍らの孟徳から嗅ぎなれない女性用の香を感じて、ああこれが新しい女性の香りなのかと心が冷える。
繋いだ手は暖かいのに、花は小さく肩を震わせた。
「もしかして濡れちゃったから寒い?」
覗き込んでくる孟徳の視線を避けて、花はいいえと小さく答えて首を振った。
黙って歩きながら、孟徳は密かに心の中でため息をつく。
手に入れたと思った少女なのに、花の心はどこか少しだけ遠く感じる。
他の女と共に過ごせば、花以外の女たちももちろん面白くないと思っている感情はあるだろうから、それは時々見え隠れして孟徳に伝わる。
でも、花の遠さはそれらとは明らかに違う。
委ねられたはずのものが、気付けばいつの間にか水が手からこぼれるように少しずつ、本当に少しずつなくなっているような感じだ。
それでも手を繋ぎ、口付けをし、抱きしめる事を嫌がるわけではない。
孟徳を嫌い、嫌悪を抱いているならば、いくら少しばかり大人びたと言っても、根が素直な花には気取られずに隠すことなど不可能だ。
それでも今夜は花と一緒の時間が持てて、よかったと孟徳は思う。
やはり花は、その揺るぎない眼差しを恐れもなく孟徳に向ける唯一の存在で、孟徳にとっては他の女たちとは一緒にできない存在だった。
花の室の前まで来ると、花は孟徳に向き直り、あっさりと手を離した。
「じゃあ、おやすみなさい。孟徳さん」
こんなところも花は相変わらず普通の女たちとは違う。
ほとんどの女はどんなときでも孟徳の寵を受ける機会を逃そうとしないから、こんな場面では必ず孟徳を誘うか、その素振りをそれとなく見せる。
けれど、花はあっさりと言うか、きっぱりと一線をひく。
「花ちゃん。きみと一緒に眠っちゃダメ?添い寝して欲しいな」
わかっていても、孟徳は試したくなってしまう。
子供が母親の愛情を試すように、花の顔を見ながら邪気なくお願いをする。
「ダメです。それは今夜の女性とわたしに対するけじめですよ」
「花ちゃんは厳しいね」
「当たり前の事です」
見つめあい、譲られることのない花の瞳に、孟徳は苦笑した。
「じゃあ、口付けしていい?」
「……はい。孟徳さんは甘えん坊ですね」
花はまだ何も知らない少女のように赤くなりながら、少し緊張して孟徳の唇を待つ。
優しく頬に添えられる掌の温かさに瞳を閉じ、羽が触れるように孟徳の唇がおりてくる。
ふわりと包まれる馴染みのない香りに、花は甘く苦い口付けを深く重ねて受けた。

おやすみと閉じられた扉の向こうに、孟徳の気配が遠のくのを感じながら、花はすっかり冷えた自分の寝台へと戻る。
意地なんて張らなければ、今この瞬間に孟徳の温かな腕の中にいられただろうか?
それでも花には自分の中に曲げられない何かがあることを、再び思い出していた。
机の上には竹簡があり、そこに綴られているのは書き始めたばかりの文若への書簡だった。
その文字をそっと指先でなぞる。
そうすると、文字を習い始めたばかりの頃の文若の厳しい声が頭に蘇り、花は自然と懐かしさに微笑んでいた。
今、花の耳に残っているのは、孟徳の甘いおやすみの声ではなく、つい先日偶然に出会った文若の厳しくも真っ直ぐな声音だった。

<後書き>
まだ雰囲気のみですが、一応用心しないとね(汗)
これ不定期で書きたいと思ってます。
あ、需要ないですか?
文若さん好きと、孟徳さん好き、どちらの方にも怒られそうだ~(苦笑)