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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

消費税・インボイス制度(原則課税)

2023-05-20 16:31:00 | 消費税
インボイス制度導入後、原則課税で申告をしている事業者は多大な事務負担を強いられることになります。

◆原則課税とは?

事業者は商品の販売やサービスの提供に際して消費税を受け取ります。一方、仕入や諸経費の支払いに際しては消費税を支払います。そして、この受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて税務署に納めなければなりません。

これが消費税という税金の仕組みです。この消費税の仕組みどおりに申告納税をするのが原則課税です。

◆原則課税が適用される事業者

「簡易課税を選択できない」あるいは「簡易課税を選択していない」事業者は原則課税で消費税の申告をすることになります。簡易課税は基準期間(前々年)の課税売上高(消費税が課税される売上)が5000万円以下でなければ適用できません。また、簡易課税を適用するには申告とは別に所定の届けが必要です。

基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、原則課税や簡易課税の他いわゆる2割特例が認められます。

「5000万円」「1000万円」という数値からすれば、原則課税が適用される事業者は決して主流ではないことをご理解いただけると思います。

◆原則課税における仕入税額控除

事業者は受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて税務署に納めますが、この支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。

原則課税における仕入税額控除は、まさに原則どおり計算しなければなりませんので大変です。個々の支払いについてインボイス(適格請求書)を入手しなければその支払いについては仕入税額控除をすることはできません。

◆インボイスを発行してくれない事業者

インボイス(適格請求書)を発行しなければならない、つまり適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者がインボイスを発行してくれない場合、インボイスを発行するよう督促しなければなりません。

◆インボイスを発行できない事業者

インボイスを発行できない事業者についてはその支払いを仕入税額控除の対象にすることはできません。たとえ、「インボイスのようなもの」を手渡してきたとしてもできません。インボイスにはその事業者に対して発行された登録番号の記載が必須ですが、インボイスを発行できない事業者は登録番号がないので登録番号を記載できません。

◆国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト

支払先の事業者がインボイスを発行できる適格請求書発行事業者であるかは国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認することができます。仕入税額控除をするにあたってはこれを確認しなければなりません。

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原則課税で申告をしている事業者は仕入税額控除をするための作業が大変なことになります。今後は支払い事務に関して、従来の「請求書」「領収書」だけでなくインボイス(適格請求書)を入手しなければなりません。インボイスには実在する登録番号が記載されてなければなりません。この確認作業が大変です。

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消費税・インボイス制度(自らの立ち位置を確認)

2023-05-20 16:30:00 | 消費税
インボイスの登録(適格請求書発行事業者の登録)をした事業者は、今年10月から請求書に消費税額を明記するとともに登録番号を記載しなければなりません。また、仕入代金や諸経費の支払いをする際にはインボイス、つまり消費税額が明記され登録番号が記載された請求書や領収書を入手しなければなりません。

インボイス制度においては、販売やサービス提供に際してはインボイス(適格請求書)を発行しなければ消費税を受け取れません。また、税務署に申告をするにあたっては支払先が発行したインボイス(適格請求書)がなければ仕入税額控除ができません。

しかし、インボイスの登録をしている事業者の全てがここまでする必要はないのです。

◆原則課税の事業者

「簡易課税を選択できない」あるいは「簡易課税を選択していない」事業者は原則課税で消費税の申告をすることになります。簡易課税は基準期間(前々年)の課税売上高(消費税が課税される売上)が5000万円以下でなければ適用できません。また、簡易課税を適用するには申告とは別に所定の届けが必要です。

基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、原則課税や簡易課税の他いわゆる2割特例が認められます。

原則課税の事業者は、冒頭のインボイス制度の趣旨に則った事務処理をしなければなりません。それは大変です!自らが発行する請求書はともかくとして(登録番号を追記すれば済む)、仕入税額控除をするためには、個々の支払いについて請求書や領収書のインボイスとしての要件を確認しなければなりません。

◆簡易課税の事業者(売上5000万円以下の事業者)

簡易課税の事業者は仕入税額控除に関してのインボイスは不要です。なぜならば、簡易課税においては仕入税額控除の計算をインボイスではなく法定の「みなし仕入率」で行うからです。

簡易課税は基準期間(前々年)の課税売上高(消費税が課税される売上)が5000万円以下でなければ適用されません。また、簡易課税を適用するには事業年度(個人は暦年)開始の前日までに所定の届けが必要です(免税事業者がインボイス登録をした場合には登録年度中に届ければその年度から簡易課税が適用されます)。

◆2割特例の事業者(期間限定の特例)

2割特例は簡易課税よりももっと簡単です。年度中に受け取った消費税総額の2割を税務署に納めるという方式です。簡易課税のように申告書とは別に所定の届けは不要で、2割特例は申告の際に選択することができます。

2割特例が認められるのは基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者です。また、2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各年度です。

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★原則課税でない事業者は一安心(インボイス制度なんて大したことはない)?

自身が簡易課税や2割特例で申告できることを知って一安心している事業者は多いと思います。しかし、2割特例は上記のとおり期間限定です。簡易課税は年間売上高の関係で適用されなくなることもありますし、かなり以前から簡易課税は消費税制度上の欠陥として問題視されていることから廃止や適用事業者が縮小される可能性が大いにあります。

簡易課税や2割特例であるからといって安心するのはそこそこにしておき、インボイス制度導入を機に消費税とインボイス制度の趣旨を十分理解して、将来的にはいつでも原則課税に適応できるような体制を確立しておく必要があります。

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消費税の納税資金を確保する

2023-04-29 19:00:00 | 消費税
インボイス制度導入により初めて消費税の申告納税をする事業者は、消費税の納税資金をどのようにして確保するかに悩んでいることでしょう。

◆税務署に納める消費税は年間合計で計算する

事業者が税務署に納税する消費税は、販売やサービス提供の際に受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。

この計算は日々することが可能ですが、税務署への納税はこの計算の年間合計(個人事業者は暦年、会社は事業年度)ですので、日々の計算の積み上げになります。会計ソフトにはこの計算をする機能がありますので、会計ソフトを利用すればその日に必要となった納税すべき額と現時点での累計額を知ることができます。

◆年度途中の税額が最終的には減る場合もある

年度(個人事業者は暦年、会社は事業年度)途中に計算した税務署に納税しなければならない消費税額は、その後年度末までに減ることがあります。

例えば、年度の最終日に販売やサービス提供による消費税の受取りがなく、仕入や諸経費に関して消費税の支払いをしている場合です。この場合には、年度最終日の前日までよりも税務署に納税する消費税額は減ることになります。

◆中間申告による納税

前年の消費税額が一定額を超えると年度の途中で中間申告による納税をしなければなりません。回数は前年の税額によって1回(半年経過後)、3回(3か月ごと)、11回(毎月)となります。税額は1回の場合は前年の半額、3回の場合は12分の3、11回の場合は12分の1となります。中間申告による納税を認識していないと、予期せぬ出費に見舞われることになります。

なお、中間申告は上記の前年税額による計算ではなく、対象期間の実額で計算することもできます。つまり、対象期間合計(半年、3か月ごと、毎月)で販売やサービス提供の際に受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を計算するという方法です。

◆簡易課税の場合

簡易課税の場合は、売上(商品の販売やサービスの提供)に一定率を乗じて仕入や諸経費に関して支払った消費税を計算しますので、日々の計算において受け取った消費税よりも支払った消費税が多くなるということはありません。そして、日々の計算における納税すべき額の年間合計を税務署に納めることになります。

ただし、返品や貸倒れ(売上代金の回収不能)があった場合には、それがあった日の受け取った消費税の減額をしますので、受け取った消費税よりも支払った消費税が多くなるということもあります。

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★納税資金専用の預金口座は必要か?
法律上は納税資金をプールしておくための預金口座を開設する義務はありません。しかし、納税資金の流用を防止するためには専用の預金口座を開設することが望まれます(法人税や源泉所得税などと兼用でもかまわないでしょう)。

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所得税と消費税の関係(両申告書の矛盾に注意)

2023-04-15 11:00:00 | 消費税
インボイスの登録を済ませ、来年から初めて消費税の申告をしなければならない個人事業者が多数います。

◆所得税と消費税はまったく違う税金

事業所得者に課税される所得税は、収入(売上)から必要経費を差し引いた事業所得が基準となります。一方、消費税の課税事業者が納める消費税は、事業者が商品販売やサービス提供に際して受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。

このように所得税と消費税はまったく違う税金です。ですから、申告書の作成と提出、そして納税も別々に行います。

◆消費税の申告も暦年単位で行う

所得税も消費税も税額の計算を暦年単位で行い申告と納税をします。所得税の申告期限は申告対象年度の翌年3月15日、消費税は3月31日です。納税もこの期限までにしなければなりません。

◆消費税に関する専門用語の難解さ

所得税の確定申告を税理士には依頼せず自身で行っている個人事業者は多いです。そのような個人事業者は、申告書の用紙を見て「これならばなんとか自分で書けそうだから」と感じたからです。

しかし、消費税はそうはいきません。消費税の申告書は「一般常識」「勘と経験」「ひらめき」では理解できない専門用語ばかりです。おそらく、申告書を見ただけでは手も足も出ないと思います。

◆両税目の申告内容の矛盾に注意

所得税と消費税がまったく違う税金で、別々に計算するとはいっても、両税目で同一事象を税額計算のベースとしていることがあります。そのため、両税目の申告内容に矛盾があれば税務署は疑念を抱き税務調査の対象にされることがあります。

例えば、所得税の事業所得の計算における収入(売上)と消費税における課税標準額です。収入(売上)が1000万円であるのに課税標準額が300万円というのは明らかに矛盾しています。事業所得の計算では仕入がない業種で、消費税の控除対象仕入税額が多いのもおかしいです。

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★来年の確定申告期は税務署が混乱すること必至!?

消費税の申告書は大変「とっつきにくい」ことから、来年の確定申告の時期、税務署は消費税の申告書の書き方をたずねに来た個人事業者で混乱することが予想されます。また、申告書が書けず放置したままの事業者、申告が必要なことに気がつかなかった事業者が現れることも予想されるので、税務署はその対応にも追われることでしょう。

インボイス制度が軌道に乗るまで、行政上の負担(コスト)も相当なものになります。当然、それを負担するのは国民です。

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【インボイス】来年(令和6年)は消費税の申告が必要

2023-03-25 12:31:00 | 消費税
コロナ禍が沈静化し申告期限も従来の3月15日に戻り、そそくさと確定申告書を提出した個人事業者は多いと思います。個人事業者にとって、来年の確定申告は大変なことになりそうです。インボイスの登録をした個人事業者は、所得税の確定申告だけでなく消費税の申告もしなければならないからです。

【ご注意】以下の説明はインボイス制度を機に消費税の課税事業者になる場合を前提に説明しています。

◆所得税と消費税は別々に申告をする

所得税と消費税は別々の申告書用紙を用いて申告をします。紙の申告書用紙で申告する場合は消費税の申告書用紙を別途入手しなければなりません。電子申告(e-Tax)の場合は消費税申告の画面での手続が必要です。

◆自主申告であることは所得税同様

「税務署からの連絡がなかった」「連絡に気がつかなかった」が通用しないのは所得税同様です。

◆原則課税と簡易課税?

このどちらを選択するかが消費税の難しいことろです。どちらにするかによって有利不利があります。税務署に納付する消費税が異なってくるのです。また、簡易課税を選択するには事前の届けが必要で、届けがない場合は原則課税になります。(令和5年から簡易課税を選択するには、令和5年中に届けをしなければなりません。)

◆2割特例?

原則課税と簡易課税だけでもややこしいのに、昨年末の税制改正大綱で突如出現したのが「2割特例」です。受け取った消費税の2割を税務署に納付すればよいという特例です。ただし、特例は申告時に選択可能ですので、原則課税あるいは簡易課税よりも有利であれば選択できるという点においては融通が利きます。

◆対象となるのは令和5年10月1日以降の売上

令和5年の消費税の申告において、申告の対象となる売上はインボイス制度が導入される10月1日以降の売上です。受け取った消費税は10月以降の売上合計に基づいて計算し、支払った消費税も10月以降の仕入や諸経費に基づいて計算します。

◆振替納税の手続

所得税の振替納税をしていて、消費税についても振替納税をしたい場合には改めて手続が必要となります。

◆消費税の申告納付期限は3月31日

消費税の申告納付期限は、所得税よりも約半月遅い3月31日です。申告はともかくとして、納付を分けて行えるのはありがたいです。なお、振替納税の日についても所得税が先で消費税が後です(日付は年度によって異なります)。

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★少なくとも初年度は税理士に依頼するべきです!
いまだにインボイスの登録をしていない人はできるだけ早く(遅くとも8月末までに)、インボイスの登録はしたけれども消費税の申告方法がわからない人は10月末頃までに税理士に相談をしてください。

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