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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

【不安と恐怖】インボイスの登録は必要?

2023-07-29 23:00:00 | 消費税
インボイス制度開始が目前に迫っています。多くの事業者はインボイス(適格請求書発行事業者)の登録を済ませていますが、今ごろになって「インボイスの登録が必要かについて」うろたえる事業者(消費税の免税事業者)もいます。

消費税相当額がもらえなくなる(値下げされる)
登録すると消費税の納税が必要となる(実入りが減る)
登録しなければ取引を打ち切られる

インボイスの登録をしていない事業者の不安はこれです。「登録しなければ」「登録すれば」という矛盾する2つの不安です。

◆顧客が一般個人のみであれば登録は不要

インボイス(適格請求書)は「事業者である顧客」に対して発行しなければなりません。事業者はインボイスがなければ仕入税額控除ができないからです。顧客が一般個人(事業をしていない個人、いわゆる消費者)であればインボイスを発行する必要がありませんので、当然インボイスの登録も不要です。

「習い事教室」「美容室」などがこの典型です。

◆消費税が非課税の事業も登録が不要

消費税は商品販売やサービス提供などの消費に対して課税されますが、一部の商品販売やサービス提供については消費税が非課税となっています。非課税の事業を営んでいる場合もインボイスの登録は不要です。顧客に対して消費税を請求しないからです。

「住宅貸付」「社会保険医療」がこの典型です。

◆ごく一部の顧客がインボイスを要求する

次のようにごく一部の顧客がインボイスを要求する場合もあります。

顧客が一般個人であっても、一部の顧客が事業者である場合もあり得ます。例えば、「習い事教室」に事業者に雇用されている者が社員研修の一環として事業者の費用負担において通っている場合です。

主流の事業が消費税は非課税であっても、副次的な事業が消費税の課税対象である場合があります。例えば非課税の住宅貸付と消費税の課税対象である駐車場貸付をしていれば、駐車場貸付の顧客に事業者がいる場合があります。

◆インボイスを発行できなければ消費税相当額はもらえない

インボイスを発行できなければ代金に消費税を上乗せすることができませんので、代金は消費税を度外視して決定することになります。

◆インボイス登録をしないことの損失は軽微

インボイスの登録をしていなければ消費税相当額を請求できませんが、ごく一部の顧客しかインボイスを要求してこないのであればその損失は軽微です。

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「インボイスの登録をしていませんので消費税はいただきません!」

ごく一部の顧客だけがインボイスを要求してくることが見込まれる場合はこのような割り切りが必要です。登録をせずに10月1日を迎えてください。

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インボイスには何を記載するのか?

2023-07-17 10:31:00 | 消費税
「インボイス(適格請求書)には何を記載すればよいのか?」

10月1日からのインボイス制度導入が近づくにつれて日増しに増えている質問です。

◆インボイス(適格請求書)は既存の請求書に登録番号を記載したもの

事業者であれば請求書の書き方は熟知していると思います。インボイスは従来の請求書に登録番号を追加で記載すればよいだけです。登録番号は会社名の下に記載することとされていますが、社名を記載するスペースがない場合はどこかわかりやすい場所に記載すればよいでしょう。適切な場所がない場合は、請求書の表面のどこかに記載しておき、登録番号を聞かれた際には「わかりにくくて申し訳ありません。・・・・に記載しております」と詫びるしかありません。

しかし、できることならインボイス制度導入を機に請求書のフォームを一新することが望まれます。

◆消費税額は区分する

インボイスにおいては必ず消費税額を明記しなければなりません。いわゆる税込の記載は認められません。また、税率が複数(10%と8%)である場合は消費税額を税率別に記載しなければなりません。

◆インボイスのサイズと材質

インボイスのサイズや材質は法定されていません。従来の請求書のサイズと紙質で特に問題はありません。

◆請求書を発行しない場合(領収書のみ発行する)

事業者向けの店舗販売などにおいては、請求書は発行せずに領収書のみを発行することがあります。このような業態においては、領収書において消費税額を区分記載して登録番号を記載することになります。

◆インボイスはいつから発行するのは

令和5年10月1日以降の販売に関する請求書になります。請求書は発行しない場合で領収書のみ発行する場合は令和5年10月1日以降の販売に関する代金受領からになります。

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★大丈夫ですか?

インボイス制度は誰にとっても初めての経験です。制度導入当初は大混乱すると思います。しかし、インボイス制度の趣旨を理解していればどんな状況にも対応できます。今一度、国税庁のサイトやパンフレットなのでインボイス制度に対する正確な情報を再確認しておいてください。

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適格請求書とは?(得意先からの質問状)

2023-07-17 10:30:00 | 消費税
10月1日からインボイス制度が見切り発車されます。混乱は必至です。すでに今でも混乱しています。

「貴社(貴殿)は適格請求書発行事業者の登録をしましたか?」

年明け以降、このような質問状を受け取り当惑する事業者が後を絶ちません。

◆なぜインボイスは必要なのか

インボイスは事業者間において消費税の受け払いをしたことの記録です。インボイス制度導入前は事業者間における代金の受け払いに際して請求書や領収書に消費税の記載をしていないケースも認められてきましたが、制度導入後はこのような方法は認められなくなります。

インボイス制度導入後は、事業者は販売の際にはインボイスを発行し、支払の際には支払先が発行したインボイスを入手しなければなりません。事業者はインボイスに基づいて受け取った消費税と支払った消費税を計算し、その差額を税務署に納めることになります。

◆適格請求書とはインボイスのこと

適格請求書とはインボイスのことです。法律上は適格請求書という言葉が使われていますが一般的にはインボイスという言葉が使われています。

◆適格請求書発行事業者とは(登録が必要)

適格請求書発行事業者とはインボイスを発行できる事業者のことです。適格請求書発行事業者になるには税務署で所定の登録手続をしなければなりません。適格請求書発行事業者の登録がされると、登録番号が発行されるとともに、適格請求書発行事業者公表サイトで適格請求書発行事業者であることが公表されます(登録番号から検索できます)。

◆インボイスを発行できない事業者(消費税を受け取れない)

適格請求書発行事業者として登録をしていなければインボイスを発行できません。インボイスを発行できないということは、販売先事業者(得意先)が支払った消費税の計算をできないということです。そうなれば、販売先事業者(得意先)は「消費税相当額」の支払いを拒みます。税務署に消費税を納付する際、受け取った消費税からその消費税相当額を支払った消費税として差し引けないからです。

インボイス制度導入後、各事業者は仕入先や諸経費の支払先が適格請求書発行事業者でないと消費税を支払うわけにいきません。それで、得意先はその調査のために質問状を送っているのです。

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★登録している場合は登録番号を答えればよいだけ
質問状には難解なことが書かれていますが、「(適格請求書発行事業者の)登録をしました。登録番号は・・・・です」という回答があれば得意先としてはOKなのです。

★登録していない場合は至急登録を
まだ登録していない場合は至急登録してください。登録までには最低でも1か月はかかります。遅くとも7月末までに登録申請をしなければ10月1日に間に合いません。

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消費税・インボイス制度(2割特例)

2023-06-18 12:06:00 | 消費税
2割特例、インボイス制度導入初期に小規模事業者を救済すべく突如出現した、「原則課税」「簡易課税」と並ぶ新たな「申告方式」です。

◆原則課税との違い

事業者は商品の販売やサービスの提供に際して消費税を受け取ります。一方、仕入や諸経費の支払いに際しては消費税を支払います。そして、この受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて税務署に納めなければなりません。この消費税の仕組みどおりに申告をする方式を原則課税といいます。

2割特例は受け取った消費税の2割を税務署に納税すればよいという申告方式です。2割特例においては支払った消費税がどれだけであるかは問題としません。2割特例は、消費税の仕組みを一切考慮しない極めて政策的な申告方式です。

◆簡易課税との違い(2割特例は簡易課税の変形?)

簡易課税とは、支払った消費税の計算(仕入税額控除)を受け取った消費税に対して「みなし仕入率」を乗じることによって行うという方法です。みなし仕入率は、卸売業は90%、小売業は80%、製造業は70%といったように業種ごとに法律で定められています。

なお、簡易課税が認められるのは、基準期間(2年前)における課税売上高が5000万円以下の事業者です。また、簡易課税で申告するには申告に先立って所定の届けをしておく必要があります。

2割特例は簡易課税の変形であると考えることができます。受け取った消費税の8割を支払った消費税として差し引くと考えるのです。しかし、簡易課税のみなし仕入率には一定の合理性がりますが、2割特例の2割には全く合理性がありません。

◆2割特例は基準期間の課税売上高が1000万円以下であれば認められる

2割特例は基準期間における課税売上高が1000万円以下の事業者にのみ認められます。いわゆる免税事業者がインボイス制度導入に際して適格請求書発行事業者になった場合の特例だということです。(インボイス制度導入後、基準期間における課税売上高が1000万円以下になった適格請求書発行事業者についても認められます。)

◆2割特例は申告時に選択可能

2割特例は簡易課税のように申告に先立っての届けは不要です。2割特例が原則課税よりも、簡易課税(届けはしていなかった)よりも有利という場合にはありがたいものです。

◆2割特例は期間限定の特例

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する年度(個人事業者であれば令和5・6・7・8年)において認められる期間限定の特例です。

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★2割特例はフリーランスに有利

フリーランス、企業と雇用契約を結ばず、企業から依頼された作業を行って対価を得ている人は2割特例の恩恵を大いに享受します。売上(収入)に対する経費の割合が少ないからです。税務署に消費税を納税する際、受け取った消費税から差し引く支払った消費税が8割に到底満たなくても、支払った消費税が8割もあると計算できるからです。

「原則課税でなんて計算できない(事務能力がない)」
「簡易課税の届けを忘れていた」

2割課税はこのようなフリーランスの救済措置です。

ちなみにフリーランスは、簡易課税では第5種サービス業として50%を支払った消費税として差し引けます。

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消費税・インボイス制度(簡易課税)

2023-06-18 12:05:00 | 消費税
10月からインボイス制度が始まりますが、「どうせうちは簡易課税だし」と安心している事業者は多いと思います。しかし、簡易課税には簡易課税の難しさがあります。

◆基準期間の課税売上高が5000万円以下でなければ適用できない

「基準期間」「課税売上高」という用語を正確に理解していなければ簡易課税適用の可否は判定できません。

「基準期間」とは、個人事業者は前々年、会社は前々事業年度です。簡易課税を適用しようとする年度の2年前ということです。

「課税売上高」とは、消費税の課税対象となる売上高のことです。「土地の譲渡および貸付け」「社会保険医療の給付等」「介護保険サービスの提供等」「住宅の貸付け」などは消費税が課税されませんので課税売上高には含まれません。

◆課税期間の前日までに所定の届けが必要(インボイス制度導入初期には特例あり)

簡易課税を適用するには、「基準期間における課税売上高」という要件に加えて税務署に所定の届けをしておかなければなりません。

この届けは、簡易課税を適用しようとする課税期間の前日までにしなければなりません。申告をする段階になって、「簡易課税が有利だから」「原則課税は面倒なので」とはいかないのです。

ただし、インボイス制度導入初期(令和5年10月1日から令和11年9月30日までを含む年度)には、「簡易課税を適用しようとする年度中」に届けを提出すればその年度から簡易課税が適用できるという特例があります。なお、この特例が認められるのは、免税事業者が適格請求書発行事業者(課税事業者)になった場合に限られます。

◆自らの事業区分を判定しなければならない

簡易課税においては仕入税額控除の計算を、「事業区分」に応じて定められた「みなし仕入率」に応じて計算します。自らの事業区分は自らで判定しなければなりません。判定ですので、都合のよい事業区分を選択できるのではありません。

事業区分とみなし仕入率は、「第1種事業(卸売業)、みなし仕入率90%」「第2種事業(小売業など)、みなし仕入率80%」「第3種事業(製造業など)、みなし仕入率70%」「第5種事業(製造業など)、みなし仕入率50%」といった具合に定められています。

◆簡易課税を選択すれば簡易課税で申告しなければならない

簡易課税を選択すれば、申告時に原則課税で申告するほうが有利であることに判明したとしても必ず簡易課税で申告をしなければなりません。

簡易課税の選択をやめることもできます。しかし、ひとたび簡易課税で申告してしまうと2年間は簡易課税で申告をしなければならないという「縛り」があります。

◆簡易課税の届けをしていても基準期間の課税売上高が5000万円を超えれば適用できない

この点についても注意が必要です。簡易課税の適用要件である基準期間における課税売上高5000万円という要件は課税期間ごとに判定しますので、たとえ簡易課税の届けをしていても適用できない課税期間もあります。

◆簡易課税の届けはいつまでも有効

事業が拡大し、5000万円をはるかに上回る売上規模になり、それが10年以上続いたとしても簡易課税の届けはいつまでも有効です。事業縮小となり、再び課税売上高が5000万円以下になったならば、すっかり忘れていた簡易課税に戻るということです。

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「なんとなく簡単そうだから」で簡易課税を選択してはいけないということです。慎重に判断してください。

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