goo blog サービス終了のお知らせ 

【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

会計の書物のここを読んでください(各論、会計の要所、各勘定科目の理解を深める)

2018-12-21 19:01:00 | 決算書・試算表
決算書を「作成する」立場の経営者としては決算書を構成する各項目の意味だけでなく、それぞれの計算方法も知っておかなければなりません。

★勘定科目(決算書は勘定科目の集合)
決算書(貸借対照表と損益計算書)は勘定科目の集合です。勘定科目とは個々の取引(主に入出金)を集計や差引きした結果です。決算書は複数の勘定科目を一定のルールで配列し、それを合計や差引きすることにより意味を成しています。会計の書物では、この勘定科目ごとに説明がされています。

◆売上計上(計上方法は業種により異なる)

利益は「収益-費用」として計算されますが、収益の大部分は売上、すなわち本業の収益です。この売上を客観的なルールで正確に計算しなければ正確な利益は算出できません。売上を、「いつ、どのような金額で」計上するかについては業種によって異なります。会計の書物では代表的な業種である「小売業」「卸売業」「製造業」に分けて説明がされています。自社に適用される売上計上のルールについての理解をしてください。

◆棚卸資産(売上原価)

売上には売上原価という費用が伴っています。「売上-売上原価」は売上総利益(粗利)と呼ばれ、これで企業の様々なコスト(人件費、店舗や工場などの取得費や維持費)を賄います。売上原価は、仕入から未販売の商品を差し引いたものですが、この未販売の商品を棚卸資産(商品や製品)といいます。仕入は納品された時点で計上すればいいのですが、棚卸資産に関しては様々な計算方法があります。これについて「先入先出法」「移動平均法」などが説明されています。

◆減価償却(設備投資費用は複数の事業年度に配分する)

減価償却は「会計的思考」の典型例といえます。会計の大前提として「会計期間(事業年度)」という区切りがあり、各入出金はこの会計期間に配分されます。設備投資費用は複数の会計期間に減価償却によって配分します。減価償却にうなずけるようになれば、「会計の世界に陶酔」しているといっても過言ではありません。減価償却の方法には「定額法」「定率法」「生産高比例法」などがあり、それぞれに合理性があります。

◆費用の発生(前払費用と未払費用)

上記の売上原価と減価償却が費用の大部分を占めますが、他にも費用は無数にあります。あらゆる費用の計上の背後には、「費用の発生」があります。この発生に関して、「前払費用=支払ったけれども費用にはならない=発生していない」、「未払費用=支払っていないが費用になる=発生している」と説明がされています

◆純資産(資本)

会計を苦手とする人の多くはこの純資産という概念、純資産が計算されるメカニズムを理解できないことを原因としています。「純資産は資産と負債の差額(正味の財産)」「純資産は利益に応じて増える(損益計算書と同時に作成される)」「純資産と資本金は異なる」、とりあえずこの理解でいいと思います。

◆決算書の様式

決算書の様式は会社法(ずべての会社)と金融商品取引法(株式を証券取引所などで売買できる会社)で定められています。書物ではそれぞれの決算書の様式が紹介されています。

★複数の方法の選択適用
会計の書物を読み進むと特定の計算をするために複数の方法の「選択適用」が認められていることに気がつくと思います。選択適用が認められているのは、会計の前提には「仮定(仮説)」があるからです。その仮定(仮説)の正しさを究明するのが「会計学」の目的です。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

新・現代会計入門 第3版
クリエーター情報なし
日本経済新聞出版社


会計の書物のここを読んでください(総論、会計を学ぶ方向性、財務会計とは?)

2018-12-21 19:00:00 | 決算書・試算表
「会計を学びたい!」という中小企業経営者が増えてきました。大変よいことです。会計を学ぶ方法としては書物を読むのが一般的ですが、「会計は言語」ですので、これを学ぶ過程は砂を噛むように味気がありません。書物を闇雲に読んでも必ず挫折してしまいます。

◆会計の意味と役割(財務会計)

会計といってもその「意味」「目的」「役割」は様々です。書物では帳簿から決算書を作成して株主や債権者に報告することを「財務会計」と説明しています。この部分を読んで、会計を学ぶことの「方向性」をしっかりと定めてください。

◆会計に関する制度(法律)

会計に関しては会社法(全ての会社)と金融商品取引法(株式を証券取引所などで売買できる会社)という2つの制度(法律)があります。この部分の説明を読み、自社の会計を規制する法律がなんであるかを認識しておく必要があります。

◆会計基準(公正妥当とは?慣習とは?法律との違い?)

会計基準、すなわち会計に関するルールを理解しておくことも大切です。書物では、「公正妥当」「会計基準」「会計慣行」ということが説明されています。この部分は大変抽象的ですが、これについての理解を避けては通れません。

◆複式簿記(記帳から決算までの流れ)

会計は複式簿記を前提に成り立っています。複式簿記とは個々の取引(主に現金の動き)の記録である仕訳から帳簿を作成し、帳簿から決算書を導くという手法です。この複式簿記を理解しなければ、どのような事象が記録され、結果として決算にどのように反映されるかを理解することができません。

◆決算書(貸借対照表と損益計算書)

決算書は貸借対照表と損益計算書からなります。それぞれの意味、特に「財政状態(貸借対照表)」に「経営成績(損益計算書)」という会計独特の意味を理解しておく必要があります。

◆発生主義(利益計算のルール)

発生主義とう利益計算のルールに対する理解も欠かすことができません。発生主義でなければならない理由、さらには利益計算(損益計算書)のルールである発生主義が貸借対照表にまで影響していることを知らなければなりません。

★会計の書物を選ぶにあたっての注意点

財務会計の書物はその全てが「財務会計・・・」と題しているとは限りませんので、書物を選ぶにあたっては注意が必要です。

○決算書
「決算書の読み方」などと題する書物は、まずは財務会計に関する書物です。
○財務諸表
財務諸表=決算書と考えて差し支えありません。
○企業会計(財務会計を意味することが多い)
企業の大部分は会社ですので、「企業会計・・・」と題する書物は会社の財務会計に関する書物です。
○会計
意味が広すぎますので、内容を十分確認してください。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

財務会計講義(第19版)
クリエーター情報なし
中央経済社


借入金を一括して返済すべきか? (借入金のメリットとデメリット)

2018-09-11 12:30:00 | 決算書・試算表
「借入金を一括して返済すべきか?」
「借入金があることのメリットとデメリットは?」

借入金を返済するための資金があり、その資金がなくなっても資金繰りに困ることがないのであれば借入金を一括して返済しても問題はありません。借入金が1億円、預貯金が2億円という状態で借入金を一括返済すれば預貯金は1億円に減ります。しかし、この1億円で以後の経営が成り立つのであれば返済しても何の問題もありません。かといって、「返済しなければならない」というわけでもありません。

★借入金のメリットとデメリット

借入金のメリットは、手持ちの資金がなくても経営ができるということです。借入金のデメリットは返済しなければならないということです。手持ちの資金がないけれども、目の前に利益を獲得できるチャンスがあり、借入金を返済するめどが立っているのであれば、借入金をしてもかまいません。

★借入金と税金の関係について

借入金は負債ですので、借入金そのものの増減と残高は利益に影響しません。利益に影響するのは利息です。利息を支払えばそれは費用となりますので、利益が減り結果としての法人税が減ります。しかし、利息を支払うことにより「減る法人税」よりも、「支払う利息の額」のほうが多いですので、借入金がゼロで利息を支払わないほうが流出する資金は少なくて済みます。

なお、利息は消費税とは関係ありませんので、利息を支払ったからといっても会社として納税する消費税に影響はしません。(借入金そのものも消費税とは無関係です。)

★借入金と財務内容(返済能力)

「あまりにも借入金が多いと・・・」ということがいわれます。返済が苦しくなると追加融資や返済条件の見直しが行われ、形式上は返済ができている状態が保たれているかもしれません。しかし、それにも限度があり、いずれ資金が回らなくなれば会社は破綻します。

必ず返済できる借入金の金額というのはありませんが、借入金が多いほど返済できなくなるリスクは高まります。

★金融機関との関係

金融機関にすれば優良貸出先との関係は継続したいのは当然です。また、新規の貸出先よりも継続しての貸出先のほうが審査手続も簡略であることが通常です。そんなことから、資金の必要がなくても一定額を借り続けているということもあります。

★近い将来に廃業する場合

近い将来に廃業する場合には、廃業の直前に一括返済するのではなく、廃業の2・3年前に一括して返済してもかまいません。廃業時の事務手続は少なくて済むからです。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

ダンゼン得する いちばんわかりやすい 創業融資と補助金を引き出す本
クリエーター情報なし
ソーテック社


損益計算書の不思議?

2018-08-29 17:00:00 | 決算書・試算表
★総額と純額

損益計算書においては収益と費用は「総額」で表示することがルールとなっています。どういうことかというと、収益と費用を相殺した結果としての「利益だけ」を表示するのではなく、収益と費用を対比させて、その差引きとして利益を計算するということです。売上高と売上原価を対比させて売上総利益を計算する。そこから販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を計算するといった具合です。

ところが損益計算書では、この総額での表示というルールに基づいていない部分もあります。収益と費用を相殺して、「収益>費用」であれば「・・・益」などの勘定科目で、「収益<費用」であれば「・・・損」などの勘定科目で表示していることがあります。このような方法を総額に対して「純額」といいます。

★純額による表示の例

○有価証券の売却
譲渡収入から簿価(取得価額)を差し引いた額を有価証券売却益あるいは有価証券売却損として表示します。譲渡収入を有価証券売却収益などの収益としての勘定科目、簿価を有価証券売却原価などの費用としての勘定科目として総額で計上することはありません。

○有形固定資産の売却
譲渡収入から簿価(取得価額-減価償却累計額)を差し引いた額を、売却したのが建物であれば建物売却益あるいは建物売却損として表示します。譲渡収入を建物売却収益などの収益としての勘定科目、簿価を建物売却原価などの費用としての勘定科目として総額で計上することはありません。

★純額で表示されていることが数多くある

収益と費用は総額で表示することが原則ですが、それは損益計算書の大部分を占める「売上」「売上原価」「販売費及び一般管理費」においての原則であり、それ以下の営業外収益と営業外費用、特別利益と特別損失の計算においては収益と費用が純額で表示されているケースが数多くあります。

「株を売った収入は?」「不動産(土地と建物)を売った収入は?」、このような疑問を抱く損益計算書の読者が非常に多いです。

★特別利益の中に収益が?

特別利益は経常利益の次に表示されますが、これに属する多くの勘定科目が純額で計算されています。土地や建物の売却益がその典型です。その意味で、特別利益の各項目は「収益-費用=利益」ですので特別利益という名称に納得できます。

ところが特別利益の中には収益と呼べる項目が計上されることもあります。補助金、保険金、損害賠償金の受取りがそれです(これらが比較的少額で経常的に生じる場合には営業外収益に計上することもある)。

★特別損失の中に費用が?

特別利益の次に特別損失が表示されますが、これも純額で計算されている勘定科目が多いです。しかし、特別退職金(リストラにより多額に生じる退職金)や損害賠償金の支払いなど、費用と呼べる勘定科目もあります。

★雑収入なのに収益(慣れるしかありません)

営業外収益の中に雑収入という勘定科目があります。これは、本業以外の収益で、既存の勘定科目(受取利息、受取配当金など)もなく、新たな勘定科目を新設するほど重要性がないものをいいます。「収入」という名称ですが収益です。収益ですので入金がない部分も計上しなければなりません。

勘定科目の名称については、理論や原則では理解できないものがいくつもあります。これらについては「言葉」ですので慣れるしかないのです。理屈で考えてもどうにもなりません。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

会計学入門〈第5版〉 (日経文庫)
クリエーター情報なし
日本経済新聞出版社


利益と資金繰りは別々に計算する

2018-08-27 17:00:00 | 決算書・試算表
利益は「収益-費用」として計算しますが、収益と費用は入出金とはタイミングがずれることから利益の計算を資金繰りに用いることはできません。また、利益計算と資金繰りでは構成要素が異なります。その典型は減価償却と借入金です。減価償却は利益計算には含まれますが、資金繰りからは除かれます。借入金は資金繰りには含まれますが利益計算からは除かれます。利益の計算をしてもそれを資金繰りには利用できませんので、資金繰りは利益とは別に計算しなければなりません。

資金繰りの計算方法は、その結果を何に活用するかによって異なってきます。

■翌月の資金繰り(支払いはできるのか?)

これが一般的、というよりも一番切実な資金繰りだと思います。「翌月の支払いはできるのか?」「蓄えを取り崩す必要があるのか?」「借入れをする必要は?」「支払いを待ってもらわなければ・・・」といった具合です。

■中期的な資金繰り

翌事業年度など、比較的中期の資金繰りです。「毎月平均してどの程度の入金と出金があるか?」「月ごとで入出金にばらつきはないか?」「臨時の入出金は?」といった具合の見通しを立てます。

■先の状況が変化する場合の資金繰り

「事業を拡大する」「多額の設備投資をする」「人員を大幅に増やす」「取扱商品や取引先が激変する」「売上が激減する」など、先の状況が変化する場合には資金繰りの見通しを立てておかなければなりません。

■過去の資金繰りを分析する

過去の資金繰りを分析することも大切です。

「販売による収入-仕入代金の支払い-諸経費の支払い-借入金の返済」

当然、これがプラスでなければなりません。これがマイナスで「蓄えの取り崩し」や「借入」で補っているようでは、いずれは資金が枯渇します。

★試算表と決算書は資金繰りの参考になる

試算表と決算書は過去の利益を計算したものですが、資金繰りを計算するにあたっての参考になります。売上総利益率(売上と仕入の関係)、諸経費の内訳(販売費及び一般管理費)は資金繰りを見通すにあたって大変参考になります。試算表も決算書も「網羅性」がありますので、資金繰りにおいて何よりも大切な「漏れの無い」見通しをするのに大変重宝します。

納税見込み額は資金繰りにおいても大変重要な計算要素です。納税見込み額を算出するには過去の試算表と決算書から将来の利益を見通さなければなりません。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。

なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則
クリエーター情報なし
日経BP社