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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

創業期の予期せぬ黒字(会計と税務に対する知識不足)

2021-06-26 19:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社を設立して2・3年の間は利益など出ないであろうと(法人税は課税されない)と高をくくっていたら、思いもよらず法人税が課税されるというケースがあります。原因は、会計や税務に関する知識不足です。

◆法人税は収支ではなく利益に課税される

法人税は事業年度の収支(お金の出入りの差額)ではなく利益(収益-費用)に対して課税されます。利益と収支は一致しません。事業年度中に入金がなくても収益となるもの、出金はあっても費用とはならないものが多々あります。前者の典型は売掛金です。後者の典型が固定資産(減価償却)と在庫です。

「資金繰りが繰しいから法人税は課税されない」とはいかないケースがあるのです。

◆減価償却

建物や機械などの設備、車両、事務機器は長期にわたって使用されることから、その取得価額(購入代金)は購入した事業年度の費用とするのではなく、複数の事業年度の費用として配分をします。これを減価償却といいます。会計ならではの考え方です。

減価償却に関して重要なことは、何が「減価償却の対象」となるのかと、「減価償却をする年数(耐用年数)」です。これについては判断が難しいケースもあり、思いもよらない結果になることもあります。

◆在庫

商品を仕入れても販売するまでは費用にはなりません。事業年度における収益(売上)と費用(売上原価)は対応関係になければならず、事業年度末に在庫として残っている部分は費用から除外しなければなりません。これを期末棚卸高といいます。

この考えも非常に理解しにくいです。しかし、経営をする以上は受け入れるしかありません。

◆借入金の返済

借入金によって資金が増えても収益にはなりません。一方、返済によって資金が減っても費用とはなりません。「利益が出そうなので借入金の返済をして節税をする」という考えは間違いということです。借入金による資金の動きと利益計算の関係は非常に理解しづらく、多くの経営者の意思決定を混乱させます。

創業期には「社長借入金」が多額に生じることがあります。この社長借入金の変動は利益計算には影響しないということです。影響するのは社長借入金で得た資金による仕入や設備の購入(費用)と、その成果としての売上(収益)です。

◆役員報酬に関するルール

この件については理解している人が比較的多いです。役員報酬というのは、年間を通して毎月定額で支給しなければなりません。通常は、事業年度終了の2か月後に定時株主総会を開催して、そこで決定した役員報酬の額を12か月間支給し続けます。

このルールを知らずに、年度途中で役員報酬を増額した、臨時にボーナスとして支給した場合には、増額や臨時支給分は利益計算にはカウントされるけれども(費用となるけれども)、法人税の計算においては利益に加算されます。

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★税理士に早めに相談する(税理士とのコミュニケーション不足を避ける)

利益の計算や利益を基にした法人税の計算のルールは、極めて特殊で一般の人には理解できないものが多々あります。運悪く(?)、資金繰りが苦しい創業期から、予期せぬ課税が生じるパターンに遭遇するケースもありますので、会社を設立したならばできるだけ早く税理士に相談することをおすすめします。

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創業期の予期せぬ黒字(過少な役員報酬)

2021-06-19 19:05:00 | 起業(会社設立など)と経営
一般には創業期、会社を設立して2・3年までの間は利益を出すことが難しいです。初期投資がかさみ、得意先も少なく十分な売上を確保できないからです。しかし、創業期であっても見通しを誤ったがために予期せぬ利益が生じてしまい、法人税の納税が必要となりその税額に愕然とすることがあります。

その見通しの誤りのひとつに「役員報酬額の設定」があります。

◆役員報酬が少なすぎた

大手の会社では役員報酬は厳格な規程を基に決められますが、中小零細企業の場合には代表者が自身の都合によって決めることができます。そんなことから、役員報酬が会社の実情よりも極端に低く設定され、予期せぬ利益が生じてしまうことがあります。

◆当面の生活費は確保してある

役員報酬を抑える理由は様々ですが、そのひとつが「当面の生活費は確保してある」ということです。役員報酬というのは、会社から引き出した後には私生活で自由に使うことができます。まずは生活費ですが、起業時にあらかじめ相応の生活費を確保している場合には役員報酬が低くても生活はできます。

◆会社に資金を残したい

会社に資金を残したいという理由から役員報酬を抑えることがあります。中小零細企業では、会社の資金が不足した場合には、代表者個人の資金を会社に貸し付ける(会社からしたら借りている)ことが通常です。ですから、役員報酬を抑えて会社に資金を残すという方法にこだわる必要はないのです。

◆役員報酬の税金や保険料を抑えたい(平成・令和の経営者の気質)

これが役員報酬を抑えようとする理由で一番多いかもしれません。特に「厚生年金保険料」です。「将来、年金がもらえるかどうかもわからないのに・・・」と考えるのです。毎月預金口座から引き落とされている社会保険料の金額に居た堪れなくなって、役員報酬の引き下げをする経営者が後を絶ちません。

「昭和の」中小零細企業経営者は、役員報酬を高めに設定して決して引き下げようとはしませんでした。将来の公的年金が減るのを恐れたからです。この公的年金を取り巻く環境の変化が、役員報酬の設定を大変困難なものにしています。

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★適度に赤字で適度に社長借入金があるほうが税金対策はしやすい

役員報酬というのは「やや高め」に設定しておいて、とりあえずは会社から資金を引き出し、会社に資金が不足すれば代表者個人から会社に貸す(会社からしたら借りている)ほうが税金対策はしやすいです。役員報酬を減額するのは、現状の役員報酬額が「取れそうにない」ことが明らかになってからでいいです。

「役員報酬が取れない月が年に一度はある」
「役員報酬の未払分を数年に一度『おおむね』精算できる」

これが中小零細企業の決算書としては、「無理のない」「正常な」状態です。

「利益がゼロになるように役員報酬を設定する!」というのは不可能で、この考えに固執するとほとんどの場合は見通しがはずれて予期せぬ利益が出てしまいます。そして、つい「不正な利益調整」をしてしまい、税務調査でそれを指摘されていることが非常に多いです。

★役員報酬については鷹揚(おうよう)さが必要

「とりあえず多めに役員報酬を取っておこう。」
「会社の資金が不足したら自分が会社に貸せばいい。」
「いつまでもこれが続くようなら見直せばいい。」
「一生でとれるトータルの役員報酬(納める厚生年金保険料合計)は同じなんだ(笑)。」

といった具合がちょうどいいのです。

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親族からの援助で会社経営を維持している

2021-01-22 20:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
中小零細企業の経営が行き詰ったとき、最終的に頼りになるのはやはり親族ということになります。親族間の取引は、第三者間の取引では考えられないような条件で行われることもあり、それが後に思いもよらないトラブルを招いてしまうことがあります。「気軽に」「手軽に」「素早く」できたことのツケを、あとになって支払わなければならないことがあるのです。

◆親族から資金の融通を受けた

これが一般的な援助方法です。親族ゆえに、スピーディかつタイムリーに資金の融通を受けと受けることができますが、次の点に注意が必要です。

〇当事者を明確にする
資金の動きは「親族→会社」ですので、これについて明確な記録を残しておく必要があります。そのためには、帳簿に記録を残し、簡単な借用書を作成し、決算書(科目明細)においても親族からの借入金である旨を記載しておかなければなりません。

〇小口の頻繁な資金融通は避ける
小口の頻繁な資金融通は記録が煩雑になりますので避けることです。

〇親族の「立替払い」も資金融通になる
会社の仕入代金や経費の支払いを親族に立替払いしてもらうのも資金融通になります。これは、「会社の帳簿の外」で行われるので、ともすれば会社の記録から漏れてしまいます。ですから、可能な限りこの方法は避け、面倒でも会社がその親族から資金を借りて、その資金で支払いをすることです。

借入金はいずれ返済しなければなりませんが、当然のこととして返済は貸してくれた親族本人にしなければなりません。利息は会社の費用になりますが、受け取る親族には雑所得としての確定申告が必要ですのでこの点に注意が必要です(無利息でもかまいません)。

◆親族が所有する不動産を無償で使用させてもらう

親族が所有する不動産であれば無償で使用させてもらうことも可能ですが、無償ゆえの問題点もあります。

〇実費程度は負担する(親族に不動産所得がある場合)
親族が他にも不動産の賃貸をしており不動産所得がある場合には、「水道光熱費」「消耗品代(蛍光灯の取替えなど)」「固定資産税」などは負担しておく必要はあります。そうでないと、会社に無償で貸している部分(不動産所得と無関係の部分)に関する出費が、親族の不動産所得の必要経費に混入して、税務調査で指摘を受けることとなります。(実費相当額を会社から受け取って収入としておけば必要経費と相殺されます。)

〇会社に余裕ができたら一括して支払う場合
会社の資金に余裕ができたら一括して支払うという場合には、必ず「賃貸借契約書」を作成し、請求書の発行も受け、決算書においても未払家賃として計上しておく必要があります。親族の確定申告においては未収のまま不動産所得を計算しなければなりません。

◆親族に保証人になってもらった

金融機関から融資を受ける際、親族に保証人になってもらったというそれだけでは課税関係は生じません。経理処理としては「借方:預金/貸方:借入金」と処理するだけで、保証人になってくれた親族は帳簿や決算書には一切表れません。

問題は代位弁済があった場合です。代位弁済とは会社が金融機関に返済できない場合に、保証人である親族がその返済を肩代わりするということです。この代位弁済が行われた場合、会社の借入先はその親族に代わり、その親族に返済をしなければなりません。

◆親族の所有する資産(不動産、有価証券など)を担保提供した

金融機関から融資を受ける際に担保提供する資産(不動産、有価証券など)は、通常は会社名義のものですが、事情により他人名義の資産を担保提供する場合があります。担保提供しただけでは課税関係は生じません。経理処理としては「借方:預金/貸方:借入金」と処理するだけで、資産を担保提供したことは帳簿や決算書に表れません。

会社が借入金を返済できない場合には、金融機関は担保提供資産を売却することになりますが、その資産の所有者である親族に譲渡所得が生じます。この譲渡所得が多額であれば、親族はその納税に苦慮します。

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★援助してくれた親族に対する「お礼」
会社に余裕ができてから親族に対して「お礼」をすることがありますが、このお礼の扱いをめぐって税務署に指摘を受けることがあります。役員である親族に「賞与(ボーナス)」を支給すればそれは損金不算入(会社の経費にならない)です。株主である親族に配当を支払っても、それは損金不算入となるだけでなく、親族の配当所得になります。

★債務免除益
親族から援助を受けた資金を返せない場合には、免除を受けることができます。免除を受ければ「借入金という負債」が消えて、「債務免除益という収益」が生じます。債務免除益の結果、利益が生じれば法人税が課税されます。なお、債務免除した親族には課税関係は生じません。

★贈与税に注意(会社の外で援助を受けている場合)
会社経営が苦しくなると役員報酬が減り、経営者の生活は苦しくなります。会社の外の私生活における資金援助には、その金額や方法によっては贈与税が課税されますので注意が必要です。

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初めての赤字決算(この先どうするのか)

2021-01-15 18:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
赤字になれば、もう悠長なことはいっていられません。「経常利益を減らさないために特別損失で処理する」などはもはや「戯言!」です。いまさら、簿記や会計の書物を読んでもどうにもなりません。

赤字ということは「資金が減り続けている」「過去に投じた資金が収益を生んでいない」「借入金の返済負担が大きい」ということなのですから、何とかして「現状を打破」しなければならないのです。何も手を打たなければやがては倒産します。

◆しばらくは耐えられる

「貯えがある」「借りることができる」「コスト削減が可能」であればしばらくは耐えられます。赤字の原因が一時的なもので、いずれは解消されるものであれば「待つ」しかありません。リストラを早まるとか、不用意に多角化をするとそれが裏目に出ることがあります。

◆事業規模を縮小する

赤字を補填するだけの「貯えもなく」、「借りることもできず」「コスト削減も限界」という場合には事業規模を縮小するしかありません。

従業員との衝突は必至です。しかし、いずれは給料を払えなくなるのですから、従業員に頭を下げて退職してもらうしかありません。従業員にしても給料がもらえない会社に居続けるわけにはいきません。

取引先からは「格下げ」の扱いをされます。今後は格下げされた状態で生き残る方法を確立しなければなりません。場合によっては取引を打ち切られることもあります。

◆転業する

全くの異業種への参入は大変かもしれませんが、FCへの加入、M&A(会社の買収や営業譲受)であれば可能なこともあります。転業とまではいえない、「卸売りから小売り」「店売りからネット販売」といった業態の変更であれば比較的やりやすいかもしれません。

転業の場合も従業員との衝突は必至です。新たなスキルを習得できない者には退職してもらうことになるからです。また、取引先も離れていくことがあります。

◆廃業する

中小零細企業というのはいずれ廃業しなければなりません。赤字に陥るというのは従来のやり方が通用しなくなったということです。先が見えないのであれば廃業するしかありません。経営者が「現役世代」の場合には次の職を見つけなければなりません。

◆倒産

すでに「払えない」「返せない」という状態に陥っているのであれば倒産するしかありません。中小零細企業が倒産する場合には、「破産」あるいは「特別清算」という法的手続をすることになりますが、これについては弁護士への依頼が必須となります。倒産が現実的となったのであれば、速やかに弁護士に相談しなければなりません。間違っても、「夜逃げ」などの稚拙な手段に出てはいけません。

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★公的支援は必ず受ける(まずは相談を!黙っていても誰も助けてはくれない)
赤字に陥りながら公的支援を受けようとしない経営者がいます。「当社は対象にならないはず・・・」「手続が面倒(できそうにない)・・・」と決めつけているのです。不正な手段で公的支援を受けるのは犯罪ですが、公的支援の窓口に相談するのに「遠慮は無用!」です。まずは相談をしてください。黙っていても誰も助けてはくれません。

★金融機関にリスケを依頼する
金融機関からの借入金は、契約どおりに利息の支払いをして元金を返済しなければなりません。もしも、これができなくなった場合には金融機関は強硬な手段に出てきます。そうなる前に契約の見直し、一般的には元金の返済はストップして利息の支払いだけにしてもらいます。

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初めての赤字決算(貸借対照表の変化)

2021-01-07 15:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
赤字であることが表示されるのは損益計算書ですが、貸借対照表にも赤字であるがゆえの変化が表れます。「苦しそうだな!」、第三者にもはっきりとわかります。

◆資産が減っている(増える場合もある)

赤字であれば資産は減ると思うかもしれませんが、実はそうとは限らないのです。

「現金預金」は、赤字ならば収入(入金)よりも支出(出金)が多くなりますので減ります。借入金で資金不足を補っている場合には増えることもありますが、それは一時的な現象にすぎません。借入で得た資金を仕入代金や諸経費の支払いに使っているうちに、現金預金は再び減少に転じます。

「売掛金」は、赤字の原因が販売量の減少あるいは販売価格の低下であるならば減ります。採算を度外視して販売量を増やした場合には、赤字でも売掛金は増えます。回収が滞っている場合にも売掛金は増えます。

「棚卸資産(在庫)」は、販売量の減少に対応して仕入(在庫)も減らしているのであれば減ります。しかし、「品揃え」を変えることができないという場合にはそんなに変化はありません。また、売れ残り商品が大量に生じれば増えることもあります。

「減価償却資産(建物、備品、車両など)」は、新たな取得がなければ減価償却費相当額と除却・売却した資産の簿価の分が減ります。赤字になれば新たな設備投資は抑えるので、数年間の推移でみれば減価償却資産は確実に減っていきます。

◆負債の変化は様々

「買掛金」は、販売量の減少に応じて仕入を減らしている場合には減ります。仕入は変わらないあるいは減らしていても、支払条件を変えてもらって支払いの時期を延ばしている場合には増えることもあります。

「金融機関からの借入金」の動きは様々です。「返す一方」であれば減ります。「借りられるだけ借りて・・・」であれば増えます。「返せなくなった」のであれば不変です。

「経営者からの借入金(社長借入金)」の動きも様々です。会社に貯えがある、あるいは金融機関から借りることができる場合には社長から借りる必要はありません。そうでなければ、社長から借りるしかありません。

◆税金や社会労働保険関係の負債

赤字に陥って資金繰りが悪化すると、税金や社会労働保険の納付が滞ることがあります。そうなれば、「未払法人税等」「未払消費税」「預り金(社会労働保険、源泉所得税、住民税)」が増える一方になります。

◆純資産は赤字相当額減ります(増資がないとして)

貸借対照表は「資産-負債」である「純資産」で考えなければなりません。資産としての現金預金が5000万円あっても、それが負債である借入金5000万円で調達したのであれば「正味では」なにも増えていません。

純資産は損益計算書に表示されている赤字相当額(税引き後の当期利益)だけ前期より減ります。収益の背後には資産の増加があり、費用の背後には資産の減少(または負債の増加)があります。赤字とは「収益<費用」という状態ですので、「資産の増加<資産の減少(または負債の増加)」となり純資産は減ってゆくのです。

上場企業であれば赤字による純資産の減少を「増資」により補うことがありますが、中小零細企業では増資が行われることはほとんどありません。

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★余力がどれだけかあるか

貸借対照表の各勘定科目を見れば、事業年度末の資産と負債の内容がよくわかります。資産のすべてがそのままの金額で入金があるとか売却できるわけではありません。また、入金や売却に日数を要するものもあります。しかし、目先の支払いができるか否かについてはすぐにわかります。

中小零細企業の貸借対照表は非常にシンプルであることがほとんどですので、分析をしてもあまり得るものがありません。「流動比率」「自己資本比率」などの数値などもあまり意味がないのが実情です。

赤字に陥り、資金の減少が続いているという状況においては、まずは黒字化を目指すことが喫緊の課題です。そのためには、損益計算書で利益構造(赤字になった原因)を徹底的に分析して、黒字化するための術(すべ)を見出すことです。

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